「わたしはいつも旦那様に淫らなことをされたいと妄想している変態マゾ従者です……。  
 どうか激しくお仕置きして、旦那様のお好きなように調教してくださいませ……」  
 なんか恍惚の表情をした嫁が、ほぼ全裸な格好で首輪から伸びるリードを差し出しながら言った。  
 
 オーケイ。まずは状況を整理しよう。  
「はむぅっ……、ん、んっ。やぁぁ、舌がぁ、したがぁあばれるぅ。もっとぉ、んちゅ、もっとキス、はげしくぅ……」  
 第一に、この大絶賛欲情中のルーンフォークはオレの嫁だ。  
 頭にのっかっている獣耳形状のパーツが特徴で、乳と尻が丸々としているくせに腰や首は折れそうなほど細い。ぶっちゃけエロい体つきをしている。噂に聞く湖の女神に仕えるエルフたちにも引けを取らない生命力だ。  
「それではまず、ご奉仕させていただきます。はぁぁぁ、もうこんなに硬くて大きく……。ちゅっ、ちゅぅぅ」  
 俺たち二人は冒険者を生業している。いや、『していた』が正しいか。  
 フェンディル王国西部からアル・メナスの爪痕周辺を活動範囲に、俺たちは他数人と組んで遺跡探索やらトラコンやらで生計を立てていた。  
「はぁはぁ。はむっ、ふっ、うん。ん、ん、ん、んっ……。ぷはぁっ。えっ? はい、わかりました。胸でですね」  
 パーティーを解散した理由は複数あって、それぞれに今後の人生仕切り直せそうな貯蓄もできたし、そろそろいいかなってことで円満に別れた。そこそこの規模の蛮族部隊を倒せたってのは良い区切りになったわけだ。  
 嫁とは長いつき合いだが、リルズ様に二人の仲を宣言ご報告申し上げたのは解散後とだけ言っておく。  
 んで。ここからが本題になるわけだ。  
「ふふふ、気持ちいいですか? あぁ熱い、あんっ……。先っぽは敏感になって、んっ。感じちゃいますからぁ…」  
 俺たちは拠点の爺さんから誘いを受けて、冒険者の店を引き継ぐことにした。  
 以前から宿側の手伝いはしていたし、宛もなくさまよっていた俺たちを拾ってくれた恩義もあった。  
 店のコネクションやら経理の知識やら冒険者活動とはまた違う戦いを繰り広げ、爺さんを引退させる区切り目が見えてきて今回も勝てると確信した。  
 爺さんが一言「孫」と言うまでは。  
「あああ、やああっ……! そ、そんなに強くぅ、吸わないで、くださいませぇぇっ! おかしく、おかしくなってしまいますぅ!!」  
 嫁が店を継ぐ前に行きたいところがあると言い出した。マギテック協会にもなにやら打診して調べてもらっているらしい。  
 最初は形質遺伝型ジェネレータを貸してくれる集落を探しているのかと思ったが、出てきた答えは爪痕を越えた先、リーンシェンクの魔動機文明遺跡だった。  
「はぁ、はぁ……。こうしていると出会った頃を思い出しますね。まだ小さかった旦那様は毎晩わたしの胸をあんっ! そおぉ、こんなふうにぃぃ!」  
 しかも遺跡の守人が睨みを効かせている場所で、近づくことさえ難しい。  
 嫁は最後の長旅と言って俺に三つ指ついた。黙って付いてきてほしいと。  
 断るわけがない。逆に俺がどれだけ嫁を信頼しているか愛しているか、実演して実感させてやった。  
 
「わたしの体がいやらしいのは旦那様のせいですぅ! わたしがこんなにも変態マゾなのは旦那様に愛されたおかげですぅ! 愛してます! わたしは旦那様の愛の奴隷ですっ! ああああ、きたぁぁぁっ!!」  
 遺跡の守人との交渉は嫁が全部やった。  
 正直バレないように忍び込むしかないと思っていた俺の予想を裏切り、嫁は遺跡の探査と利用を承諾させてきた。  
 どんな魔法を使ったのか尋ねると、愛の魔法と切り返された。  
「お、おっきぃ……です! ふぁあああぁぁぁぁ、おくっ、奥まで、あ、あ、あんっ……! キス、してくら、はむぅ、んちゅー」  
 目的の遺跡はそれほど大きくなく、二人でも問題なく進むことが出来た。  
 奥にあったのはルーンフォークジェネレータらしきもの。  
 ここで嫁が背を向けてくれと言ったので素直に従う。がさごそとなにかを支度する音がして、しばし後に冒頭に戻ると。  
 シーツと毛布を重ねた寝床に、誓いのアンクレットとリード付き首輪のみの嫁。つまりはいつもの野外の準備だったわけだ。  
 じゃあ問題ない。このまま嫁を悦びで鳴かせよう。  
「ああぁぁ! 旦那様がふとくぅ、はげしっ、いいいい!!」  
 魔力との親和性を高め、体内のマナを一点に集中。攻撃力を増加させ、さらに追撃する。  
「イきますっ! イきますぅぅ! いっしょにっ! 旦那様もいっしょにぃぃぃっ……!」  
 俺の角を掴み歓喜に涙する嫁が仰け反る。柔らかな肉鞠が揺れ、ピンクの突起が天を突く。  
 痙攣する肢体を抱きしめ、彼女の最奥に愛を放つ。  
「……それでは、この遺跡の説明をいたしますね」  
 ここはルーンフォークを利用した代理出産施設。  
 病気や怪我で子供を産めなくなった女性の替わりに、ルーンフォークを母胎にする装置。  
 本来なら遺伝情報のみをルーンフォークに受け渡すが、現在にそんな技術は残っていない。  
 故に直接精を受けた彼女がジェネレータに入り、妊娠する機能を得て俺との子供を孕む。  
 産まれてくるのは人間でルーンフォークではない。純粋な愛情から産まれてくるその子は、穢れ持ちの俺とも違うはずだ。  
「お待たせいたしました旦那様。全行程、無事に完了いたしました」  
 アペンドジェネレータから出てきた嫁は、淡く頬を染め慈愛の表情で下腹部に触れる。  
 こんなにも可愛くてエロくて主思いの嫁には、是非ともお礼とお仕置きをしなくては。  
「ん、ちゅっ、うん……。愛しています。これからもずっと……」  
 
 最後に。俺がリルズ神官と知って俺たちの性別を疑ったヤツは、反省するように。  
 俺は男で、嫁は女だ。  
 違うな。  
 嫁はできた良い女だ。  
 
 
 最近、店の客層が変わってきた。  
 冒険者の店のはずが、待合いカフェに近い営業状態になってしまっている。  
 主な理由は嫁のルーンフォークが妊娠したから。俺がリルズ神官なのも手伝って、アベックや新婚カップルが押し寄せてきたからだ。  
 店主は愛の力でルーンフォークを孕ませた男とか言われ、年若い入信者にはリルズ神の奇跡を体現したと感動されている始末。  
 嫁に対しては、将来の希望の象徴だとか、明るい結婚生活、安産祈願、その他もろもろのご利益を期待しているんだとか。  
 ヘタをすれば遠路遥々リルズ本神殿から脚を伸ばす神官もいた。  
 前店主の爺さんに相談しても、どうせ一過性だと笑うだけ。逆に掻き入れ時と臨時メニューを作り出した。商売人ってのは逞しいね、まったく。  
 ルーンフォークに他種族を妊娠させることが出来るアペンドジェネレータの存在は、決して明かせない。嫁に利用を許可してくれた守人たちと固く約束しているからだ。それを思えば良いカモフラージュになってはいるんだろうが、なんか釈然としない。  
 そんなこんなで今の嫁は良妻賢母、慈愛の聖女のような扱いを受けている。  
 嫁の大きく膨らんだ腹に向かって祈る娘も居るぐらいだ。  
 尻肉の谷間が丸見えなオーバックを穿いてアナルプラグの尻尾を振りたくって俺を誘う嫁とか。野外で全裸になって四つん這いで犬の鳴き真似する嫁とか知らないからできることだよな。  
 知らないことは幸せだ。  
 それにしても、ああいったそっち方面の道具をどこから調達してくるのか。ほんと俺の嫁はどんな伝手を持っているんだか。  
 だめだ、深く考えるな。たぶんこれも知らない方が幸せなことだ。  
 この前さすがに罪悪感が増してきたのでリルズ様に懺悔したのだが。  
 良い笑顔でサムズアップするリルニカ様と、複雑な表情のリルク様を幻視した。  
     *      *  
  *     + ぐっじょぶ!  
     n ∧_∧ n  ないすらぶ!  
 + (ヨ(* ´∀`)E)  
      Y     Y    *  
 
 もうほんと、幸せ過ぎておかしくなりそうだ。どうにでもなりやがれ。  
 
 

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