「ありゃ?」
机の上に広げたPTの共有資産分のガメルを前に、ジークは思わず首をかしげた。
「どうしたの?」
「いや・・・なんかPT資産がえらく少ないんだが・・・なんでだ?」
向かいの席でなにやら書き物をしていたエアの問いに答え、ジークはもう一度机の上の銀貨の山に目を向けた。数え違いとかそういうレベルでは無い。なにせ記憶しているより数万ガメル単位で少ないのだ。間違いなく誰かが持ち出したのだ。だが、いったい誰が?
考え込むジークに、エアは呆れた様子で軽くなった財布の理由を告げた。
「何言ってるのよ。其れはこないだニゲラのカードを買うのに使ったんでしょう?」
「は?」
思わずきょとんとしてしまった。
「え?いつのまに?」
「いつのまって・・・ジークが許可したんでしょう?」
さっぱり要領を得ないジークの様子に、エアも不審な目を向ける。
「ちょっと、ニゲラ?」
ちょうどその時、側を通りがかったニゲラを見て、エアは声をかけた。
「なんですかあ?」
呼び止められたニゲラはいつもと変わらぬ様子でこちらを振り返る。
「実はかくかくしかじかで・・・」
事情を説明されたニゲラは、ああ、と手を叩いた。
「それでしたらあ、間違いなくジークさんの許可は貰ってますよう?ただ、思い出すとあのときジークさん、なんだか上の空っていうか、心ここにあらずって感じだったかも?」
なんでもない風にのんびりと話すニゲラに、ジークもエアも、思わず頭を抱えてしまった。
「あのねえ、それじゃ許可を得たことにはならないでしょうが。まったく・・・ジークもしっかりしてよ」
「う・・・すまん」
呆れた、という体で二人に注意を促すエアだったが、予想外にしおらしいジークの様子に眉を寄せた。普段のジークなら、開き直ってふんぞり返っていそうな物だが。
「ジーク・・・あんた、何か悪いものでも食べた?」
エアは心配そうな様子でうなだれるジークを覗き込む。心配の理由が食あたり程度だというのが、実にこの二人らしい所ではあったが。
が、予想に反してジークの口から出たのはもっと真剣な話だった。
「いや、ほら。ここんとこ姉ちゃんの事とかでゴタゴタしてるだろ?色々考えちまうことも多くてさ」
「あ・・・」
エアは自分の至らなさを恥じた。普段は国王に対してすらぞんざいさを発揮するジークだが、家族の事は何かと気にかけているのはパーティーメンバーなら誰もが知っていた。
アイヤールを巡る政争でジークの腹違いの姉であるミスティが誘拐され、其れを助けるべくジークたちが活躍したのはつい先日の事である。さらに、ミスティが見たという滅びの予知夢の話もある。
それらの事件に関わっていると思われる、宥和神アーメスの一味の事も気にかかる。
事件の全体はいまだ見えずこの先また、ミスティや他の知り合いたちが巻き込まれる可能性はけして低くは無い。
家族を巻き込みたくないジークにとって、其れは周りが思うよりずっと辛い状態なのだろう。
「その・・・ごめん」
謝るエアに、ジークは気にするな、と何時も通りに笑って見せた。
「その、元気出しなさいよね?私たちも色々協力するから」
「だから気にするなって。それより・・・」
ジークとエアの話はこれからのパーティーの行動についてへと変わってゆき。
そして、傍らにいながら会話に参加せず、ただじっと聞きいっていたニゲラの事を気に留めることは無かったのであった。
それが、数日前の出来事である
「・・・それで、どうしてこうなった?」
ジークは自分の置かれた状況が理解できず、呆然と呟いた。
疲れのせいで眠くなり、自分用にあてがわれた客間のベッドで居眠りをしていた。そこまでは良い。
だが、目が覚めたら鎖でぐるぐる巻きにされ、仲間の一人がズボンのベルトに手をかけているという、この状況はいったい何なのか?
「・・・ニゲラ?」
かろうじて動く首を精一杯伸ばして、ジークは己の股間のあたりでごそごそやっているニゲラに声をかけてみる。
「あ、ジークさんおはようございます〜」
「・・・おう」
にっこりと挨拶をされてしまい、思わず普段どおりに返してしまった。
その間もニゲラの手は止まることなく、かちゃりとベルトが外された。
その音で一気にジークの意識は覚醒した。
「って何やってんだニゲラ!!」
暴れて跳ね起きようとするが、鎖で縛り上げられた状態ではうまくいかない。
「おちついてくださいよう。せっかくジークさんに元気になって貰おうとしてるんですから」
「元気になる?」
訳がわからず問い返すジークに、ニゲラはにっこりと微笑み、頷いて見せた。
「そうですよ。ジークさんには何時もお世話になってますし。この間もカードの支払いの事で迷惑掛けちゃいましたから、そのお詫びも兼ねてますよ〜?」
にこにこ顔のまま、ニゲラは楽しそうに言うが、ジークは余計に混乱した。
「いや、カードの件は俺が悪かったから、詫びとか良いんだけどさ。元気付けるってのに、何で俺、縛られてんだ?」
「だってぇ、ジークさんを自由にしておくと勝手に動いちゃうじゃないですか。其れだと、ジークさんが自分で元気よくなっちゃうかもしれないですから。そうじゃなくて『私が』『ジークさんを』元気付けなくちゃいけないんです〜」
「いや、さっぱり解んねぇって・・・おいっ!!」
慌てるジークをよそに、ニゲラは着々と自分のやるべきことを進めていた。ベルトを解かれたズボンは、さらにボタンを外されチャックも下ろされている。
「大丈夫ですよう。ちゃーんと、男の人が『元気になる』方法は知ってます」
「元気ってそっちのことかよ!!」
ジークの叫びを尻目に、ニゲラは剥き出しになったジークのパンツに手をかけ、無造作にずり下ろした。
「わぁ・・・」
ぽろり、と剥き出しになったイチモツを見て、ニゲラは思わず感嘆の声を漏らした。
まだ完全に勃っていない状態にも拘らず、ジークのそれはかなりの大きさを示していた。
太さはニゲラが握っても指がまわらず、長さは握りこぶし二つでなお足りない。皮は完全に剥けており、エラの張りぐあい、亀頭の色艶、どれをとっても一級品と言える。
「ご立派ですねえ・・・こんな凄いの、はじめて見ましたあ・・・」
「あー、もういいだろ?これ解いて、終わりにしようぜ。今日の事は無かった事にして・・・」
はぁ、とイチモツに見惚れるニゲラと対照的に、ジークは余計に疲れた気分になってニゲラに提案した。
確かにジークは旅で行く先々で知り合った女性に声をかける。経験の方もそれなりにある。女性と仲良くするのは好きだし、ベッドを共にするのは楽しい。
だが、常に一緒にいる仲間にまで手を出すほど節操が無いわけではないし、何より最近の情勢ではそういう気分にそもそもならない。
だが、肝心のニゲラは聞く耳を持たなかった。
「だいじょうぶですよう。ちゃんと、ジークさんを元気にしてあげますからね」
「いや、そうじゃなく・・・ッ!?」
ニゲラはいつもしている皮の長手袋をするすると脱いだ。
野暮ったい長手袋の下から現れたのは、白く艶かしい、すらりと伸びた美しい指だ。
其れが、ジークのイチモツにそっと触れた。瞬間、ジークの尻から背中、頭頂部まで一気に電流が走りぬけた。
驚いて、ジークは己のイチモツと、其れを優しく握るニゲラの手を見つめた。
「うふふ、熱く、大きくなってきましたあ」
ニゲラの言うとおりだった。さっきまでまったくその気が無かったジークのイチモツは、いまやむくむくと巨大化し、女性の腕と変わらぬサイズまで勃起していた。
「・・・マジかよ」
ジーク自身、驚いていた。まだニゲラの素手で握られただけなのだ。ただ、それだけでこれほど勃起するとは。まるで、性に耐性の無い童貞だった頃のようだ。
驚くジークに構わず、イチモツに添えられたニゲラの手がそっと動き始めた。
はじめはゆっくりと幹を上下に擦り上げるように動く。上から下まで満遍なく擦り上げたかと思うと、亀頭を包み込むようにエラの下をくすぐる様になぞり、一気に根元まで下りて陰嚢を揉み解す。
裏のすじを指一本でなぞり上げ、鈴口をくりくりとこね回す。
握り方も巧みだった。撫でるように擦る時は優しく、さらりとした感触を。力強く扱き上げる時は掌全体が吸い付くようにイチモツに張り付いた。
「う・・・うあ・・・」
ニゲラの手指がイチモツの上で踊るたび、ジークの口から快楽の呻きが漏れた。
あまりの気持ちよさに意識が飛びそうになる。手で扱かれた事が無いわけでは無い。普通の性交は当然、口淫や菊門を犯したこともある。だが、どれも今の快感には及ばない。
ニゲラの手淫はまったく、別次元の気持ちよさなのだ。それは、これまでまったく経験したことの無い快感だった。
「う〜ん、ちょっと滑りが足りないかなあ?」
悶えるジークをなおも攻め立てながら、ニゲラはそっと首をかしげた。口を閉じたまま、モゴモゴとあごを動かす。そして、
「んっ・・・」
ニゲラはジークの上に被さるように身を乗り出し、ふっくらとした唇からほんの僅か、舌先を突き出した。僅かに開いたスキマから、つう、と透明な粘液が突き出した舌を伝って流れ落ちる。
そのまま舌先まで流れた唾液は、一筋の糸となって真下のジークのイチモツの先端へと落ちた。
「く・・・あっ・・・」
敏感な先端に垂れて来たニゲラの唾液は、焼けた鉄杭の如く熱くなっていたジークのイチモツにはひんやりと冷たく、其れは更なる快感としてジークの身を震わせた。
ニゲラの指がイチモツに掛かった己の唾液をそっと掬い取った。そのまま、こんどは鈴口から溢れていたジークのカウパーに触れ、二つの粘液を混ぜ合わせる。
混ざった体液は、にちゃ・・・と粘ついた音を立て、細かい気泡が透明だった粘液を白く濁らせた。
「これで、もっと元気になりますよう」
唾液をたらし終えたニゲラが、にっこりと笑い、唾液とカウパーを混ぜた自家製ローションをイチモツへとまんべんなく塗りこんだ。
ぬるぬるとした粘液に包まれたイチモツがてらてらと怪しくひかる。
再び、ニゲラの手がイチモツを握りこみ、ゆっくりと太幹を扱き始めた。
「おっ、う・・・」
最早ジークの呻きは、ただ、口から空気が漏れる音になっていた。何も考えられない。ただ、ギンギンに張り詰めたイチモツの熱さと、そこを這い回るニゲラの手指が全てだ。
「う・・ぁ・・・ゲ・・・ラぁ・・・」
ジークの口から声にならない声が漏れる。
イきたい。射精したい。思い切り噴き出したい。
だが、今のままでは足りなかった。もっと激しい動きが、根元から先端まで扱き上げ、一気に絶頂まで導いてくれる、そんな快感が必要だった。
「・・・かせ・・・て・・・っと・・・つよ・・・」
途切れ途切れに、熱に浮かされた言葉を吐く。それは哀願だった。ただ、快楽を求める浅ましい願いだった。
「はあい、じゃあ最後までイかせちゃいますね?」
ニゲラの手が速度を増す。ジークの求めるとおりに、根元から先端までグイグイと力強く扱き上げる。
「アッ、アッ、ウッ、イッ、くうッ」
馬鹿のように言葉にならない言葉を繰り返す。奥底から、熱い迸りが背中から腰、イチモツへ向けて駆け抜ける。
「じゃあ、いっぱい出してくださいねえ」
「ッうああっ!?」
ニゲラの手が最後の一擦りをした瞬間、イチモツが一気に射精した。
真っ直ぐ天めがけて吹き上がった精液は、重力に引かれてパタパタとジーク自身の腹や胸を汚した。勢いがつきすぎて顔にまで飛び散った白濁まであった。
最初の射精が終わっても、まだイチモツはビクビクと震えていた。ニゲラがそっと扱いてやると、再びビクビクと精を吐き出した。流石にはじめの其れほど勢いは無かったが、それでも大量の精液を吹き上げて、イチモツを握るニゲラの繊手へと流れ落ちた。
「うふふ、いっぱいでましたねえ」
ニゲラは嬉しそうにそういうと、ジークの精がついた己の手を眺める。そして、そっと舌を突き出し、ぺロリ、とこびりついた白濁を嘗め取った。
「どうですかあ?気持ち、よかったですか?」
「ああ・・・そうだな・・・」
自分でも信じられないほど、大量に射精した。そのせいか、射精後のけだるさもひとしおで、脳髄がしびれるような感覚だけがある。
「えへへ・・・よかったです」
「ああ・・。そうだな・・・」
ニゲラの言葉にも、ろくに頭が働かない。
「元気、でましたか?」
「ああ・・・そうだな・・・」
「あ、そうだ、お願いがあったんですけど」
「ああ・・・そうだな・・・」
「実はまた、カードの出物を見つけて其れが欲しいんですよう」
「ああ・・・そうだな・・・」
「じゃあ、PT資産の方から出させてもらっても?」
「ああ・・・そうだな・・・」
「わあい!!じゃあ、早速行って来ますねえ!!」
「ああ・・・そう・・・だ・・・?」
だんだんと頭の痺れが取れてくる。ニゲラは今、なんと言った?
「いや、ちょっと待て、ニゲラ?」
ジークが何とか首だけ持ち上げた時、すでにニゲラは手袋も嵌め、部屋を出るところだった。手には、PT資産用の財布が握られている。
「じゃあジークさん、いってきまあす!!」
ぱたん、と音を立てて扉が閉まった。残されたのは、鎖でぐるぐる巻き、股間のイチモツは丸出しでしかも己の精液にまみれたジークただ一人。
「ちょっと待てェ!?」
慌てて叫ぶが、聞いてくれるニゲラはもう居ない。
「おい!ニゲラ!!帰ってこい!!せめて鎖を解いてけよ!!おぉーい!?ニゲラぁー!?」
一人取り残された部屋に、ジークの叫びだけが空しく響くのだった。
この後、何とか鎖から抜けようとジークが七転八倒している所を、散策から帰ってきたエアに見つかりひと悶着あるのであるが・・・其れはまた別の話である。