「ふぃー、今日の講義は長かった…」
ギルドの寮に帰ってくるなり疲れた声を出して首を回しながら階段を上がるヒース。
「さて、明日は『小鳩亭』でメシでも喰うか…」
そう呟いて自分の部屋の扉を開ける。
「?」
中は真っ暗なのだが人の気配がする。
「誰だ?」
訝しげな表情を浮かべてそっと身構えるヒース。
「えへへ、来ちゃいました…」
暗闇から聞こえてくる声はいつも聞いている妹分の声。
「い、イリーナ?」
何故こんなところに。
あまりの驚きに声が出ない。
「お、お前、ギルドの許可は…取ってなかったらここには来れないか」
ややため息をつきながら部屋に入り、ランタンの明かりを点ける彼。
ギルドのランタンは魔法が掛かっており通常のものよりかなりの光量を発する。
そして部屋の中が一気に明るくなり、ベッドの上に座っていたイリーナの姿がはっきりと分かった。
「で、何でお前がここにいるんだ?そしてその格好は何だ?」
そう、何故かイリーナはよく貴族の屋敷などで見かけるメイド服を身に纏っていたのだ。
さらに矢継ぎ早に質問をかけるヒース。
「ヒース兄さん、フレディがいなくなってから元気無かったじゃないですか。だから…」
「だから?」
イリーナの言葉に耳を傾けながら自分も椅子に座る。
「この前の言葉通り、わたしが一日使い魔になって兄さんの元気を取り戻します!」
その言葉に目が点になるヒース。
「いりーなさん、この前言ってた事を本気で考えてたのデスカ?」
「はいっ!」
「そして何故にその格好なんデスカ?」
声をカクカクさせながら彼女に問いかける。
「えっと…。マウナが『使い魔って術師に仕える身だから人間ならメイドみたいな格好が都合がいいのよ』って言ってたからです!」
彼女は少し顔を赤らめて言葉を返す。
あまりにも純粋な返答に少々考え込んでしまう彼。
(おいおい…またマウナの与太話を信じ込んだのか…)
それでも彼女がこんな自分の為に身体を張ってまで元気づけようとする姿に心がくすぐられていく。
「とにかくだ、使い魔はお前が考えてるような簡単なもんじゃない」
そこまで言うとヒースはベッドに座っているイリーナの前に立つ。
その言葉に少しがっかりした様子のイリーナ。
「…まぁそこまで頑張ってるお前を見て少しは元気が出たかな?」
そして幼い時のあの純粋な笑顔になりながらイリーナの頭をそっと撫でる。
「ヒース兄さん…」
「そうだな、お前がそんなに言うのなら今日一日だけ俺の使い魔になってもらおうか」
先ほどの表情から一転、太陽のような明るい笑顔に戻るイリーナ。
「じゃあ早速命令を出そうか…」
(こういう奴だから、俺はイリーナの事が好きになったんだろうな…。絶対こいつには言わないけど)
ヒースは心の中でそう思いながら彼女を見つめるのであった。
取り合えず彼はイリーナに部屋の掃除をするように命令した。
本来使い魔は術者と感覚を共有し、その手足になるように動物特有の能力を使って術者に仕える。
もちろんイリーナは人間だからフレディのように空を飛べるわけでもなく、そもそも彼女に冗談でもそんな事はさせられない。
そこで彼はイリーナでも出来る事を指示して彼女をその気にさせたのだ。
はたから見ればご主人様とそのメイドといったところなのだが、イリーナは満更でもないみたいだ。
「ヒースにい…じゃなかった、ご主人様。この本はどこに片付ければいいですか?」
その言葉に思わずよろめくヒース。
「ちょっと待て。『ご主人様』ってそれもマウナの入れ知恵か?」
その言葉に素直に答えるイリーナ。
「はい、マウナが持ってきた使い魔になった人間について記された本にそういう喋り方が書いてありました。ちなみにこの衣装もそれに載ってましたよ」
(マウナーっ!いったいこいつにどんな本を見せたんだ!?)
多分彼女が何も知らないのをいい事にマウナが違う本を見せてその気にさせたのであろう。
「…ご主人様、何かおかしいところがありましたか?」
やや申し訳なさそうにうつむくイリーナの顔を見てドキリとしてしまうヒース。
「あー…いや、何でもない何でもない…。別におかしくとも何とも無いからそのまま掃除を続けてくれ」
心の動揺を抑えながら抑揚の無い声で彼女に掃除の続きを促す。
(ちょっとまて俺。何でイリーナがメイド姿になっただけでこんなにドキドキしなきゃならないんだ!?)
彼女はそんな彼の心境を知るよしもなく机の上のランタンを布できれいにしようとする。
そしてそれを掴み拭こうとした時であった。
ぴしっ。
「あ。」
イリーナの口から思わず声が出る。
「どうした、イリーナ?」
ヒースが彼女に近寄っていく。
「い、いや何でも無いんです、ご主人様」
長年の付き合いから、イリーナがこうやって何かを隠そうとしている時には必ずと言っていいほど何も無かった事を強調するのを彼は知っていた。
「何も無かったら別に俺に見せても問題ないよな?」
やや皮肉めいた笑顔を見せながら、彼女が手にしていたランタンを奪い取る。
そしてそのランタンをじっと見つめ、一言。
「…いりーなさん、このヒビは何ですか?」
ヒースはぎぎぎっ、という音が聞こえてきそうなほどギクシャクした動きで首だけをイリーナに向ける。
そう、彼女の怪力のせいなのかランタンのガラスの部分にヒビが入っていたのだ。
「ご、ごめんなさい…!拭こうと思ってその部分を握ったらつい…」
彼に向かってひたすら謝り続けるイリーナ。
「ごめんなさい…。そのランタン、ハーフェン導師から貰った大切なランタンなのに…ごめんなさい…」
だんだん彼女の言葉が震え、その瞳に涙が溜まっていく。
ヒースはそんな彼女を見つめながら優しくぽん、と頭を叩く。
「まぁしゃーないわな。ランタン壊すのもいつもの事だし」
そして自分よりも小さな妹分にしか見せない優しい笑みを見せてその涙を指でそっとぬぐってやる。
「これは明日ハーフェンに直してもらうから、お前が気にする事は無いぞ」
彼の言葉に救われたのかそっと彼の胸の中に自らの身体を寄せるイリーナ。
「ありがとう、ヒース兄さん…」
「ご主人様、だろ?」
また再びいつもの皮肉たっぷりの笑顔で答えるヒース。
「えへへ、そうでしたね…。じゃあ改めて、ありがとうございます、ご主人様…」
その表情に再びドキリとしてしまう。
そして己の下半身に血液が溜まっていくのが感じられた。
(や、やばいっ!そういえば最近講義やら何やらで全然してなかったから大分溜まってる事を忘れてた!)
意識すればするほど下半身の膨らみがだんだん大きくなっていく。
やがてそれに気づいたのだろうか、イリーナの表情がやや悪戯めいたものになる。
「ご主人様、一体どうなさったのですか〜?」
彼女の手がそっと彼のズボンに触れていく。
「こ、こらっ!何してるんだ!?」
慌ててその手を離そうとさせるが、もともと力では彼女にかなうはずも無く彼がいくら除けようとしても全く動かない。
「ご主人様、ひょっとして私の姿にドキドキしてるんじゃないですか?」
図星をつかれたのか顔を赤らめ、しかしいつものように振舞いつつ喋る。
「そんな事は無いぞ…。そういうお前はどうなんだ?」
下半身をこうしておいて説得力も何もない返事だな、と思いながら出した言葉だったが、それを聞いたイリーナは彼の身体をそっと抱きしめる。
「い、イリーナ?」
「私は…何故か分からないけどすごくドキドキしています…」
そう言うと彼女は床にしゃがみ込み、彼のズボンのベルトを外そうとする。
「おいおいっ!一体どういうつもりだ!?」
慌ててその行為を防ごうとするヒース。
「マウナの見せてくれた本には使い魔が何か失敗した時はいろいろお仕置きされたり、こういう風に気持ちいい事をするって描いてありました」
言葉に続いて容赦なくベルトを外し、そのズボンに手をかけるイリーナ。
(マウナの奴、イリーナにとんでもない事を教えやがって!明日絶対にいじめてやるからなっ!)
心の中で悪態をつきながらも何故か自分もその行為を止めようとはしなかった。
そして彼のズボンが下着と一緒に一気に下ろされ、彼女の目の前にそのいきり立った男性自身が飛び込んできた。
「ヒース兄さん、じゃなかった。ご主人様、いつもより大きいです…」
すでに身も心も繋がり合った仲だとはいえ、いつもの営みよりも今回のそれは大きい。
もちろん彼がここ数週間自分で慰める事をしていなかったのだから当然といえば当然の事だろう。
「ご主人様、こんな私に罰をお与え下さい…」
声を震わせ、上目遣いで哀願するイリーナの表情に彼も我慢が出来なくなっていたのだろう、わざと声を冷酷にさせて発する。
「よし分かった。悪さをした使い魔にはお仕置きをしてやらないとな」
そう言って彼の自身をイリーナのその小さな口に当てる。
「ん…あむ…」
彼女も目を潤ませながらそのものを口に入れ、ゆっくりと舐め始めた。
「そうだ…。先端から舌を使って、よし…」
ヒースの言葉に軽く頷き、自らの舌を使って口の中で脈打つ自身を舐め、前後に動かし始める。
(ああ、ご主人様のものがすごくびくびくとしてる…。私も気持ちよくなってきちゃった)
唾液の音と前後に動く音が合わさってじゅぼじゅぼと淫靡な音を醸し出す。
「すごくいいぞ…。もうすぐ出そうだ…」
ヒースの手が彼女の頭を押さえ、今度は彼の手の動きと相まってその動きが速くなっていく。
「んんっ、んふっ!」
こぼれる唾液が彼女のスカートにぽたぽたと滴り落ちる。
(ああ、口の中にご主人様のものがっ…!息苦しいけど、すごく気持ちいいっ!)
舌と口内で攻められ、ヒースに限界が訪れようとしていた。
「だ、駄目だ!イリーナ、もう出すぞっ!」
その言葉に苦しさか涙を流すイリーナが頷く。
そして、ヒースの男性自身から一気に熱い精が噴きだした。
その動きが止まり、彼女の口の中に白いものが大量にあふれ出す。
「んんっ!んふっ!」
イリーナの声とともに彼女の足元からも何かが噴き出る音。
じょろろっ、という音が聞こえたかと思うとその周りに液体が広がっていった。
そう、彼女も無意識のうちに達しており快感のあまり失禁していたのだ。
その尿蜜は彼女のスカートを濡らし、ヒースの足元にも到達する。
彼がそっと男性自身を彼女の口から放すとまだ出し足りなかったのか、その瞬間に再び精が放たれ今度はイリーナのメイド服の襟やリボンに注がれていく。
そしてイリーナが飲み込みきれない白い液体が口から溢れ、紺色のスカートにぽたぽたと落ちていく。
荒い息をつく二人。
「気持ちよかったですか、ご主人様…」
「ああ…」
そんな乱れ、汚れたイリーナの姿に再び己のものが大きくなっていく。
「まだ大きいままです…。今度は、私の中で満足してください…」
イリーナは半ば隷属的な言葉を発しながらびしょびしょに濡れたスカートを持ち上げ、下着越しに透き通って見える秘所を彼に見せる。
その姿に今度は何も言わずその身体を押し倒すヒース。
彼女の背中が己自身の出したもので濡れていくのが分かる。
「駄目ですご主人様…ご主人様の服が汚れちゃいます」
それでも彼の事を気遣うイリーナ。
「そんなのは構わない。今度はイリーナが気持ちよくなる番だ」
そしてスカートの中に顔を入れて下着をずらし、ひくつく陰核を自らの舌で舐め始める。
「ああっ!」
絶頂に達したばかりで敏感になっている秘所を舐められ彼女は思わず大声を出してしまう。
「イリーナ、少し声を抑えろ。隣に聞こえたらまずい」
「分かってます、分かってますけどっ…ああん」
舌で舐めるたびにイリーナの秘所から愛液がしどどと溢れていく。
「すごいな、お前のここからどんどん出てくるぞ…」
「いやぁ、そんな恥ずかしい事言わないで下さい…」
「駄目だ、今日は一日使い魔なんだから術者の言う事は絶対だぞ」
「は、はいっ…」
そしてスカートの中から顔を出し、再び大きくなったその自身を今度は彼女の秘所にゆっくりとあてがう。
「入れるぞ、イリーナ」
「お願い、します、ご主人様…」
ぬるぬるになっている秘所。その部分に手で持った自らのものの先端を動かして弄くり出す。
「ああん、焦らさないで下さいっ…!」
涙目で訴えるイリーナを見つめつつ、まだそれを入れずに陰核を擦ったり花弁を撫で回したりする。
「ああ、気持ちいいですっ…!でも切なくなっちゃいます…」
いつものイリーナとは違う、自分の前でしか見せない淫らな表情。
それに嬉しさを感じながら男性自身をゆっくりと蜜壷の中に入れていく。
「ふぁぁん…」
彼女のあえぎ声とともに根元までするり、と入っていく男性自身。
「動かすぞ」
少し無機質な声が彼女の耳元から聞こえてくる。
「はい、この使い魔にさらなる罰をお与え下さい…!」
「もちろんだ」
そしてゆっくりとヒースの腰が動いていく。
「ああ、ああん…」
彼のもので突かれる度に淫靡な声がイリーナの口から出てくる。
繋がっている部分からは彼女の愛液がさらに溢れ、くぐもった水音と二人の荒い息、そしてイリーナの情欲に塗れた甘い声が支配する。
「どうだ、気持ちいいか?」
「はいぃっ…!ご主人様の…ものがっ…ああんっ!」
相当気持ちいいのだろう、自分自身の声もまともに発する事が出来なくなっていた。
「何だ、自分の口で言わないと分からないぞ?」
「ご主人様のものが、私の中で…暴れてますっ…!」
彼女も自ら腰を動かしながらその快感を貪り続ける。
スカートに吸収されなかった愛液が床に飛び散り、汚す。
それでもお互いの腰は止まる事無く淫らな光景を映し出していた。
「ヒース、にいさんっ…私、またおかしくなっちゃいますっ…!」
イリーナはいつの間にか愛する人の名前を呼んでいた。
「いいぞ、このままおかしくなっていいぞっ…!」
下半身からはぐちゃぐちゃという音が聞こえ、イリーナに再び絶頂が襲い掛かろうとしていた。
「あんっ!もう、もう駄目ですっ…!ヒース、にい…!!」
声がそこで途切れる。
「くっ!」
イリーナが大きく弓の様に仰け反り、何度も大きく身体が震え秘所から蜜がほどばしる。
同時にヒースも頂点に達していた己の自身を彼女の中で噴き出させた。
声にならない絶頂の声を上げて力なく自らの放った水溜りにもう一度倒れ込む。
胸のリボンとメイド服の襟はヒースの放った精で白く汚れ、白いエプロンは自らの液体で黄色く染まり。
そして紺のスカートはその二つと内側から放たれた彼の精で凄惨な様子と化していた。
彼女の栗色の髪の毛にも蜜と白いものが所々に付き、そんな状態でもイリーナ自身の可愛らしさを失うことはなかった。
「ヒース、兄さん…」
「何だ?」
まるで熱にうなされたかの様な声で最愛の人の名を呼ぶ彼女。
「また…兄さんの使い魔になってもいいですか…?」
「ああ」
その言葉に彼女の身体をそっと抱き寄せ、優しく頷くヒースであった。
そして翌日、『青い小鳩亭』にて。
ヒースはカウンターの中で洗い物をしているマウナにこっそり近づきその耳を引っ張る。
「ま〜う〜な〜さ〜ん〜?」
「イタタタタッ!」
耳を引っ張られ少し涙目で彼を睨み付けるマウナ。
「何するのよ!?」
「それはこっちのセリフだ。お前、イリーナに何を教えたんだ!?」
その言葉に彼女は何か思い出したかのような仕草をして返答する。
「何を…って、ただあんたを元気付ける為にちょっと入れ知恵しただけよ。まぁバスに用意してもらった読み物を使ったけどね」
そこまで言うとマウナは剣呑な表情で洗い物を続け始める。
「お前らのせいで昨日は散々な目にあったんだぞ?」
しかしマウナは愚痴をこぼすヒースの顔をじっと見つめ、
「その割にはいつもの顔に戻ったじゃない?」
「!」
その言葉に一瞬言葉を失う。
「みんな本気で心配してたからねー。いつぞやのイリーナじゃないけどやっぱ見ていてつらいものはあったし」
「…」
「ま、イリーナがどういう事をしたかは知らないけど取り合えずあんたがいつも通りに戻って良かったわ、うん」
そして何事もなかったかのように洗い物を続けるマウナに一言だけ何かを呟いて自分の元いたテーブルに戻って行った。
「ほんと、イリーナに感謝しなくちゃ駄目よ、ヒース」
まるで自分の子供を見るような視線で、照れ隠しに頭をぼりぼり掻いているヒースを見つめるのであった。