「ふぅ・・・」  
千草はドサッっと衣装ケースを床に下ろすと、腰に手を当てて一息ついた。  
坂井家のローカルルールでは、毎年六月初めの日曜日を衣替えの日と決めている。  
一児の母であり誇り高き専業主婦であるけれど、女性としての誇りも失わない千草は、  
当然服装にも気を使う。結果、比較的広い夫婦の寝室も衣装ケースで埋め尽くされていた。  
なので、例年納戸から衣装ケースを運ぶだけでも一仕事で、早く終わった悠二に手伝って  
貰っても半日かかる。だが、今年は違った。  
いま寝室にある衣装ケースのほとんどは、シャナが運んだものだ。  
(ホント力持ちよね。こんな重いもの二つ同時に運んじゃうんだもの)  
なお、当のシャナはというと、衣装ケースを運び終わった後も手伝いたいというので  
防虫剤を買いに、スーパーまでのお使いを頼んだ。  
(帰ってきたら休憩して、ご褒美に買っておいたケーキをあげようかしら)  
その時の様子を思い浮かべながら、笑顔で衣装ケースをあけていった。  
 
そこで、他の衣装ケースより明らかに古ぼけたケースを発見した。  
(あら、これって・・・)  
それは、要らなくなった制服や体操着などを捨てるに捨てられずとっておいたものだった。  
(あらあら、シャナちゃんが間違えて持ってきちゃったのかしら?それにしても懐かしいわ)  
一時作業を中断し、中身をあさる。すると、御崎高校の制服が出てきた。  
(・・・まだ、着れるかしら?)  
そうおもって袖を通すが、少しきつくてつっかえてしまった。  
あきらめて制服を戻しながら、誰に聞かせるともなく千草はいう、  
「無理よね。あのころより“胸が”大きくなったし・・・」  
 
次に出てきたのは、学校指定のジャージだった。  
悠二たちが使うものと、ほとんどデザインの変わらない、学年色一色のダサいものだ。  
その色は青。一つ上の学年だった貫太郎さんのものだ。  
胸に『坂井』と刺繍されたジャージを見つめる。そして、気付いた時には抱きしめていた。  
(貫太郎さん・・・)  
そのジャージの感触と、今ここに彼がいない切なさが、彼女を思い出の世界へといざなっていった・・・  
 
 
 
「ふぅ・・・」  
千草はドサッっと段ボール箱を床に下ろすと、腰に手を当てて一息ついた。  
「あ、ありがと、手伝ってもらって助かったよ」  
千草の後から最後の荷物を運んできた貫太郎が、床に荷物を置くとお礼を言った。  
明日、貫太郎は大学進学のために引っ越す。だから千草はその手伝いに来ていた。  
 
千草が振り向き、彼を見る。彼は学校指定の青いジャージの上に、赤い顔を乗せていた。  
さっきまで手伝っていた友人たちが「お邪魔しちゃ悪いから」とからかって  
帰っていったのが原因だろう。貫太郎は千草のことを妙に意識してしまっているらしい。  
千草はそのことを非常に嬉しく思っていた。自分が彼をそれほど緊張させているのだから。  
そして千草も、色違いの赤いジャージに包まれた胸が、ドキドキするのを感じていた。  
三月になっても、いまだ短い日が二人の間を紅に染めていく。  
茜色に染められた二人は、無言で見詰め合う。ことばのない、ことばの要らない二人の会話。  
 
けれど、まだ少女でしかない千草にとってその時間は切なすぎた。耐え切れず、彼の胸元へ飛び込む。  
貫太郎はそんな彼女をやさしく包み込む、その暖かさが彼女のこらえてきたものをあふれさせた。  
「はなれたく、ないの」  
千草の瞳から涙が零れ落ちる。一度あふれた思いと涙は、次々とこぼれていく。  
「ごめん。千草さん」  
「違うの、貫太郎さんは悪くない。これは、私の、わがままなの」  
だけどっ、と千草は続ける。  
「わかってるけど、どうしようもないの。どうにもできないの。どうしたらいいかわからないの」  
そういうとさらに強く、強く貫太郎を抱きしめる。  
そんな千草を貫太郎は、何もいわず、ただ嗚咽に震える背中を優しく撫で続けた。  
 
「落ち着いた?」  
貫太郎は優しく千草に声をかける。  
千草は、コクッっと小さく頭を上下させた。そして、抱きついたまま貫太郎を見つめる。  
貫太郎はそんな彼女の涙を優しく掬い取ってあげた。  
そうして、どちらからともなくキスをする。  
それはお互いの信頼の証。遠く離れても決して忘れないという誓い。  
そして二人は絡み合ったまま床に倒れた。  
 
ちゅくっぴちゅ・・・・・・  
ぎこちないながらも二人は舌を絡めあう。  
初めてではないけれど、お互いがお互いを相手に数えるほどしか経験がない。  
けれど、懸命に。相手を思い舌を絡めあう。  
「んう、ちゅ、うぅんっふっ」  
頭の奥が、直接触れられているかのように痺れる。  
瞳には、さっきの涙とは違う喜びの涙が浮かぶ。  
紅の光の中で、二人は一つのシルエットを作りながら絡み合う。  
 
「うぅん、ちゅっ、んふぅぅ」  
全身が溶けていきそうな幸せな浮遊感の中で、千草は前からしてあげようと思っていたことを  
実行に移す決意をしていた。  
千草はキスを続けながら貫太郎が下になるように体を返した。  
「貫太郎さん・・・気持ちよくして、あげるね」  
そういうと、下に寝そべっている彼のジャージとパンツを脱がし、彼のモノを手に取る。  
そして、すでに硬くなり始めているそれを舐めた。  
 
「ち、千草さん?!」  
あわてる貫太郎さんを無視して、千草は彼のモノを舐め続ける。  
「あっ、くぅ。ち、千草さん!そんな、汚い、よ」  
「汚くなんてないよ!だって、大切な貫太郎さんの一部、だから」  
千草はそういうと、今度は口いっぱいに加えた。  
 
「んふぅ。ちゅばっ、ちゅ。ふんっ、ふうぅぅ」  
口いっぱいにモノを頬張る苦しさに耐えながら、自分の部屋でこっそり練習したとおりに刺激する。  
口の中で全体を刺激しながら、舌を動かし、裏筋や鈴口を重点的に刺激する。  
特に気持ちいいポイントを刺激されるたび、貫太郎の口から声が漏れる。  
それが嬉しくて、千草は一生懸命しゃぶった。  
「くぅぅ、もう出るっ!」  
経験不足の貫太郎にとって、彼女の奉仕は刺激が強すぎた。  
こらえることも出来ず、そのまま千草の口の中に出してしまった。  
千草はビックリした顔になったが、口を彼のモノから離すと、そのまコクコクと飲み込む。  
「ご、ごめん、千草さん!大丈夫?」  
彼はあわてて彼女の肩を抱いて顔を覗き込んだ。  
「大丈夫、心配しないで。ちょっと驚いたけど、私でそれだけ気持ちよくなってくれたってことだから」  
千草は心配そうな彼の顔をに笑顔をかえして、こともなげに答えた。  
 
千草の笑顔を見た貫太郎は、ほっとした。そして、  
「じゃあ、今度は僕が千草さんを気持ちよくしてあげる番だね」  
というと、彼女の上のジャージを脱がして体操着姿にする。  
「あっ・・・」  
膨らみかけのまだ硬い彼女の胸を、体操着の上からもんでいく。  
「んっ・・・あっ・・・」  
胸への愛撫に注意が向けられている隙に、貫太郎は一気に下半身に来ている服を脱がせた。  
「え?いやぁ!」  
いきなり秘所をさらけ出された千草は、とっさに手で隠そうとする。  
しかし、貫太郎はその手をさえぎると、直接割れ目に口付けをした。  
「やっ!ちょと、そんなところきたな―」  
「汚いなんていわないよね。さっき千草さんが汚くないっていったんでしょ?」  
「っ・・・・・・」  
千草は真っ赤な顔をして貫太郎をみると、勝ち誇った笑顔を浮かべていた。  
「・・・意地悪」  
千草はそういうと、頬を膨らませてそっぽを向いた。  
けれど、再開された愛撫によってすぐ表情を変えさせられることになった。  
 
「あんっ・・・んぁぁっ・・・やぁっ・・・ふぁんっ」  
千草は上の体操着のみ着ているという倒錯的な姿のまま、貫太郎に舐められ続けていた。  
表情はとろけ、涙と涎が次々にあふれてきた。  
「あくぅぅぅぅ・・・ふぁっはっ・・・やんっ」  
割れ目を舐める舌の動きは単調であるが、貫太郎さんに舐められているという事実が  
彼女を乱れさせていた。舌が触れるたびに体中が痺れる。  
「あんっ・・・もう・・・だめっ・・・ねえ、最後は一緒に、ねっ?」  
 
千草のまたの間から顔を上げた貫太郎が、千草の耳元でささやく。  
千草は愛撫で赤くなった顔をさらに赤くした。そんな彼女に「いい?」っと貫太郎が聞くと、  
彼女は無言で一度だけ小さくうなずいた。  
 
「やっぱり、恥ずかしいよ・・・」  
千草は四つんばいになっていた。先ほど貫太郎が頼んだのは、こういうことだった。  
「ねっ。やっぱり普通にしようよ」  
そんな彼女の言葉を無視して、貫太郎は十分に濡れた彼女の割れ目に  
自分のモノを挿入する。  
「はぁぁぁぁんっ」  
千草の背中がそり返る。そんな彼女を逃がさないように、貫太郎は体操着の下から左手を入れ  
胸をもんだ。  
「あ、そんな同時に、イヤッ・・・あんっ・・・ふぁぁぁ」  
彼女の反応に気をよくした貫太郎は、そのまま執拗に乳首を弄る。  
千草も耐えられないとばかりに身をよじるが、貫太郎の指は離してくれなかった。  
さらに、もう一方の手が千草のクリトリスをとらえた。  
「あぅぅぅんっ!」  
彼女の体がビクビクッっと震え、貫太郎のモノが強く締め付けられた。  
貫太郎も、彼女から与えられる快感に気が遠のきそうになりながら、必死で愛撫を続けた。  
千草のほうは、もう腕に力が入らず。突っ伏して、喘ぎつづける。  
「千草さん。僕っ、もう出そうです」  
「わたしもっ、もう、あっ、いっちゃう、はぁ、イクッ!!」  
 
 
 
千草は、古ぼけたジャージを胸に抱いたまま、片手で頬を押さえていた。  
(何であの人との思い出を思い出すと、決まってHの思い出なのかしら)  
ほんの少し朱が差した頬を手のひらで冷やしながら、  
(欲求不満なのかしら?)  
なんて考えたりもする。あるいは、あの二人を見ていて、女としての自分  
が刺激されてるのかもしれない。  
(何もかも、なかなか帰ってきてくれない、あの人が悪いんだから)  
目の前に掲げたジャージに、あの人の顔を重ねて怒ってみる。  
けれど、その顔が、千草にあやまる時に見せる情けない笑顔に変わると、  
次第に怒る気にもなれなくなる。というより、初めから本気で怒れるわけがないのだ。  
(いつまでたっても、私はあの人のことが大好きみたい)  
そう思い、再びジャージを抱きしめる。と、  
「こっち終わったから手伝おうか?って何してるの」  
寝室に悠二がやってきた。  
千草は素早くジャージを衣装ケースに戻すと、いつもの笑みを浮かべて。  
「あら悠ちゃん、手伝ってくれるの?ありがとう」  
と何事もなかったように返した。さすがである。  
悠二はなんとなく納得できないような顔をしていたが、ちょうどその時  
買い物からシャナが帰ってきた。  
(ナイスタイミング!さすが私のシャナちゃんね)  
そんなことを考えながら、表情一つ変えず悠二に、  
「さて、シャナちゃんが帰ってきたから休憩しましょ。ほら、お茶入れるから手伝って」  
といい、強引に寝室から悠二を連れ出したのだった。  
 

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