『あるお昼時の風景』  
 
ある日のお昼時、今日も悠二達はいつものメンバーで、昼食の時間を楽しんで  
いた。  
「はい、今日のお弁当です」  
「ありがとう、吉田さん」  
この二人の会話は、もうすっかり日常の中に溶け込んでいる。  
「いいよなぁ、坂井はお弁当を作ってくれる相手がいて」  
「うんうん、羨ましいぞ」 そしてまたいつものように佐藤と田中がそれを冷やかし、池がホカ弁を開けな  
がら密かにため息をついた。  
「いやぁ、はは……それじゃ、いただきまーす」  
悠二は照れ臭そうに頭をかきながら、話をうやむやにする。  
「はむ……」  
シャナがメロンパンを食べ始めた。しかし頬張る仕草に力がない。  
「シャナ、どうしたの?元気ないけど」  
「な、なんでもない!――あむ」  
悠二に訊かれて、ついシャナは慌てて答える。その動揺を隠すようにメロンパ  
ンをまた頬張った。  
「ああ、今日の保険の授業、シャナちゃんには刺激が強すぎたのね?」  
その様子にピンと来た緒方がシャナに尋ねると、シャナはメロンパンを持った  
まま真っ赤になって固まってしまった。どうやら正解らしい。  
「そういや、シャナちゃんは知らなかったんだっけ」  
焼そばパンを飲み込んで、お茶のペットボトルを開けながら佐藤は言った。  
今日の四時間目の保健体育の授業は、受精や生殖器のしくみ、自慰や性行為に  
ついてなどのいわゆる「性教育」であった。今まで天道宮で教えられたことがほ  
とんどであったシャナにとって、今日の授業は衝撃だったのだ。  
「そういえば、前に子供の作り方、知りたがってたよね。シャナちゃん」  
箸を止めた吉田は、その時のことを思い出して赤くなる。  
「確かに……僕が口頭で説明したら、カルメルさんに殺されるような  
内容だらけだよな」  
弁当をつつきながら、悠二はヴィルヘルミナの動揺ぶりを思い出していた。  
「あ、あんなこと……絶対できない……」  
シャナは耳まで赤くして、初めてキスのことを聞かされたときと同じ感想を  
口にする。  
「まったく……シャナちゃんをここまでさせるとはけしからん奴め」  
「ぼ、僕は関係ないだろ!?」  
そんなシャナを見て、田中が弁当を食べながら悠二をいじる。  
「そーそー。坂井は反省しろ」  
ケラケラ笑いながら佐藤も続いた。  
「でもあんたも中学のときは結構遊んでたじゃない」  
緒方が呆れたように漏らした。佐藤と田中と緒方は同じ中学であり、その頃  
三人は結構荒れていたのである。  
 
「あ、あれは若気の至りという奴で……」  
「お、俺はやってないからな!」  
緒方の発言に佐藤は黙ってしまい、田中は慌てて緒方に弁解する。  
「さ、佐藤は、その……したことあるの?」  
そこに、意外な人物―シャナ―から、意外な質問が佐藤に寄せられた。  
「シャ、シャナちゃん!?」  
吉田も驚いているが、正直興味津々である。他のメンバーも、思いは同じであ  
るようだった。  
「な、何か話さなきゃいけないのか?ここは」  
そんな雰囲気を感じ取って、佐藤は一応確認する。  
「あんまり生々しい話はよせよ?」  
池が最低限のルールを佐藤に課した。こういう雰囲気でも潰さないのはさすが  
メガネマンである。  
焼そばパンを食べ終えた佐藤は、そんな皆の期待の目に応えてやることにした。  
「う〜ん、あんまりいい思い出じゃないんだけどな」 頭をぽりぽりしながら、佐藤は語り始める。  
「あれは俺が中三の頃だ。先輩の家に行ったときに、出されたジュースに酒を盛  
られたらしくてな……」  
気付くと皆興味津々な面持ちで佐藤の話を聞いている。  
「その日はそのまま意識が無くなってまったんだが、次の日目覚めたら俺と先輩  
は裸で同じベッドで寝ていて、俺の体にはキスマークが何個もあったというわけ  
だ。」  
そんな主要部分全てを省いた体験談を言い終えて、周りにがっかりな空気が流  
れる。  
「うぅ〜〜……」  
と唸って赤くなっているのはシャナ一人だけである。  
「まぁ、その……なんだ。非常に盛り上がりのない初体験だったな」  
田中が代表して他の皆の本音を漏らした。  
「確かにいい思い出じゃないよな……」  
坂井がまた弁当をつつきながら呟く。  
「まぁ、その後朝立ちを食われて腰が抜けそうになったりその他色々あるんだけ  
ど、それはこの場じゃできない話だろ?食事中だし、シャナちゃんが卒倒したら大変だ」  
続きは後日男だけで、という佐藤の発言で、その場の男全員が吉田と緒方から  
顰蹙の眼差しを受けた。  
「あさだち?」  
シャナはまだ首を傾げている。  
「ねえ一美、朝立ちってなあに?」  
「シャナちゃんそれは!」 と、こんな感じで、この日の少しお下品なお昼は過ぎていった。  
 
次の日の朝。坂井家では……  
「朝立ちなんだから朝に関係があるはず」  
シャナが朝早くから悠二の部屋に潜入して、朝立ちを調べていた。アラストー  
ルを置いてくるあたり、用意周到である。  
「何が立ってるんだろう……」  
シャナは悠二の布団をゆっくり剥がす。そしてそれは呆気なく見つかった。  
「こ、これが朝立ちね!」 小声で感激するシャナ。ベッドで寝ている悠二の股間は、朝っぱらから見事に  
フルおっきしていた。  
「腰が抜けるって……どんな感じなんだろう。」  
シャナは悠二のパジャマの下をゆっくりと脱がせる。そしてトランクスの真ん中  
を開けて悠二二号を引っ張りだした。  
 
「よし、いくわよ」 がぶっ  
「ギャーーーーー!!!」  
 
「な、何すんだよシャナ!」  
悠二が珍しく怒っている。シャナはその予想外の反応に、すっかり  
しょげてしまった。  
「ご、ごめん……朝立ちを食べたら悠二も気持ち良くなるかなと思って……」  
俯きかげんにむちゃくちゃな返答をするシャナ。これでも真面目なのである。  
「は、歯を立てたらダメなんだよ、デリケートな部分なんだから」  
しょぼんとするシャナに、悠二は怒るに怒れなくなって、っい余計なアドバイス  
をしてしまう。  
「歯を立てなければいいのね?」  
シャナは再び悠二をくわえようと悠二を捕まえて、下半身にやっている手をどけ  
させようとする。  
「わっ、わっ!ダメ、だめだって!」  
「大丈夫!もう歯は立てない!」  
学習能力の高いシャナは、同じ失敗は繰り返さないと意気込む。  
「わ、わかったよ、皆には内緒だからな……!」  
正直悠二も気持ち良くなりたかった。トーチになってから夜は鍛練鍛練なのでも  
う半年以上抜いていないのである。  
「じゃ、いくよ……」  
ぱくん  
 
「あっ、ああぁ……!」  
今度は歯を立てないように、アイスキャンディーの要領で悠二を舐め吸った。  
「シャナ、気持ちいい、気持ちいいよ……ああっ」  
(すごい……そんなに気持ちいいんだ)  
シャナの拙い技術にもかかわらず、悠二は数か月ぶりの性感に、もうとろけそう  
になっている。シャナはそれに気付かずに、偶然にも裏筋を下でねぶり回した。  
「あぁっ、シャナ、ごめん、もう出あああああーーーっ!!」  
 
びゅるるるるー、びゅっ、びゅっ、どくん、どくん……  
 
悠二は我慢できずにシャナの口のなかに数か月貯まったものを出してしまった。  
「はぁ……、はぁ、ごめん、気持ち良すぎ……」  
 
口のなかは最悪だが、始めて見る悠二の恍惚の表情に、シャナも嬉しくなる。  
そこに  
 
「悠ちゃん、さっきから大きな声出して、どうしたの?」  
騒がしい二階を不思議に思った千草がやってきた。  
「〜〜〜〜!!」  
シャナは咄嗟に悠二の原液を飲み込んで、神速で布団を元に戻す。  
「あ……あははははは、シャナがフライングボディプレスで目覚ましをかけてく  
るから……」  
「ご、ごめん悠二。もうしないから」  
二人は即興で三流な演技をした。シャナなんか口に何かが絡まってる感じがもろに出ている。  
「うふふ、シャナちゃんお転婆さんね。悪戯もほどほどにね」  
千草は全て分かってるんだか分かってないんだかな答えを残して、一階に下りていった。  
 

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