ジャスティ「ミスティ姉上捜索の助けになればと思って貸しただけなのよ?」
ホーリー「それはひどいのじゃ」
ジャスティ「酷いよなぁ」
ジャスティ「姉上捜索の助けになればと思って貸しただけなのに、ですよ?」
ミスティ「それは……少々冗談が過ぎていますわね」
ジャスティ「悪い冗談ですよまったく」
ジャスティ「ミスティ姉上捜索の助けになればと思って貸しただけなのに、ですよ?」
セラフィ「ほほぉ、存外いい度胸をしているではないか。十年ぐらい強制労働か」
ジャスティ「いえ姉上落ち着いて。それは流石にやりすぎ……」
ジャスティ「ミスティ姉上捜索の助けになればと思って貸しただけなんだぜ?」
リオン「良かったね」(目も上げずに書類に書き書き)
ジャスティ「何処がだよ!」
リオン「良くないんだったら、それを僕に聞かせてどうしようって言うのさ」
ジャスティ「どうって……いや……別に」
リオン「僕に嫉妬の一つもさせてやろうってわけじゃないんだろ?」
ジャスティ「当たり前だ!」
リオン「君と政略結婚するのも将来的な選択肢の一つだとは思っているけど、感情的にはそのつもりは無いよ」
ジャスティ「あたしにだって無い! 政略結婚だってするつもりはない!」
リオン「それは結構。で、僕にその何とか言う冒険者をどうにかさせようってわけでもないんだろ? 実務は僕がやっているけど、名目上領主代行は君なんだから権力を振るうなら君がやった方がいい。どうせなら陛下に奏上した方が早いんじゃないか?」
ジャスティ「そんなつもりじゃない! と言うか姉上にはもう言った! 強制労働十年とか言い出すから止めたけど」
リオン「陛下にまで吹聴して廻るほど嬉しかったのか。まぁ、君が以前から冒険者に憧れてたのは知ってるからね。やはり『良かったね』としか言いようが無いよ」
ジャスティ「嬉しかったんじゃないって言ってるだろ!」
リオン「そうだ、喜ぶのはまだ早い。皇位継承権を捨てた君とでも結婚すると言われてからじゃないとね。向こうだって地位名声が目当てだろ。君が憧れてるのは君自身が冒険者として生きることであって、元冒険者の貴族と結婚することじゃない」
ジャスティ「違うってば!」
リオン「違うんだったら、厩舎の方からドラゴン用の騎獣厩舎をどうするか提案が来てるから行ってやってくれ。はい、書類」
ジャスティ「なんだよ、義兄なんだから愚痴ぐらい聞いてくれてもいいじゃんかぁ」
リオン「自慢なら聞いてやるよ。その気にさせるおためごかしも言ってやるさ。君が冒険者に降嫁するなら、僕にとっても都合が良いからね。でもそうじゃないなら、本来なら君がやるべき仕事を手伝ってやっている僕にまで吹聴して邪魔しないで欲しいね」
ジャスティ「もういいよ! ばかぁ!」
ジャスティ「全く。ジークは地位名声目当てに結婚とか言い出すようなヤツじゃないってのに!」
ノートン「ですけど冒険者なのですから、地位名声目当てに結婚するのも手段の一つなのではないでしょうかね」
ジャスティ「ジークは違うわよ。義兄さんは自分が地位目当てにあたしと結婚しようとか考えるヤツだから他人もそう見えるだけよ」
ノートン「でしたらジークさんはどうして結婚とか言い出したのでしょうかね」
ジャスティ「どうしてって、それは……え? あれ? まさか、ジークはあたしのこと……を? え、何? そういうこと?」
ノートン「私にはわかりかねます。ご本人にお聞きになってみるしかないのではないでしょうか」
ジャスティ「聞けるわけないじゃない、そんなこと! やだ、どうしよう。ジークは悪いヤツじゃないけど……だけど……」
ノートン「青春ですねぇ」