「ねえ、ヨーハン、しよ……」
今ヨーハンと呼ばれた男に迫っているのは“彩飄”フィレス。
彼女はヨーハンを育ててきた、いわば彼の母親のような存在であった。
だがいつのころからか、成長したヨーハンに親としての愛情でない
感情を抱くようになった。彼女は彼に恋をしたのだ。
アラストールやアシズに代表されるように、“王”とそのフレイムヘイズが恋、
いや、もっと確かな結びつきを得ることは少なくないことではない。
だが、“王”と人間が恋をするということはかなり珍しい部類に入る。
永遠を手にするためにヨーハンとフィレスはある宝具を作った。
それをヨーハンは宿し、人間ではなくミステスとなることを選んだ。
この話はそんな二人のある一夜の話。
「フィレス、おいで」
優しく呼びかけるヨーハン。彼の前では強大な“王”も一人の女と化す。
そっと触れ合わされる唇。二人の夜はいつもキスから始まる。
ほかにもキスをする理由はあるのだが、ムードを台無しにするのでここでは触れないでおく。
「んっ、ちゅっ、ぴちゃ、んむっ」
卑猥な水音が二人きりの部屋に響く。そっとヨーハンが唇を開放する。
フィレスはいつも物足りなさげな顔をし、もう一度唇を突き出し、おねだりをする。
仕方ないなという顔をしながら二人はもう一度キスを交わす。
互いが今そこにあるのを感じ、お互いを確かめ合うように。
キスだけでもフィレスが満足してくれることをヨーハンは知っている。
だが、愛しているからこそもっと深くつながりたいし、相手のことをもっと知りたいとも思う。
だから、彼は彼女を抱く。もっと深く知るために、もっと深く知ってもらうために。
わずかに露出した胸に口付ける。
「ふふ、まだおっぱいが好きなの? 甘えん坊さん」
「……男って生き物はいつでも母親を追い求めるものじゃないかな」
「私が母親なのに? 変なヨーハン」
「そうだったね。でも僕は母親である君じゃない君を愛してるつもりなんだけど」
「もう、馬鹿なこと言わないで」
軽く頬を染めて横を向こうとするフィレスの顔を抑え、じっと目を見つめ、
「僕は君に嘘はつかないよ」
フィレスはヨーハンのこの目、時折見せる真剣なまなざしに弱かった。
見つめられるだけで、えもいわれぬ幸福感が広がり、力が抜けてしまう。
(あ…駄目……)
優しくベッドに押し倒されてしまう。まな板の上の鯉といったところだ。
実際にその鯉は食べられてしまうわけだが。
「脱がすよ、いい?」
(もう、意地悪……)
拒否などしないことがわかっているくせにヨーハンは時折こういう悪戯をする。
わかっている答えをわざと聞いてフィレスを困らせる悪戯。
「駄目って言ったら……?」
「当然脱がす」
「なら聞かないでよ…恥ずかしいんだから……」
「君は僕のお母さんなのに?」
「馬鹿……」
優しく脱がしていくヨーハン。ほどなくして、フィレスは生まれたままの姿になった。
恥ずかしいのか、シーツで局部を、腕で胸を隠し、顔を赤らめている。
「きれいだよ、フィレス」
「あんまりじろじろ見ないで、恥ずかしいんだから」
「目隠しでもしてみる? 見られてるのを感じなくなるけど?」
「そうしたらヨーハンの事を見られないわ」
「なら僕が目隠しでもしようか」
「私のことを見てくれないのはもっといやよ」
「なら、気持ちよくして見られてるのを感じなくさせてあげる」
「くすっ、期待してるわ」
ヨーハンはフィレスを抱きしめると、そっと首に唇を落とす。
「ふあっ」
フィレスの口から吐息が漏れる。その間にもヨーハンの手がフィレスの身体を
撫で回していく。優しく、それでいてフィレスの感じる部分を確実に探り当てる。
背骨をなぞり、お尻を軽くなで、軽くもんでやる。
「きゃっ……」
いつの間にかヨーハンの手がフィレスの局部の周りを探り当てていた。
わずかに濡れ始めたそこを確認すると、
「もう濡れてるの? フィレスがそんないやらしい人だなんてちょっと幻滅したかな」
「ヨーハンだからよ……」
「フィレス……」
「ヨーハン……」
恥らうことがなくなったフィレスは胸を隠していた腕を背中に回し、ヨーハンに身体を
密着させる。抱きしめあうだけでも互いのぬくもりを感じ、感情が昂っていく。
「胸、触るよ?」
「う、うん、どうぞ……」
ちょうどヨーハンの手の大きさに収まるそれは、ゴムまりのような弾力があり、
力を込めた手を押し返してくる。
「あっ、ふあっ」
「フィレスの暖かいよ……」
「ヨーハンも気持ちよくなろう?」
フィレスの細い指がヨーハンの男根にのび、包み込んでいく。
指が絡みつき、軽くこすられるたびに胸への責めが乱れていく。
「ふふっ、ヨーハン、感じてるのね?」
「フィレス、気持ちいいよっ……」
「もっと…してあげる……」
指を上下させることから、時折小指を亀頭に絡め、断続的な刺激と突発的な刺激で
ヨーハンを高めていく。
一方、ヨーハンも胸をもむだけでなく、乳首を手のひらで転がし、硬くなった
それに刺激を与えていく。
興奮が高まるにつれて徐々に動物的な本能とも呼べるような熱が体を襲い始め、
視線を交わし、互いにお互いの想いを確認するのだった。
「ヨーハン、ヨーハンの欲しいの……」
「うん、僕もひとつになりたい……」
おずおずとフィレスが股を開く。
「もう少し開いて?」
「でも、やっぱり恥ずかしい……」
ヨーハンはフィレスの片足だけを上げ、一気に中を掻き分けていく。
「ああっ! ヨーハン……!」
「フィレスの中…気持ちいいよ……」
フィレスの中はまるで別の生き物のように蠢き、精を搾り取ろうと激しく動いている。
「ヨーハン、いつでも…出していいよ……」
「ううん、フィレスも一緒に気持ちよくなろう?」
器用にヨーハンは身体を曲げ、フィレスの乳首を口に含む。
「んっ、あっ、ほんとに、おっぱいばっかりなんだからあ……」
といいながらも、そこを弄ばれるのはやぶさかでもないフィレス。
息が熱を帯びたものへと変わっていく。
子供をあやすようにヨーハンの髪をなで……わずかにフィレスを噛む力が強くなる。
「あっ……!」
ドクドクとヨーハンの子種がフィレスの中へと注がれていく。
その熱さと噛まれた刺激が一緒くたになり、フィレスを失神寸前へと追い込む。
ヨーハンの頭を強く抱きかかえ、強烈な快感に耐えながらもそれを楽しむのだった。
「気持ちよかったよ、フィレス」
「私もよ、ヨーハン」
行為が終わった後、そっと抱き合い、キスを交わしながら、二人は見つめ合っていた。
「このまま時が止まってくれたらいいのに……」
「それは困るな」
「どうして?」
「君といろんなことが出来なくなる」
「例えば?」
フィレスの尻にヨーハンの手が伸びる。
「こういうこととか」
「もう、本当にエッチなんだから……」
「君にしかこういうことはしないよ」
「嘘でもうれしいわ」
「嘘じゃないよ」
じっと真剣な目でフィレスを見つめる。
「本当?」
「君には嘘はつかないよ」
「ふふっ、信じてあげる」
「君のほうこそほかの男に目移りしないでくれよ?」
「酷い……私の愛が信じられないって言うの?」
背を向けてすねてしまうフィレス。ヨーハンはうろたえながら、
「ごめん、どうしたら許してくれる?」
「自分で考えてよ」
後ろからしっかりと抱きしめ、
「愛してる」
と、一言だけ囁いた。
「もう、本当に馬鹿なんだから……」
本当に自分は甘いんだなと思いながらも、この幸せが永遠に続いて欲しいと願うフィレスだった。