抜き足、差し足、忍び足〜♪
今、夜の公園を散策している僕は、しがないファンの下町靴屋徒弟。
普通と違う所をしいてあげれば、精霊使い1LVってトコかなあ?
自称『愛の監視者』。ルック・ナイトウォーカー(仮名)。
そんな訳で今日僕は、夜の公園を散策している。
先程公園の高台から、サーモグラフィ…もとい、精霊使い標準装備の赤外線視力で、公園の奥詰まった場所を目指す2人の体温を見掛けた。
自称『愛の監視者』としては、ちょっと気になるトコロ♪
グッドなポイントを見つけ『風の声』をかける。いやぁ、精霊使いで良かったよなあ、僕。
「月がキレイだな」「花もキレイです、ヒース兄さん」
満開の春の花の下、敷き物を敷いて空を見上げた。
持参したバスケットには、青い小鳩亭でテイクアウトした軽食とワインが入っていた。
ヒースがワインの栓をキュポンと抜いて、木製のカップに移す。
「ほれ」「私、あんまりお酒やワインは飲めませんよ?」
「これは大丈夫だろ。お前さんに合いそうなのを選んできたからな」
「え、でも…」「ま、味見してみ」
背の高い男はカップの酒に口をつけると、小柄な女の身体を抱き寄せた。顔が重なる。
「どうだ?」「…ん、甘いです…飲めそう、かも」
「だろ。ラムリアース産の甘い果実酒を選んでみた」
寒い場所でしか育たない、甘くて赤い実をワインにしたものだ。
「ね、兄〜さぁん。も一回♪」
キラキラと瞳を輝かせてねだる。
「…くちうつしを、か?」「ハイ♪」
「…ん〜、ならオレサマの要望も聞けよ?いいな?」「ハイ。わかりました」
「神様に誓うか?」「誓います」「…そこまで言うなら、仕方ないか…」
男は照れ臭そうに頭をかきながら口に酒を含み、女にくちうつしで飲ませた。
バカップル全開だな、こりゃ。
「ん〜。美味し〜、濃いめの果汁みたい」「…アルコール分はそこそこあるからな、チビチビと飲むといい…」
そこで、僅かに会話が途切れる。
「…で、オレサマからの要望だが…イリーナ」「ハイ?」
「脱げ」
「ええっ!?」
「オレサマだって、それくらい恥ずかしかったんダゾ? 神様に誓ったよな?」
「う〜…、でもちょっと、寒いですよ?」
「あたたかくしてやる」
「…人が来るかも?」
「それがちょっぴりスリリングでいいんだ。実際、他人の情事を邪魔するような野暮な奴はそうそういない。…イリーナ、約束ダゾ?」
「ふぇ〜ん…」
女は身につけた衣服を脱ぎ始めた。赤外線視力だと、剥き身の素肌が外気に晒されていることが良くわかる。
上着……スカート…。
女が視線で抵抗を示したんだろう。男の首が振られた。
サラシのような胸当て……最後の下着…を、足から外す…。
あまり豊かとはいえない胸を隠し、裸の女は男の前に立つ。
夜の闇に浮び上がる満月に近い月と、満開に咲き誇る春の花、白い裸身の愛しい少女。
「……。HAHAHAHA!キレイだぞ。マイ・エンジェル!」
僕はその時、少し精神にダメージを喰らった気がした。バカップル恐るべし。
「…兄さん…?」
男は仕草で座るように指示したようだった。少女は敷き物の上に体育座りに座ったが、再び男の指示があったのか、男の方に向けて少しだけ、足を開いた。
そのまましばらく時間が流れる。
イリーナは夜とはいえ、野外で全裸になっていること、ヒースに見られていることに激しい羞恥を感じて、その身体をひくひくとさせていた。
ヒースはそんなイリーナをゆっくりと視姦する。
「オレサマの視線だけで感じてるのか? イリーナ? ヒクヒクしてるぞ?」
「…っ!?」
イリーナは真っ赤になって顔を、手と腕で隠した。
そんなイリーナを愛しく感じながら、ヒースはイリーナの秘裂に目を移した。
「…そろそろいいか」
ヒースはもう一本、自分用のワインに手を伸ばして開栓した。
カップに開けて、味をみる。
それはイリーナに飲ませたモノとは違い、強いアルコールの辛味がある。
「イリーナ、しっかり足を閉じておけ。…そうだ。しばらくだけ我慢しろよ?」
男は開栓をしたワインの瓶を、少女の下腹に注いだ。
「ひゃっ!? ナニ? 冷た…」
「そのまま動くなヨ〜、溢れるからナー」
「あ…っ」
男は少女の股間に顔を埋めた。そのまま股間に注いだ酒を、すすり始める。
「あ…やだ…兄さんっ…そんなコト…っ…」
そのゾーンに注がれたワインを音をたててすすり終わると、その次は酒の雫のついた下腹を、ふとももを、栗色の茂みを、丁寧に舌を這わせてすすり舐めとってゆく。
「あ…ふ…んんっ…兄…さん…っ」
少女の足が割り開かれ、男の顔は、僅かな酒の滴りを求めて秘裂へと移る。
少女の口からは甘い声が溢れる。
「ん…あ、ああ…っ!?」
少女の身体が一際高いその声とともに、大きく退けぞった。
ゆっくりと男が少女の股間から、顔をあげる。
「…イリーナのお陰で滅多にない珍酒が飲めたぞ? ありがとな、イリーナ?」
女は身体をヒクヒクさせて、甘く荒い息切れをしている。
「…イリーナ?」
ぐったりとして動かない少女を前に、男はナニを考えたのか
バスケットに手を伸ばし、その中から持参したのだろう食べ物を、少女の裸身の上に並べ始めた。
「一度やってみたかったんだよナー。女体盛り♪」
ヒースは一度イリーナの胸の上にのせて盛りつけた、鳥の串焼きを一本、口に運んだ。
ムグムグ、と肉を噛み締め味わいながら、目の前の裸体に興じるヒース。
鳥の肉汁とタレがイリーナの胸を、桜色の乳首を汚している。
ヒースはイリーナの上、覆い被さるように、その肉汁とタレをペロペロと舐めとった。
滅多にないシチュエーションが調味料となって、中々味わい深い。
「…ヒース兄さんのバカぁ…」
「お前も食べるか?」
ヒースは別の串焼きを少女の前にかざす。
イリーナはなかば諦めヤケになり、あ〜んと口を開けた。
口に入れられた鳥串肉をムグムグとイリーナが食べている間に、ヒースの舌が肉皿に残った汚れを舐めとっていた。
ヒクリと、その肉皿が揺れる。
「…感度、いいよな。イリーナ」「……」
男は串焼きを食べながら、少女の裸体に指を這わせて始めた。
「…っ! ヤメテ…兄さんっ…! また…おかしく…なっちゃう…」
男の気まぐれな愛撫から逃れようと、少女の裸身が揺れる。退けぞる。
「イリーナ?」
「あ…ふぁ…兄さんっ…兄さん…っ…私の身体…おかしくなっちゃうの…! ホントは昼間から…ずっとずっと、兄さんが欲しくて…ウズいて…我慢してて…私…おかしくなっちゃう…!!」
「どういうことだ?」
ヒースはイリーナの身体に残る串をバスケット内の皿に戻して、イリーナの身体を清潔な布で拭きとった。
イリーナは身を起こして、神官服のマントで胸を隠した。
「あれから…あの事件からずっとずっと兄さんに愛されていて…私、嬉しかった。嬉しいのに…怖かった。
身体が…思い出したようにウズいて…熱くなって…兄さんが欲しくなって。感じ過ぎて。兄さんに愛されて…嬉しいのに。物凄く、嬉しいのに。
このままだと私、ヒース兄さんナシじゃ、一日といられない身体になってしまいそうで……怖いんです」
ヒースをイリーナが愛欲に濡れた瞳で、見返す。
「そうか。…ちょっと調子にのり過ぎたな」「ヒース…兄さん…?」
「…セックスというのは、だ」
マントに隠されず伸び横座りする、イリーナの白い脚。
「麻薬のようなもんだ。イリーナ」
肌寒さと愛欲に震える、イリーナの小さく白い肩。
「ヤリ過ぎると、中毒になっちまう」
それらをまのあたりにしながら、触れるコトを躊躇わざるをえない。良心。
「自慰を覚えたばかりのガキがヤリ過ぎて、アホになっちまう話は良く聞くな。男ナシじゃ身体が熱って一日といられない娼婦や未亡人の話も」
「中毒…」
イリーナが顔をあげる。
「俺ナシじゃいられない…それだけなら大歓迎だが」
(俺が側にイナイ時には俺以外の男を求めて、息を荒くする身体には)
イリーナをそんな風な身体には、させたくない。願い。
二人の間に漂う、長い沈黙。躊躇う、次の段階。
こんなにも、愛されていることが良くわかる。
(兄さんは、ちょっぴり、邪悪です。……でも、とっても優しい邪悪です…)
「…服を着ろ、イリーナ。今日はここまでにしておこう」
男は少女から、顔を背けた。
「…イヤです。」
少女が抵抗する。
「ここまで恥ずかしいコトをさせたんです、ヒース兄さん。…私、物凄く寒いです。あたためてクダサイ。…約束ですよ?」
優しい声音で、フワリと明るく。
その声に色をつけるとしたら、彼等を見下ろし彩る、その満開の春の花の色。
「イリーナ…」
「大丈夫です。まだ。だから、きて、クダサイ」
少女が両手を伸ばす。
男はしばらく黙って、少女を見つめた後、ゆっくりと少女の身体に身体を重ねていった。
ピチャピチャと水音がする。男の手が少女を覆っていた布を外す。再び少女は裸身となる。
クチャクチャと音をさせて、男の身体が女の身体をまさぐり、這っていく。
少女は自らも脚を男の腰に絡めて、離れないように、男の身体にすがりついていた。
「…んっ!あ!あ!ふ…あ!兄さんっ!気持ちイイですっ!んんっ!気持ち…イイ…っ!!あ!あ!ああ!ああぁぁっ…っ!!」
リズミカルな男の動きと共に、少女の口からは嬌声が溢れる。
それは場違いな程に、夜の公園に響いた。
「…声を、抑えろ。イリーナ!俺の肩に、噛みついていて、いいから…!」
「あぅ…んんっ…!」「…つっ…!ハァ…ハァ…っ…ハァ…ハァ」
「ん!んん!ふ!んぁ!…兄さんっ…ヒース兄さんっ…!大好き…っ…大好き…っ!」
「ハァ…ハァ…ハァ…ッ……イリーナ…イリーナ…っっ!!」
「あんっ!んんっ!んんンッ…ッッ!!!」少女の身体が大きく跳ねて、弓なりになる。
「…クッ…イリーナ…ッ!!」
少女の身体を抱えたままの男の身体もビクビクと震えて、それからクタリと崩れ落ちた。
「イヤ〜。兄〜さ〜ん〜。キライになっちゃイヤです〜〜。もっと〜」
「からむな、オコサマめ。本当に酒に弱いんだな、お前」
ひととおりのショーが終わり丁度『風の声』の持続時間が切れ、ポイント変えをしようと慎重に忍び足で木立ちの中を歩いていた。
「!?」
「っ!?」
すると同じく慎重に忍び足で移動してきた人影とぶつかった。
ガタイが良く、上質の服。洗練された容姿に、口髭。
…同好の士だろうか。僅かに目礼して、その場を離れようとした僕の肩がポムと叩かれた。
その男は爽やかな笑みをたたえ、自らを親指で示し、一言、こう言った。
「やらないか?」
〜END