奴隷として調教された後、ハードプレイ何でもありの高級娼婦として「売り」をやらされてるベルカナ  
監視付きだけど、久々に街中を歩いてる最中、クレスポに出会って上の会話に  
その晩、ベルカナに指定された場所に行ってみると、そこはお高い有名な娼館  
 
「そういうことがしたければ、ここにでも行けってことかな…からかわれたっスかね?」  
 
と思いつつ、中を覗くと、受付からクレスポの名前で予約を入れてたことになっており、奥へと通される  
ドアを開けると、中で薄手の扇情的な服を着たベルカナが…  
 
「お待ちしてましたわ…旦那様」  
「旦那様?……ベルカナ…ッスよね?」  
「あら、ご主人様、とかの方がいいのですか?クレスポさん」  
「いや、旦那様でも………これ、ギャグっすよね? シャイアラさん辺りとグルになって、俺をからかって…」  
「からかって?」  
「えーと…その……そうか、魔法ッスね!? いくらなんでもできすぎッス! ベルカナの魔法で、俺ってば幻を…」  
 
いまだに困惑してるクレスポに近づいて、手を取ると、いきなり自分の胸に押し付けるベルカナ  
その小さいながらも柔らかい手触りに、いよいよ洒落では済まない状況に居ることを悟りはじめるクレスポ  
ゆっくりとだが、自分の意思でベルカナの胸をもみ始めるが、その先端、乳首の辺りに異物(ピアス)を感じる  
あのベルカナが、こんな場所で、こんな格好で、自分に胸を触らせ、性倒錯者のように、乳房に、ピアスを…  
 
気付けば、薄い胸を乳首をピアスごと捻り上げて、本当にピアスを付けてるかを確認し、  
ベルカナが息を荒げてることに気付かない。  
「んっ…!あまり、そこばかり…虐めないでください、クレスポさん…そこ、弱くて…あっ…!」  
突然、ベルカナをベッドに押し倒し、上から覆いかぶさると…  
 
「…………」  
「…………クレスポさん?」  
 
先ほどまでの勢いを失い、ベッドに覆いかぶさったところで、クレスポの動きが止まっていた。  
「……ベルカナ、名前」  
「え?」  
「俺のこと、名前で呼んでるッス」  
 
旦那様かご主人様と呼ぶ、などと言っていたのはベルカナだ。  
しかし、押し倒す寸前に呼んだのは、自分の名前。  
 
「も、申し訳ありません、旦那様…」  
「……そういうの、やっぱり…らしくないッス、ベルカナ」  
 
床に下りて、数歩を後ろに下がると、そこには珍しく神妙な顔になっているクレスポの顔があった。  
正直、勢いに任せてベルカナを抱かなかったことを(特に股間が)猛烈に後悔していたが…  
 
(あー……何であそこでやめてしまったんだろ…馬鹿馬鹿!俺の大馬鹿野郎ー!! だぁー!我ながらどうかしてるッスー…!)  
 
…いやいや!違うぞ俺!  
ベルカナは無理やりこの状況に居るわけで、それを颯爽と助け出すクレスポ様!  
それに感激したベルカナは、『ありがとうございますクレスポさん!お礼にあのときの続きを…』  
とか言って無制限においしい夜が待っているに違いな  
 
「らしくないとは、どういう意味ですの」  
 
ベッドに半身を起こしたベルカナの質問の声により、現実に帰還するクレスポ。  
 
「…そう!そうッス!ベルカナ! 俺、ベルカナの親父さんに伝えて、ここから身分を引き上げてもらうッス!」  
「え……?」  
「ベルカナに何があったかはしらないッスけど、奴隷だろうがなんだろうが、金さえあればOKなはず!  
親父さんに言って、ライオー見たく身請けを…」  
「……嫌ですわ」  
 
先ほどまでの媚びる様な表情を一変させて、ベルカナは表情を硬くする。  
 
「嫌…って、ちょ、な、何でッスか!? 払うもの払ってこんな所さっさとおさらばしてしまえばいいんスよ!  
ライオーだって剣闘士奴隷になってたけど、親父さんが金で解決…」  
 
「私の状況は、ライオーさんとは違いますわ」  
 
表情を変えぬまま、クレスポの言葉を遮る。  
 
「男の方が剣闘士奴隷として戦うのと、女性が娼婦として体を売ったのとでは、違うのです。  
…お父様には知らせないでください、クレスポさん……いくらなんでも、惨め過ぎますわ」  
 
自分が奴隷として調教され、幾人の男に体を使われ、嬲られた日々を、クレスポは知らない。  
いや、あの時、街で偶然会わなければ、この状況自体を知らなかっただろう。  
 
「惨めッたって、ここでずっと娼婦続けるつもりッスか!? ダメッスよそんなの!!  
親父さんに言うのがどうしても嫌だって言うなら、俺たちがベルカナの身分を買い取るとかで……」  
「あなた、奴隷の、それも女性のお値段をご存じないんですの?  
一介の冒険者程度がそうそう手出しできる金額じゃありませんのよ」  
 
ライオーの父が持っていた、山ほどの金を詰め込んだであろう袋を思い出す。  
一回勝っただけの、男の剣闘士を買うだけで、アレだけの金が必要だったのだ。  
実際には、ライオーの所有者は自分たちの知り合いだったので、もっと安くはなっていただろうが…  
 
「う……むぅ…じゃ、じゃあ内容を隠して、お金だけ借りるとか…」  
「いいから、余計なことはなさらないでください。  
…時間はかかりますが、奴隷であっても、自分の身を自分で買うのは不可能ではないのです。  
私を助けたいと言うのでしたら、クレスポさんがここの常連にでもなってくれた方が、まだ少しは助けになりますわ」  
 
確かに、借金の形に売られたのならば、娼婦としての稼ぎで返せば、自分の身分を買い直せるだろう。  
しかし、ベルカナは連れ去られてここに居るのだ。…本当に自由を得られるのだろうか?  
助けは要らないというのは、ベルカナの決意、いや、拒絶なのだろう。  
奴隷になった自分に情けなどかけるなと、余計な真似をするなと。  
 
だがこれは、どん底に落ちた自分を奮い立たせていると言うよりも、  
最後に残ったプライドにしがみ付いて、自棄にでもなってると考えた方が自然か…  
 
「…………わかったッス。今日のところは…俺、帰るッス」  
 
突然背中を向けて、クレスポは入り口へと向かう。その背中に、部屋に入った時のような甘ったるい声でベルカナが声をかけた。  
 
「あら、私を抱いては下さらないんですの、旦那様?  
先ほどは、あんなに私の体を可愛がってくださいましたのに…」  
「帰るッス!!」  
 
ドバンッ!!と、娼館全体に聞こえるような音を立て、扉が閉まった。  
 
「……ふん。抱かれないで済んで、お得でしたわ」  
 
呟いてベッドに仰向けに転がると、部屋の天井が見える。  
(…さっきはクレスポさんのムサイ顔が見えてましたけど)  
ちらりと、横目でドアを見やる。  
今日のところは、などと格好付けていたが、もうここには来るまい。  
のこのことやって来るくらいならば、今ここで自分を抱いていただろうから。  
 
「あのような顔でも、もう見れないとなれば…少し寂しくもありますわね。 まあ『枯れ木も山の賑わい』と言ったところでしょうか」  
 
…少し違ったかもしれない。だが、どうでもいいことだろう。  
次にあの扉を開けて自分を求めるのは、別の相手だ。本当にどうでもいい。  
 
だが、  
 
ブックさんなら、正しい意味を知ってたでしょうか。  
シャイアラさんなら、ムサイと言うところに同意してたかも知れないですわね。  
マロウさんならば、『仲間をそんな風に言うのはよくないだよ』とでも言って諌めて来るのでしょう。  
お父様なら、  
お師匠様なら、  
 
不意に、鼻にツン、としたものを感じて、うつ伏せにひっくり返る。  
 
二人以上寝ることを目的としたベッドに見合うだけの、無駄に大きな枕に顔を押し付けて  
少しだけ、泣いた。  
 

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