『闘争より大事なモノ』
ノスフェラ「リャナアン、いつもの食後の紅茶を頼む」
リャナアン「はい、ノスフェラ様」
ノスフェラ「あ、リャナアン、お気に入りの黒いコートどこにしまった?」
リャナアン「衣装ルームの手前のハンガーの右から13番目ですよ、ノスフェラ様」
ノスフェラ「リャナアン…、今夜も寝かさないぞ」
リャナアン「ノスフェラ様のエッチ…」
ノスフェラ「リャナアーン。俺の眼鏡どこいった?」
リャナアン「昨晩寝る前に枕の下に入れていましたよ」
ノスフェラトゥとリャナンシーアサシンの仲睦まじきことは、部下はおろか、食事用捕虜の奴隷ですら知らぬ者がいないほど。
そんなある日、同胞のドレイクからの要請があった。
曰く『人族の抵抗が激しい。このままでは貴国にも攻め入ってくることだろう。遠き同胞よ、内部からの撹乱、暗殺を願う』、と。
借りのある相手だったので無視するわけにもいかなかった。
ノスフェラトゥは最善の手段としてリャナンシーアサシンの派遣を決定する。
彼女は少し心配そうな顔をしていたが、笑顔で送り出すノスフェラトゥを前にしたら断ることはできなかった…
そして一ヶ月後。
彼女は任務を果たして予定より一週間早く帰還した。
コボルド「リャナアンさまー!」
リャナアン「どうしたの?」
コボルド「ノスフェラさまがあれが無い、これができてない、夜が寂しいって苛めるんですー」
リャナアン「ノスフェラ様、一体どういうことですか? ご自分で大丈夫と仰っていたのに…」
ノスフェラ「そうは言うがな、お前がいないと屋敷の中が回らんのだ…」
リャナアン「ふぅ…。仕方のないノスフェラ様」
ノスフェラ「仕方ないついでにまずは…」
リャナアン「くすっ」
二人の影が重なる。
最初は手が、次に口が、そして全身が一つの影となってその場に倒れ込む。
一晩中、影は何度となく姿を変えた。
何時の間にか姿を消していたバトラーマスターコボルドは、翌朝、夜明けのコーヒーを持ってくるのだった…