もし悠二が軽い人だったら  
 
「ゆ・う・じ?」  
「ハイ?ナンデショウ、シャナサン」  
シャナは悠二の前にとてもにこやかな笑い顔で、しかし目が全然笑ってない顔で、腕を組み憤怒のオーラを出しながら立っていた。  
一方の悠二は冷や汗をだらだらと流しながら、極力顔の表情を平静に保とうと頑張っていた。  
「こ・れ・は・な・に・か・し・ら?」  
シャナは自分が着ているエプロンのポケットから一通の封筒ーー御崎探偵事務所と書かれたーーを取り出し、それを床に叩きつけた。  
そのさいに衝撃で封筒の中に入っていたものが床にばらける。  
出てきたのは、写真と一枚の紙。  
その写真には悠二がシャナ以外の女の人と抱き合ってる姿がばっちり映されていた。  
そして紙には、前置きなど一切なく、率直に書かれていた。  
 
『依頼内容、主人は浮気しているか』  
しています。一週間調べた限り判明している浮気相手の数は14人。  
 
悠二の冷や汗がさらに増える。  
「あなた、おめでとう。これで通算浮気回数100人突破だもんね?」  
「シ、シャナ、こ、これは、違っ、…」  
「言い訳却下ぁ!」  
「ひぃ、!」  
シャナの怒りのオーラの大きさがさらに大きくなり、悠二はガタガタと震え始めた。  
「結局、む・ね・か?悠二?」  
「いや、そ、そんなわけないじゃないか」  
「じゃあぁこれはなによぉ!」  
もはや怒りが限界を超えたのか、腕を振りシャナが床を指差したとき、ビッ、と悠二の頬に傷がついた。  
(か、かまいたち出してるっ!)  
悠二の震えは止まらない。  
「ここに写ってる女全員っ!胸が大きいじゃないっ!」  
たしかに、そこに写ってる人は全員胸に谷間ができてる人だけであった。  
「いや、だ、だから、これは、」  
「結局胸か、結局胸か、結局胸か、結局胸か……」  
「あ、あの〜?シャナ…さん?」  
ゴッ、と大気、いや、宇宙が揺れた。  
シャナの目は、静かに、悠二だけを捉えてる。  
それはさねがらこれから獲物を狩る獣の目であった。  
「こ、このっ!浮気者おおおおぉぉぉぉぉおおぉぉーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」  
「ぎゃああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」  
今日も御崎市には悠二の悲鳴が元気に響く。  
 
〜END〜  
 

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