俺は今、学校からの帰り道を歩いている途中だ。
今日はマージョリーさんの買い物に付き合う予定だから、早く帰らないといけない。今から楽しみだな。
…なんだかさっきから誰かに見られてる気がするのは気のせいか。
「そこの美少年、やらないか」
シブイ声と共に突如封絶がかかった。炎の色は…紫?
こいつは何処かで見たような気がする。
とにかく貞操が危ない。俺は逃げることにした。
マージョリーさんの護符のお陰で、封絶の中では動ける。
「ふふ…、この千変から逃げられると思ったか。」
サングラス男は空から追ってきた。
色んな動物のつぎはぎみたいなやつが、尻を目がけて迫ってくる。
千変?たしかシュドナイとかいう変体もとい変態か。
マルコシアス曰く、『あの野郎は紅世でも有名なヤマジュニストだ。
今まで何人ものフレイムヘイズが奴に掘られブッ』
マージョリーさん曰く、『バカマルコ。人が気分欲よく呑んでる時に変なこと思い出させるんじゃないの。』
らしい。案の定、俺はシュドナイに捕まってしまった。誰か助けて。
「大丈夫。俺は美少年とヘカテーには優しいのさ」
聞いてねえ、その手を離せ、愛おしむような目で俺を見るな。
「男は度胸。何でも試してみるものさ!」
アッー!
…
(数十分後)
科学の結晶エークセレントとかいう不思議アイテムで、強制的にビンビンの弾薬無制限にされてしまった。
さっきから出したくもないのに何発も液を飛ばしている。うう…死にたい……。
「どうだ?お前もこっちの世界に来てみないか?」
誰が行くか。くそ、ちっともエクセレントじゃねえ。あの教授、碌でもないもんばっか作りやがって。
せめて死ぬ前に一発ぶん殴ってやろうと思ったその時、水色の炎弾がシュドナイに直撃した。
「…何をしているのです」今度は女の子の声だった。単語帳を片手に、うちの学校の制服を着ている。
紅世の関係者がまだうちの学校いたのか。知らなかった。
「その者を離しなさい。次は痛いですよ。」
そう言って女の子は手のひらででかい炎弾を作ってみせた。シュドナイの顔が引きつる。
「お…落ち着けヘカテー。俺にはお前だけってうわっ!!!」
女の子はさっきの特大炎弾をシュドナイにむかってぶん投げた。
間一髪で躱すシュドナイ。そしてその間にシュドナイと間を詰めるヘカテー。
そしてヘカテーの飛び蹴りがシュドナイに命中。そのままシュドナイは吹っ飛んでいった。
「私はあなたのものになるつもりはありません…」
ヘカテーが呟いた。こいつも苦労してるんだな。とりあえずお礼を言わなきゃ。
おれはチンコを仕舞いながらお礼を言った。ぱんつが見えたことは言わないでおいた。
「いえ、こちらこそうちの狂犬がご迷惑をおかけしました。」
そう言って微笑むヘカテー。なぜか目を合わせてくれない。どうして?
「あなたにかけられた科学の結晶エークセレントは、
目を合わせた異性すべてを虜にするように出来ています。
こうして近づいているだけでも危ないのです。」
ヘカテーは真っ赤っ赤になりながら答えた。なんだその夢アイテム。
「効果は三日で切れますので、それまで家から出ないほうが良いと思います。それでは。」
ヘカテーはそう言うとすたすたと歩いて行ってしまった。
「都の西北 早稲田の森に…」
ヘカテーはなにやら歌いながら去っていく。紅世の徒は誰もがどこかしらおかしい気がする。
俺は沈んだ気持ちでとぼとぼと帰っていった。
(帰宅)
「よう。お帰りケーサク。」
「ん…お帰り、今集中してるからあんま騒がないでね。」
マージョリーさんとマルコシアスはバーの中にいた。
マージョリーさんはカクテルの製作に夢中だ。
「黄金率の探求だとさ。ヒッヒ、俺は呑めないからさっぱりわかんねえ。」
マルコシアスがからかう。俺はカウンターに突っ伏してうなだれた。
マスター。キツイのくれませんかね。
「何言ってんのよ。これから買い物いくんでしょうが。」
「ケーサク…お前その服の汚れはどうした?」
俺はとりあえずシュドナイとヘカテーのことを話した。
科学の結晶エークセレントなんて恥ずかしくて言えない。
「あらら…それはちょっとひどいわね。待ってて、今なんか作ったげる。」
「あんの野郎、次会ったらただじゃおかねぇぞ。」
マージョリーさんが優しくて、マルコシアスが怒っている。なんだかめずらしい光景だ。
「ほい。これ飲んでさっさと潰れちゃいなさい。」
ありがとうございま…って目が合っちまった。やべえ。
マージョリーさんが真っ赤になってる。カウンターから出てこっちに来た。
「………」
俺は背後に回ったマージョリーさんに、後ろから抱き締められた。やばい。きもちいい。
「ギャーッハッハッハ!我が情厚きマスター、マージョリー・ドー、いくら何でもその慰め方はやりすぎだぜ!」
そうじゃないんだマルコシアス、これには深い事情があっt――
突如唇で口を塞がれた。やばい、流される
「今日は買い物は中止。明日の学校も休みなさい。いっぱい慰めてあげるから。」
マージョリーさんは俺を軽々と持ち上げると、ベッドのある俺の部屋目がけてスキップしていった。
ワッフルワッフル