……それにしても、本当においしそうに食べるもんだな。
普段はその小さい身体には似合わない存在感に貫禄さえ感じてしまいそうなものだが、
今はその貫禄はどこへやら。
彼女の笑顔を見ると、とても彼女が人ならざる力を持つ異能者とは思えない。
メロンパンを口にするたびに自然と口元がほころぶ彼女を見ていると、
こちらまで幸せな気分になりそうだった。
「……何よ?」
悠二の視線に気付いたシャナが、訝しげな表情をしてみせた。
シャナの傍らには大量のメロンパン。
不機嫌そうな顔をしてみせても、メロンパンをかじるたびに表情が緩んでしまうのでいささかしまらない。
そんなシャナを見て笑いながら、
「いや、シャナって本当にメロンパンが好きなんだな、って思ってさ」
と言うと、何、そんなこと、とでも言いたげにシャナが鼻を鳴らす。
「ふん、そんなの当たり前じゃない」
何を今更、と言われて悠二は思わず苦笑した。
「じゃあ、メロンパンと母さんの料理、どっちが好き?」
「なっ………………」
そう言って沈黙してしまった。どうやらかなり迷っているらしい。
我ながら意地悪な質問だっただろうか。
「……シャナ?」
「…………メ……メロンパン」
しばらくしてそう答えた。
うん、この解答は予想通りではある。まあ、メロンパン、と即答されでもしたら、
息子の僕としては微妙な気分なのだけれど。母さんの名誉的に。
「ふーん、そうかそうか」
「な、何よ」
「いや、なんでもないよ」
そんな目で見るのはやめて欲しいな。別に悪いことをしているわけじゃないのに。
シャナの反応はとても面白かったけど。さて、次の質問にはどう答えてくれるんだろうか。
「じゃあさ、シャナ」
「?」
「僕とメロンパン、どっちが好き?」