ある日のこと、星黎殿にて千変シュドナイが作業を行っていた。
「おや? 何をしてるんだい? またあの娘に変なことしようとしてるんじゃないだろうねえ?」
「俺とていつもいつも不真面目に動いているわけではない。 零時迷子のミステスの動向を探ろうと思ってな。
教授に高性能の『てれびじょん』と『びでおかめら』を用意してもらったのさ。 これでやつらの監視ができる」
「たまには役に立つこともあるねえ」
「たまに、というのは気に食わないが……よし、映ったぞ」
「はあ〜、今日も疲れた〜」
「まだまだ鍛錬が足りないのであります。こんなことでは自分の身すら守れないのであります」
「要努力」
と死にそうな顔で帰ってきた零時迷子のミステス、坂井悠二。
そして現在彼を鍛錬している『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルと紅世の王ティアマトー。
以前に比べれば格段に関係が改善したといえるが、彼女は基本的に彼を好ましくは思っていない。
娘を悪い男にたぶらかされている父親の心境とでも言ったらいいのだろうか。
また、彼が現在娘を含む二人の女性の間で板ばさみになっている――
言い方を変えれば優柔不断にしているのも気に食わないのだろう。
そんなわけで彼女は彼にかなり厳しい鍛錬を課してきた。
しかし彼女は知らない。彼が虎視眈々と復讐の機会をうかがっていたことを。
「ときに千変。この偵察に意味はあるのかい?」
(失敗だったかな……)
そう感じずにはいられない千変であった。
数日後、悠二の父、貫太郎が珍しく帰ってきた。悠二の母、千草は事前に聞いていたのか、
大量の酒と肴を用意して宴会の準備に取り掛かっていた。
せっかくだからとシャナとヴィルヘルミナを誘ってみたところ、
「たまには息抜きも必要なのであります」
と珍しく同意してきた。こうして宴会が始まった……
未成年であるにもかかわらず、酒瓶を次々と空にしていく悠二。悪乗りした彼の父母に勧められ、
アラストールの制止も聞かず、酒を飲み一瞬で倒れてしまうシャナ。つまみの皿を次々と空にしていく
貫太郎。千草とチーズをつまみながらワインを楽しむヴィルヘルミナと、楽しい時間を過ごした。
(こういうのもたまにはいいものであります)
とヴィルヘルミナも心の中でつぶやき、ワインを勧められるがままに飲み干していった。
酒が回っているのか、わざとやっているのかはわからないが、いちゃいちゃし始める坂井夫婦。
「そういうことは子供のいないところでやってよ」
「悠二ももうそんな年頃か?」
「貫太郎さん、部屋に行きましょう?」
部屋に入るなりギシギシアンアンする声が聞こえたような気がしたが無視することにした悠二。
部屋の惨状を見回し、ため息をつきながら片づけをすることにした。シャナを二階に運び布団をかけ、
部屋に散らばる酒瓶、残ったつまみを片付けていく。
そんな中、ふと目に入ってきたのは美しい寝顔を見せるメード姿の女性。
無防備なその姿に、少しくらいなら……、と悪戯心に火がついた悠二。黒化した彼を誰も止める人はいない。
悠二は眠る姫へと手を伸ばした――
ヴィルヘルミナは目を覚ました――はずだが何も見えない。視界が闇に閉ざされている。
しかも体も動かない。体が何かで縛られているようである。
加えて、体が外気にさらされ、わずかに風が体をなでてくる。つまりは裸である。
「やっと目が覚めましたか? カルメルさん」
「その声はミステスでありますか? いるのならさっさとこれをほどくのであります」
「いやですよ。せっかくうまく縛ることができたのに」
「な、なにを言ってるのでありますか?」
「まあ悪戯というか、いつもの恩返しというか……」
「だから何を言ってるのでありますか」
ほんのわずかにヴィルヘルミナの語調が荒くなる。それを悠二は満足そうに眺めると、
「ところでこれから何をするかわかりますか、カルメルさん」
無言で返答するヴィルヘルミナ。
「生殖行為、セックス。この場合はレイプになるのかな?」
「何を馬鹿なことを言ってるで
強引に唇で口をふさぐ悠二。口内を舌で蹂躙し、舌を吸い、唾液を交換する。
「ハァ……ハァ……」
「あれ? ずいぶんと感じてますね。こういう経験少ないんですか?」
「馬鹿なことを言うなであります。ちょっと呼吸が乱れただけであります」
あからさまな嘘をつくヴィルヘルミナ
「ふうん。そんなことを言うんですか。自分の立場があまりわかってないみたいですね」
悠二は唇を少しずつ下にずらしていく。唇…頬…首筋…鎖骨…
(次は胸であります)
胸の辺りに我慢を集中させ、快感を抑えようとした。しかしそう思わせることが悠二の狙いだった。
胸元まで来たとたん唇をはずし一気に彼女のクレバスに到達する。
舌で彼女のクレバスに侵入を開始する。
「あっ! な、何をするでありますか!?」
さすがに動揺が隠せず言葉に余裕がなくなっていく。
「カルメルさんのここきれいですね。あとすごく濡れてますけどどうしたんですか?」
「何を馬鹿なこ、ああっ!!」
言葉をさえぎるように再び侵入を開始する。縛られているので股を閉じることもできない。
「すごい量ですね、どんどん溢れてきますよ」
「うう、言うなであります……」
「こんな姿を見たら、シャナはなんて言いますかね?」
「うう……黙れであります……」
「頼み方が違うんじゃないですか?」
舌を使いさらに責めを激しくすると思いきや、胸をわしづかみにしぐにぐにともみしだいていく。
わずかに悠二の手のひらがツンと立ったヴィルヘルミナの乳首に触れた刹那――
「ひゃん!?」
「ここがいいんですか? カルメルさん?」
「あっ、やめるで……あります……」
悠二の乳首責めは何度も続いた。
手の平で撫で回したり、強弱をつけつまみ上げてみたり、子供のように吸い付いてみたり……
責めを変えるたびに反応が変わり悠二をますます高ぶらせた。
「どうですか、そろそろ我慢できなくなってきたんじゃないですか?」
「アッ……ハァ……うう……」
「無言は肯定とみなします」
悠二は巨大化した自らのイチモツを取り出すと彼女の秘部へと狙いを定めた。
悠二は腰に力をいれヴィルヘルミナを徐々に貫いていく。
「や、やめるで…あります……」
「その割には僕のをずいぶん強く締め付けてきますね。本当はもっとしてほしいんじゃないですか?
素直になったらどうです?」
悠二の言うとおりだった。言葉では否定しても体はもっと強い快感を貪ろうと貪欲に蠢いている。
彼女の女は締め付け、引きずり込もうと動いている。
フレイムヘイズとしての使命感からくる彼女の強さももはや風前の灯であった。
もっとほしい、肉欲におぼれたい、でもだめ、そんな理性も首の皮一枚を残すのみとなった。
悠二がピストン運動を繰り返すたびに結合部からはズチュ、グチュという音とともに愛液があふれてくる。
彼の先端が最奥に到達するたびにどうしようもない快感に飲まれそうになる。
(もうだめであります……ミステスにイかされてしまうのであります……)
と、悠二の腰の動きが止まる。
「やっぱりやめにしましょうか。かわいそうになってきましたし」
逆に狼狽してしまったのはヴィルヘルミナだった。あと少しで気持ちよくなれる。絶頂を味わえるという
ほんのわずかな期待感さえ彼は奪おうとしている。目の前にほしいものがあるのに手が届かないような
もどかしさと、フレイムヘイズとしての使命感、いや自分自身の誇りがせめぎあっていた。
悠二はゆっくりとイかせないように注意しながら腰を動かし続ける。
猫がねずみをいたぶるように、じわりじわりと彼女を追い詰めていく。
窮鼠猫をかむ心配は決してない。四肢を封じられた彼女に反撃するすべもない。
どれくらい時間がたっただろうか。彼女の美しい顔は涙と涎でひどい状態である。
まともな思考もできない。自分が今何をしているのかもわからない。
わかるのはもっと強い快感がほしい、イかせてほしいということだけになっていた。
「イ……イ……」
「どうしたんですか?」
言ってはならない、理性はそう訴えかけている、でも――
「イかせてほしいであります……」
「頼み方が違うんじゃないですか?」
「悠二様、この淫乱な私をイかせてほしいのであります……」
「……いいですよ。じゃあ、お望みどおりに!」
腰の動きが加速していく、スパン!スパン!!と言う音が大きくなると同時に彼女も腰を浮かせ――
「あっ…あぁ…ひぁぁ……」
声もまともに出せずに体を何度か痙攣させると脱力して動かなくなった。
「まだ休ませませんよ、もっともっとはしたない姿を拝見しますね」
悠二は何度も何度も彼女をイかせ、中、顔、口、胸と何度も自分の分身を振りかけ夜は更けていった……
朝、悠二はヴィルヘルミナを絶頂寸前に追い込むと、足だけ縛っていた縄を解放し、
「さてと、僕は学校に行きますね。今日は一日中その格好でいてください」
「悠二様、せめてイかせて……」
涙ながらに訴えるが悠二はそのまま部屋から出て行ってしまった。
一階に降り、
「母さん、ヴィルヘルミナさんが二日酔いで調子が悪いって言うから僕の部屋でそっとしておいて」
「あら? せっかく貫太郎さんと出かけようと思ったのに」
「ん……。休んでればよくなると思うから自由にしていいってさ」
「そう? 帰ったら介抱、よろしくね」
「わかった」
これで彼女の姿を見られる心配はないだろう。シャナは今日は掃除当番、自分のほうが先に帰ってこられる。
悠二は今日の午後が待ち遠しくて仕方がなかった。
放課後、悠二はできる限り音を立てないようにそっと家の中に入り自分の部屋の扉をそっと開いた。
中では自分が朝想像した通りのことが行われていた。
必死に太ももをすり合わせて少しでも悦楽を貪ろうとする裸の女性――
こんなことで満足できるわけはないとわかっていても体の疼きが止まらない、動きを止めることはできない――
そこにはフレイムヘイズとしての強さ、気丈さのかけらもなくなったみだらな女性が一人いるばかりだった。
「何してるんですか?」
わざとわからない振りをして尋ねてみる。
「どうしてもっ、我慢できなくて、その……」
「まったくいやらしい女だね、ヴィルヘルミナは」
「そ、そうであります……私はいやらしくみだらな女であります……」
「よく言えました。ご褒美をあげなくちゃね」
悠二は彼女を縛る縄を解き、太ももを持って持ち上げ、一気に最奥まで侵入させる。
ヴィルヘルミナは足を悠二の腰に絡ませ、必死に抱きついてくる。
無防備になった彼女を悠二は何度も突き上げ、彼女もまた必死に腰を振る。
「あっ、あっ、もう…イくのでありますっ!」
「まったく…本当に淫乱だな…発情した雌犬かい? 君は」
「雌犬でも雌猫でなんでもかまわないのであります! はやくっ…!」
悠二はひときわ強く腰を突き出して彼女に止めを刺し――彼女は気を失った。
気を失っても悠二は自らが達するまで、気を失った彼女を責め続けるのだった……
それからしばらくたって……
悠二はヴィルヘルミナと夜の鍛錬を続けている。
だが今までと同じではなく――
表面上はいつもどおりの鍛錬、だが終わったあと――
「悠二様、もう我慢できないのであります……」
彼女の股間はすでに湿り気を帯び、顔を上気させ、
「早く今日もご褒美が欲しいのであります……」
上目遣いに懇願する彼女を見て、満足そうにそしてわずかに皮肉を込め、
「まったく……」
一言つぶやくと彼は彼女と肉体を重ねるのだった。
一方、星黎殿では――
「これは…とんでもないものが…あのミステス、あの『万条の仕手』をも虜にするとはねえ……」
あまりの出来事にいつもの冷静さはどこへやら、顔を真っ赤にするベルペオル。
「……!!」
情事に関し免疫の小さいヘカテー、あまりの出来事にパッタリと気絶してしまった。
(ちっ! あの時、喰っておくべきだったか……)
どう考えても正常なことを考えているとは思えないシュドナイ。
しかしこの映像には利用価値があると、ダビングの仕方を教授に聞こうと決意した。
三者三様の思いを胸に秘めながらも、この映像が戦略会議に使用されることは決してなく、お蔵入りとなってしまった。
坂井悠二の征服計画 ヴィルヘルミナ編・完
蛇足、その後の星黎殿
「ハァハァハァ…うっ!」
なにやら映像を見てしているシュドナイ、彼が見ているものは、
「ふふ、やはりヘカテーは最高だ…ハァハァ」
「ほーう、何が最高だって?」
怒気を含ませながら突然声をかけるベルペオル、笑っている顔が逆に恐ろしさを大きくする。
「げーっ! ババァ! いや! 違う! これは、その……」
「何も言わなくていいよぉ、千変。弁解は聞かないから」
一人の変態の断末魔が星黎殿にこだました。
星黎殿は今日もいつもどおりである。