ストローウィック城の城主の一人、エルフのスイフリー。
普段は城主達は訳あって全員バラバラに放浪している。が、彼は今一人で帰って
きている。別行動中のグラスランナーのパラサと数日後に此処で合流する予定だ
った。
早く着いたのは何故か。
クレアが居るからである。
クレア・バーンロードはストローウィック城の名代である。短く切った髪を金に
染めたファリスの神官戦士で、中々の美人だ。
城を離れることになった時、スイフリーはクレアに言った。
「私の帰りを気長に待っていろ」と。
後から「まるでプロポーズだ」とフィリスから笑われたが、お互い惹かれていた
のは事実であるから、それでもいいだろうと思った。
今夜は早目の夕食を済ませ、アーチボルトの書庫から勝手に借りた本を何冊か持
って自室に戻った。クレアとはまだ会話らしい会話をしていない。
小さな領土ではあるがクレア一人でほとんど管理をしているので、毎日忙しいら
しい。
もっと人を雇えと何度か言ったが、彼女は自分の為の出費はあまりしたがらなか
った。
不意に部屋のドアがノックされた。本を開いたまま立ち上がる。
扉を開けるとそこにはクレアがいた。
「仕事は片付いたのか」
はい、と頷くクレア。
「明日は早く発たれるのですか?」
「いや、何日かしたらパラサが戻るからな。それまで居る予定だ」
クレアは一瞬微笑む。が、すぐに普段の表情に戻った。
「わかりました、それではお疲れでしょうから今夜は失礼します」
言いかけた所で手首を掴まれグイと部屋の中に引きずりこまれた。何かを言う間
もなくそのまま肩を抱かれて口を塞がれる。すぐに唇を離し、驚いた表情のまま
固まっているクレアにスイフリーは言った。
「何ヶ月か振りに帰ってきたというのに、なんだその事務的な態度は」
「あっ、あああ、あの…だって…お疲れだろうと思って…」
顔を赤くして俯くクレアを見て、スイフリーは軽く溜息をついた。
「名代殿の顔を見なければ取れる疲れも取れないな」
そう言うと下を向いたままのクレアの顎に指をかけ、前を向かせる。そして彼女
の震える唇をペロリとひと舐めした。
ビクッと小さく跳ねるクレア。その身体を逃がさぬように腰に腕をまわし、もう
一度口づける。少しだけ開いたクレアの唇を、スイフリーは舌でこじ開け口内へ
と侵入させる。ゆっくりと舌先で歯をなぞりさらに奥へと進もうとする。
口内を蹂躙され、クレアは頭の中が痺れるような感覚に襲われた。静かな部屋に
淫猥な水音だけが響いているが、耳に入るその音は羞恥よりも情欲を煽った。
自然と両の腕がスイフリーの腰にまわされる。そしておずおずと彼の舌に自らの
それを絡めてゆく。
スイフリーは堅物のクレアがキスを返してきたことに少し驚いたが、嬉しくもあ
った。これまでも何度か唇を重ねたが、彼女は常に受身であった。
(それが今や自ら私にしがみつき、舌を絡めてくるとは…)
その事実はスイフリーから普段の冷静さを奪った。唇を離し密着した身体を引き
離す。急に何故?という顔をするクレアの腕を乱暴に掴み部屋の奥へと引いて行
く。
「ス、スイフリー、あっ」
強引に寝台へと押し倒され、三たび唇を奪われる。先程までと違う、熱っぽく、
荒々しく、まさに「奪う」ような。その間に片方の掌はクレアの頬から首筋、鎖
骨へとすべって行く。
衣服の上から乳房に触れるとクレアの身体がビクリと跳ねた。
「ま、待って…んん、待って、くだ、さい…ん…」
スイフリーはクレアの唇を解放し、何故だと問うた。その間も胸から手は離さず、
ゆっくりと撫でさすり柔々と揉む。
「あっ…いや…んんっ」
手の動きに合わせて漏れるクレアの声は、普段堅苦しささえ感じさせるハキハキ
とした喋り方からは想像もつかない甘さであった。自分が発した喘ぎに驚いた彼
女は、もう声を出すまいと固く口を結ぶ。
一方スイフリーはその声と堪える仕草に煽られ、自分の欲に歯止めが効かなくな
るのを感じていた。クレアの首筋に唇をつけながら
「この状況で待てと言うのか」低く囁く。そして身体を少し起こしてクレアの目
をじっと見つめる。
その眼差しに、クレアは蛇に睨まれたかのように目を逸らせない。いつもの冷静
な、時には人を小馬鹿にしたような目をするこのエルフとは別人のような、余裕
無く熱っぽい視線だ。
こんな目で視られたら、拒めるはずなど無いではないか。
だからせめて、震える声でクレアは言う。
「どうか…灯りを消して…」
「…わかった」
立ち上がり、テーブルの上の燭台の炎を吹き消す。窓からは、かろうじて月明か
りが弱く部屋に入り込んでいる。
はやる心を抑えながら寝台に向かうと、半身を起こしたクレアが待っていた。薄
闇のなかでも震えているのがわかる。
隣に座り肩に手を掛けると、ギュッと身をすくめた。彼女の緊張が掌から伝わっ
てくるようだ。
「そう怯えるな、できる限り優しくしてやるさ」
自身の緊張を表に出さぬよう注意を払う。一度離れた事で余裕を取り戻すことが
できたのだ、勢いだけで突っ走るのは私らしく無い。そんなことを考えながら、
肩に置いていた手でクレアの頬に触れ、金の髪を撫で、指で耳朶に触れる。その
度に身体をビクリと反応させるクレアを可愛いと思った。
服の襟に手を掛けると一瞬抵抗するような素振りを見せたが、すぐに思い直した
ようだ。恥ずかしいのだろう、顔を横に背け目を固く閉じている。明るければ肌
が紅潮しているのが見られたに違いない。
釦を一つ一つ外し肩をはだけると、白い滑らかな肌が露わになった。豊かな乳房
が彼女の呼吸に合わせて上下している。その片側を柔らかく掴み、唇を谷間に寄
せると、「あ…」とクレアの口から鼻にかかった声が漏れた。緊張の為か皮膚は
汗ばんでしっとりとしている。香水をつけているわけでも無かろうに甘い香りが
鼻をくすぐり、思わず舌を這わせる。舌と唇で乳房を優しく攻め、遂には一番高
い所にたどり着いた。口に含みゆっくりと舌で転がす
と、今まで声を殺して耐えていたクレアの身体が大きく跳ねた。
「あんっ、いや…っ」
そのまま飴玉でも転がすかのように舌で玩ぶと、手で口元を押さえながら身をよ
じった。しかしどうしても声が出てしまうらしい。
左手と口で上半身を愛撫しながら、右手は背をさすり脇腹をなぞりながら下半身
に向かう。飾り気の無い黒のスカートは片手で器用に脱がされて瞬く間に下着一
枚にされてしまった。
スイフリーが内腿に指を這わせると、そこは怯えるように固く閉じられた。しか
し、無理に開こうとはせず、口に含んだままの乳頭を軽く吸ってやると、あん、
と可愛らしい声を出して腿を緩ませる。
すかさず指を滑り込ませて薄衣の上から敏感な部分を軽く撫で上げる。
「ああん!ダメぇ!」ほとんど叫びである。
クレアはスイフリーの頭を抱え込みしがみついた。ちょっと息苦しい。
そのまま下着をずらして直に触れてみると、指先に湿り気を感じた。つい口が滑
る。
「濡れているな」
「…!!」
その一言でクレアの羞恥心が一気に振り切れた。スイフリーの腕の中から、もが
いて逃げ出そうとしだしたのだ。
「ま、待て!落ち着くんだ」
クレアが本気になれば、人間より膂力に劣るエルフなぞ簡単にはねのけられるだ
ろう。
「すみません!私なんかっ!」
「な、何を言っているんだ!」何故か謝罪しながら逃れようとするクレアを落ち
着かせようとするが、レジィナやグイズノーが子供をあやすようには上手く行か
ない。情けないと思いつつも、振り払われないように彼女にしがみついていたら、
遂には毛布に顔を埋めて泣き出してしまった…。
「クレア…」
「うう…すみません、私ははしたない女です、恥ずかしいです…」
「何故だ、自分が触れた為に濡…感じてくれたら男なら嬉しいものだぞ。」
「本当ですか?私を嫌いに…」
「それは無い」指でクレアの涙をぬぐってやりながらきっぱりと言ってのけた。
「なんならもっと乱れた姿も見たい。…私の前だけでだが。」
「な、そんなことを言わないで下さい…」俯くクレアを後ろから抱きすくめ、耳
朶を甘噛みする。
「あ…」
「そうだ、身体の力を抜け」
もう一度腿の間に手を伸ばすと、今度はすんなりと入れてもらえた。
爪が当たらぬように注意しながら入口を撫でると、蜜のような物がトロリと溢れ
た。中指をゆっくりと沈めて行くと、クレアは身震いしてシーツをキュッと握り
しめた。そのまま指は動かさず、反対の手で乳房をすくい上げ、首筋は舌で攻め
る。すると身体のの強張りは緩み、逆に身体の中はスイフリーの指を締めつけて
きた。ゆっくりと指でかき混ぜるとクレアはくぐもった声で呻いた。
さらに指を浅く出し入れしながら耳元で囁く。
「もっと声を聞かせてくれ」
「あ…いや…ああっ」
触れられ玩ばれるたびに漏れる声は徐々に大きくなり、スイフリーの耳を刺激し
た。クレアの声に合わせて自分自身も昂ぶっていくのを感じている。
指を引き抜くと、自分の肩に身体を預けていたクレアを、優しく寝台に押し倒し
た。息を飲むクレアの唇を優しく塞ぎスラリとした腿の間に自分の身体を割り込
ませる。
己の昂ぶりに手を添えてクレアのその部分にあてがい、ゆっくりと押し込んで行
く。そこは充分に潤っていたが、狭すぎて指のようには上手く行かない。それで
もどうにか奥までたどり着いた。
クレアは辛そうに顔を歪め、時々小さく呻き声が聞こえる。破瓜の痛み…男であ
るスイフリーには知りようが無かったが、とにかく苦しそうだ。
もしかしたら、無理せずここでやめておいた方が良いのだろうか。一瞬考えたが、
ここで引き返すのは自分には出来そうに無い、とスイフリーは思う。
「やっぱり私は邪悪なのかな…」
かわいそうだと思いつつも自分の欲望を優先させているのだから。
「ん…ちが、い、ます」苦しそうに答えるクレア。
「クレア、大丈夫か」
「貴方は、邪悪ではあり、ません、スイフリー…」
その言葉は途切れ途切れだ。
私だって貴方とこうなることを願っていたのです、と言葉は続いた。
好きな異性と心だけでなく身体も繋がりたい、その願いは信仰に反する事なので
はないか。クレアは先刻までそう思っていた。しかし、優しく触れられるたびに
感じる幸福感は、自分の間違いを気付かせてくれた。愛し合う二人が仲睦まじく
することを至高神はきっと許してくれるだろう。
「続けて下さい、お願い…」
その言葉に、スイフリーは身体が熱くなるのを感じた。
激しく動いて思い切り彼女の身体の中を掻き回してやりたい、そんな衝動に駆ら
れた。が、ぐっと堪えてゆっくりと前後に動く。近づいては離れ、離れては近づ
く、ゆっくりと、優しく。
「あっ…あっ…ああん…」
スイフリーの動きに合わせるようにクレアの声が部屋に響く。痛みだけではなく
別の感覚も襲って来ていた。
処女の中に締めつけられて限界が近づいていた。すまないと思いつつも我慢でき
ずに強く打ちつける。まだ離したくないとでも言うように絡みついてくる温かい
場所から抜き去り、クレアの腹の上に欲望を吐きだした。
薄暗い部屋の中、放心状態で仰向いているクレア。その身体は自分がぶちまけた
体液で汚されている。
寝台には窓から月光が差し込んでおり、彼女を青白く照らしていた。
スイフリーは思う。誰が人間よりエルフの方が美しいなんて言い出したのか、目
の前の人間の女は私の同族達よりずっと美しいじゃないか。
しかし、身体を拭ってやりながら「痛かったろう、大丈夫か」と訊いたら、
「ダークエルフのバルキリー・ジャベリンに比べれば大したことはありません」
などと言う。
「…なんとも色気の無い答えだ」
スイフリーは口を歪めて鼻で笑った。しかし同時に、そういう所も好ましいと思
った。