「悪いわね、ティリーくん。シャリンたら、ハーモニーさんトコのお茶会に出かけてるの。せっかく  
彼氏が会いに来てくれたってのに、タイミングが悪い娘よねえ」  
ほのかな湯気をたてるティーカップを来客の前に置きながら、マーナ・ウェルターは年若い恋人たち  
を哀れむように嘆息した。  
「お……お茶会って、ミライアル・ハーモニーさんの処で、ですか?」  
今にも裏返りそうな声で“妹の彼氏”が尋ね返す。  
マーナの恰好ときたら、カジノで踊り子をしている時のシャディと遜色ない。愛しい乙女とよく似た  
目鼻立ちをした女性の艶姿は、健康で純情な少年には目の毒だ。  
視線を逸らそうにも、ここはシャリンのプライベート・ルーム。マーナが勝手に通してくれた部屋の  
どこに目を向けたって、ティリー・ジャン・コッカーの心臓に負担をかけない物なんて何一つない。  
「そうなの。音楽教室の親睦会だって」  
しっとりと濡れているみたいな朱唇が遠慮なしに近づいて、彼の頬を吐息でくすぐった。おぼこな妹  
とは一線を画した“女”の香気に、若い身体が勝手に反応してしまう。  
「わぁ……女の子みたいに可愛い顔してるクセして、こんなゴツいのを持ってるんだ」  
ティリーが扱いに窮している部分をひょいと覗き込んで、マーナが賞賛の言葉をもらした。そして彼  
女は、うっとりと呟く。  
「この生意気者が、シャリンの処女膜を引き裂いちゃうのねぇ」  
「シャリン……の?」  
その刹那、ティリーの身体を流れる血液は、怒濤のごとく“その部分”へとなだれ込んだ。胸の奥を  
チクチクとさいなむ罪悪感が、勢いに拍車をかけていた。  
「まあ? シャリンって聞いたら、ますます元気になっちゃうの? なんて礼儀知らずな“坊や”な  
んでしょう。目の前にいる女に失礼って思わない?」  
「ご……ごめんなさい」  
理不尽な非難を浴びて恐縮する少年に、捕らえた鼠を弄ぶ雌猫を連想させる微笑が向けられた。  
「ティリーくんって……いつも、シャリンを思い浮かべながら『処理』してるの?」  
 
「処理? なにを、ですか?」  
「あら、とぼけちゃって。こ・こ・か・ら……」  
ズボンの布地越しにでも判るほど激しく脈打つ場所を、ねっとりとした視線が舐め回す。  
「あふれ出ちゃいそうになってる、ドロドロした、熱くて、苦ぁい、お・ク・ス・リ――絞り出す時  
には、シャリンを使ってるんでしょう?」  
「ぼく、そんなの、出したことありません……」  
“その部分”が単なる排泄器官ではなく他に重要な役割を兼任していることは、一般社会から切り離  
されて育ったティリーにとって、知識として知っているだけにすぎない。  
「まあ!? それじゃキミ、正真正銘の童貞クン?」  
興奮で頬を上気させながら、マーナははっと気付いて少年から距離を取った。貴重な“正真正銘の童  
貞”を暴発させてしまったら、悔やんでも悔やみきれないではないか。  
「……ねえ。シャリンを女にする、練習をさせてあげようか?」  
「れ、れれれ、れんしゅう?」  
いきなりの提案にパニック状態に陥る少年に、マーナは教え諭すように語りかける。  
「どっちも初めてじゃ、上手になんてできっこないもの。男はそれで気持ち良くたって、女ってデリ  
ケートなんだから。ぶっつけ本番だなんて、絶対にダメよ」  
もっともらしい理由を付けていても、ベッドの位置を横目で確かめながら舌なめずりする彼女の表情  
からは、自分が楽しみたいだけなのが見え透いていた。  
今やマーナに視線を向けることすらできないティリーには、それを知る手段などなかったけれど。  
「これもシャリンのためと思って……ね? 私と、練習しましょ?」  
「シャリンの……ため……?」  
「そうよ。私は、大切な妹の初体験を素敵なものにしてあげたいの。キミだって賛成でしょう?」  
妖花の毒花粉めいた誘惑に、少年の理性が崩壊する――まさしくその瞬間。  
ばん! と扉が開いたかと思うと、柳眉を逆立てた少女が、音楽教室で鍛錬した喉を駆使した。  
「姉さん! 私の部屋でなにやってるのよ!」  
 
「あら? やけに早いじゃないの、シャリン?」  
「イーシャさんが教えてくれたのよ! 今頃、ティリーがウチを訪ねてるって!」  
青天の霹靂に狼狽える素振りも見せない姉に、走り詰めで息を荒げた妹が怒鳴り返す。  
イーシャ・レン・ギルガメッシュ――通称ボウイは、音痴を矯正するためにハーモニー音楽教室に通  
っていたことがある。その縁で、今日のお茶会に参加していたのだ。  
それを聞いて、マーナはちぇっと舌打ちした。  
「しょうがないわねぇ。それじゃあティリーくんの童貞は、あんたに譲ったげるわ」  
「譲るも譲らないも、もともと私のでしょ!」  
自分が何を口走っているかも判らないほど激昂している妹に、姉は肩をすくめる。  
「はいはい。邪魔者は退散しますとも」  
けろりとした面持ちで部屋を出てゆきかけて、マーナはふと思いついたように振り返った。  
「それとも、もし判らないことがあったらアドバイスできるように、ここにいてあげようか?」  
「いいから早く出てって!」  
シャリンの金切り声を遮るように、扉が閉まる。姉の姿が視界から消えると、シャリンは、はぁっと  
大きな溜息をついた。それが深呼吸代わりとなって、少しだけ気分を落ち着ける。  
「ごめんなさいね、ティリー。姉さんたら、昔からあんな人で……」  
気まずい空気を取り繕おうとしながら、少女が恋人の方へと振り返った時――  
「ごめん! シャリン、ごめんよ!!」  
制御不能に陥った本能に命ぜられるままに、ティリーは獲物に襲いかかり、ベッドに押し倒した。  
衝動に押し流される自分の情けなさに、少年は両目に悔し涙すらにじませている。  
「ごめんよ、シャリン……僕、もう、我慢できない……」  
「……いいよ」  
力ずくで組み伏せられ、顔から血の気が失われるほど怯えながら、シャリンは微笑んでみせた。気力  
を振り絞って、思いの丈を絞り出す。  
「私は、心も体も、ティリーのものなんだから。ティリーの好きなようにしていいの」  
 
「……シャリン!!」  
ティリーは、布地を引きちぎらんばかりの勢いで、シャリンの衣服をはぎ取る。  
初めて目にする真っ白な柔肌――この感激を表現する言葉を、ティリーは知らない。ただありきたり  
な感想が、口をついて出るだけだ。  
「きれいだ。なんてきれいなんだろう……」  
「……あんまり、見ないで。私のおっぱい……小さいから……」  
我が身に注がれる視線の熱さに耐えきれないように、シャリンが哀願する。  
「そんなことないよ。シャリンのおっぱいって、僕の手にピッタリな大きさで、まるで僕に合わせて  
……僕のためだけに作られたみたいだ」  
その言葉を確認するように、ティリーは小振りな乳房に手の平を置いた。彼女を傷つけないよう注意  
を払って、ゆっくりと指をはわせる。  
「なんて柔らかいんだ……あったかくて、すべすべしてて、とっても気持ちいい……」  
慎ましやかなふくらみの狭間に、彼はむしゃぶりつくように顔を埋めた。谷間と形容できるほどには  
深くないその場所に、頬をこすりつけて、思う存分に感触を楽しむ。  
「ああ……それに、なんていい香りなんだろう」  
「や、やだ。私、走ってきたから……汗くさい……」  
羞恥で消え入りそうなシャリンのささやき声をしっかり聞き取ったティリーは、舌を伸ばして、彼女  
の胸元から首筋までを、べったりと舐め上げる。  
「本当だ。汗でしょっぱいや。不思議だね……シャリンからは、こんなに甘い香りがしてるのに」  
「そんな……意地悪……言わないで……」  
いやいやと首を横に振るシャリンに、ティリーはそっとおねだりする。  
「ね、シャリン……脚、開いて」  
そう言った時には、彼はすでにシャリンの両脚をつかんでいた。彼女の返事を待とうともせず、弱々  
しい抵抗ををはねのけて、ほっそりとした太股を左右に大きく押し広げる。  
淡い茂みにおおわれた“その部分”が、ティリーの目にさらされた。  
 
「え? やだ……恥ずかしいよ……」  
「ごめんよ。僕、初めてだから……きちんと確かめないと、巧くやれる自信がないんだ」  
リュクティやシャディが(からかい半分で)してくれた「男女の営み」についてのレクチャーを懸命  
に思い出しながら、ティリーは、間もなく蹂躙すべき目標を間近からしっかりと観察した。  
「じゃあ、いくからね」  
宣言とともに“正真正銘の童貞”をシャリンの“乙女”にあてがい、がむしゃらに突撃する。  
「――――っ!!」  
「ごめん、ごめんよ! 我慢して!!」  
声にならない悲鳴をあげるシャリンに向かって、今日何度目かになる謝罪の言葉をかけながら、ティ  
リーはなんとか入口をこじ開けようとする。  
と――ぷつっという感触とともに、いきなり抵抗が失われた。障壁を貫いた肉杭が、シャリンの最深  
部まで一気に潜り込んでゆく。  
「ぜ、全部……入った……」  
ティリーが告げると、シャリンは痛みを堪えながら、はにかむように微笑んだ。まるで救いを求めるかのように、我が身と我が心とをを完全征服した男の首にしがみつく。  
「嬉しい……ティリーと一つになれて……こんな近くに、ティリーを感じられて……」  
「僕もだよ。シャリンが、こんなに、そばに……うっ!」  
肉壁に包まれながら、何度か腰を往復させたティリーは、あっけなく限界に達した。  
いや――よくここまで耐え抜いた、と、賞賛すべきかもしれない。  
精巣が機能を開始して以来初めて解放を許された生殖液が、愛しい女の真っ直中で炸裂する。  
「うっ! くぁあっ!!」  
苦悶にも似た咆吼とともに、ティリーは生まれて初めての快感に全身をぶるぶると震えさせた。  
「シャリン……出てる、出てるよ……僕の……が……シャリンの、なかに……」  
「あ、あ、あ………。ティリーが……私のなか、で……熱い、よ……」  
そして二人は、お互いの身体をぎゅっと抱きしめ合った。  
 
 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *   
 
そんな二人の姿を、天井裏から、一匹の黒猫が見下ろしていた。  
 
 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *   
 
同日同刻。  
ベルダイン旧市街の宿屋〈牢獄亭〉の一階食堂で、少女が、一つの物語を語り終えた。  
 
ボクが“その瞬間”を告げると――  
「ぃよぉぉぉぉし!」  
シャディは両手の拳をぐっと握りしめて、力強くガッツ・ポーズした。  
「いやあ、二人とも初めてで大丈夫なのかって心配してたけど、案外と巧くいったみたいだねえ」  
「だから私が言っただろう。好き合った者同士、どうにかなるとな」  
勝ち誇るみたいにレイハが言うと、シャディがフンと鼻を鳴らして言い返す。  
「根拠もないのに、よくそこまで言い切れるよねえ。リュクティが、あんたの前に女を知らなかった  
とでも思ってんのかい?」  
そのやり取りにボクはちょっとヒヤッとしたけど、当人たちは和やかに笑い合っていた。  
ちょっと前までの二人なら険悪な雰囲気になってたに違いないって会話だったけど、今は、おめでた  
い席での他愛のない冗談ってことで済んだみたいだ。  
サティアさんも満足そうにうなずいて、両手をお祈りの形に組んだ。  
「……運命を司るヴェーナーよ、感謝いたします」  
信仰にはトンと縁のないボクには、こんなこと感謝されたってヴェーナー様も困るんじゃないか、っ  
て気がするんだけど。  
 
「ボウイ――ああ、その、なんだ……ご苦労さん」  
ちょっと気まずそうに、リュクティがボクをねぎらってくれた。  
使い魔にしている黒猫アンラッキーの目を通して見た光景を、みんなに向かって実況する羽目にな  
っちゃったボクを。  
音楽教室を飛び出してったシャリンちゃんが心配で、アンラッキーに後をつけさせた時には、まさか  
こんなことになるなんて思ってもみなかったよ、ホントに。  
アンラッキーを送り出した後、一人じゃどうしていいか判んなかったボクは、サティアさんに相談し  
ようと〈牢獄亭〉に駆け込んだ。  
幸か不幸か、そこには他の三人もそろってて……。  
そしたらティリーったら、アンラッキーに(つまりボクにも)覗かれてるとも知らないで……。  
思い出しても顔が赤くなるボクを、リュクティはねぎらい続ける。  
「生娘のボウイにゃ、ちょっと刺激が強すぎたかもしれないけど……その……参考になっただろ?」  
・・・・・・おい。  
「バカモノ! それが花も恥じらう乙女に向かって言うことか!」  
あきれてものも言えないボクに代わって、レイハがリュクティの後頭部をぶん殴った。  
そんな二人と、さっきまでのティリーたちの姿とを引き比べて、恋人ってなんなんだろう?――なん  
て哲学的な感慨にひたっているボクのそばで、シャディがぽんと膝を叩いた。  
「そっかあ。これで、あたしらン中で未経験なのは、ボウイだけかあ」  
そしてシャディは、にたりと笑った。今まで、ティリーをからかってた時みたいに。  
・・・・・・え゙?  
も、もしかしてボク……墓穴を掘った?  
 
          END  
 

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