シャイアラは退屈していた。時刻は宵、初春の夜はまだ冷たい。気分が乗らなかったので  
夕食を済ませると早々に部屋に戻っていたのが失敗だったのかもしれない。  
「ね〜、ブック〜」  
寝台に寝転がったまま同室のグラスランナーに呼びかけてはみるが、ブックときたら異様に  
分厚い本に視線を落としたまま生返事をするだけだ。  
「……ブックってば」  
「ちょっと待って下さい。もうすぐこの章を読み終わりますから」  
体よくあしらわれて不貞腐れるが長くは続かない。元々気の長い方ではないのだ。  
とん、と素裸の足を床に下ろす。  
背もたれなしの丸椅子に腰掛け、熱心に本を読みふけるブックはそれに気づかない。  
そろそろ忍び足で背後に回る。眼下に位置するつむじを突っついてやりたい衝動に駆られるが  
ここは我慢。代わりに、  
「ブッーク!」  
「うわわっ?!」  
後ろから急に抱きつかれブックは椅子からあやうく落ちかけた。それでも本は手放さない。  
抱きついたシャイアラは、エルフらしく整った目元を悪戯っぽい角度にあげ、ブックの頭に部屋着  
一枚まとっただけの胸と形のいい鼻を押しつけていた。そのまますりすり小さな頭を抱きしめる。  
草原を行くグラスランナーなら土と草の、人の街に溶け込む者ならその街の匂いがするはずの  
髪の毛からは、インクと古紙のにおいがした。  
「本は後でも読めるでしょ〜?」  
だから今は自分を構えと言外に滲ませて胸元へと引き寄せる。  
椅子の高さが合わないため、空中でじたばた揺れる二本の足が可愛い。  
 
するりと身体を下げて耳朶をくわえてみた。  
「……姐さん」  
「はにひょう」  
はむはむ歯を立てないようにブックの耳を口に入れたまま喋るものだから、聞き取りにくいこと  
この上ない。  
湿った感触に頬を赤らめながらブックが訊ねる。  
「退屈なんですね」  
疑問というより確認。唇を離して「うん」とシャイアラが頷く。  
「ね、久しぶりにいいでしょ?」  
満面の笑顔で省略のやたらと多い台詞を口にする。理解されずに聞き返されることも、ましてや  
拒否される可能性なんぞ端っから考えていない態度だ。  
「ほらほら〜、読書ばっかりじゃクレスポみたいにひ弱になっちゃうわよ〜」  
「別にクレスポさんは運動していなかったわけではないと思うのですが……」  
筋力は平均値のくせに生命力エルフ並という仲間の顔を思い浮かべ訂正を試みるが、シャイアラ  
は素知らぬ様子だ。あの小刻みにひょくひょく動く耳は、都合の悪いことは聞こえないようになって  
いるらしい。  
まあ取り合えず、シャイアラの我侭にはブックは慣れている。  
「はいはい、じゃあベッドに行きましょうか」  
「わ〜い、ブック、大好きー」  
それに、心の底から嬉しいと言われれば悪い気はしないものだ。  
 
 
「ん」  
ベッドに横座りしたシャイアラが、同じくベッドに上がったブックへと両手を突き出す。ブックは心得た  
もので、手際よくシャイアラの部屋着のボタンを外してよいしょと脱がせた。裾をつかんで手繰り  
寄せる。緩く波打つ金髪が薄い布に隠れてまた現れた。  
肌着を下の方しか着けていないので、エルフにしてはふくよかな乳房が露わになった。  
 
「ほら、ブックも脱ぐ」  
ブックが着たままなのはシャイアラのせいでもあるのだが、どちらも気にしない。シャイアラの部屋着を  
畳んでサイドテーブルに置くと、ブックも自分の服を脱いだ。  
「ちゅーってさせてね?」  
返答を待たずに裸のブックを引き寄せて、腰を覆う薄布一枚のシャイアラが頬にキスをする。ちゅっと  
濃厚さとは無縁の可愛らしい音がした。次いで反対側の頬、こめかみ、額。眼鏡の蔓を僅かに掠って  
ブックはクイクイと眼鏡を押し上げた、  
と言いたいところだが、実のところシャイアラの身体が近すぎてそれだけなのに一苦労だ。どうにか  
谷間に腕を滑り込ませて目的を果たす。  
「……」  
「……姐さん?」  
不機嫌そうに唇を尖らせるシャイアラが、ほんのちょっとだけ身体を離して、  
「……くすぐったい」  
ブックは一瞬きょとんとするが直ぐに察し「すいません」と謝った。ついでにご機嫌をとるかのように  
滑らかな白い肌にキスをする。  
嬉しそうな笑い声が珊瑚色の唇から零れた。こういうくすぐったさなら歓迎とのこと。  
唇が重なる。  
先に割って入った舌はどちらのものか。この際たいして関係ない。どうせ一秒も置かずに絡み合い  
唾液を塗りつけて互いに貪欲に相手を味わおうと躍起になっているのだから。  
そろそろ息が苦しくなって、どちらからともなく離れる。  
へたんとシーツに尻をつけるシャイアラにブックが圧し掛かった。  
脇腹を繊細な仕草で撫ぜられて、短い吐息。  
固くしこり始めた乳首を甘噛みされて、翡翠の瞳が熱に潤む。  
ブックの手が最後の着衣に触れた。  
「姐さん」  
「うん……」  
こればかりは任せ放しというわけにもいかない。腰を上げてすべらかな脚を薄布が滑っていくのを  
手伝う。  
 
ランプの灯りに髪と同色の毛が淡く輝いた。ただし色のせいだけではなく、染み出した粘性の体液も  
一役買っていた。堰を切ったようにとろとろ溢れてきて、早くはやくと誘う。  
シャイアラは両の肘で上半身を支え、立て膝のまま脚を割り。甘えた声でブックを呼んだ。  
ぐっとふとももに体重が預けられ、  
鼻にかかった甘い喘ぎが長く響く。入った瞬間、淡い桃色に染まった身体が弓なりにしなった。  
触れている箇所で、熱と汗と別種の体液が混じる。  
ごつと弱い場所を突かれて脚に思わず力を入れた。止める為だったのかも知れないし、続けて  
欲しい離れないでというつもりだったのかも知れない。  
ブックは後者ととった。  
何度もなかに擦りつけて、互いにとって一番気持ちいい場所へと押し当てる。  
ほっそりした腕が伸びてブックをぎゅうっと抱き寄せた。身長差から乳房にブックの顔が当たる。  
眼鏡の冷たさを予想したが、熱が移ったのかそれほどでもなかった。  
上擦る声で名前を呼んだ。身体を合わせて、繋がった。深く。  
くながる奥で弾ける感触。  
あつくて、するどくて、  
愛しい。  
 
 
身体を拭いて新しい部屋着に着替え、すっきりさっぱりしたシャイアラは、ブックを抱きかかえると  
ベッドにごろんと横になった。  
身動きのとれなくなったブックが顔を上げて抗議する。  
「あの、ボクは本の続きが読みたいんですが……」  
「本は明日でも読めるでしょ〜?」  
シャイアラの腕はブックをしっかり囲んだままだ。シャイアラがブックを抱き枕にすると決めた以上、  
明日の朝までこの状態が続くのは間違いない。  
ブックは仕方ないか、とばかりに苦笑して、今夜は―――もしくは今夜『も』我侭エルフのなすがまま  
になる覚悟を決めた。  
 

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