アラシャ・クリューワは、颯爽とした女である。  
礼拝する女神官の背中に見惚れながら、ライシードル・アレリーはそう思った。  
胸元で両手を組んで祭壇の前に片膝をつき、軽くこうべを垂れる。たったそれだけの姿勢から、彼女  
の凛とした気性がはっきり感じ取れる。  
それが、ベッドの中ではまるで別人みたいに――と、不埒な回想に浸りかけて、ライは慌ててそれを  
振り払う。場所も場所、マイリー神殿の中でそんな妄想をしたら、神罰が怖い。  
いや――当の女神官にばれたなら、神罰よりもっと怖い。  
「勇壮なるマイリー神よ……」  
付添者の葛藤も知らぬげに、アラシャはおごそかに祈りを続ける。  
いけないと思いつつも彼女の脇腹から腰にかけて降りていったライの視線は、尻の丸みに引きつけら  
れてしまう。  
その曲線は震えが走るほど艶めかしくて、ライはゴクリと唾を飲み込んだ。  
 
「ねえ、ライ」  
御当地の神殿への挨拶詣を終えて宿へと帰る道すがら、アラシャは、隣に並んで歩く男におずおずと  
話しかけた。  
「あなた、あたしがマイリーに祈ってる時に……あたしのお尻ばっかり見てたでしょう?」  
「ど、どうしてそれが?」  
図星を指されてうろたえる青年に、アラシャは軽く肩をすくめた。  
「どうしてって……なんだか、判っちゃったのよ」  
まさか“神の啓示”ではないでしょうけれど――と、呟きかけて、アラシャは慌ててその言葉を呑み  
込む。神に仕える身にあるまじき不敬をごまかすように、彼女はライをなじった。  
「あ……あなた、あたしを眺めながら、いやらしいことを考えていたんでしょう? マイリー神に祈  
っているあたしを、頭の中で裸にして……身体じゅうを、撫で回して……」  
八つ当たりする女神官の吐息が、だんだんと熱を帯びてゆく。  
 
「ライったら、あたしの弱いところを知り尽くしてるから……あたし……あ、あたし……」  
背徳がもたらす甘美さが、アラシャの思考をあらぬ方向へと暴走させていた。うわずった声で呟くに  
つれて、小刻みに膝が震えてゆく。  
「あ! そこは、ダメ……ダメだったら、ライ……」  
そして――戦神の敬虔なる信徒は、自らの妄想に敗北を喫した。  
「ああ、あたし……ライに犯されちゃう……神殿の中で……マイリーの御前で……!」  
まっすぐ立っていられなくなったアラシャは、男の胸へとしなだれかかった。彼女の全身がかっと火  
照っているのが、ライに伝わる。  
「急いで宿に帰ろう」  
くずおれそうになる肢体を支えてやりながら、ライは足を速めようとする。  
けれどアラシャは、イヤイヤをするように首を振った。  
「……あたし、宿まで……我慢できない……」  
息を荒げながらそう言うと、彼女は廃屋が立ち並ぶ狭間――見通しの悪い路地を指差す。  
「あそこだったら、人目につかない……わよね?」  
呆気にとられるライの腕を引っ張って、アラシャはふらふらとおぼつかない足取りで路地裏へと踏み  
込んで行った。  
 
廃屋の壁に背中から寄りかかったアラシャは、握りしめていたライの手をズボンの隙間から差し込ま  
せ、自らの繁みの奥へと導いた。  
「……いやらしい神官さんだな」  
指先を濡らした淫蜜を舐め取ったライが呆れたように呟くと、潤んだ瞳が彼を睨み返す。  
「あなたのせいよ……あなたが、あたしを、いやらしい目で見るから……」  
「じゃあ、責任は取るよ」  
苦笑混じりにうなずくと、ライはアラシャの身体をくるりと振り向かせた。壁に両手をつかせた彼女  
のズボンを、下着もろとも膝まで引きずり下ろす。  
 
「あ、あぁ! もう限界なの……早く、来て」  
きゅっとしまった真っ白い尻を差し出し、淫らに腰をくねらせて、アラシャが求める。  
ゆらゆらと揺れる尻肉に目を奪われながら、ライは猛る戦槌を外気に当てた。  
街人が行き交う大通りから廃屋一つを隔てただけの路地裏で、交合すべき部分ばかりを露出した一組  
の男女。その姿は、なまじ全裸になるよりも淫猥だ。  
「行くぞ」  
しとどに濡れた姫洞をめがけて、肉欲の戦槌が一気に突き込まれる。  
「あ!」  
待ちわびた瞬間に、アラシャはクンと顎を上向かせた。  
空虚な部分を埋めてもらえた充足感に、女は唇をわななかせる。そして、男が抽送を始めるのを待ち  
きれないように、自分から腰を動かして愉悦をむさぼる。  
「あぅぅん……す、素敵! すてきよっ……!」  
一本に編み込んだ髪を激しく跳ね回らせながら、アラシャは喘いだ。身体をひねって後ろを向き、半  
開きにした唇から舌を伸ばしてキスをねだる。  
即座にそれに応じたライは、同時に彼女の乳房をもみしだく。隅々まで相手を知り尽くした指先は、  
服の上からでも正確に乳首の位置をとらえていた。  
「うぅん! んっ、ン、んぅぅっ……」  
激しく絡め合わされる舌と、ぴったり蓋をされた唇の狭間から、くぐもった嬌声がもれ出す。  
その間にも、尻と腰とがぶつかる音がリズムを刻み、一瞬たりとも休むことはなかった。  
「ま、マイリー……!」  
脳髄まで痺れるような悦楽の中、アラシャは虚ろな声で己が神の御名を唱える。  
「かくも……浅ましい、信徒を……ゆ、赦し、たまえ……」  
背後から激しく攻め立てる剛直を、淫靡にうねらせた膣壁を駆使して迎え撃ちながら、戦神に仕える  
女神官は懺悔する。  
その行為は、男の心に嫉妬の炎を燃え立たせた。  
 
「俺と一つになっている間だけは、神様のことは忘れてくれってお願いしただろう?」  
まるで不貞を責めるかのように、ライは言った。  
二人を一つにつなげている部分の動きが、怒りに任せて勢いを増す。両手でも支えきれず、アラシャ  
の上半身が廃屋の壁にグイグイと押しつけられる。  
「あぁっ! ゆるして! ゆるしてっ! ゆるしてぇぇっ!!」  
背骨をのけ反らせ、尻を振り立てて、女神官が絶叫する。  
「うぉぉぉぉ!!」  
勝ち鬨めいた雄叫びを挙げながら、ライは欲望を炸裂させた。  
「あっ、あ、ああぁぁっ!!」  
胎内で弾ける灼熱を己が最深部で受けきった瞬間に、アラシャの意識は真っ白い闇に沈んだ。  
 
壁板の間の狭い天を仰いで、ライは大きく息をついた。そして、力尽きてしゃがみ込んだ女神官に向  
かって、心配そうに声をかける。  
「やりすぎちまったかな? 大丈夫かい、アラシャ?」  
むき出しになったままの尻を地面にぺたりと付けながら、それでもアラシャは挑みかかるような視線  
で彼を見上げる。  
――これで終わりじゃないでしょうね?  
情欲に満たされた女の瞳は、そう問いつめてくるようだった。  
宿に帰ったら、なんて言って二人きりにさせてもらおうか?――と、考えを巡らせるライに手を引か  
れて、アラシャは立ち上がる。  
「ねぇえ、ライ……」  
女神官は、にんまりと微笑みながらささやいた。  
「もう一度、マイリー神殿に行ってみない?」  
 
   完  
 

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