「ったく、ハーフェンの奴め…」  
ファリス神殿の礼拝堂で腕を組みながらしかめっ面をしたヒース兄さんを見ました。  
「ヒース兄さん」  
そっと近寄って声をかけると少し驚いた様子で私に話しかけてきました。  
「おわっ、イリーナか!」  
「兄さん、ハーフェン導師が一体どうしたんですか?」  
私の質問に何故かヒース兄さんは戸惑いを見せた顔で答えます。  
「あ、いやいや。お前には関係ない事だ」  
いつもの様に都合の悪い事ははぐらかす、兄さんの悪い癖です。  
「ファリス様も見てるんですよ、嘘はいけません」  
私がちょっと厳しい口調で言うと兄さんはしぶしぶと話し始めました。  
「いや、ハーフェンがな。そのー、何だ、最近俺様の部屋から何冊か本を持って行ってるんだ」  
首に掛けているファリスの聖印を手でいじりながら少し恥ずかしそうに答えます。  
 
本?  
私は気になって聞いてみました。  
「兄さん、何の本ですか?」  
その言葉に驚いたのか兄さんは椅子からずり落ちてしまいました。  
「いや、魔術関係の絵が載っている本なんだが…」  
明らかに嘘を隠している表情で答えています。  
「兄さん?ここで嘘をつく事はどういう事か分かりますか?」  
ファリス様に、と言うより私に対して何かを隠している事に少し腹が立ってもう一度兄さんを問い詰めます。  
私の言葉に観念したのか、息を一度大きく吐いて顔をあさっての方向に向けながらぽつりぽつりと答えました。  
「…春画」  
「?」  
その言葉が理解できなくて首をかしげる私に対して今度は兄さんが声を荒げます。  
「春画だっ!簡単に言えば男と女の秘め事…って言ってもお前には分からんだろうが、とにかくそれを描いた本を  
ハーフェンが持って行ったんだっ!」  
その言葉に私の顔がトマトの様に赤くなっていくのが自分でも分かりました。  
 
先日兄さんの部屋からこっそり持ち出した本…。  
そしてそれを見ながら兄さんの事を思って一人で慰めた事…。  
その情景が頭の中でぐるぐる回っていきます。  
 
「てっきり…お前が持って行ったと思ってその中の一冊にメモを挟んだんだが、よりによってハーフェンが持って行ってたとは…。  
自分の師匠ながら恥ずかしいわ、ってどうしたイリーナ?そんなに顔を真っ赤にして」  
ヒース兄さんが私の顔をじっと見つめてきます。  
「ひょっとして、お前まさか…」  
一人で何かを納得したようにうんうん頷き、ちょっと下品な笑みを浮かべます。  
「いやー、そうかそうか。お前も大人になったんだなー。兄貴分としてそこまで成長している事が嬉しいなー」  
 
兄貴分?  
その言葉に何故か心がちくりと痛んで。  
そしてすごく恥ずかしくなって。  
涙が目の中ですごく暴れてました。  
 
「兄さんの、馬鹿っ!汝は邪悪なりっ!」  
無意識のうちに拳が兄さんを捕らえていました。  
「おい、イリーナ…がぶぅ!」  
祭壇の方に転がっていく兄さんを一瞥すると、私は泣きながら外に飛び出していきました。  
 
 
「馬鹿…ヒース兄さんの、馬鹿…」  
自分の部屋のベッドの上で私は泣いていました。  
恥ずかしさと兄さんに対する怒りと。  
そして何より妹としてとしか自分を見てくれない悲しさがごちゃ混ぜになっていて、私はまるで子供のように泣きじゃくるだけでした。  
 
大分時間が経ったのでしょうか。  
泣き疲れてうとうととしてた私は何かの物音で目覚めました。  
見ると扉の隙間から小さな包みと一枚の手紙が置いてあったのです。  
私はそれを机の上に置いて中を開けてみました。  
 
「リボン…?」  
そして手紙にはこう書いてありました。  
 
『イリーナへ  
 
さっきは悪かった、反省している。  
お前の気持ちも考えずにくだらない事を言った自分を後悔している。  
 
最近俺はお前を見ると何故か心臓がまるで全力疾走したみたいにドキドキして、まともに顔を見れない時がある。  
ちょっと前までは出来の悪い妹分と思っていたんだがな。  
何というか…上手く言葉に出来ないけど一人の女性として見えるようになってきた。  
 
そうそう、包みの中だけどな、お前に似合うと思ってさっき雑貨店で買ってきた。  
また機嫌が直った時でいいから身に着けてほしい。  
今度は冗談や皮肉を言わずに一人の女としてお前を見ようと思う。  
 
まぁこんな事言っても罪滅ぼしのひとつにもなりはしないが、とにかくそういう事だ。  
 
                                              ヒース』  
 
「兄さん…」  
手紙を見ながら私は再び涙を流していました。  
でも今度はさっきの様な嫌な気分ではなく、何か心のもやが取れた感じでした。  
「まぁ兄さんの事だからきっと冗談や皮肉はいっぱい言うと思うけれど…でも嬉しい」  
そう呟いて私はそのリボンをそっと胸に抱きしめました。  
 
 
あれからそのリボンはほぼ毎日着けています。  
兄さんはいつものようにそっぽを向きながらも「似合ってる」って言ってくれました。  
そんな恥ずかしがっている兄さんを見て私も何故か照れてしまいます。  
 
ちょっと恥ずかしい話ですけど、一人で慰めるのもたまにします。  
いつも頭の中に兄さんの姿を思い出して。  
それだけでも恥ずかしいところが熱くなっちゃいます。  
 
「兄さん、好き…」  
服を脱ぐ事も忘れて、スカートの上から熱いところを撫でると生地の上からぬるぬるとしたものがじゅわ、っと溢れてきます。  
足にその熱いものが垂れて、床にぽたぽた落ちても手は止まりません。  
そのうち下着をずらして直接触る事もしてしまいます。  
兄さんの指が私の大切なところを触ってる…。  
そう思うと何度もぬるぬるした水が噴き出していくのです。  
もうスカートの中はびしょびしょで、それはスカートを濡らして床にも広がっていきます。  
それでも指は止まらずまた頭の中が真っ白になっちゃいます。  
「ああ!また、出ちゃいますっ…ヒース兄さんっ!」  
その言葉とともに今度は暖かいものが溢れ返り、私の下半身はどろどろに…。  
私は涙をこぼしながらそれでも大好きな人の事を思って慰めるのです。  
 
気が付くと身体中私の恥ずかしいところから出たものに塗れて、着ている神官服はびしょびしょになってしまいました。  
こんな悲惨な姿になってしまっても、兄さんの事を思うとやっぱり慰めてしまうのです。  
 
いつか兄さんとひとつになりたい、そう思いながら…。  
 
 
 
 

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