―――今宵三度歌いますは、へっぽこと呼ばれる英雄の物語。  
     『至高神の猛女』と呼ばれし神官に、魔術の腕なら導師級の曲者賢者。  
     この二人の重なる契りの色語り。  
     それを取り巻く仲間たちの歌語り。  
     さて、皆様。  
     今しばらくのご静聴を。  
     そして私が無事に歌い終えることができるよう、  
     芸術神の加護をお祈りくださる事をお願い申し上げまする。―――  
 
 
※        ※        ※        ※        ※  
 
 
『最後に深くキスしたのはいつだったのか』  
『最後に固く抱かれたのはいつだったのか』  
 
――改めて考えて見ればかなり前だった気がする。  
最初の頃と違って、最近はそんなに頻繁にしている訳ではないけれど、ここまでご無沙汰  
なのは初めてだ。町にいた時は平気だったのに、依頼を受けて町を出て、急激に体の欲求  
は高まってくる。寝食を共にしているのに、二人だけで過ごす時間がまったくないのが原  
因、だと思う。宿の部屋は、大部屋か、マウナと二人。野宿時は常に仲間がそばにいる。  
こんな状態で抱いてもらうことなんて出来るはずもないし、まだ関係を知らないノリスと  
ガルガドさんが共にいるからなおさらだ。しかも、依頼が終了して町に戻る途中からクラ  
ウスさんまで合流した。それに町に戻ったところで、どこまで時間が取れるかも、いまは  
まだわからない。  
 
体が――切ない。心も切ない。  
まだ乙女だった時のように、衝動が繰り返し身体を襲ってくる。  
それにあらがえなくて、仲間の目を盗んで身を慰める。  
(足りない。もっと)  
恋人の指の動きを思い返す。  
(…やっぱりダメ。自分は自分であって、兄さんじゃない)  
快感は得られても、満たされない。  
押さえ切れなかった衝動が、心に澱のようにたまっていく。  
兄さんからもらえるのは、誰もいないところでの軽い口付けと『悪い』『俺も正直きつい』  
そんな言葉だけ。思いやりだとわかっていても、物足りなくて寂しさがつのる。  
日の光の下ではなんでもない振りをしているけど、たぶんみんな私達の変化に気がついて  
いる。私も兄さんも、どこかじりじりして、話と動きがまるでかみ合わない。こんなこと、  
今まで無かったのに。幸いそれが致命的な失敗には結びついていないけれど、これからは  
どうなるかわからない。帰るまで、私達二人の精神が持つかどうかもわからない。  
 
さて、ドウシタモノヤラ……。  
 
 
 
さて、どうしたものやら。  
 
ヒースとイリーナが二人そろってカリカリしている。それを私達に隠そうとしているけど、  
はっきりいって丸わかりだ。ちょっと恥ずかしいけれど、偶然にキスしている場面を見て  
しまったこともあるし、イリーナが隠れるように自慰をしているのも知っている。  
 
確かファンの町にいた時から、互いに忙しくてあまり話しもしてないと聞いていたから、  
依頼をこなしていたここ最近は、全然していないんだろう。ちなみにエキューやバスによ  
ると、ヒースも同じような状態らしい。依頼中はよかったけど、終了して戻る途中の今は、  
イリーナとヒースの間がぎすぎすしているのがよくわかる。いつもならあれだけ息の合っ  
た掛け合いや、戦闘中での動きのその全てがちぐはぐになっているからだ。  
まだそれがみんなの間に広がっていないからいいものの、誰も欠けること無しにファンへ  
戻れるかどうかは判らない。ノリスが死んだときみたいに、嘘みたいな状況で命を落とす  
こともある。はっきり言って、今のこの状況は私達にとってもよくない。  
……とりあえず下準備はしてあるから、後はいつこの計画を実行するかを決めるだけ。  
宿に泊まる時はお金に余裕がないと難しいし……。決行するなら野宿のときがチャンスか  
も。地図を調べてみたら、1〜2回は野宿の可能性がありそうだし。上手く誘導するとし  
ますか。もう、ヒースのやつ、少しはしっかりしなさい!あの娘に悲しそうな顔、させな  
いでよ。  
 
あーあ。私、何ヤッテルンダロウ……。  
 
 
 
あーあ。俺、何やってるんだろう。  
 
心が落ち着かなくて、いらいらしているのがよくわかる。調べ物をしていても集中しきれ  
ないし、魔術を紡ぐのもいまいち上手くいかない。原因ははっきりとわかっているけど、  
明確な解決策がどうにも見つからない。  
 
俺とイリーナの関係はバス、エキュー、マウナは知っている。しかしノリスのクソガキと  
ガルガドのおやっさん、クラウスのやつは知らないはずだ。こんな状況で時間を作って、  
イリーナだけを誘って、みんなから隠れて――と言う状況を作るのは至難の業だ。いつも  
なら強引にみんなを言いくるめることが出来るかもしれないが、はっきり言って今は到底  
無理、無理すぎる。知ってるやつらに頼んで協力を仰ぐのも、気が引ける、と言うか恥ず  
かしいからぜってーしたくない。結局解答が見つからなくて、いらいらと体の衝動だけが  
つのる。一寸した隙を見つけてイリーナと軽く唇を重ねて、幼馴染としてではなく恋人と  
して言葉を交わして。それだけでは到底抑えることが出来ない。男の生理とは言え、自分  
で慰めるのも、今となってはかなり虚しい。  
特にここ数日はイリーナとの会話もきしみ始めたし、動きもかみ合わない。俺達二人だけ  
の問題ならまだしも戦闘中は仲間の命にもかかわるわけで、正直困ったもんだ。  
……そういえば。ふと思う。  
 
『最後に深いキスをしたのはいつだったのか』  
『最後に固く抱きしめたのはイツダッタノカ』  
 
 
 
      △ ▼ △ ▼ △ ▼   
 
 
しゃらさら、水が流れる。  
さわざわ、風がなって梢をゆらす。  
かさぱき、小枝や草が、足元で鳴る。  
ぴーぴぴざっ、鳥や動物が曲を奏でる。  
ひらころ、木の葉や木の実が目の前を動いてゆく。  
 
音が世界にいっぱいだ。森の中を歩くといつもこう。町育ちのイリーナには森は優しくて、  
不思議で、少し怖いところだ。  
そんな中で、旅の仲間達とご飯を作り、食べて。  
安全が確認できれば、互いに見張りをしながら自然の中で水を浴びる。  
すべてが新鮮で、好奇心が刺激される。いつもなら、共に歩いている森に詳しいマウナや  
ヒースに色々と声をかけ、好奇心を思うがままに満たしているが、今回はそんな事をする  
気になれない。聞いたとしても、マウナのみ。  
幼馴染で兄貴分でもあり、もっとも親しい(…いろんな意味で)ヒースとはあまり話して  
いない。正直なんとも形容できない心の靄が、話しかけるのを邪魔していた。  
せっかく見つけた、水が湧き出したばかりの清らかな泉で水浴びをしているのに、身体は  
きれいになっても心までは洗い流してくれない。そんなどこか虚ろな思考のせいか、手に  
持った荷物が足りないことにまったく気がつかなかった。  
「あ、タオルとか忘れた」  
「ええ?何してんのよ……いいわ、いってきなさい」  
「ごめん、いってくる。先にもどってて。私なら大丈夫だから」  
気がついたのは、キャンプの場所に戻り始めて少したった頃。  
走っていけばすぐに泉に戻れる、と言う距離ではない。  
「暗くなってきたから気をつけてね。そうだ、ついでだからヒースの見張りしてきてよ」  
水浴びをしていた頃はまだ明るかったが、空を見上げれば太陽が沈み始め、その色が茜色  
に変化をし始めているのがわかる。  
こうなってしまえば、完全に日が沈むまでいくらもないだろう。  
「え……」  
「だってあいつ、大丈夫だからって、一人で行っちゃったでしょ。一応、ね」  
弓矢を手に、仲間達と自分の分とついでに調理用の水袋を持ったヒースの姿を思い出す。  
あの時もなぜか互いに気まずくて、少し視線を合せただけで殆ど話しをしてていない。  
 
『気をつけて戻れよ』そう言って自分達とは反対の森の中へと消えていった。  
「……忙しかったのと依頼のせいで、最近二人っきりになってない、でしょ?」  
肩に手を回し、小さな声でマウナがささやく。イリーナの顔が一気に赤く染まった。  
気まずかった理由は簡単だ。  
「…う…」  
「いってきなさい。見張りのほうはこっちで決めておくから」  
「でも、そんなの悪いし」  
「あら、別にかまわないわよ。大体もうばっちり体の関係もあるんだから今更、ねえ」  
気まずい幼馴染とは恋人同士でもあって、仲間達内にも知ってるものはいて。  
まあ平たく言えば、互いに顔を合せているのに、ここ最近全然身体を重ねていないことに  
欲求不満状態になっているのが原因と言ってもいいだろう。  
「あうあう……」  
「いいから。あんたもヒースも、見てるこっちがいらいらしてくるのよ。致命的な状態に  
 なる前に、その思いを全力でぶつけてすっきりしてきなさい!……あんた達だけの問題  
 じゃあ、ないのよ?」  
心の中に広がる不快感が、互いだけの問題ならいい。しかし、今は冒険中。一寸した事や、  
意思疎通のミスで何が起こるかわからない。マウナがイリーナの肩に回していた手を頬に  
移す。そしてきりっと捻りあげた。その顔は笑顔だが、目が笑っていない。  
「マふナ、いひゃい……目も台詞も怖ひよ…」  
「イ・リー・ナ」  
彼女の目に力が入る。ランプの明かりの中、その光を反射して尋常ではない迫力がある。  
「はい、いっへひまふ…」  
その眼光に耐え切れず、イリーナが答えを返す。やっと手がはずれて自由になった。  
捻られて、赤くなった頬をなでる。  
 
「よし、行ってらっしゃい。私達のことは気にしないでね。じゃ、ごゆっくり〜」  
マウナが後ろを向いて手をふると、すぐにその姿と手にしたランプの光は木々の間に消え  
ていった。  
「……どこぞのやり手婆の台詞ですか」  
ひとつため息をつくと、元来た方向へと戻って行く。  
イリーナの頬は痛みとは関係無しに赤く染まり、瞳はかすかに潤んでいる。あれだけ澱ん  
でいた不快感が嘘のように、心は晴れやかな期待で弾んでいた。  
 
 
◇◆◇  
 
 
木々の間を抜けると、一気に視界が開く。  
「ほお……」  
思わずその光景にため息が漏れた。  
林の中にぽっかり空いた広場。  
その中央にそれなりの大きさの泉があり、かなりの水を湛えていた。  
自然に組まれた砂と石と岩の間をすり抜け、水がせせらぎとなって、森の間に消えている。  
その音が葉がこすれるざわめきと上手く調和していた。  
(こりゃあいつらが喜んでいたわけだ)  
着替え類の入った荷物を手近な木のそばに下ろし、ゆっくりと泉へ足を運ぶ。その透明度  
はかなり高い。それほど深くはない底のほうまでランタンの光をかざせば見えるぐらいだ。  
腕にいくつか抱えたままだった水袋の口を一つ開けると、そっと水中へと沈めた。湧き上  
がったばかりの水は少し冷たい。それなりの気温とあいまって、水浴びをするには絶好の  
コンディションだろう。こぷこぷと音がして、中へと新鮮な水が入っていく。満杯になっ  
たのを確認し、次々と空の水袋に水をつめていった。  
ざあっと風が森を走る。さわさわ、ざわざわと大きく音がこだました。  
この巻き込まれそうなほどの音が懐かしい。  
 
森の音と空気は自分の故郷を思い出させる。幼い頃から弓を常に持ち、父親と兄について  
猟師としての技術を自分に叩き込んだものだ。自分にとって庭と同義であった森を離れ、  
石畳に覆われた都会に出てから、もう何年になるだろう。時折あの頃に戻ってみたくなる。  
とはいっても、少しだけ感傷に浸ってみているだけだ。魔術師で冒険者という今の現実を  
否定する気はかけらもない。むしろ、自分から望んだ人生なのだから、いけるところまで  
いってみようと思っている。  
……いまだに『好き』と言っていない、幼馴染と共に、だ。  
そんなことを考えているうちに、すべての袋に水をつめ終わる。ギュっとふたを閉めて漏  
れないかどうかを確認する。荷物のそばに戻ってまとめて置こうとしたところで、自然の  
中には似つかわしくないものが目に入ってきた。  
「ん…?こりゃあ…」  
見慣れた袋が地面へと置きっ放しになっている。  
それを無造作に持ち上げると、すぐに至高神の紋章が目に入った。こんな袋を持っている  
可能性があるのは、自分を除けば仲間内ではただ一人。  
「……イリーナのやつ。忘れやがったな…」  
そう言葉にして、ため息をつく。正直ここ数日はまともに話していないため若干気が重い。  
(……まあ、いいか。声をかけるいいチャンスかもしれん)  
そう思い直し、重さを振り切る。  
戻ってから渡そうと、水袋と一緒に自分の荷物のそばに置いた。  
とりあえず水浴びをしようか、と羽織っていた上着を脱ぎ、ズボンを緩めかける。  
突然ザッと草を掻き分ける音がした。  
(チッ…皮鎧はずす前でよかったやら、悪かったやら)  
とっさに手を伸ばして弓と矢を手につかみ、有効そうな魔法も吟味する。  
矢を音の方向へつがえかけると同時に、ランタンの光の中へ白い塊が飛び込んできた。  
「イリーナ?」  
白いファリスの神官服とマントを翻した、突然の乱入者の姿を確認する。  
「うん。あ、私との練習意外で弓をつがえてるの、久しぶりに見た気がする〜」  
物珍しそう、かつ危機感無しの言葉に、腕から力が抜けて、弓を手放す。  
 
なぜ、先ほどマウナと仲間の元に戻ったはずの妹分がいるのか、どうにも理解できない。  
考え込み、言葉を失ったヒースを見て、あっさりとイリーナが解答を言葉にした。  
「マウナから、兄さんの見張りするように、言われました」  
「……あの野郎…イヤ、ヤロウジャナイガ……」  
マウナの言葉の意図を一瞬で読み取り、思わず口調が棒読み状態になる。次がトドメ。  
「『ごゆっくり』だって」  
照れたように手のひらを自身の頬に当て、明るい声でイリーナがさらっと続ける。  
「!!あんの貧乏性守銭奴元赤貧半分エルフー!!どこぞのやり手婆じゃ―――!!!」  
ヒースの雄叫びが、夜の星明りの下で響いた。  
先ほどのイリーナとまったく同じ(大量の罵倒が追加されているが)ことを言っている。  
以前自分がマウナとクラウスを引っ付けようと、なんだかんだしていたのはきっちり棚に  
上げていた。  
「……えーと、見張り当番については、私達抜きで決めとくから、だって」  
「もういい。オレサマ、なんだかどっと疲れた気分だ……」  
背中でそばの木に寄りかかる。片手をひらひらと振り、額に押し当てた。  
仲間に気を使われて、ここ数日のイラついていた自分が馬鹿みたいだ。あんなにぎすぎす  
していたイリーナとの会話もいつもの通り。あっさりと元に戻っている。  
口調と、今の状況のせいかもしれない。  
 
白いマントを肩から落とし、腰に帯びていた剣をはずして、イリーナが歩み寄る。  
木に寄りかかったヒースに抱きつき、その背中が強く木に押し付けられた。  
「……なんだか、久しぶりだね。二人っきりなの」  
声にわずかな艶が混じる。こうなれば、することは一つ。  
「そうだな。まあちょいと歩けばあいつらがいる訳だが……ま、二人だけだな」  
ヒースも腕をその小さい肩に回し、自分を見上げる顔に手を添える。どちらからとも無く  
目を閉じ、あっさりと唇が重なった。  
それはこれまでの軽いものではなく、互いを求める深いものだった。  
 
◇◆◇  
 
イリーナと分かれたマウナは、少し離れたところから聞こえたヒースの声に、今来た木々  
の間を振り返った。  
「なに言ってんのよ。自分のこと、棚に上げまくってさ」  
呆れて思わず言葉がこぼれる。義両親がいなくなった時にされたことは忘れていない。仕  
返しもかねて、そんな言葉と状況を作った訳で、意図通りになったと言えよう。少しだけ  
溜飲が下がって、にんまりと微笑んだ。  
 
そんなこんなで歩くうちに、すぐにキャンプを張った所に戻ってくる。  
「マウナー、お帰り。あれ、イリーナは?」  
炎の前で出迎えたのはノリス一人。棒切れで薪を突っつき、炎が変化する様子を楽しんで  
いるようだった。  
「忘れ物。とりにいくって言うから、ついでにヒースの見張りをお願いしといたわ」  
一応最近合流したガルガドとノリスは、まだあの二人の関係を知らないので、表面上の理  
由でごまかす。さっきのヒースの叫び声は聞こえていたはずだが、その事についての突っ  
込みは特になかった。ノリスはマウナのそんな言葉を聴きながら、焚き火とは別におこし、  
夕食が終わった今は小さくしてある調理用の火からやかんを下ろす。  
「ふーん。そっか。はい」  
そういって差し出された彼の手には、湯気を立てるカップ。ほのかないい匂いがあたりへ  
と漂う。  
「ん?」  
「お茶。水浴びで体、少し冷えたでしょ」  
確かにその通り。さほど寒い季節ではないとは言え、湧き出てからさほどたっていない泉  
の水は冷たい。  
 
「あら、ありがと。いただくね。…ねえ、みんなは?」  
精神的にも成長したのか、少しだけ気が利くようになったノリスに感心しながら、この場  
に見えない仲間達のことを尋ねた。  
「もう少し木の枝がほしいからって、みんなとりに言ってる。じゃんけんで負けた、ボク  
 が留守番」  
手を開いて、暇そうにひらひらと動かす。  
「そう」  
「もうすぐで戻ってくると思うよ」  
「…そうね。みんなの足音が聞こえてる」  
注意を周辺の森へ向けるとかすかに下生えを書き分け、踏みしめる音が四方八方から響い  
ている。其々別の方向へ向かった仲間達だろう。  
「さすが猟師として鍛えてるだけあるね」  
「ほめても何にも出ないわよ」  
「ちぇー、ひどいや」  
ノリスの言葉に笑う。唇を突き出し、すねた表情を作っていたノリスも、すぐに相好をく  
ずして笑い出す。  
笑い声が、何事かと急いで戻ってくる仲間を尻目に、日が落ちかけた空へと消えていった。  
 
 
◇◆◇  
 
 
『いつもと違う』  
違和感が付きまとう。予感とも言ってもいいだろう。  
重ねた唇の柔らかさ。絡む舌の熱さ。布越しの体と鼓動の激しさ。  
どれも変わりはない。よく知っているイリーナのものだ。  
なのに、何かが違う。その原因がつかめなくて、きつく身体を抱きしめながらも、違和感  
からくる困惑が心の中を回る。  
胸に当てられていたイリーナの手が下がる。普段はないその動きに、ちりちりとした直感  
がひらめいた。唇を離しウデから力を抜くと同時に、緩めていたズボンの中へイリーナの  
手が入り込む。その小さい手はすぐに分身を探り当て、優しくなで上げた。  
「うぁ!」  
ぞくりと背筋にしびれるような感覚が走りぬけ、ヒースの両足から力が抜けそうになる。  
ずり落ちそうになるのを何とか食い止め、妹分の腕を掴んだ。  
イリーナがヒースの胸板に頭を押し付け、動けないようにして、反対の手でズボンを下ろ  
す。弾かれたように、モノが外へとこぼれ出した。  
「…あ、キスしかしてないのに……」  
そうつぶやいて、半ば立ち上がりかけた分身に指を絡める。手のひら全体を使って穏やか  
に揉みしだくと、すぐに手の中のものは熱く脈打ち、徐々に硬くなってゆく。  
「ふふ……熱くて、硬い…」  
イリーナの口から、妖しい笑いが漏れた。快感とは別の刺激が、心に響く。  
「や、やめっ!……ふ、くぁ!――っ!」  
静止しようと手を伸ばすが、それよりも先に強く握りこまれ、その快感と痛みに負けて、  
何も出来なくなってしまった。  
 
きゅっと、熱いものを握り絞める。  
(うわ……これが、私の中に…?)  
自分の怪力を自覚しているから、力が入り過ぎないよう、慎重に。  
(あ、こんな風に、大きくなるんだ…初めてみた)  
触るたびに硬度を増す幹を強く弱くすり上げる。  
(えっと、どうかな?こんな感じ、だったよね……)  
時折先端部や袋の部分を掠めると、それだけでびくぴくと反応するのが面白い。  
(すごい。震えてる。私も…どきどきする)  
指で輪を作ってキュッと上下にしごきあげ、先端を指先で爪を立てない程度に軽く掻く。  
(痛いのかな?先から…何か出てきてる…)  
先端部のふくらみと、幹と繋ぎ目部分をくすぐり、裏筋の部分をなで上げて、攻め立てる。  
(兄さんの声、苦しそう……。やっぱり私じゃあ…ダメ、なのかな……)  
 
ヒースとしては、自分が感じるポイントを的確に抑えられ、気持ちよさにうめくことしか  
出来ない。今までの交わりの中で、イリーナが手でしてくれたことは無い。と言うより、  
させたことはない。  
なのに、不器用ながらもなぜここまで出来るのか、不思議でしかた無かった。  
快感で切れ切れになる思考を無理やり繋ぎ止め、無理矢理働かせて考える。  
―――そして、ある一つの結論に行き着いた。  
「…はぁ…あぅ…イ、イリーナ…お前…、もしかして……」  
「……ダメなの?気持ちよく、ないの?」  
悲しそうにつぶやく声。――違う――そう叫びたい。  
「う…ひあ……い、イヤ、それは、ない。すごく……」  
なのに言葉が紡げない。快感に押し流される。  
「前兄さんがしてくれた時とできるだけ同じようにしてるのに…」  
イリーナがもらした言葉が、自分の解答と一致した。  
(こいつ!覚えてやがった!!)  
以前、性別が入れ替わったとき、イリーナの陰茎を手で攻めてみたことがある。  
その時はあくまで自分が感じるポイントを優先的に刺激した。  
(何て、やつだよ…。くそ、こんなことになるとは…、不覚、だな…)  
その時のの動きを覚えていて、今はそれをトレースするように動いている、と言う訳だ。  
「ねえ、兄さん?」  
返ってこない答えに不安を感じたのか、イリーナの手の動きが止まる。前髪によって隠さ  
れた表情を伺った。  
「ハァ…ハァ…」  
止まってしまった刺激を求め、ヒースの呼吸が荒くなる。返事の声が出てこない。前髪の  
隙間から見えるイリーナの表情は、不安そうな子供のそれ。  
何とか安心させようと、その頭に手を沿え、ゆっくりとなでた。  
 
「あ……」  
「…わるい。大丈夫だ…。その…すごくイイから、続けてくれ……頼む」  
顔を上気させ、イリーナが笑う。行為とは正反対の純粋な笑みが、妹分にこんなことをさ  
せているという背徳感を刺激する。  
(――何で後ろめたくなってるんだよ…。イリーナは俺の……恋人だろ?大切なんだろ?  
 大好きなんだろ?ならしっかりしろ。俺様!――ヒースクリフ・セイバーヘーゲン!!)  
絶対に口に出さない言葉をあえて考え、己を叱咤する。崩れかけた理性をつなぎとめる。  
何とか心を落ち着け、少しでも平静に戻そうとする。  
「よかった……。ン…ちゅ…」  
「ぁひゃあ!!」  
急に感じる強い、それまでとは明らかに違う刺激に、思わず奇妙な叫び声が喉から出た。  
(熱い、熱、い…あ、つい……ア、ツ、イ―――)  
何とか流されまいとしていた心は、あっさりと堕ちていった。  
 
耳に湿った音が響く。同時に下半身から、熱い刺激が脳髄を駆け抜ける。  
パクパクと何も出来ずに口を開閉し、何とか呼吸する。そんな姿はみっともないのは承知  
していても、それ以外になにも出来ない。閉じそうになる目を無理やり開ける。  
 
優しくついばむ唇。  
舐めるたびに赤く踊る舌。  
猛りを愛しそうにくわえ込む表情。  
視覚からくる情報はそれ。  
 
柔らかい唇の感触。  
自在に動く少しざらつく舌先。  
敏感な部分に熱く絡みつく口腔内。  
触覚からくる情報はこれ。  
 
吸い付く音。  
舐めるたびに混じる唾液と空気。  
動くたびにつく苦しそうで嬉しそうな吐息。  
聴覚からくる情報はそれ。  
 
視覚・触覚・聴覚が一気に刺激された。  
 
混乱する。翻弄される。巻き込まれる。  
戻れない。止められない。止める訳、ない。  
「はぁ…ぁ……ふゎ…ひ、ひゃ…はぁ……い、いりーな……」  
殆ど声が出ない。荒い呼吸と、かろうじて搾り出す妹分の名前。はじめこそイリーナをな  
でていたはずの手は、いつの間にやらその頭を抱え込み、誘導するように動かしていた。  
それに素直に従う幼馴染。時折喉の奥に当たるのか、軽く咳き込みむせているが、その息  
の動きも快感に変わる。  
イリーナの秘所とはまた違う快楽にのめりこんだ。  
 
くわえ込んだまま舌を何とか使って、いつも自分の中に入ってくるヒースのモノを舐める。  
はじめに少しだけあった抵抗感は今はかけらも残っていない。  
久しぶりの性行為、屋外。  
いつもとは違う状況が自分の恥じらいを飛ばしているのかもしれない。  
そう、思う。  
自分の頭を抱え込み、動かすヒースの腕。  
「ん、うあ……ち…ぷちゅ…んぐ!…」  
動き始めてすぐこそついて行けずに、何度も苦しくなったけど、今はもう大丈夫。  
その動きに合せて、タイミングをはかって、兄貴分を気持ちよくすることが出来る。  
それが、純粋に嬉しい。  
いつも気持ちよくしてもらっているから、こういうときに返したい。  
好きだから。ヒース兄さんが、すきだから。  
「――ちゅぐ…んちゅ…ぷあ、はぁ……む、ちゃ…ぷ…」  
大きくモノが波打った。  
いつもは体の中で感じている動き。  
幼馴染が、イク瞬間。  
 
もう、耐えられない。こみ上げてきていた射精感が、押さえ込めずに膨れ上がる。  
「!ダメだ!」  
ようやく言葉が出てきた。叫ぶ。  
妹分の頭を抑えていた腕を、かすかに残っていた理性で、はずす方向へと力をこめた。  
「!!」  
外れない。イリーナの押さえ込む力のほうが強い。  
次の瞬間、こらえきれずに、くわえ込んだままの口の中へと放っていた。  
「…む……ぅんん……んー!」  
喉の奥へと勢い好く放たれ、苦しそうな表情だ。射精時の快感で、腰が砕けそうになるの  
を何とか抑えて、再び腕に力をこめる。今度は、思っていたよりもあっけなく唇が陰茎か  
ら外れる。最後にとんだ精液が、わずかにその顔と首筋を白く染め、粘り気を持って身体  
を伝い落ちていった。  
 
イリーナから力が抜ける。それによって木に押さえつけられていたヒースの体がイリーナ  
と共にずるずると崩れ落ち、二人そろって地面へとぺたりと座り込む。呼吸が荒い。  
「……はっ、はっ…イリーナ、お前…!」  
「ん、ふ……ぅぅ…」  
目の前にいるイリーナが苦しそうにむせている。口を手で押さえ、その間からは、今しが  
た自分が放ったばかりの精液が零れ落ち、白い筋を作っている。それを見て、慌てて近く  
にあったはずの荷物を手繰り寄せ、中から布を引っ張り出した。  
「おい、早く吐き出せ!」  
布を使って、その顔と身体を伝っている精液を拭い取る。そのままイリーナの手をはずし、  
吐かせようとするが、イリーナは頑として手をはずさない。それどころか、涙目になりな  
がら首を振って、ヒースの手から逃れようとする。ゆっくりと喉が動き始めて、口の中に  
あるものを嚥下してゆく。信じられない光景に、ヒースはそれを呆然と見つめることしか  
出来ない。やがてすべてのものが奥へ消え、ゆっくりと手を離した。二度三度、軽く咳き  
込む。その音にわれに返り、改めて口の周りと、白に染まったその手をぬぐった。  
「なんてこと、するんだよ。お前さんは……」  
「けほ……そう、したかったんだもん……」  
目じりに涙をためて、言葉を紡ぐ。粘り気のある液体を無理やりに流し込んだせいもあっ  
て、とても苦しそうだ。  
 
荷物を引き寄せたせいで、手元に転がってきていた水袋を取り上げて、その口をあけた。  
「…口、ゆすげ」  
ずいっとイリーナの口元に差し出す。  
「…イヤです」  
そう言って口腔内で舌を動かし、まだわずかに残っていたものをこそげて唾液に混ぜ込む  
と喉へと落とす。  
「あのなあ!」  
そんな姿をわずかながらに愛しいと思うと同時に、ただひたすらに呆れて、叫ぶ。  
「これだって、兄さんだもの…ん…」  
イリーナは自分の目の前で、ぼんやりとした目つきのまま、自分の手を愛しそうに舐める。  
少しだけ顔をしかめるが、すぐに恍惚とした表情に取って代わられた。正直妹分のあまり  
の変貌振りと強引さに、射精後の虚脱感もあいまって、完全においていかれたような気分  
になる。  
「……はあ…仕方がない」  
差し出していた水袋を戻し、イリーナを抱き寄せた。あっけなく、その身体が胸元へと入  
ってくる。水袋に口をつけて水を含むと、半開きになっている唇へと口付けた。すぐに、  
イリーナの口の中へ舌をいれ、水を流し込む。舌から独特の生臭さを持つ味が広がるが、  
少し眉根を寄せただけで、唇を離すことはしない。穏やかに舌を動かし、その中を洗う。  
 
唇を離すと、ゆっくりのイリーナがその水を飲みこんでいった。  
「だから、吐き出せというに」  
「ん、別に、平気だから……」  
「俺がいやだというか、見てられん。大体、あんなモン飲むな。マジで」  
口の中へと広がった自分自身の味に顔をしかめる。正直、その味は不快なものだ。そんな  
のをこの妹分が飲み込んだのだ、と思うと心穏やかではいられない。  
「むぅ…」  
「不満そうだな」  
「そうですか?」  
きゅっと眉間をよせて、唇を突き出す。水と唾液のせいで艶やかに光っている。  
「そうだ」  
「……したいからしたの。兄さんの意思とはかんけいない」  
「だーかーらー」  
「いいの。……もしかして、今日はもう終わりですか?」  
イリーナの唇が妖艶な笑みを形どる。  
いつもに比べて挑戦的な表情に口調。  
普段は昔のまま、子供な幼馴染の妹分に“大人の女”を感じるのはこんな時。  
「…んな訳ないに決まってるだろ。一体どれくらいぶりだと思ってるんだ」  
そして“大人の女”にしたのは自分。  
思わず強い語調で応じてしまう。帰ってきたのは、期待に満ち溢れた視線と笑い。  
「ふふ、じゃあ…」  
「続き、するぞ」  
そう言ってスカートへ手を伸ばす。ウエストのホックに手をかけて、…やめた。  
「兄さん?」  
止まった腕に、訝しげな声を上げる。それを口付けることであっさりと封じ込め、改めて  
スカートの中に手を伸ばした。下着を探り当て、布地の間に指を差し込む。スリットに指  
を滑らすと、既にそこは、いつもの愛撫をした時と同じような状態になっていた。  
 
 
◇◆◇  
 
 
ヒースとイリーナの二人が欠けている中、温かいお茶を飲みつつ順番を決める。  
 
とりあえず、二人組みの計四組。  
トラブルがあってもすぐに対応できるように、前衛+後衛が原則。  
回復役は分散させ…たい。  
猟師としての腕を持っている三人はばらばらに。  
エキューがマウナと組みたがるが、暗闇をある程度見通せるものを分散させる為、却下。  
(どちらかと言うと、後々のトラブルを避ける為、と言うのが実質の理由)  
エキューとクラウスは別々。(理由は言わずもがな)  
帰ってこない二人は、自動的にラスト。(マウナが強行突破)  
 
と言う訳で、意外とすっきり順番は決まった。  
まあ今は日が落ちてまだ時間がたっていない為、二番手、三番手になった四人も毛布を身  
体に巻きつけつつ、話に興じている。  
 
その話が少し途切れたところを見計らって、ガルガドが重そうに口を開いた。  
「のう、マウナ。あの二人はいつからああなったんじゃ?」  
「だよねー。やっぱりガルガドも気づいてたんだ。んで、いつごろ?」  
能天気な口調のノリスが続ける。思案気なガルガドと違い、その表情は実にあっけらかん  
としたものだ。  
「!げほ、ごほっ!」  
ガルガドとノリスからの突然の質問に、飲み込みかけたお茶が気管へと入り、むせる。  
慌てて、その背をさするクラウス。  
「うあー……死ぬかと思った。ありがとう、クラウスさん」  
今一歩間に合わなかったエキューが灼熱の視線でその手をにらむ。  
「タイミングが悪かったか。すまん」  
「けほ…ん…ううん、いいんだけど…気がついてた?二人とも」  
コップをおいてひざを抱える。顔がかすかに赤い。それは炎の照り返しのせいだけじゃない。  
「もちろん。だって、前と全然違うじゃん」  
「だの。普段は変わらないように見えるが……」  
「確かにそうですね。一寸したときの雰囲気とかが、こう…ね」  
さほど長い時を共に過ごしていないはずクラウスからも、言葉が出てくる。  
既に知っている仲間達からは判らなくても、知らないが故に見えている側面があるのかも  
知れない。  
「クラウスさんまで…。――そうね」  
そうつぶやいて、黙っている残り二人に視線を送る。  
 
リュートで【レストア・メンタルパワー】(彼には使えません)…ちっくな曲を奏でていた  
バスと、クラウスをじと目でにらみ続けるエキューの表情が変わる。一つの炎を囲む仲間  
内から感情が消え、すっと空気が静まり返った。  
その中を、エキューが慎重に言葉を選びながら口火を切る。  
「――僕達がパーティーを組んで、ラムリアースへの護送を終了させたあと」  
「…ノリスの入れ替わり騒動の少し前、依頼を少しだけ休んでいた時ですな」  
「まだ、5人で依頼をこなしていた頃ね…」  
「一寸した勝負から、大きく話は転がった」  
「それまでは、ヒースとイリーナの関係はただの幼馴染だったけど…」  
「あのときの勝負や入れ替わり時の歌、すでに出来ていますが……どうしますかな?」  
歌うように、マウナにエキュー、そして最後にバスが言葉をつないでいく。  
「……それは子供が聞くのはまずいものかの」  
困ったようなガルガドの言葉。それに応じるバスの声。  
「ええ、まあ。一応肝心な部分はぼかした、昼間に歌っても大丈夫なのもありますが…」  
ろんっとリュートをかき鳴らす。  
「別に問題は無いでしょう。今は夜。皆もわかっている。色語りも知れませんが――」  
「――それもまた一興、と言うところかしら」  
間を持たせた語尾を、マウナが引き継ぐ。  
「そう言う事です」  
 
「だね。別によくある話だし」  
「ほんと。よくある話だね。傭兵仲間からよく聞いた」  
「まあ、こんな冒険者家業をしていれば…自然と仲間内でそう言う話になりますね。俺の  
 グループは男所帯ですし」  
「ま、どちらでもいい。バスの好きにせい。ワシとて知りたいのは同じだ」  
「ならば、皆、OKとのことですな」  
夜の空へ、バスの低い声が朗々と響く。その言葉を止めるものは誰もいない。皆思い思い  
の体制でいる。  
「では、まずは前奏曲から『賭け事の夜』へとはじめるといたしましょう……」  
しっとりとした、それでいて少しだけ切なげなリュートの響きと歌声が、木々の間をこだ  
まする。  
それは少し離れた場所からかすかに聞こえる音をかき消す。  
過去の艶話と、現在の睦み事。その二つが重なり合う。  
 
 
◇◆◇  
 
 
イリーナの秘裂に当てた指を動かすたびに、蜜が零れ落ち、手と下着を濡らしていく。  
その量は殆ど愛撫なんてしていないのに、いつもより多いかもと思えるほどだ。  
「うわ……俺を攻めて、感じてたのか?」  
言葉のかわりに、その頭がこくりと縦に動く。  
「……だって、兄さんとするの、久しぶりだし、外だし」  
 
先ほどまでとはうって変わって、恥じらいで潤んだ瞳。  
「確かにな。イヤ、お前さんの変わりっぷり…というかあんまりに積極的な様子に、俺様  
 も密かに興奮はしていたが…。やっぱりすごい」  
気持ちよさで上気した頬。  
「それに、私が兄さんを気持ちよく出来てるの、嬉しかったんだもん」  
本音を紡ぎだす、果物のように瑞々しい唇。  
「……俺以外に言うなよ、そんな事」  
そのすべてが愛しくて、しょうがない。  
「えっ?」  
「だー!かわいくて仕方が無いんだよ、そんな事言われたら!」  
他の男に渡したくない、そんな独占欲。  
「ヒース兄さん以外には言わないよ。言う訳ないよ」  
大切な“妹”だったはずのイリーナに、こんなことを感じてしまう自分が嘘みたいだ。  
「ならよし」  
驚きで止まってしまっていた指を、再び動かす。とろとろと粘り気のある液体が次から次  
へと湧き出してきた。あっという間に指先に広がってゆき、スカートへと落ちそうになる。  
「あ。汚れ、ちま……う」  
下半身を覆うミニスカートを捲り上げ、…その中から現れた下着に、目を奪われた。  
「……あの、へん、かな?」  
恥ずかしそうな声が聞こえる。でもその声は近くて遠い。  
 
今、目の前に見えるのは、白を基調とした下着。  
いつも見ているシンプルなものより数段かわいらしく、気合が入ったものだった。  
指先に触れる布地の手触りはさらさらして、触り心地がとてもいい。両脇を紐で結ぶ形の  
ため、下半身を覆っている部分は少ない。その三角形の少ない布地の表面には、高価そう  
な細かいレースとフリルが控えめに散らされていた。  
白の布地とバランスよく組み合わされた淡いピンクの布が、その上品さを更に引き立てて  
いる。中央上部にちょこんと付けられた小さい花の飾りが愛らしい。  
下半身の肌がいつもより多く露出し、繊細な花模様が編みこまれた白のレース部分からも、  
うっすらとその色が透けているのに、下品さはまったくない。むしろその色合いと丁寧に  
仕立てられた装飾が、清楚さと気品の両方をかもし出していた。  
「あのね、その。こっちも、みて、欲しいの……」  
イリーナの腕が上着の神官服を恥ずかしそうにたくし上げてゆく。  
「え……うぁ……」  
出てきたのは、下とおそろいの胸当て。  
おそろいな訳だから、やっぱり白とピンクとレースとフリルで上品に彩られている。  
健康的に日焼けしている腕や首筋とは違って、白いままの肌に溶け込むように、イリーナ  
の控えめな胸を包み込んでいた。中央で深く切れ込み、そこに付けられている花飾りが、  
わずかに出来たふくらみの谷間を強調している。  
下半分は布地。上半分は下とおそろいの花模様を編みこんだレースで構成されていた。  
頂が布地を押し上げているのが見える。透けない布地に上手く覆われて、頂の色を見る事  
がかなわないのがもどかしい。そのくせ、レースはその周りぎりぎりのところまで来てい  
るのだから、たまらない。ただひたすら興奮をあおるだけだ。  
イリーナの呼吸と鼓動で胸が上下すると、その度にランプの赤い光を反射して、艶やかな  
光沢をヒースの視線に返していた。  
 
下着のかわいさと、それを身に着けている状態の色っぽさのギャップに意識がふわふわと  
上ってゆく。しかもそれがイリーナだと言う事実に、くらくらとする。  
「あ、いや…その……」  
素直な言葉が出てこない。イリーナの恥ずかしそうな視線を感じながらも、目を離せない。  
「……今日はたまたま、だよ。マウナに、言われて、この間買ったんだけど……。私は、  
 恥ずかしいし、普段、つかうのにはちょっと…だったから。…次に兄さんとする時まで、  
 つけるつもりは、なかったん、だけど…。――あ、もしかして……」  
おずおずと理由を紡ぐうちに、何かに思い当たったように言葉を切る。  
「う、あ…マウナのやつ……ここまで計算するとは…」  
イリーナの言葉に、珍しく計算されつくしたマウナの行動と先読みに思い至る。  
(くそ。今回はあいつに振り回されちまってるじゃないか)  
「あう…やっぱり」  
イリーナとしても、このかなり高価な下着(セットモノ)はマウナと店員に見立てられ、  
半ば強引に買わされた様な物だったし、今日身に付けて(もちろんセットで)みるように、  
と並々ならぬほどに強く進めたのもマウナだ。よく考えて見れば簡単に見抜けたかもしれ  
ない。どうにもここ最近イラついていたこともあって、そんなたくらみに気がつかなかっ  
たのが、ちょっと情けない。思わずため息をついてしまった。  
 
「あーちなみに、その、若干大人っぽいかもしれんが、似合ってる、ぞ」  
「…よかった。『似合わない』なんていわれたら、どうしようかと思った」  
「俺はそんなに信用ないか?ンな事言う訳ないだろ」  
「だって普段が普段だし、ねえ。お願いですから普段の言動を省みてください!」  
「うるせ!……どうする?俺が脱がせてもいいのか、それとも自分ではずすか?」  
真っ赤になっているイリーナの顔が、その質問で夕日よりもまだ赤く染まる。  
もごもごと喉の奥に飲み込んでいる言葉。考えては消し浮かんでは消しを繰り返していた  
言葉が、少したってようやく音になった。  
「……お願い…します。ヒース兄さんの為の、モノだし…」  
そういって、スカートを持っていたヒースの手をとり、サイドの紐へと触れされる。  
上着を胸の上で固定し、自らのスカートは端を口に咥えて、下着を空気中に晒している。  
「あ、アア…。……じゃあ、ほどくぞ。――イインダナ」  
イリーナの下着を取るなんて、今まで何回もしたことだ。なのにヒースの手はいつにない  
緊張で、軽く震えた。しかも『自分のため』と来たものだ。口の中が干上がり、からから  
になっているのがわかる。痛いくらいに乾いた唇を舌でわずかに潤して、そっと蝶結びに  
なった紐の端を引っ張った。  
驚くほどあっけなく、外れてゆく。  
視線が下着から動かせない。  
二本に分かれた紐を落として、反対側。  
こちらも簡単に解けた。  
つまんだままの紐を、そっと自分のほうへと引っ張る。少しだけ抵抗を感じるが、すぐに  
布地がイリーナの下から抜けてくる。蜜で濡れた栗色の和毛とその隙間から、先ほどから  
ヒースによってかき回され綻んだスリットと、そこからしどしどと透明な雫がこぼれてい  
る光景が晒された。  
 
でもそれは一瞬のこと。イリーナの手が動いて秘裂を覆い隠す。  
「…おい……」  
思わず落胆の声が出てしまう。実際ここまで来ていて隠されてしまっては生殺しも同然だ。  
スカートから口を離し、すぐに首をふって、応じるイリーナ。  
体を少しだけずらし、スカートが落ちた状態でも覆った手がヒースに見えるようにする。  
「…ううん、違うの……」  
そして、そうつぶやいて、指で自らのスリットを割り開く。くぱりとかすかに音を湿った  
水音を立てて、女としての場所がヒースの目の前に余すことなく現れた。  
目がその部分に釘付けになる。  
軽くひくつき、蜜で艶やかに湿っている。  
なぜ、いきなりそんなことをしたのか理解できなくても、イリーナが自分を誘っている事  
だけは、はっきりとわかる。それを否定する理由はどこにも無かった。  
「ン……んぁ…」  
恥ずかしさから、イリーナの口から吐息とも、ため息ともつかないものが漏れる。それが  
ヒースの前髪をわずかに揺らすが、じっと、そこを息をかみ殺して見つめ続けた。しだい  
にイリーナの呼吸が荒くなる。それをヒースに悟られまいと、反対の手で口を押さえるが、  
すぐに離してしまう。  
 
「兄さん……んふぅ…く――」  
何もしてくれない幼馴染に耐えかねて、唇から離れた手が胸当ての中に入り込み、もどか  
しげに、少しづつふくらみの上を這い回りはじめた。熱く潤んだ秘所をさらしている指も、  
物足りなそうにと震える。そこまでを確認して、そっと敏感な部分へ息を吹きかけた。  
「ひゃあぁ!」  
突然の刺激に、イリーナの背筋が跳ねる。それでも胸をまさぐる指は止まらない。呼び水  
となったのか、よりいっそう激しく動き始める。顔を上げてそんな妹分の苦しそうな表情  
と、求めるようにとがらせた唇にキスを落とし、同時にスリットに手を這わせて、体の中  
へと指を差し入れた。すでに十分に濡れたそこは、あっさりと侵入を受け入れる。  
重なったままの唇の隙間から、高い声を感じた。ほぐすように動かすと、そこはゆるゆる  
と広がってゆき、指を増やすのも容易だ。二本の指で、中をかき回す。いつの間にか割り  
開いていた指は外れて、中を蹂躙し続けるその腕に添えられている。両足は大きく開いて、  
間にヒースの身体を受け入れている。強い刺激と共に時折爪が立って痛むのに、それらを  
すべて無意識の内に快楽へと思考が差し替えた。  
 
ふと互いの唇が離れた。ただ重ねていただけなのに、深く口付けた時と同じように感じる。  
ヒースの頭が下に落ち、指が抜き取られた。  
「……」  
「ぁ……」  
ヒースは無言で、イリーナはわずかに息を漏らして、空気が止まった。  
ほんの少し後、ざらりと冷たく湿ったものが敏感なところをこすりあげた。それが何かを  
悟ったとたん、今まで以上の羞恥が心に襲い掛かって、足の間にあるヒースの頭に両手を  
強く押し付けた。  
「…―――!!―――!!!」  
声にならない声が木々の間にこだまする。くしゃりと象牙色の髪が指に絡みつき、手には  
力が入ってしまったが、ヒースは意に介さない。スリットを舌でなぞり上げ、食い込ませ  
て中への侵入口をすぐに探り当てる。親指はわずかに顔を出し、硬くなった芽を見つけだ  
してその周辺を優しく回す。  
「――ッ、ぁあはぁ!…にいさん、にいさぁん…」  
舌が動くたびに、体全体にきつい刺激が走る。  
浅く中をまさぐるその感触は、指とも熱いモノとも違い、柔らかくぬめって細かく細かく  
中を動いて、なけなしの理性をこそげとってゆく。  
「ん……ちゅ…ぷぁ…は――ホントに、すげえ…」  
ヒースから感嘆の声が出る。声の中に含まれているのは純粋なまでの好奇心と、探究心。  
舐めとれば舐めとるほど次々とあふれ出てくる蜜に、息が詰まりそうになる。柔らかく、  
それでいて鋭い下生えが肌をくすぐる。そんな感触のなか、複雑に重なりあった襞を舌と  
指とで丁寧にかき分け、優しく刺激を加えていく。  
その度にイリーナの身体に力が入り、ぷちゅりと愛液が押し出され、和毛に絡んだ。  
 
小さい体が震えだす。  
水の上に起こる波紋のように。漣のように。  
強く、弱く。規則正しく、時折不意に。  
「――ぁ!……ふ…ん………ひゃぅ!」  
それは高みへと行っている証拠。  
ヒースもじらしながらも、イクのを助けようと、舌と指の動きをよりいっそう激しくする。  
何度も何度も軽い頂点を迎えていたイリーナに限界が来た。  
それまでのあがり方とは違う、大きな波。  
愛しい人の指と舌での愛撫だけでいってしまう。  
(やあ…ダメェ!ごめんなさい、ファリス様!ヒース、兄さん!!―ごめん、なさい!)  
なぜ心の中で謝ってしまうのか、その謝罪は何に対して向けられているのか。自身では、  
まったく理解できないのに、『ごめんなさい』を繰り返す。  
声が出ない。  
ヒースの頭に当てられた手は、いつの間にか、自らの秘所へ押し当てる方向へと力が入っ  
ている。  
そんな自分に気がつかないまま、身体の感覚が一際高く押し上げられ、精神が一気に焼き  
切れるを感じた。  
 
ぐっとイリーナの身体に力が入り、まさぐっていた頭がおしつけられる。  
息苦しいが、それに抵抗はしない。  
むしろ苦しい呼吸のまま、よりいっそう激しくかき回す。  
すぐにその身体に力が入って、ぱたりと抜けた。  
顔を上げ、べったりとついた蜜を手の甲で乱雑に拭い取る。ヒースの頭からすべり落ち、  
地面の上に投げ出されたイリーナの手をとり、座ったままだった身体を持ち上げて立ち  
上がった。  
イッたばかりの小柄な身体は、そんな動きについていけずにふらりと倒れこむ。  
「……あ、ごめ…ん。少しだけ、待って、クダサイ……」  
「…少しだけ、な」  
そう言って、その体を抱きしめる。一度イリーナの手によって開放されているとはいえ、  
自身の下半身は既に回復し、痛いぐらいに張り詰めている。どのくらいまで我慢できるか  
は、わからない。それでも無理に傷つけたくは無くて、必死に耐えた。  
「どうだ…?」  
「…ん、もう大丈夫です。……兄さんの、好きに、してください…」  
甘い声。  
すべてをゆだねる言の葉。  
その信頼が嬉しくて、少しだけ苦い。  
 
「…腕、木に当てろ」  
「こ、こう?」  
搾り出した声が思わずぶっきらぼうなものになる。  
それに怯まず、少し考えた後指示に従う妹分。木へ背中を預けて手を当てる。  
潤んだ瞳がヒースを見上げた。  
「違う。後ろ、向いて」  
「…うん」  
先ほどまでとは反対に、イリーナの身体を木に押し付ける。ヒースの言うとおりに胸を木  
に押し付けてしがみついたイリーナの表情は複雑だ。そんな身体を背後から抱きしめて、  
まだ快感の残滓で震えている身体を強く支えると、自身を妹分の綻びに二度三度こすりつ  
け、太腿まで零れ落ちた蜜をまとわせる。  
「く、ぅん……やだ。じらさ、ないでよお……。ねえ、は、はや、く……」  
むずがゆそうにイリーナの腰が軽くゆれる。今まで、ここまで直接的に求める台詞を彼女  
が口にしたことはない。  
いつの間にか口腔内にたまっていた唾液を飲み込んだ。  
「…大丈夫だ。もう、すぐだから――」  
そういって吼え猛っている分身をゆっくりとその胎内へと埋め込んでいく。  
「あ……んあぁぁぁぁ」  
 
久しぶりに受け入れる熱いモノに、イリーナの喉から思わず歓喜の声が漏れる。ヒースの  
動きに合せてその腰も自然に動き、あっけなく根元まで埋まっていった。求め、願ってい  
た下腹部内にある充実感に、体の芯がしびれるような満足感で心が埋まった。  
「く…ぉ……」  
逃すまいと締め付けるイリーナの秘部に、ヒースの意識がくらりと回る。あいも変わらず  
きつくて痛いぐらい、というのもあるが、それ以上に自身の分身から伝わる暖かさと、ぬ  
めりと、気持ちよさに浸りこむ。  
まだ動いてもいないのに湧き上がってきた快感に、二人のまぶたの裏にちらちらと光が舞  
い始めた。  
「や、あ…――」  
ゆるゆると腰を使い出す。イリーナの腰はヒースの方へと突き出した形になっているため、  
ヒースからはミニスカートの布地の隙間から繋がっている部分が、わずかながらに見える。  
腰をイリーナ打ち付ける度に鈍い水音が立ち、空気と蜜とが混じって白く泡立った液が、  
こぼれてゆく。それは、ある雫は直接地面へと落ち、ある雫はヒースの分身へとまとわり  
付き、ある雫はイリーナの太腿を伝ってスカートと靴下へと跡を作っていった。  
垣間見えるその光景はヒースの身体をあおる。もっとそんな互いの恥ずかしい部分を、森  
の空気の中にさらして見たくなった。  
 
つっとヒースの指が、流れ落ちる蜜でべったりと濡れた内腿をなぞる。  
「イリーナ、こんなに、して……」  
右足を持ち上げた。自分達からは当然見えないが、スカートの布地が大きくまくれ上がり、  
結合部が森の空気の中にあらわになる。ひやりとした風が通り抜けた。  
「ひゃぅん!…に、いさん。これ、やあ」  
イリーナの背が跳ねて、木に擦り付けていた胸が離れた。手だけで木にしがみつく。  
体重の一部がヒースのほうへとかかって来たため、わずかにバランスを崩す。  
そんな動きの変化に、身体は素直に快感を返してきた。  
「ふ……」  
腰の動きを止め、何とか足に力を入れてそれに耐える。  
「ヒース…兄さん。怖い……」  
イリーナが左足だけで立ち、木を掴んだ両腕で身体を支えている姿勢に、声を上げる。  
後ろからヒースが支えてくれていることは十分承知していても、不安定な体勢はそのまま  
心の不安を誘う。  
「俺が、支えているから…お前、だけじゃないから…」  
動揺しているイリーナと、暴走しつつある自分の心をなだめようと、言葉だけではなく先  
ほどよりも強く、その身を抱きしめる。  
「う…ん」  
細い声。でもその中にあった不安の色は消えている。  
ヒースの腕に全幅の信頼を置いている。この幼馴染に無条件の頼もしさを感じている。  
そんな彼女の心内が伝わってきた。その信頼に答えようと、身体をきつく抱きしめて再び  
動かし始める。  
 
互いに無言のまま、徐々に荒くなってゆく呼吸が森の中に響いた。  
吐息が絡む。きつく抱きしめ、時折身体を布地越しに強くまさぐる感覚と、交わった部分  
から襲ってくる上限のない刺激が二人の思考を麻痺させる。  
ヒースが閉じていた瞳をふと開ける。すぐ横には、たった今身体を重ねている幼馴染の顔。  
イリーナの横顔は、悦楽に染まっていた。きつく閉じた目じりから涙がとめどなく零れ落  
ち、かすかに空いた唇はあふれ出た唾液で濡れている。その口からこぼれるのは求めの言  
葉。互いの身に刻み込まれた交わりのリズムをとめどなく繰り返す。  
「兄さん、もっと、…んん、……くひゃぁ!」  
そんな求めの声に、少しだけ残っていたイリーナへの配慮と、遠慮がはじけとんだ。ただ  
自分の快感を得るために、腰を動かしだす。  
すぐ近くにあるはずのその顔が遠い。声もかすかにしか届かない。  
(さっきよりは、持つかな……)  
片隅でそんなことをぼんやりと考えたが、すぐにどうでもよくなってしまった。  
 
 
「イリーナ…イ、リー、ナ……」  
耳元にあるヒースの口から、自分の名前が漏れている。普段はあまり聞くことのない、自  
分を呼ぶ声、求める声。  
(あ、珍しい…。兄さんが、呼んでる…)  
それだけこの幼馴染が自分を求め、切羽詰っていることがわかって、愛しさが胸の内を駆  
け巡る。体の震えが止まらない。激しく、絶え間なく送り込まれる刺激に、心が躍った。  
カラダが揺さぶられる。下からの強い突き上げと、落ちる時の自分の体重で、いつもより  
さらに深くに食い込んでくる。安定の悪い体勢の中、背中から支えるヒースの力強い腕が  
カラダと心の支えだ。強い、振動。痛みすら伴う愛撫と挿入。久方ぶりに快楽を得たカラ  
ダは貪欲だ。屋外であること。仲間が近くに居ること。立ったまま片足を落ち上げられ、  
後ろから突かれている現実。その全てが羞恥心を刺激し、どこまでもどこまでも互いを求  
め、とまらない。痛みすら快感に置き換わる。  
たった一つ地面についている左足から力が抜け、がくがくと膝が笑い出す。  
「あ、は……もう、やだ…いき、そう……」  
「――」  
答えはない。  
かわりによりいっそう、振動は強くなる。自分をえぐる動きが大きくなるたびに、徐々に  
高みへと押し上げられ、止まらないし止めてもらうつもりもない。  
動きが、変わる。  
「んっ――!」  
同時に自分の中で脈打つモノが弾けた。  
「ふ、ぁぁ……はぅ……」  
少し遅れて、自分の意識も爆ぜる。無意識に力が入り締め付ける中を、ゆっくりとした動  
作でヒースが動く。その度に自分の蜜の混じった白濁した液体が掻き出されて腿を伝う。  
その感触と余韻に、身をふるりと震わせた。  
 
 
 

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