私の名はレギン・レイヴ。  
 オッサンの心をもつ幼女ルーンフォークだ。  
 人には残念な存在と呼ばれるが、私自身はこの体に結構満足している。  
 可愛いし、小さいし、幼女の姿でエロいポーズや発言だってし放題だ。正直、私は毎晩、鏡の前で扇情的かつ純真ぽいしぐさを研究するのに余念がない。  
 そのたびについつい興が乗って、全裸になって自分の姿を映してみたり、股を開いてみたり、局部をじっくり観察したり、しまいには指でいじくって自堕落なプレイに耽ったりするが、そのへんは乙女の秘密である。  
 自分の姿で欲情できるというのは我ながらヘンタイすぎる気がするが、自家発電力が高くて経済的だという解釈も可能だろう。  
 そんな私には一応、主人のような者もいる。結構腕利きの魔動機師のくせに、負け犬根性のしみついた、しみったれたナイトメアだ。近頃は私などより、この男の方がよほど残念な存在のように思えてきた。  
 何しろ、蛮族との戦争に参加したら撤退の際に無人島に置いてけぼりを食らったというのだから笑わせ……いや、むしろ不運すぎて泣かせる。まあ、そのおかげで私と出会ったというのだから、ご主人の運も捨てたものではないのではなかろうか。  
 ああ、ちなみに勘違いしないで欲しいが、ご主人とは清い関係だ。ご主人はロリコンではない(と自分では主張している)し、そもそも童貞だ。たまにオナニーを手伝ってやることはあるが、それでも足で挟んで擦ってやる程度の関係だ。うん、清い清い。  
 勘のいい向きにはもう気づかれたかと思うが、ご主人はぶっちゃけマゾである。  
 その証拠に、身分の高い女性や立場の強い女性にののしられたり、便利に使われたりする位置に自分から進んでなろうとする。具体的にはこのグラスノ王国の第二王女に奴隷として扱ってもらいたくてしょうがないようだ。  
 冒険者としてもそれなりの腕なのに、報酬もふっかけようとせず自ら戦わせてくれと言ったり、ヌルヌルした新鮮なタコをプレゼントして気持ち悪がられようとしたりするところなど、マゾとしても実に極まった変態っぷりだと言わざるを得ない。  
 おまけに最近では、叶わぬ恋に身を焦がして自家発電するNTR趣味にも目覚めてきたらしい。わざわざ脈のない、しかも意中の相手が他にいるらしい王女に惚れ、心を踏みにじられながら一緒に旅をしている。きっと傷つけられるのが快感なのだろう。  
 まあ、それがご主人の幸せだというなら従者としては応援するだけである。見てると面白いし。  
 そんなことより、私の目下の興味は旅の連れとなった赤毛の女戦士のことだ。  
 
 彼女は長く伸ばした髪をポニーテールにまとめ、いつもきびきびと王子のそばを歩いている。すらりとした長身は鎧に包まれているものの、そのスタイルのよさは隠しようもない。  
 どう考えても剣を振るのに邪魔になるとしか思えないほどの、あの巨乳……。あと、くびれた腰から尻へのラインとか……。そうそう、特筆すべきはスカート状のかたびらの裾から覗くふともも、特にニーハイブーツとの隙間の、言うなれば”絶対領域”の素晴らしさであろう。  
 戦闘の際に肩幅に足を開いて立つとき、そのまばゆい魅力は炸裂する。私などはもう、敵がどうとかよりずっとそっちばっかり眺めているほどだ。あとおっぱい。  
 さて、このいい体をした女戦士は、イングリッド・エアハルトという。  
 聖戦士を目指すセフィリア神聖王国の王子、ロイ・ゼノスヴェルトの武者修行のお供として、諸国を放浪する身だそうだ。  
 イングリッドとロイ王子は、修行の滞在先としてグラスノ王国を訪れたのだが、その際に事件に巻き込まれた。それは王子との結婚を狙う第二王女フィオ姫の陰謀……ではなく、蛮族の襲撃である。  
 六年近く平穏だったこの辺境のド田舎にも、戦争の足音が聞こえてきたというわけだ。  
 まあそれから色々あって、ロイ王子とフィオ姫が……ああそう、あとついでにご主人もだが、近隣のラ・ルメイア王国に援軍を求めに行くことになった。それにあやかって、イングリッドと私も旅の連れとなったわけである。  
 つまり何が言いたいかというと、旅の途中ではイングリッドの鎧の下の秘密やら、恥ずかしい姿態なども見ようと思えば見放題だった、ということだ。  
 何しろ私は見た目的には幼い少女だし、起動年数からいうと事実幼女だし、寝ぼけたふりをして一緒の毛布の中にもぐりこんだりしても問題にはならない。鎧を脱いだ彼女のふくよかな胸に顔をうずめたりしても全然、倫理的に問題はないのである。  
 その後、なぜか宿で別部屋にされたりもしたが、コンジャラーの私には”ドール・サイト”を使って人形の目で覗き行為も可能だ。  
 可能であるとしたら、しない理由があるだろうか?  
 いいや、ない(反語)。  
 というわけで私はひそかに毎夜、イングリッドの寝所に人形を忍ばせていたのである。  
 最初は、あわよくば寝乱れたあられもない姿でも鑑賞できないか――という程度のことであったが、この策は思わぬ秘密を探り当ててしまった。  
 というのは、イングリッドが王子の護衛であるだけでなく、実は夜の相手でもあったということだ。  
 ロイ王子に懸想するフィオ姫が知ったら血を見そうな真実だが、私はこの件を自分の胸の中だけにしまっておくことにした。そして、存分に鑑賞するだけ鑑賞することにしたのである。  
 
 旅の途中のある深夜、誰もが寝静まった頃、ロイ王子はイングリッドのベッドを訪れた。部屋の中にはふたりと、そしてクローゼットの中に隠された人形だけだ。  
 敏感なイングリッドは、かすかな物音に対しても反応し、闇に目を凝らした。  
「……王子?」  
 ロイ王子が静かに歩み寄り、イングリッドの枕元に腰掛けた。  
「ごめん、イングリッド。起こしてしまったかい?」  
「いいえ、まだ眠ってはいませんでしたから。どうされたのです? 眠れませんか」  
「うん、実はそうなんだ」  
 厳しい戦いでしたからね、とイングリッドが返す。ロイ王子は薄く笑みを浮かべて――それは皆の前では見せたことのない表情だったが――首を振った。  
「いや。フィオ姫のことを考えていたら、……いろいろと興奮してしまって」  
 ロイ王子はそう言って、ズボンに包まれた自分の下半身を見下ろす。  
 暗闇を透かして見ても、その逸物は明らかにそそり立っていた。イングリッドは息を呑んだような顔で黙り込む。  
「すまないが、イングリッド。……鎮めてくれないか」  
「……は、……はい……」  
 私は人形の目を通してそのやりとりを想像しながら(というのは、本当はこの魔法では音は聞こえないので)、その情景に見入った。  
 ロイ王子が蝋燭に火を灯す。  
 髪を解いた寝巻き姿のイングリッドは、赤面してうつむき加減でロイ王子のほうをちらちらと伺っている。王子のほうは邪気もなく、ニコニコと微笑んでいた。  
 実はこの時点では、二人のやり取りの聞こえない私は、なんだか妙な雰囲気だな、とわくわくして見守っていただけであった。おや、と驚いたのはイングリッドが自らロイ王子のズボンを脱がし、その男根を両手で愛撫し始めたからだ。  
 ロイ王子はイングリッドの赤毛をさらさらと撫でながら、相変わらず超然とニコニコしている。このあたりが、王族としての感覚の違いというやつであろうか。悪いことをしているつもりも、させているつもりも全くない、という感じだ。  
 やがてロイ王子が何か命じて、イングリッドの唇に触れた。イングリッドは少し涙をにじませたような、潤んだ瞳で頷き、王子のものを口に含んだ。  
 王子はイングリッドの頭を両手で押さえ、静かに腰を前後させる。目を閉じて、感触を愉しんでいるふうであった。  
 ……羨ましい、と私は素直に思った。  
 私も男ならイングリッドのような女性を股間にひざまづかせて奉仕させてみたい。というか、あのいやらしい行為はどんな快楽をもたらすのであろうか。是非体験してみたい、でなければ感想を聞いてみたい。  
 ……いや、その逆もあるな。アレをしゃぶらされるというのはどういう心持ちがするのだろう。男のナニを口に含むというのはどういった感覚だろうか。口の穴を王子に自由にされているイングリッドは、今何を考えているのであろうか。  
 知的興味がそそられる。  
 私は目を閉じたイングリッドの表情を、じっと観察した。  
 
 イングリッドは常よりいくらか上気した――いいや、むしろうっとりとしていると言ってよい表情で、なすがままにされている。王子の両手で頭を抑えられながら、少し苦しげにもがくようなしぐさをするのがとても艶っぽい。  
 やがて、イングリッドは、「ぬぱぁ……」という感じで口から王子のモノを放した。ネットリした唾液が先端から糸を引き、美しい唇はてらてらと光っている。  
 イングリッドの瞳はどこか陶然とした、妖しい光を帯び……その表情を見た私は、心臓を矢に貫かれたかのような衝撃を感じた。  
 それはもう、エロくて美しかったのである。  
 あのイングリッドにこんな顔が隠れていたとは……と、私はある種の感動すら覚えていた。  
 胸の高鳴りを押さえつつ、観察を続ける。  
 王子の濡れた逸物は激しく勢いよく、ぶるんとばかりに勃起していた。彼女の手がささげ持つように王子の男根を撫で、つつぅ……と滑らせるように舌で愛撫する。  
 蝋燭に照らされたひそかな闇の中で行われる淫靡な慰撫の儀式は、性的実体験の乏しい私にはどこか神秘的にも感じられた。  
 王子が微笑んで、イングリッドに何かを命じる。ついでに何か褒め言葉を加えたらしい。イングリッドの唇が「ありがとうございます」という形を作るのが見えた。  
 ベッドのそばに立つ王子の目の前で、イングリッドは寝巻きの前を自ら開き、豊かな乳房をさらけ出す。  
 王子はその白くまぶしい双丘を両手で嬲った。遠目にも信じがたい弾力とやわらかさで、ぽよんぽよんと形を変える。イングリッドが恥ずかしそうに視線をはずし、くっと唇を噛んだ。  
 王子の手は支えるように乳を掴むと、ムニュッと中央に寄せ、自らの男性をそれで挟むようにした。  
 そして、その乳の谷間を犯すように腰を振る。  
 ……なんだろう、あれは。気持ちいいのだろうか。実に変わった趣向のように思える。とてもとても、知的好奇心がくすぐられた。まるであのイングリッドのけしからん巨乳を性器として扱うかのような……。  
 それにしても、羞恥心に顔を真っ赤にするイングリッドはなんて可愛らしいのだろう。ああ、もっと近くで見たいものだ。というか、喘ぎ声とか聞きたい。早く操霊魔法の腕を磨いて、”リモート・ドール”を使えるようになろう。  
 そう決心しつつも、私は王子への羨ましさに悶えた。私も男の体なら……男根を生やす魔法とかはないのだろうか? いっそ魔改造とかで?  
 ついつい危険な思想にとらわれそうになった頃、王子がやや乱暴なしぐさでイングリッドの頭を抱き寄せた。亀頭をむりやりねじ込むようにしてイングリッドの口に突き入れる。目を閉じて腰を使う王子の口が何かの言葉をつむいだ。  
 おそらくは、「フィオ……」と。  
 そして軽く痙攣したかと思うと、ドクドクと精を撃ちはなった。  
 イングリッドは目を伏せて、王子が射精を終わるまでじっとしている。王子は最後の一滴まで、イングリッドに己の精液を舐めとらせた。イングリッドはまるで精子を受け止める道具のように口を使われ、それでいて反抗の一つもしなかった。  
 すべて終わったあとは、いっそ穏やかで満足げな顔で王子を見送ったのだ。王子は王子で、それ以上は彼女を弄ぶことも悦ばせることもなく、スッキリした顔で立ち去った。  
 王子と彼女の間にあるもの。  
 それは、忠誠……という括りに入れてしまってよいものなのだろうか。その答えを出すには、私にはまだ知識と経験が足りないようだった。  
 
 
「昨晩はおたのしみでしたね」  
 他の連中には聞こえないよう、小声でつぶやくと、イングリッドはビクリと反応した。  
「な、なんですか……? いきなり」  
「いえいえ。心配しないでください。フィオ姫には秘密にしておいてあげますから……」  
 ニヤリと笑うと、彼女は怖気を感じたように身を震わせる。  
「な、なんのことですか……?」  
「とぼけないでいいんですよ?」  
 私は自分のぺたんこの胸を寄せて上げるしぐさをして見せた。とたんに、イングリッドの手が飛んできてそれをパシーンと振り払う。  
「な、なな、なななななぬをっ……! いえ、何を言っているんだかさっぱりですが!」  
「真っ赤になって否定しても意味がないですよ、イングリッドさん。ところで参考までに聞きたいのですが、あれはなんというテクですか? 都会ではポピュラーなものなんですか? 将来的には私にもできますか? 無理そうですか?」  
 イングリッドは答えずに、沈痛な表情で顔を覆っている。  
「ふ、不覚……」  
「イングリッドさんは、色々と詳しいんですね。今度私に教えてください。色々と。ウヒヒ」  
 思わず口元がだらしなくなりつつ、私はイングリッドさんの太ももの裏側の微妙なところをそっと指で触れた。  
 彼女はぞわぞわっ、と産毛を逆立てて飛び上がる。  
「……フィオ姫には、言わないんですね?」  
「言いませんとも」  
 私は鏡の前で練習した媚態を駆使して、イングリッドの顔を下から覗き込んだ。なぜか、彼女は青ざめた顔でこわごわとあとじさる。  
「仲良くしましょうよ。ねえ? イングリッドさん」  
「うう……なんで私ばっかり、こんな目に……」  
 豊満な身体を両腕でかばうように抱きしめて震える彼女の、なんと魅惑的なことか。なんか興奮してきた。これまでは彼女の手で弄ばれる妄想で抜いてきたが、この先は彼女をペットにする妄想でもイケそうだ。  
 まったく、この旅では自分の新しい属性……いや側面に気づかされることが多い。これも成長であろうか。  
 ともあれ、愉しい旅はまだまだ続くのだった。  
 
「ウヒヒ。イングリッドさん、温泉で洗いっこしませんか」  
「このルーンフォーク、怖すぎる! もう嫌だ……!!」  
 
 
おわり  
 

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