ブック「ベルカナさん、写本はまだ終わらないんですか?」
ベルカナ「まだ半分ほどしか……急ぎますの?」
ブック「えぇ、誰も聞いたことのない国の手記なんで読みたがる人が多いんですよ。持っているのはボクだけのようですしね。(クイクイクイクイッ)」
ベルカナ「確かに背の高いエルフがいる国なんて聞いたこともありませんが……ほとんどは背高エルフの賛辞ばかりではありませんか。こんなことなら拷問のところだけ写せばよかったですわ」
ブック「それは困ります、全文写本するという条件で貸したんですから。責任をもって写本していただきますよ。(クイクイッ)」
〜〜 数日後 〜〜
クレスポ「お! 久しぶりッスねベルカナ」
アイリ「いらっしゃい、ベルカナさん。エールでいい?」
ベルカナ「えぇ、おねがいするわ」
ブック「写本は終わったんですか?」
ベルカナ「終わりましたわ、はい」
クレスポ「あれ? ブックにだけプレゼントッスか?」
ベルカナ「違います! 先日あなたが言っていた背中毛よりも恐ろしい拷問について書いてある本を返しただけです!」
クレスポ「おー! あのエr……じゃなくて恐ろしい拷問ッスか。どうだったッスか?」
ベルカナ「確かに恐ろしそうな拷問でしたわ。そうだブックさん。文中には油としか書いてなかったのですが、どのような種類の油なのかわかります?」
ブック「よければ『世界の油全種〜イーストエンドからロードスまで〜』を貸しましょうか。拷問用ということなら『実在する危険な油全典』というのもありますよ(クイクイッ)」
シャイアラ「油って危険だものねー」
ブック「姐さんの場合はこぼして転ぶからですよ。危険な油というのは――」
ベルカナ「特に危険な油でなければならないようでもなかったですから、研究という意味ではサラダ油で代用できるかと思いますわ」
クレスポ「いいッスねサラダ油。なめられるッスからね」
シャイアラ「え? 何よそれ。なめられる拷問なの? それともなめさせる拷問なの?」
クレスポ「それ、どっちもご褒美じゃないッスか」
ベルカナ「あのねクレスポさん? 拷問係が男性でもそんなことを言っていられますの?」
クレスポ「うわああぁぁぁ! なんておぞましい拷問なんッスかそれは!」
レミィ「お待たせしましたぁ」
ベルカナ「ありがとう」
レミィ「応援してますからね! 辛いでしょうけど、ギルドの幹部たるものゴーモンのひとつやふたつ使いこなさないとですもんね!」
アイリ「こら! レミィ! 邪魔しちゃだめでしょ!」
マロウ「だども、やっぱり拷問だら良くねぇだぁ」
シャイアラ「大丈夫よマロウしゃん。マロウしゃんが油をかぶってあたしがなめる拷問だから」
マロウ「え? え?」
クレスポ「いやそこはシャイアラさんが油をかぶってなめさせる拷問――」(バチバチバチッ)
ベルカナ「なめませんしなめさせません。そういう拷問ではありませんの」
マロウ「クレぽんー!」
シャイアラ「じゃあどういう拷問なのよ」
ベルカナ「それはまだ……写本に忙しくて詳しく読めていないのですけど、大体の手順は書いてありましたからこれから研究して解明していきますわ」
シャイアラ「じゃあ早く解明してよ」
ベルカナ「記述があいまいでしたし具体的な効果も書いていなかったので色々とわかりにくいのですわ。一度は実験してみないととは思うのですが、肌を晒して行なうもののようなので、その、アレを実験台にするのも気が進まず……」
シャイアラ「面白そうじゃない、手伝うわよ。一緒に温泉にも入ったんだし、あたしになら肌を晒しても大丈夫よね?」
ベルカナ「大丈夫ですわ。お願いできますかしら?」
シャイアラ「もちろん! 新しいマロウしゃんのかわいがり方を早く知りたいわ」
ベルカナ「いえ、あの。拷問なんですってば」
シャイアラ「わかってるわ。拷問なのよね?」
ベルカナ「?」
シャイアラ「?」