「うーん……」
自室で、イリーナは深く唸り声を上げた。
「やっぱり、ちょっと怖いかも……」
様々な武器を使いこなしてきた自分にとっても、それは未知の刃物だった。
使い方を誤れば、自らの体を傷つけてしまうかもしれない。
「じゃあ、こっちにしよう………」
やはり、使い慣れたものに勝るものは無い。日常生活でもよく使うそれを手にし、試しに「素振り」してみる。
ちょき。ちょき。ちょき。
「……うん。やっぱりこっちにしよう」
ちょき。ちょき。ちょき……。
「何で急に……恥ずかしい……」
ぶつぶつと一人ごちながら、「得物」を操る。だが、「敵」が「敵」だけにさすがのイリーナも苦戦している。
いつもの筋力ゴリ押し戦法が効かない。どちらかというと、器用さを要する敵だった。
「……やっぱり、あれじゃないと上手くできない……残っちゃう」
かた、と軽い音を立てて得物を置く。だが、敵はまだしぶとく生き残っている。
やはり、慣れない得物に頼るほかないのだろうか。
再び、うーんと思案する。
と、そこへ。
「おーっす、イリーナ。来たぞ」
「………」
ばーん、と傍若無人に扉を開け放って、ヒースが入ってきた。
「……お? ハハハ、どうしたイリーナ、もう準備万端カ?」
ヒースの視線は、イリーナの下半身へと釘付けになった。
イリーナは、下半身すっぽんぽんだったのだ。
「……きゃあああああ!! ヒース兄さん、勝手に入ってこないでください!」
「勝手に、って今日は大丈夫だからって呼んだのはオマエじゃなぶがばべっ!!」
悲鳴を上げたイリーナの拳が、ヒースの顔面にめり込んだ。
「……で? 最近、なぜだか急成長してきた、と」
「……はい」
ぶすっとした表情で方膝をついたヒースが、問いただすように言う。イリーナはしゅんとなってそれに答える。
「それで、今朝起きたら、薄く陰毛が生え始めていた、と」
「………はい」
真っ赤になって答えるイリーナ。
「で、カミソリで剃るのが怖くて、ハサミで切っていたと?」
「………」
無言で頷くイリーナ。
「ぶわははははははは!!」
「わ、笑わないでください! きゅ、急に生えてきてすごく恥ずかしかったんですから!」
腹を抱えて爆笑するヒースに、真っ赤になって怒るイリーナ。
もうすでにパンツもスカートも履いているが、心なし恥ずかしいのか手は股間を隠している。
「い、いや、むしろ今まで生えてなかったことのほうが恥ずかしい気が……ぐべらっ!」
笑いながら続けるヒースの顔面に再び容赦なくイリーナの拳がめり込む。
鼻血を流して悶絶するヒースにキュア・ウーンズを駆けてから、ぷいとそっぽを向くイリーナ。
「もう知りませんっ!」
「ま、まぁまぁ。ちゃんとオトナになってる証拠じゃないか。そして成長してるのは、この俺様のおかげだろう?」
にやりと笑いながら、イリーナに後ろから抱き着いてぷにぷにと胸を揉みだすヒース。
「あぅ……えっちです、ヒース兄さん……んっ」
「どーれ。じゃあそのイリーナがオトナになったところを、ヒース兄さんに見せてみなさい」
イリーナをベッドに横たえると、スカートの中に手を突っ込み、するするとパンツを脱がしにかかる。
「ひ、ヒース兄さん、オヤジっぽいです……」
「うっさい」
ヒースはイリーナの足からパンツを抜き取ると、今朝方陰毛が生えてきたという恥丘を覗き込んだ。
確かに、陰毛が生えていた痕跡があった。だが、今はハサミで切り取られていて、根元がかすかに残っている程度だ。
「はっはっは。イリーナ。天然モノに勝るパイパンはないz……あしげっ!」
今度はヒースの顎に強烈な蹴りが見舞われた。
「ヒース兄さん、汝は邪悪です……」
「げふげふげふ……じゃ、じゃあ真面目にやらせていただきます、イリーナさん」
咳払いをしてからイリーナの秘所に手を伸ばすヒース。
「んんっ……はぁぁ……」
すでにぬれ始めていた割れ目を指でこする。くちゅくちゅと水音が部屋に静かに響き渡る。
「あふっ、ヒースにいさ……気持ちいいです……」
「どれ。じゃあそろそろ、味見させてもらうか」
ヒースは指を動かしながら、顔を近づけ舌を伸ばす。あふれ出る愛液を掬い、口に運び、かと思えば舌を激しく動かし、必要以上に音をたててイリーナを攻め立てる。
「あっ、あくっ、うっ、ひっ、ヒース、にいさっ……ああっ!」
びくびくと震えながら、快楽を貪るイリーナ。
「こっちは……」
今度は、イリーナの切ってしまった陰毛跡に舌を這わせるヒース。
「んー……やっぱハサミじゃ跡が残りすぎるな。ジョリジョリしてオヤジの髭面みたいだ。ほれ、じょりじょりじょり……もげらっ!」
懲りないヤツだ。再びイリーナの蹴りを食らって昏倒するヒース。
「もう少し雰囲気考えてください……っ」
打ち所が悪かったらしく、再びキュア・ウーンズをかける。えちぃの最中に回復魔法を飛ばすカップルも、そう多くはいまい。
「もう今日はいいです!」
衣服を引っ張り寄せるイリーナ。
「ま、待てイリーナさん。わかった、俺が悪かった。その礼に」
「お礼に?」
「俺様が綺麗に剃ってやろう……うおおおお!?」
6ゾロ的紙一重回避。突き出されたイリーナの拳を寸前で避けるヒース。
「冗談でいってるんですか?」
にこにこと笑顔のイリーナだが、逆に怖い。
「い、いいや、そんなつもりじゃ。カミソリの使い方がわからないっていうから俺様が親切丁寧にレクチャーしてやろうと思っただけでしてお前も剃りたくなったら自分で出来るほうがいいだろうと」
だらだらと汗を流しながら、一息で言い訳するヒース。
イリーナはしばらく黙り込んでいたが、右斜め45度の角度で頬を染めて、
「……じゃ、じゃあお願いします。優しくしてくださいね」
「……へ?」
なし崩し的に、イリーナの剃毛をする羽目になったヒース。
「しかし剃る意味のないような毛の跡だしな……」
「ジョリジョリで髭みたいっていったのはヒース兄さんです」
どうやら、そのことを気にしているらしかった。
「……へいへい、わかったわかった。俺が悪かったよ」
観念して、イリーナの恥丘に泡を塗りたくるヒース。そして、カミソリを押し当て、ゆっくりと動かし始めた。
シャッ、シャッと刃を滑らすたびに、微かに残ったイリーナの陰毛が剃られていく。
「ん……なんか、変な気分です」
「……だろうな……感じるなよ」
「か、感じてません!」
ぴくん、と微かに動いたイリーナを窘めるが、逆効果なような気がする。
次第にイリーナの恥丘が、以前と同じようなツンデラになっていく。
「よし、出来たぞ」
「は、はい……」
ヒースが残った泡を拭き取ると、そこは元通りのつんるつてんに戻っていた。
「どうだ?」
「……うー……なんか」
言いよどむイリーナを、ヒースはにやにやと促す。
「なんか?」
「……なんか、恥ずかしいです」
「生えていたのが恥ずかしいといったり、元に戻っても恥ずかしいといったり、難儀なヤツだな」
「だ、だって……」
そこで、ヒースはふっ、と笑ってみせる。
「そういうのがオトナってもんだ。オトナになると、あるのが当然になるからな。無くなると、急に恥ずかしくなる。お前は立派にオトナになってきたってことだ」
「ひ、ヒース兄さん……」
「と、いうことで」
「?」
「オトナなイリーナとは、オトナの遊びをしようじゃないか、うはははは」
「! や、やっぱりヒース兄さんはオヤジです! オヤジすぎます!!」
今までちょっとじーんとしていたというのに、イリーナは真っ赤になって枕を投げつける。
「わはははは、逃げても無駄だぞ。まさかエキューだけでなく俺様までこれをやるとはな」
などとほざきながら、ルパン飛びでイリーナに飛び掛るヒース。
「あーん、もうー!! ヒース兄さんなんか知りませんっ!!」
ごけばきょめぎっ☆