「シャナ……脱がすよ?」
「ん……」
悠二の声がする。
それだけで私の心は温かいもので満たされてゆく。
短く返事を返すと、悠二はそれ以上なにも言わず黙って私の服を脱がしてくれた。
彼が私に触れてくれている。悠二が私の服を脱がす時、彼は優しく、まるで手荒く扱ったら一瞬で壊れてしまうもののように、慎重に脱がしてくれる。
彼が近くにいてくれている。
それだけで私は……幸せ。
「今日はどんな服を着せてくれるの?」
「もう夏だから……涼しげに空色のワンピースとかにしようかなって、どう?」
「うん。ありがとう」
私は自分でその姿を見ることはできないけど。
私のことを一番知ってるのは私であって、私じゃない。
でも、私のことを一番知ってくれてるのが彼で幸せ。
彼は私より私のことを知ってくれている。
私は見えないから。
あの時……『祭礼の蛇』との戦いの時に……
そう。私は失明した。
もう二度と自分の姿を見ることはできない。
もう二度と悠二の姿を見ることはできない。
ねぇ、悠二?でもね、私、それで更に鮮明に、目が見えてた時よりも、悠二の存在が感じられるようになったんだよ?
だから、あの時、私を傷つけたことを後悔しないで?
私のことで悲しまないで?
私はあなたさえいれば……
でも、それが……あなたの縛り……
あなたは私のことを捨てることができない。
それが私の一番の後悔。
私は目が見えないから、心配性な彼はずっと私の傍について、自分の時間を持てない。
私はあなたを拘束している……!!
ごめんね、悠二!!
ごめんね、ごめんね、ごめんね!
それが私のたった一つの後悔。悔やみ。
ねぇ、悠二。あなたは私といて良かったの?
彼女のその思いは、今日も彼に届かず、心の中で小さな光となって、消えた。
ねぇ、悠二。あなたは……
今、幸せですか?
END