『銀髪銀眼の討ち手』  
 
午前零時に近い時刻。坂井家の屋根の上では、今日も四つの姿を立たせた  
7人による、夜の鍛練が行なわれていた。  
「それじゃ、そこにあるもの使って、どんどんやっちゃいなさい」  
「制限時間は無ぇからな、慌てんなよ」  
マージョリーとヴィルヘルミナが背中を合わせて、マージョリーの  
対面に悠二、ヴィルヘルミナの対面にシャナが、それぞれ位置している。  
 
「えっと……それじゃ、いきますよ」  
あぐらをかいている悠二の前には、古ぼけたぬいぐるみや小さな  
玩具の車など、およそ鍛練には似付かわしくないものが転がっている。  
悠二はそれらの中の一つを取り出して両手で持ち、目を閉じる。  
(まずは、物質操作の自在法だ)  
子供の人形劇に出てくるような操り人形を頭に思い描く。  
途端、銀色の奇怪な紋章がぬいぐるみを包みこんだ。  
(あとの要領は、シャナに存在の力をあげるときと一緒だ)  
いつもシャナにそうしているように、ぬいぐるみに存在の力を流し込む。  
 
悠二に命を吹き込まれたぬいぐるみは、むくむくと起き上がると、  
すぐに一人で歩きだした。  
「おっ、ついに出来たじゃねぇか」  
「ふん、練習初めて一週間目にしちゃ上出来ね」  
マルコシアスは陽気に、マージョリーは厳しい表情のまま、  
教え子の出来の良さを誉めた。  
悠二は、初めて自分で作った“燐子”を眺めながら、嬉しそうに感想を述べる。  
「いつもシャナにやってることだから、イメージは簡単に掴めたかな」  
その言葉を聞いたヴィルヘルミナは、ふと自分の親友のことを思い出し、  
「む……やはりフィレスの時のような事をしていたのでありますか?」  
「ち、違う!私あんなことしてないもん!」  
尋ねられたシャナは悠二と絡み合いながら力を吸い取る  
自分を想像して赤面した。  
きな臭いものを感じたシャナの教育係は、  
矛先を悠二に変えて、さらに追求する。  
「怪しいのであります」  
「そ、そんな……ははは」  
ヴィルヘルミナから疑いの眼差しを向けられ、悠二は縮こまる。  
マルコシアスが、ここ最近毎日見ている光景をからかい、  
「ヒッヒッヒ、おめーも大変だなぁ、フレイムヘイズに嫉妬されブッ」  
「バカ話は後よ。もうすぐ零時になるから、今度はもっと本格的な  
“燐子”を作ってみなさい」  
マージョリーはマルコシアスを叩いて、悠二に再び集中を促した。  
最近はこういう先生っぷりにも磨きがかかってきている。  
 
「ヒヒ、おめぇが本格的な自在師になるまではお世話になるもんだからな。  
しっかりやれよ」  
そもそもなぜ悠二が燐子を作っているかと言うと、悠二は“王”に匹敵する  
力を持ちながらそれを十分に引き出せないでいたので、マージョリーは  
苦肉の策として、撹乱や防御の自在法、“燐子”の作り方などを  
メインとして悠二に仕込むことにしたのである。  
「分かった。それじゃ試しに……これでやってみようかな」  
悠二が手に取ったのは、シャナがコンビニで買ってきた特大のメロンパン。 (メロンパンでできた燐子……一体どんな姿なんだろう)  
シャナはメロンパンで出来た燐子を想像してぼーっとしていまい、  
それをヴィルヘルミナに咎められる。  
「よし、いくぞ」  
気合いを入れ直した悠二はメロンパンを袋から出し、それにまた  
生命を吹き込むべく、精神を集中させる。  
(今度は燐子にキャラクターを設定してみよう)  
メロンパンに自在式を絡ませながら、悠二はイメージを膨らませる。  
(姿は、どうしようか……漠然と『強いもの』をイメージすればいいか)  
考えをある程度まとめると、悠二は目の前のメロンパンに、  
設定したイメージと存在の力を流し込んだ。それに反応したメロンパンは  
銀色の閃光を発して燃え上る。  
 
そしてその光が収まると、  
「う〜ん……これからもっと煮詰めていけばいいか」  
「ヒッヒッヒ!何でぇその燐子は?」  
マージョリーとマルコシアスの微妙な感想を漏らした。  
不思議に思った悠二は閉じていた目を開いて自分の掌を見てみると、  
 
 
シャナがいた。  
掌にちょこんと座っていて、その手には、これまた小さな  
メロンパンを持っている。  
「……へ?シャナ?」  
しかしオリジナルと違う点がいくつかあった。まず、彼女がヴィルヘルミナの  
ような給仕服を着ていること、次に、彼女の持つ髪と瞳の色である。  
ミニサイズのそれは――悠二の炎の色――銀色をしていた。  
「あなたがわたしのごしゅじんさま?」  
「う、うん」  
「そう、よろしく」  
ミニシャナは挨拶をすませると、またメロンパンに夢中になる。  
「か、可愛いのであります!」  
ヴィルヘルミナが、さっきとは一変、いつもは無表情な顔を弛ませ、  
それを見てむっとなったシャナにそれを咎められた。  
「ヴィルヘルミナ!まだ鍛練は終わってない!」  
シャナに怒られて鍛練に戻る彼女だが、やはり気になるようで後ろをチラチラ見ている。  
 
「今日の実習はこれまでね。あとはいろんな理屈を教えるから。  
ノートは持ってきた?」  
「はい、持ってきました。シャナ、ちょっとごめんよ」  
悠二は小さなシャナを手から移動させると、先程のガラクタの中から  
ノートと筆記用具を取り出した。  
「あっ、ライトはどこだ?暗くて見えない……」  
「自分で明かりぐらい付けてみなさい。あんた自在師でしょ?」  
何時の間にかマージョリーはライトを手にしている。  
「ヒッヒ、マージョリーはその燐子がちゃんと働いてくれるか見たいんだとさ」  
「そ、そうだね。あの、シャナ?明かりを付けてくれるかな?」  
マルコシアスに言われて気付いた悠二は、さっそく自分の“燐子”に  
初めての命令を下す。  
「わかった。ひをつければいいのね」  
燐子は悠二の頭に乗っかって銀色の火の玉を作ると、それを空中に  
ふわふわと浮かばせた。  
「あら……この子自在法の使い方としては今のあんたやチビジャリより優秀よ」  
「そ、そんなー!」  
まさか自分の燐子に負けるなんて。その衝撃の事実に、悠二はうなだれる。  
「ま、めげずに頑張んなさい。それじゃ話始めるからメモ用意して」  
そんなこんなで講義は終了し、午前零時を回った辺りでお開きとなった。  
 
「それじゃ、明日は防御の自在法『トーガ』教えるから、  
予習忘れるんじゃないわよ」  
「ほーいじゃ、またな。今度のも難しいから覚悟しとけよ」  
マージョリー先生達は一足先に阪井家の屋根から帰っていった。  
「悠二、すごいの作ったね」  
「う、うん……カルメルさんとシャナをイメージしたらこうなったんだ」  
シャナは、悠二の頭に乗っかっているミニシャナと見つめあっている。  
その光景に萌えながらヴィルヘルミナは、  
(ふふふ……メロンパンを媒介にすればいいのでありますな)  
第二の「シャナたん」を作ろうと考えを練ってていた。  
「……ヴィルヘルミナ、聞いてる?」  
「はっ!な、何でありますか?」  
「傾聴」  
ヴィルヘルミナはシャナの声で現実に帰ってきた。シャナはそんな彼女に  
むっとする。  
「封絶解けちゃったから、もう帰ろう?」  
「そ、そうでありますな。ミステス、小さなその子にも変なことをしたら  
許さないのであります」  
「宮刑」  
ヴィルヘルミナは必死で無表情を作りながら先に帰ってしまった。  
 
「変なの。ヴィルヘルミナ」  
「カルメルさんのあんな表情初めて見たよ……」  
「……我も初めてかもしれん」  
寡黙な姫の変わりぶりに、三人がそれぞれ感想をもらす。  
「私たちも、帰ろっか、アラストール」  
「うむ、そうだな」  
「ごしゅじんさま、きょうはいっしょにねるわよ!」  
ミニシャナは悠二の肩にぴょこんと降りてきて、悠二に寄り添った。  
「あはは……ちょっと従順にしすぎたかな」  
「――なっ、なら私も悠二と一緒に寝るー!」  
「うわあぁっ!」  
どさくさでシャナが悠二に抱きつく。“燐子”といえど、  
悠二と他の女の子が一緒に寝るなんて、シャナには許せないのであった。  
「だめだだめだだめだ!帰ろるぞシャナ!」  
アラストールが制止するが、  
「やー!いっしょにねるー!」  
「だめ!別々のベッドで寝なさい!」  
「だめじゃない!ごしゅじんさまはわたしとそいねしたいの!」  
今の二人に介入することは出来なかった。  
「いや僕そんなこと一言も」  
「ほら!悠二はあなたとは寝たくないって言ってる!」  
「そ、そんな、ごしゅじんさま……う、うぅ、ううう〜……」  
「ちょ、そんな泣かないで一緒に寝るから!」  
「ちょっと、悠二!?」  
「わあぁぁ!ごめんなさいぃぃ!」  
「……だめだこりゃ」  
「アラストール、いかりや長介はいいから助けてくれよー!」  
十分後、やっと騒動は納まって、オリジナルのシャナはしぶしぶ帰っていった。  
「ふぅ、もう疲れちゃった……、今日はもう風呂はいって寝よう」  
「ごしゅじんさま、わたしもいっしょにはいるー!」  
悠二にすっかり懐いてしまった“燐子”銀のシャナは、悠二の肩に乗っかって  
楽しそうに笑っている。  
「だ、駄目だよそんな!」  
初心な少年はその申し出を断ろうとするが、  
「ごしゅじんさまぁ……わたしのこと、きらい?」  
「い、いや、そんなことないよ」  
うるうるした目で見つめられると、どうしても断れず、  
悠二はシャナと一緒に風呂に入ることにした。  
 
「わーい!」  
シャナは小さなその身体全体に石鹸をつけて、悠二の背中を滑って遊んでいた。  
「夜も遅いんだから、早いとこ切り上げてくれよ」  
悠二はマットの上に俯せになっている。裸とは言っても小さいので、  
その体に欲情することはなく、悠二は安堵していた。  
「うん……あっ、わかった……は、あん……」  
切ないため息を漏らしながら、シャナは体全体を使って悠二に奉仕する。  
 
「あ、あはぁ……ごしゅじんさまぁ、こんどは、まえ……」  
「ま、前は自分でやるから!」  
何やら嫌な予感を感じた悠二、前だけは自分で洗うことにした。  
(うぅ……従順すぎるのも考えものだ)  
「それじゃ、ながすよ」  
シャナはシャワーを手に、悠二の身体を駆け巡る。  
俯せになっていたので、その時のシャナの悶々とした表情に、  
悠二は気付かなかった。  
 
風呂から上がり、  
「じゃ、寝よっか」  
「…………」  
悶々としたシャナを一緒の布団に入れて、悠二はすぐに寝ようとする。  
「ごしゅじんさま」  
「なに?」  
「きすして」  
「ん?ふふ、いいよ」  
変に意識することもなく、頬にキスをする。  
「そうじゃなくて……もっと、いやらしく……」  
「そんなキスは出来ないよ。ほら、明日早いんだし、もう寝るよ」  
もじもじするシャナに気付かずに、悠二はさっさと目を閉じてしまった。  
「……ちからのしょうひがはげしいから、つかいたくなかったんだけど」  
「……へ?」  
シャナが布団から出て目を閉じ、何かを詠唱する。  
途端、奇怪な銀色の紋章が彼女を包んだ。  
そしてその紋章の効果で彼女は――  
「えっ!?どういうこと?」  
――着ている給仕服ごと人間サイズになった。  
「ご主人さま……私、お風呂でご主人さまの身体を洗いながら、  
欲情しちゃったの。だから……」  
悠二に覆いかぶさって、耳元で囁く。  
「シャナ、ちょ、まずいよこれは、ちょ、ちょっと」  
銀色の髪から漂ういい匂いに、悠二は今までと一変、  
必死に理性と戦っている。  
「ご主人さまも、永らく性の処理をしていないんでしょう?」  
しどろもどろになる悠二を、優しくリードするシャナ。  
悠二の肉棒を布越しに優しく撫でさする。  
「せ、性処理はいいから、ほら、もう、もう寝よう、ね?」  
正直限界だった悠二は、間違いを起こさないように  
慌ててシャナを引き剥がすが、途中で胸に手が当たってしまった。  
むにゅん  
オリジナルにはない、生々しい肉の弾力が、悠二の手に返ってくる。  
「私は貴方の妄想から出来た“燐子”だから……身体もご主人さま好みに  
出来てるんだよ?」  
艶やかな笑みを浮かべて、燐子は胸にある主人の手を包み込む。  
「我慢しなくていいんだよ? 今まで溜まってたもの、ぜーんぶ  
出しちゃおう……?」  
銀色の瞳に射抜かれて、悠二はそのまま固まってしまった。  
燐子は悠二に抱きついて身体を密着させ、耳を舐めしゃぶる。  
 
「はぁ……あぁ……」  
快楽に負けた悠二はもうそれを止められなかった。  
「――――!」  
吹っ切れた悠二は、自身の作った“燐子”に一心不乱にむしゃぶりつく。  
「あぁ、いい……」  
「すー、はー、すー、はー……」  
シャナの身体をまさぐりながら、髪の匂いを嗅ぐ。  
「あはっ!ご主人さま、すっかり興奮しちゃって……」  
銀色のシャナは、悠二の陰部に手を当てるて、そこに自在式を刻み込んだ。  
そして肉棒に手を伸ばし、軽く扱く。  
「あぁっ!」  
たったそれだけで、シャナの首筋にキスをしている悠二の肉棒から  
精液が飛び出した。  
「あ、あぁ……」  
「ふふ、落ち着いた?」  
「う、うん……」  
「本番はこれからだよ?ご主人さまの身体に細工して、今夜は腰を  
振り続ける限りずーっと止まらなくしたからね」  
シャナはメイド服を着たままショーツを脱ぎ、上にかぶさる悠二に、  
その欲望を吐き出す場所を教えた。  
「ここに入れて、いっぱい腰振って」  
「うん、分かった……」  
導かれた場所を肉棒で貫くと、  
「うぁあっ!」  
すぐに射精が来てしまった。  
「ご、ごめ……」  
「ご主人さま、そのまま振ってみて」  
謝罪の言葉を遮られた悠二は、言われたとおり腰を動かそうとしたみると、  
「あぁ!ああぁっ、出る、どんどん出るっ!」  
少しでも腰が動く度に尿道を精液が通過し、激しい快感に襲われる。  
今まで感じたことのない大きな快感の波に溺れて、へろへろと  
力が抜けてしまった。それに気付いたシャナが、悠二と繋がったまま  
すぐに上になる。  
「気持ちいいでしょ?入れてる間は無限に出るから、ゆっくり楽しんでね?」  
「あっ、あっ、あああああああああ〜!」  
上になった銀のシャナが腰をいやらしく振ると、その  
リズムに合わせて射精感がこみあげくる。  
「ほら、ほら、ほらほらほらほらほら!あっはっはっはっは!  
はっはっはっはっはっは!」  
「……ぁ……ぁぁ……あひゃ……あぁ……」  
もはや抵抗することも忘れた悠二は、気が狂いそうな快感に身を任せていった。  
結局悠二は、明け方まで出し続けてしまい、気付いた頃には“燐子”は  
汁だらけのメロンパンに戻っていた。  
 
 
次の日の昼食  
佐藤「今日は池が生徒会の集まりでいないから六人か」  
田中「オガちゃんも試合でいないから五人だぞ」  
吉田「坂井くん大丈夫ですか……?」  
坂井「いたた……零時までの辛抱だな」  
シャナ「もう。既に存在が弱くなってるわよ。何やってるの?」  
坂井「ご、ごめん……(まずい、昨日燐子に腰を打ち付けまくった思い出が)」  
佐藤「おい、何赤くなってんだ?」  
吉田「ど、どういうことですか坂井くん!?」  
シャナ「わ、私何もしてない!そうだよね悠二?」  
坂井「う……うん。(確かにシャナは何もしてないけど僕はナニをっ……て  
僕は何を言ってるんだろうね?)」  
田中「はっはっは。どっちも選ばずに一人エッチとはこの平和主義者め」  
シャナ「ひとりえっち?一美、ひとりえっちって何?」  
吉田「そ、そそそそそれは」  
佐藤「坂井に教えてもらえよ二人とも」  
坂井「ははは、、止してくれよ」  
吉田「そ、そうですね……私も坂井くんに教えてほしいです」  
シャナ「だめ!よくわかんないけどだめ!」  
吉田「だめじゃない!坂井くんだっていつも私のおっぱいをいやらしい  
目つきで見てくれてるもん!ほら!ほら!」  
むにゅむにゅ  
坂井「ちょ、ちょっと吉田さん(なんだこの胸は昨日のシャナの  
比じゃないぞ)」  
シャナ「うぅ〜……こうなったらどっちが悠二に相応しいか、  
保健室で勝負よ!」  
吉田「負けない」  
シャナ「私だって」  
 
佐藤「坂井……この幸せ野郎!」  
坂井「うわぁあああ!逃げろー!」  
 
 

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