クリスマス・イブ  
本来キリスト教の誕生日だが日本はそう捉えておらず  
単に祝日とされていてその夜は  
家族や恋人たちの聖なる夜となる。またさらにその夜大人たちの性なる夜となる。  
フレイムヘイズも例外ではなく炎髪灼眼の少女は公園で人を待っていた。  
 
「はぁ…遅いな悠二」  
炎髪灼眼の少女ことシャナは息で手を温めながら公園の時計をチラチラみて焦っていた。  
(なによ。悠二の馬鹿…。6時に待ち合わせしたのに10分も遅れてるじゃない…。)  
実はシャナは5時50分には到着してたので実際20分待たされている。  
シャナはだんだんイラついてきて眉毛がつり上がってきた。  
(まさかあのメイドの所に行ってるんじゃ…!)  
だが同時に心配感も出てきた。自分は悠二に捨てられるんじゃないかと。  
そう思うとしだいに悲しくなってきた。  
(悠二どこにも行っちゃやだよ…)  
ぽつりと呟く。  
「…悠二の馬鹿…」  
そんな不安でいっぱいのときに彼は現れた。  
「誰が馬鹿だって?」  
その声にシャナは振り向く。  
「ごめん。ちょっと遅れちゃたかな」  
「…悠二…」  
愛しい彼がいた。  
時計を見ればすでに6時20分をさしていた。  
シャナは遅刻のことを怒る前に悠二が来てくれた安心感に満たされてその場で膝をついて泣き出してしまった。  
「うっ、うっ、悠二〜」  
その突然の出来事に悠二は慌ててしまう。  
「えっ、えっ、えっ〜」  
同時に公園の人たちから白い目をむけられる。  
さらに悠二は慌てる。  
「あ〜。違うんです!違うんです!なんでもありませんから!」  
だがまわりの人たちからはさまざまな非難の声が聞こえてくる。  
「なにが違うんだよ。泣かせたくせに」  
「いやーね。あーやってなにもしてないフリして逃げる気よ」  
「きっと、酷いことでも言ったんだろ。この不良!」  
「女の子を泣かせるなんて最低ね。男のクズだわ」  
「………」  
このままここにいても仕方ないと判断した悠二はシャナを連れて  
逃げた……。  
「あ〜。逃げたぞ。この最低男!」  
「さ・い・て・い!」  
「さ・い・て・い!」  
「さ・い・て・い!」  
「さ・い・て・い!」  
悠二はその言葉に悲しみの涙を流しそうになりながら漆黒の闇のなかにシャナとともに消えていった。  
 
 
シャナと悠二はベンチに座っていた。  
悠二はシャナの頭をなでながら慰めていた。  
シャナの嗚咽もしだいに小さくなってゆく。  
シャナは悠二に遅れた理由を尋ねた。  
「ひっく。ねぇ、悠二。どうして遅れたの?」  
それを聞くと悠二はばつが悪そうな顔をした。  
少しの間があった後言った。  
「実は中津さんの買い物に付き合っていたんだ」  
その名を聞いてシャナは悲しい顔になる。  
「……中津小百合」  
このごろ悠二がよく行く喫茶店のメイドの名前だった。  
シャナは悲しい顔のまま悠二に顔をむけた。  
「……私のこと忘れてデートしてたんだ…」  
それを聞いて悠二は慌てる。  
「違う!違う!ホントに中津さんとは買い物に付き合ってあげただけで何もないから!」  
シャナは疑った顔のままもう一度尋ねる。  
「ホントに?」  
悠二はそれに力強く頷く。  
「うん。本当に」  
「そう…」  
シャナはホッと安心しながら、でももう少し詳しく尋ねてみた。  
「でもだからって、こんなに遅くなるかしら?」  
「それは……」  
悠二は頬を指で掻きながら困った顔をした。  
また少しの間があって言う。  
「選ぶのに時間が掛かって遅くなっちゃたんだ」  
シャナはその言葉を聞いて怪訝な顔をする。  
「選ぶ?」  
「うん。女の子の好みとか僕分からないから中津さんにアドバイスもらいながら」  
悠二は言いながら立ち上がってシャナの目の前に立つ。  
シャナはその行動と言葉を聞いてさらに怪訝な顔をする。  
「ねぇ、悠二。いったいそれってどういう……」  
シャナは最後まで言葉を言えなかった。  
 
悠二が左手に青紫色の小箱を持って目の前に出したきたからだ。  
悠二はゆっくり自分の口と小箱の口をひらく。  
「シャナ。僕と結婚してくれないか?」  
小箱の中には小さな指輪が入っていた。  
その言葉にシャナは泣き出してしまう。  
先ほどと違うのはうれし涙だということ。  
悠二は屈んで右手をシャナの肩にのせ左手で小箱をしっかり持ちながらシャナに聞いた。  
「受け取ってくれるかな?エンゲージ・リング」  
シャナは右手で涙を拭きながら言う。  
「…馬鹿。断る理由なんかないじゃない…」  
その言葉を聞いて悠二は微笑んだ。  
「それじゃあ受け取ってくれるんだね?」  
「当たり前よ。あなたとずっと居られるのなら」  
悠二は満面の笑みになった。が、  
「あっ、でも…」  
シャナがまた悲しそうな顔になってしまったので悠二は眉をひそめる。  
悠二はシャナに尋ねた。  
「どうしたの?」  
シャナは悲しい顔のまま言う。  
「うん…。実はね…」  
悠二はシャナの言葉に耳を傾ける。  
「私たち戸籍ないから婚姻届だせないの」  
ズコッ  
悠二はこけた。  
思いっきりこけた。  
不安そうな顔してるから何かと思えば……  
そんな悠二をシャナは不思議そうな顔で見つめていた。  
「?」  
シャナはどこまでも純粋だった。  
 
悠二はなんとか立ち上がってシャナと向き直った。  
シャナはまだ不思議そうな顔をしていた。  
そんなシャナを見て悠二はクスリと笑う。  
(まぁ…シャナのそういう純粋な所にも惚れたんだし驚くことじゃないか…)  
シャナに微笑みながら悠二は問う。  
「ねぇ、シャナ。結婚ってどうすればできると思う?」  
「え?それは…だから婚姻届を役所に出して…それで結婚…」  
「うん。そうだね…でもそれって平たく言えば国に夫婦って認めてもらえばいいことだよね?」  
その問いに的確な答えを導き出せなかったのか小さく…多分…とだけシャナは答えた。  
悠二は指輪の小箱を一度ポケットにしまい、それからシャナの両手を握り締める。  
そして悠二は真剣な眼差しでシャナを見据えたあと優しい口調で言った。  
「それじゃあ僕たちの国を作ろう」  
「え?」  
驚いてるシャナに悠二はフッと笑った後イキナリ立ち上がり両手いっぱいを広げて大げさな演説をはじめた。  
「この国が僕たちの存在を求めていないんなら新しい国を作ってそこの住人になればいい。その新しい国の住人は僕とーー」  
悠二は自分を指差しーー  
「ーーシャナだ」  
ーーシャナを指差した。  
シャナは一瞬キョトンとした顔を見せた後クスッと笑い出した。  
「変な国。住人が二人しかいないなんて」  
悠二も笑いながら同意する。  
「うん。そうだね。とっても変な国だ。でもーー」  
悠二は立ったままシャナと目線だけを合わせた。  
「ーーそれは僕たちの国。だから僕たちが認め合えば夫婦だ」  
シャナはフフッと一瞬だけ笑って悪戯っぽく言った。  
「じゃあ、もう夫婦?」  
「もうお互い認めたんじゃなかったけ?」  
悠二も悪戯っぽく言う。  
二人はそのまま少しの間互いのことを見つめていたがどちらともなく笑い出した。  
シャナへと笑いながら手を差し伸べる。  
そして結婚して初めての声をかける。  
「今までありがとう。そしてこれからもよろしく。僕のお嫁さん?」  
シャナは今までで一番嬉しい言葉をかけられて嬉しく思いまた今後もその声が聞けることを嬉しく思いながら悠二の手をとって返事を返した。  
「フフッ。これからもよろしくね。鈍感悠二?」  
悠二はその言葉をかる〜くスルーしながら自分のお嫁さんを誘う。  
「さぁ、行こうシャナ。まだまだクリスマスの夜は長いよ?」  
「はいはい。しっかりリードして下さいね。あ・な・た・」  
悠二はその言葉に頬を朱に染めながらもシャナの手をしっかり握って決して取りこぼさないようにしながらシャナと共に夜の街へ消えていった。  
二人が夫婦になってから初めて過ごした夜だった。  
 
 
 
 
 
その国は世界のどの国よりも小さくて  
闇の中にぽつんとある小さな光のように儚いけど  
それでも今ここに二人はいると強く存在していた。  
 
 
 
 
END  
 
 
 
 

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