聖王国アノスの片田舎、ストローウィック城。  
その城の持ち主である冒険者<バブリー・アドベンチャラーズ>の一員、エルフの  
精霊使いスイフリーは、相棒のパラサと共に久しぶりに城に帰っていた。  
訳あってこの地に長く留まることができない彼らは、普段は二人一組で各地を  
放浪していた。その間城を守るのは、至高神ファリスの神官戦士クレア・バーン  
ロード嬢であった。  
その夜は三人で食事をし、再会を祝して酒を飲んだ。パラサは楽しそうにクレ  
アに土産話を聞かせていたが、スイフリーは無理な旅程──クレアに早く会いたい  
パラサからかなり急かされたのだ──の為に疲労が溜まっており、一人早めに寝室  
で横になった。  
 
何時間か眠ってしまったらしい。なんとなく息苦しさで目を覚ますと、自分の  
腰にクレアが跨っている。  
「…なんだこの状況は」  
「夜這いをかけています」  
「…」  
生真面目なクレアの口から出たとは信じられない「夜這い」という言葉に、スイ  
フリーは絶句した。  
「私はいつまで待てば良いのですか?貴方は私に気長に待っていろと仰いました  
が、私には貴方ほど時間が無いのです」  
 
何かの冗談かと思ったが、クレアはいたって真面目な顔だ。そもそも冗談を言う  
様な女では無い。  
「君の言うことは尤もだクレア、しかしこの行動は至高神の神官として褒められ  
たものでは無いぞ」  
「何故あれ以来抱いてくれないのですか」  
「噛み合わないなあ…クレアさんあんた酔ってるだろう」  
確かに城を離れる前夜、お互い胸にしていた想いをぶつけ、一夜を共にした。  
そう言えば、あの後たまに帰って来ても、なんとなく気恥ずかしくて触れたり  
できなかった。  
「いいえ私はお土産のワインを一人で一本空けたりしていません」  
「ぶっ、やっぱり酔ってるじゃないか」  
「笑わない!」  
「は、はい!すみません…」  
「私は真剣なのです。大事なことなのでもう一度言いますが、私には貴方ほど時  
間はありません。なので今から子作りしましょう」  
「はあ?!ちょっと待て、飛躍しす…んん!」  
 
頬を両手で挟まれ強引に口づけられた。唇をこじあけられ濡れた舌が差し込ま  
れる。口の中に微かに甘い酒の香り。  
 
普段の彼女ならしないであろう大胆なキスは、スイフリーの頭を軽く痺れさせ  
た。このまま好きにさせてみるのも面白いかもしれない。後で自分の犯罪紛いの  
行為に後悔するのは彼女の方である。子供だってそんなに簡単に出来るものでは  
ない、なにしろ種族が違うのだから。  
それに、重くのしかかってくる身体は柔らかく、否が応でも彼を昂らせる。着  
衣のままでも大きめだとわかる乳房が、二人の間に挟まれ形を変えた。  
クレアは唇を離すと、今度はスイフリーの耳──エルフ特有の長く尖った耳だ──  
に軽く口づけた。  
「ひゃあ!」思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。  
「あら、エルフって本当にここが弱いんですね」  
嬉しそうな声で囁くクレア。吐息が耳を擽り鳥肌が立つ。  
「そ、そのくだらない知識をどこで手に入れたんだ」  
「グイスノーさんが以前教えてくれました」知識神の神官の名をあげると、耳朶  
を甘噛みし、舌で撫でる。  
「ひっ!」  
あの破壊坊主め、こんな知識まで溜めこんでるのか!と心でなじりながら、快感  
に震えた。  
クレアは自分の身体の下に異物感を感じて動きを止めた。  
「あ、大きくなってきましたね」  
「…当たり前だ」  
 
耳を弄ぶのをやめて身体を起こしたクレアは、硬くなったそれを服の中から引  
っ張り出そうとしている。目は据わり、舌舐めずりをするその姿は肉食の獣の様  
だ。  
「うわあ、普段のクソ真面目なクレアさんからは想像もつかないいやらしい姿で  
すね」  
思ったことをわざと声に出してみた。  
「ふふ、今の私はそんな言葉で怯んだりしませんよ」  
「ほほう」  
これは本格的に箍が外れているらしい。  
遂に目当てのものを探り当てたクレアは、嬉しそうにそれを眺め、右の掌に緩  
く握る。  
「口でしてくれるの?」  
「いいえ」  
「即答か、連れないな」  
「そんな勿体無いことはしません」  
そう言うと彼女は一度手を離し、暗い色のスカートから下着だけをスルリと抜き  
取った。ちらりと見えた腿が白く眩しい。  
そして、先刻スイフリーが目を覚ました時の様に、彼の腰の上に再び跨った。  
クレアが硬いものに手を添えて方向を定めると、その先端が柔らかく濡れた何か  
に触れた。  
 
そのまま彼女はゆっくりと腰を下ろす。スカートの中に隠れて、くちゅりと水  
音が聞こえ、彼女の中にスイフリーのそれを押し込んでゆく。  
「ん…」  
クレアの顔からさっきまでの艶かしい微笑が消えている。  
「痛い?」  
「…大丈夫です」  
「まだニ回目だしな」  
「ん…くっ、大丈夫…」  
「そうは見えないな、無理しないでやめたら?」  
 わざと意地悪く言ってみるが、平静を装うのは少々難しかった。彼女に締め上げ  
られる快感で声が上擦る。  
「あ…あ、入り、まし、た」  
言わなくてもわかる事をわざわざ教えてくれた。頬や首が汗ばんでいる。  
(着衣のままでも中々趣きがあるもんだな…しかし)  
スイフリーはクレアの上半身に手を伸ばした。襟の付いた堅苦しいデザインのブ  
ラウスは一番上まで釦が留められている。  
「もう少し肌の色を見たいな」  
上から釦を外していくと、3つ目を外したところで手首を掴まれた。同時にクレア  
は腰を揺らし出す、ゆっくりと。  
「あ…は、駄目です、悪い手…」  
 
はだけた服から鎖骨がのぞく。その下の乳房はまだ服の中だ。クレアの動きに合  
わせて重そうに上下している。  
(エルフでこの大きさは見たことないな…) 故郷の森の女エルフ達はこの半分  
も無いだろう。胸だけではなく、胴も尻も脚も華奢だ。「少女の様な」と形容し  
て讃える者は多いが、悪く言えば「貧相」なのだ。  
エルフ女が貧相に思えるのは人間の女を見慣れたからか。仲間の女魔術師は常  
に身体のラインを強調した服装だし、女戦士も脚を露出している。  
「何を、考えて、るの?」  
耳と頬を撫でながらクレアが聞く。他の女達に思いを馳せたのを咎められた様な  
気がして、どきりとするスイフリー。  
「別に、…お堅い神官戦士様の痴態を眺めるのは良いものだな、と」  
普段の彼女に言えば殴られそうなことを言ってみる。  
クレアはふふ、と含み笑いをすると、動きを少し早めてきた。  
「少しは、気持ちいい、ですか?」  
「ああ、とても」  
「素直ですね、珍しい、あっ…」  
「私もそろそろ動くよ、クレア」  
 
言うが早いか、スイフリーはクレアの腰を掴み、彼女の動きにあわせて下から突  
き上げた。  
「ああっ…あっ…やだ…」  
「嫌?…嘘は良く無いな、溢れてる」  
「ああん、いじわる、あ、あっ」  
一段高くなった喘ぎと共に締めつけもキツくなる。そろそろ限界だ。  
「ああ、もう駄目だ、いくぞ」  
「中に、中にください、あ!ああ!」  
その願いに抗える筈もなく、スイフリーはクレアの中に精を放った。  
 
しばし息を整えた後、スイフリーは彼の胸にぐったりとしなだれかかるクレア  
に声を掛けた。  
「満足したか?さあもう休もう。私は疲れているし、君は飲み過ぎだ」  
しかし彼女はそれには答えず、何かブツブツと小声で呟いている。  
「なんだ?気分でも悪いのか?…あれ?」  
急に疲れた身体が軽くなった気がする。続けて、クレアの掌が触れた部分から何  
か暖かいものが流れ込んでくる感覚。神聖魔法だ。  
「<治癒>と<精神力付与>か。もう一回したいのか、貪欲だな」  
「もう一回?まさか。私を長い時間放っておいて、たったこれだけ言いなりにな  
ったくらいで許されると思ってますか?」  
 
「は…?」  
「私には不眠不休で丸二日<解呪>の儀式を行なった経験があります」  
「知ってるさ、私が暗黒神の呪いを受けた時だな。それがどうしたと……!!」  
スイフリーの顔からサッと血の気が引いた。  
「無茶だ、君の精神力も持つまい」  
言いながら、身体を捩りここから逃れようとする。  
「逃がしませんよ」  
クレアはスイフリーの首に回した腕をガッチリとホールドする。その拍子にはだ  
けたままの胸の谷間から何かがころりと転がり落ちた。  
「これは…魔晶石か!こんな物どうしたんだ!」  
 
魔晶石──術者の精神力を使わずに魔法を行使できる魔力を持った宝玉である。  
古代王国の通貨だったという貴重品だ。  
「頂き物です、まだ沢山ありますよ。私達が子を成すのは難しいのですから、行為の数を重ねて確率を少しでも上げなければ」  
「誰だ!この女にこんな危険な物を持たせたのは!」  
「さあ観念してください」  
「待て、落ち着くんだ、話せばわかる!」  
もがけばもがく程クレアの腕の力は強まる。エルフの乏しい腕力では跳ね除ける  
ことも難しい。身体には彼女の脚も絡みつき、身動きが取れない。甘やかな拘束  
に耐えきれず反応を示す身体の一部分。  
「ここは正直ですね、ふふふ」  
クレアはそう言って唇を奪った。  
スイフリーは仕方なく口付けに応え、さっきは触れさせてもらえなかった乳房  
を掌で弄びながら、この状況から抜け出す術を考えようとした。しかし策士と呼  
ばれた彼でも、蕩けた頭は上手く回せなかった。  
 
 

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