『文章の作法について』  
 
 ある日の教室で、 いつもの面子が机を寄せて話し合っている。  
「続編を書け、 って言われてもなぁ」  
 机に置かれた真っ白な原稿用紙を見て、 坂井悠二は面倒臭そうにため息をつく。  
 悠二達は国語の宿題として、 授業で扱った小説のパロディを書くように言われ  
ていたのである。  
「文章の作法も評価されるから、 みんな気を付けて」  
 こういうお得情報を教えてくれるのは、 みんなのヒーロー、 メガネマン。  
「文章の作法?」と佐藤。  
「あれだろ? 地の文の最初は一マス空けるとかそういうやつ」  
 続く田中の発言に、 佐藤は文字が半分ほど埋まった原稿用紙を見て青くなった。  
「おいおい、 早く言ってくれよー! もう結構書いちゃったぞ!」  
 呆れたように笑う緒方は、  
「もう、 せっかちなんだから。 池くん、 他にも文章を書くときの決まりってある?」  
 佐藤の二の舞にはなるまいと、『文章の作法』を教えてもらうことにした。  
「そうだな。 池、 僕達にも教えてくれよ」  
「わたしも教えてほしいです。 小説を書くのなんて、 初めてだし……」  
 悠二と吉田にそう頼まれた池は、  
「そうだね。 とりあえずこんなところかな」  
 ルーズリーフを取り出して、 三つの約束を書き連ねる。  
 
・「」の終わりには句読点を付けない  
・地の文は一マス空ける  
・クエスチョンマークや句読点のあとは一マス空ける  
「こんな感じかな」  
「へぇ、 小説書くのも大変なんだな。 ありがとう池」  
 悠二達はそのルーズリーフを見ながら、 自分達の文章をせっせと直していく。  
 しかしそんな中、 なかなか筆が進まない少女が一人。  
「むー」  
 シャナはシャーペンを唇の上に挟んで、 腕組みをしたまま固まっている。  
「シャナ、 小説は初めて?」  
「書いたことない。 論文なら得意だけど」  
 シャナはペンを手に取ると、 真っ白な原稿用紙を見つめて困ったようにため  
息をついた。  
「大体、 恋愛ものっていうのが無理あるよなー」  
 と言う田中に佐藤は意地悪な笑みを浮かべる。  
「お前は経験あるんだからいいじゃねーか」  
「な!?ま、 まだそんなんじゃねーよ!」  
「……!」  
 真っ赤になった緒方が佐藤をはたく。 田中もシンクロしたように赤くなって  
しまった。  
「始めはとにかく小説を読んでみて、 どんな風に書けばいいかを身体で覚える  
のがいいね」  
「あとは実体験が役に立つよね。 わたしは経験なんてあんまりないけど」  
 という吉田の言葉に、  
「そうよ! マージョリーさんがいるじゃない!」  
 緒方が、 自分が尊敬する最強の助っ人を思い出した。  
「でもマージョリーさん、 男にはアドバイスくれないからなぁ」  
「ふっふっふ……俺たちにもテキストくらいあるんだぜ?」  
佐藤が男を集めて、 教室の隅に隠れてひそひそ話を始めた。 それを不審に思  
ったシャナは、 男性陣の言葉の端から怪しい単語を聞き取り、 眉をひそめて  
吉田に訊ねる。  
「一美、 裏ビデオってなに?」  
「シャ、 シャシャシャナちゃん!」  
(おしまい)  
 

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