ヒースはベットの中で、女を抱いていた。
寝台の白いシーツをくちゃくちゃに乱れさせ、ふたりで荒い甘い息を吐き続ける。
寝台はぎしぎしと、音をたてて軋み、グチュッ、ヌチュと卑猥な水音が、部屋に響き渡る。
ヒースは若々しい少女の肢体に、絶えず手と舌を這わせ、少女の敏感な場所と秘所を貧ぼった。
「ああっ!んんっ!ヒース……兄さん。」
少女が堪えかねたように、栗色の髪を左右に振る。
ヒースの手が慌てたように、しかし優しく、少女の口を塞ぐ。
「…頼むから、悲鳴はあげてくれるなよ? プチーナ。」
少女は背をのけぞらせて、絶え間なく与えられる快感と刺激に耐えていた。
「そろそろ…いくぞ。」「…はい。」
ヒースは腰の動きを速め、両手で掴む少女の体内に精を放った。
(カランカラン)
来客を告げる鳴子の音に、バスは昔を思い出した。
ターシャスの森の一角。かつてはデーヴィスの塔と呼ばれた遺跡。
今は、旧知の偏屈な魔術師の住み引きこもる研究所。
「はい? …あ、バスさん。」
顔を出したその少女の姿に、懐かしい笑顔に、
思わず数年間の時間が巻き戻ったような感覚を覚えた。
「おや、…えーと。」
「プチーナです。」
「おお。大きくなりましたな。見違えましたぞ。イリーナの昔にに瓜二つですな。」
「ヒース『兄さん』も、そう言います。」
プチーナはそういうと、頭を引っ込めてバスを招き入れた。
「よう、久しぶりだな。生きてたか。」「早速ですが、ひとつ、質問してよろしいですかな?」「あ?」
「彼女が、なぜここに?」「アー…、居ついたというか、そうさせたというか。」
ターシャスに引きこもってからは時折、近在のエルフや彼ら目当ての赤毛の小僧、
そしてアルラウネ3姉妹の誰かが訪ねてくることは、ままあった。
小鳩亭の新しい主人にに、子供が生まれた時にも。
ただ、その中で何故かプチーナだけが、ヒースの身の回りの細々とした事に、気を使うようになっていた。
そうして気づけば、かつてのイリーナに瓜ふたつの彼女を、イリーナそのものの様に扱っていた。
名付け親としてではなく、兄と呼ばせ、抱いた。
「あいつらは、イリーナの残した形見だからな。…少しばかり、似過ぎてて。驚いたろ?」
「…イリーナの身代わりですかな?」
「軽蔑してくれなさい。…実際、今は精神安定剤のような存在だ。」
「あいつがいなけりゃ、いつイリーナの大嫌いな『悪の』魔術師になってたか知れない。
プチーナには感謝している。」
イリーナは死んだ。
死ななくても良かった戦いで、遊戯盤の駒のように、扱われ使い捨てられた。
アトン殺しの英雄王リウイは、自分からかつての憧れだったアイラから、
大切な幼馴染で妹分のイリーナまで奪っていった。
ヤツの為の新しい王国造りなどに、これっぽっちも、手を貸したくなどなかった。
「だから、ターシャスに引きこもった。」
「ヒース…。」
「笑ってくれていい。俺はこんな世界が、悪い夢ならどんなにいいか。
…いまだにそう、願ってる。」
これは夢だろうか? 現実だろうか? ありえない未来だろうか?
悪い夢なら、どんなにいいだろう…。