「んぅ………」  
その日、その時、我らが1年2組のヒーロー、  
メガネマンこと池速人はある種の異常事態に遭遇していた。  
というより、池がわざと造った異常事態に。  
場所は、池の自室。家には悠二と池の二人しかいない。  
池の部屋の中央には、小型のテーブルがある。  
その上には、来る途中に買った菓子類と、  
家にあったジュースが散乱していた。  
そして、今起きている現象。池は別にどうと言う事もなかった。  
強いて挙げるならば、極度の興奮状態にあることぐらいか。  
問題は、坂井悠二という、ミステスにあった。  
尚、ミステスなどに触れると話が脱線する可能性がある為、  
ここでは割愛させていただく。  
その坂井悠二というミステスは、名前でわかる通り生前は男であった。  
しかし――今、彼、坂井悠二の外見を見ただけで男、  
と判別できる者はいないであろうことが容易にわかる。  
何故なら――――そう、彼は今『彼女』になっていたから。  
 
 
「はぁ……」  
とぼとぼと夕日の中、歩いていく少年。  
彼の名は池速人。なんてこと無い、ただの凡人である。  
今現在彼は、その性格ゆえか、様々な問題を抱えていた。  
自分の好きな相手が自分の親友に恋をしていること、  
最近坂井達がほんの少しだけ、  
よそよそしいこと、  
なんとなく存在感が薄くなっていること、  
なんとなく存在感が薄くなっていること、  
なんとなく存在感が薄くなっていること、  
なんとなく存在感が薄くなっていること等。  
とにかく、最近よく疲れるようになっていた。  
肩を落しながら歩きながら、ふと右を向いた。  
裏路地に、見るからに胡散臭い屋台があった。  
子供時代、家族ぐるみで出かけて、  
坂井と一緒にミサゴ祭りの露天回りをした事を思い出す。  
「……ちょっと見ていくか」  
普段のメガネマンなら、決してやらないようなことを  
この時だけはふとやってみる気分になった。  
どうせたいした時間をとるわけでもないし、  
と自分を納得させると屋台の前に立った。  
 
「ェエークセレント!な露ーっ店商にようこそ!!」  
帰ろうかと思った。  
「あー!ちょっと待ってくださいよー!きょー中に  
ノルマ達成しないと帰れないんですー!」  
屋台の店員は二人組みだった。片方は普通に美のつく少女(幼女?)だったが、  
ただし残りの片割れ、それが異常だった。  
一目見ればすぐわかる。ついぞ漫画やアニメでしか見かけないような、  
「マッドサイエンティスト」がそこにいた。長髪を後でまとめ、  
何より白衣を着ている。  
少なくとも露天商の店員がする服装ではない。  
「ドォーミノォー、余計な事はぁー、言わなくていいのですよー?」  
マッドサイエンティストはマジックハンドで出来た片腕で少女の頬を抓る。  
「ひはははは…ひょうひゅ、ひはいれす」  
それを聞いてマジックハンドを離すサイエンティスト。  
「あの………で、何を売っているんです?」  
「よぉーくぞ、聞いてくれぇーましたぁー。  
今現在販売中のぉー、商品はこちらのみでぇース!」  
一つだけかよ、と心中で呟くと、差し出されたそれを見た。  
「………ポ○ション?」  
ごく最近サン○リーから発売された人気ゲームの道具であった。  
ちなみにビン。  
「ビンがほしいからーって、99個買ったんですよー  
………ひはははは」  
またも抓られる少女。頬が面白いように伸びる。  
「だぁーまらっしゃぁーいぃ!余計なことはいわなぁーい!」  
「ひはいれすひはいれすひゃめへふらさひ………  
うー、それで、まぁ、効果は私もよくは知らないんですけど、  
ぶっちゃけた話、  
『自分の好きな娘が他人に惚れているときに  
その他人に使用すべき物』ですー」  
財布から夏目漱石が旅立った。  
 
 
翌日の放課後。  
平井さんを説得して何とか悠二を連れ出すことに成功した。  
正直あの目で睨まれるのは心臓にとてもよろしくなかった。  
そして、悠二を家に誘った時、  
うらやましげな目で自分を見ていた吉田さん―――。  
これからは、逆に僕が話し掛けた際、  
坂井の方をうらやましげな目で見るのだろうか?  
もはやそんなことはどうでも良かった。  
今日で、多分全てが変わるだろうきっと。  
冷蔵庫の中からビンを1本、取り出す。  
そしてキッチンに置いた自分の学生鞄から、  
もう一本、ポー○ョンを取り出した。  
今朝行きの途中で買ったものだ。  
そして今朝買ってきたものと間違わない様に、  
気をつけて上に持っていった。  
階段を上がりきり、廊下を渡り、自分の部屋に繋がるドアを開く。  
そこには、坂井悠二がこれからの運命も知らずに、  
菓子類と共に買ってきた雑誌を読みふけっていた。  
「坂井、もって来たぜ」  
「ん?ああ、すまない。……でもホントにいいのか?  
確かビンの奴って高くなかったけ?」  
「いや、大丈夫だ」  
それくらいどうということは無い、と思わせぶりな表情を作る。  
騙せただろうか。  
「二つあったから、思わず衝動買いしたんだ。  
でも、ネットとかの情報だとそんな美味くないらしいから、  
一人で飲むよりはこうやって愚痴りあえる奴がいたほうがいいだろう?」  
それを聞いた悠二は思わず苦笑した。  
そして、自分は右手でポーシ○ンを掴む。  
そして、左手のビンの方を悠二に差し出した。  
二人で、栓を抜き、一気に飲む。  
坂井のことばかりが気になっていて、味が全くしなかった。  
「……ぶへぇ、やっぱりあんま美味くないな」  
「………何とも無いか?」  
「………別に?」  
思わず飲みきったポー○ョンのビンをテーブルの上に強くおいた。  
畜生、騙されたか。今日もあそこにいるだろうかあの露天商め。  
 
 
実力のある紅世の王が集まる仮装舞踏会の連中、  
その中の一組が、実験室で会話をしていた。  
「そー言えば教授、あの少年に売った薬、どーいう効果なんです?」  
それを聞いた教授は、燐子であるドミノに気の抜けた返事をする。  
「んーふっふっふ。あれこそ  
『科学の結晶エクセレント4532―人生の転換』」  
ひたすらににやにやとしながら、  
そのマジックハンドを器用に使ってドミノの頬を抓り始める。  
「つぅーかえばぁー、確実に使用者の性別を変える、  
失敗作でスヨぉー」  
「ひはいひはいひはい………失敗作?」  
抓りから何とか逃れたドミノは、教授の「失敗作」発言に眉をしかめる。  
「たぁーしかに、催淫効果搭載という、いい線までいったのでーすよ。  
しかし、ミィーステスにしか効果がないのなら、  
それは失敗作でしょう?」  
ドミノは、思わず心の中で売りつけた相手の少年に、  
「ごめんなさい」と謝った。  
何故なら、商品が正常に起動しないだろうからで、ある。  
 
 
池は騙されたと思い、なんとかその悔しさ坂井に見せないようにして  
床に座る。  
そして、ふと坂井の方を見たその瞬間、  
「………っ!?」  
ばたり、と。  
坂井悠二が急に倒れた。  
「………!?おい、どうした坂井!」  
 駆け寄ろうとした瞬間、いきなり坂井が爆発した。  
そして煙が消えうせたとき、『坂井悠二』は女にと変わっていた。  
髪が肩まで伸び、背丈も、骨格もすべて一回り小さくなっていた。  
しかし、その『坂井悠二』は池が想い続けている  
吉田一美にひけをとらない、魅惑的な体をしていた。  
それを見た瞬間、池は思春期にありがちな性の暴走が発動した。  
要するに興奮したのだ。  
そして物語は一番最初にと戻る。  
 
 
池速人は、その『元』坂井悠二の状態に思わず勃起した。  
しかし、  
「!?も、もしかして……これが、『効果』?  
……そんな、そんなつもりじゃ…」  
それが親友の面影を宿しているのに気付き、  
またそれが先ほど使用させたポーショ○の効果ということに気付き、  
思わず自らの行為に恐怖した。  
(最低だ……!そうだ、何で俺はこんなことを…?)  
自分を責めてもこの事態が好転するわけではない。  
今するべきなのは、この状況をなんとかする事だ。  
そう気付いた池は、すぐさま昨日の所に行こうとする。  
そして立ち上がり、ドアへ向かおうとして、池は盛大にコケた。  
「ぶっ!?……っは!いったい何が?」  
後を振り向き、悠二が自分の足を掴んでいることに気付く。  
「………」  
「………」  
そして、二人は見つめあう。  
(……うわ、結構好みじゃないか!って何親友に興奮してんだ俺は!)  
「あのさ…離してくれない?」  
悠二が『女』になったせいで、いつもよりヨソヨソしくなった口調。  
言ってから、それに気付き、自己嫌悪に陥る池。  
しかし、悠二はそれを気にも留めなかった。  
横倒れになっている池にずるずると近付いてくる悠二。  
『彼女』は池の学生服のズボンのチャックを下ろし始めた。  
下ろされたおかげで、ズボンから出てくる池のナニ。  
悠二は遠慮も会釈もなしに、いきなりそれを掴み、しごき始めた。  
「うわ、手がひんやりしていて気持ちいい……じゃなくて!い、いきなり何を!?」  
それには応えず、悠二はさらに顔を近づける。  
そして、池のそのペニスを口にふくみはじめた。そして、顔をスライドさせる。  
「……ッ!?」  
池の脳に快楽と言う電流が走った。そしてそれは徐々に肥大化していく。  
そして、あまりにもあっけなく、限界を迎えた。  
「ッアアアァッ!」  
いきなりの結末に、思わず驚き目を見張らせる悠二。  
しかしすぐに何事も無かったかのように、池から放たれていく白濁液を飲み込んでいく悠二。  
そして、放ち終わった後、悠二はそれを口から離した。  
池のペニスと悠二の唇に精液の橋が出来る。  
それを見て池はふたたび復活する。  
 
「うわ、すごくエロい眺め…っていうかおい、悠二、何をしてるのかわかっているのか!?」  
女になった、坂井悠二はここではじめて、喋る為に口を開いた。  
「わからない。わからないの……けれども、体が熱い。火照って仕方がないのぉ…」  
ハスキーな声にしばし魅了される池。  
しかし、質問に対する答えになっていないことに気付き、  
悠二の異常状態の解決策を考え付いた。  
といってもそれは要するに自分の性の衝動を正当化する為の言い訳で、  
今の池の思考回路はまるで発情期の動物のごとく  
セックスのことしか考えられない。  
「そうか……なあ、坂井。なんとか、して、やろうか?」  
こんなことが起こるとは考えていなかった池は所々どもりながら、  
遂に最後の『元の世界』への道を潰す。  
「うん……してぇ、いけの、すきにしてほしいのぉ……」  
ほとんど上の空の言葉も、池の暴走の加速度をはやめた。  
それを聞くとすぐさま悠二の学生服を脱がしにかかる。  
学生服は変わらず男のままだったが、そんな事は関係なかった。  
悠二の下半身をすべて脱がせ、濡れていることを確認すると、  
すぐさま挿そうとする。  
「いくぞっ!坂井!」  
そして、入れようとする―――。  
が、上手く入らなかった。焦っているためか、どうも上手くはまらないのだ。  
が、しかしそれでも悠二は反応していた。  
「うひゃっ、ひゃ、はあぁぁ……」  
悠二の反応をみて、さらに入れたくなった池。  
堪えて、しっかりと入り口めがけて、ついに挿した。  
「……!っ痛!」  
 
初めてだったらしく、接続部から血が溢れ出してくる。  
血が溢れる部分を支配しているのが池の目からでも見え、  
それが更に池を興奮させる。  
そして何より、悠二の秘所は痛いぐらいにきつかった。  
それでいて、早く精液を出させようと蠢いている為に、  
思わず出そうになる。それを必死で押しとめ、  
一刻でも長くこの感覚を持続させるため、深呼吸をする。  
ようやく落ち着き、そこで行為を再開した。  
「ッあ!い、痛いっ!ひゃ、もっと、優しくしてぇ!」  
「すまん坂井!我慢できないんだ!」  
出し入れするたびに、今まで経験してきた自慰とは  
比べ物にならない快楽に、腰を止めることの出来ない池。  
その拙い腰使いでも、次第に破瓜の痛みより快楽が勝ってきている悠二。  
「あっ?ひゃぁぁ…い、いひゃぁ、イイのっ、イイの!」  
「っつくっ…うああぁっ」  
もう、二人の快楽の饗宴は止められそうに無かった。  
そして遂に、互いが限界を迎える。  
「あぁっ、うひゃぁ、イイ、イクよぉ…イっちゃうのぉーー!」  
「うぐっ、う、うああーーーっ!」  
そして最奥で放たれる精液。それは、悠二の未到の域を汚していった。  
(もう…二度と)  
そして果てた衝撃でくる疲れと、眠気の前に  
(二度と、元の世界には戻れないんだろうな……)  
それだけを、思った。  
 

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