『存在の力』が大気の中に霧散してゆく。  
先ほどまで敵意を放っていた一つの存在が薄れていく。  
「…ふん」  
彼女は―赤く燃える髪と、紅蓮の瞳を持つ女は手に握った長剣の刃を服の裾で拭った。  
「これで…20匹は狩ったかしら?」  
そう言うと彼女は左手の宝石を撫でた。  
「数は問題ではない」  
不機嫌そうな、渋い男の声が聞こえる。だが、その場には彼女以外誰も居ない。  
「力の扱いが雑すぎる。無駄な力を消費している…一体何度言えば―」  
「うるさいわ。私は私の使いたいように力を使うわ。  
その代償にあなたの仕事の手伝いをしている。何の問題も無いはずよ?」  
女の声は硬質な響きを持っていた。  
「しかしだからと言って、このままで通用する相手ばかりでではない…  
『復讐』を果たす前に果ててしまってもいいのか?」  
男の声は宝石から聞こえてくる。  
女は、宝石を見つめ、  
「…貴方には関係無いじゃない」  
そう言って、男の追及を退けるように長剣を鞘に納めた。  
 
 
ここ数日間、二人は山の中を歩いていた。  
「何なの、ここ?」  
うっそうと茂る木々を掻き分け、樹海の奥に踏み入っていく。  
すると、行き成り目の前に巨大な広場が現れた。  
半径は500メートルにはなるだろうか。樹海の中に忽然と現れる空白。  
しかも、切り取ったかのような真円を描いていた。  
ここに来るまでに、もう幾つも同じような広場を通ってきた。  
「『焼け野』だ」  
声だけの男が応える。  
「『焼け野』?」  
良く見れば、広場の地面はまるで火事の後のように、焼け跡が残っていた。  
「『存在の力』が何らかの理由で失われた場所のことだ」  
男が応える  
「ふぅん…でも所詮植物でしょう?大した事は無いわね」  
そう言うと女は獰猛な笑みを浮かべた  
「そうとは言えん!植物とは言え、いや、植物だからこそその『存在の力』は無視できん!!」  
男の言葉を受け、侮るような笑みを浮かべ、  
「ええ…だから、全力で『狩』らせてもらうわ」  
そう言って奥へと足を進めた。  
 
いくつめの『焼け野』だろうか。  
女が足を止めた。  
「何あれ…井戸?」  
見ると、『焼け野』の描く円の中心部分に、小さな井戸があった。  
「気をつけるのだ。あの中からかすかな『存在の力』を感じる」  
「休眠中ってワケ?ふぅん、そう。なら、そのまま永眠させてあげるわ」  
そう言って、長剣を抜き放つ。刃からチリチリと音がしてくる。  
「ちょっと待て、様子を見ないことには―」  
「ええ、判ってるわよ」  
そう言うと、足音を立てずに井戸に近づいてゆく。  
切っ先を井戸の中に射し込み、炎を灯す。  
『存在の力』は確かに感じる。しかし、井戸の底まで見下ろせない。  
「逃げた…?そんなはずは…」  
ふと、男が叫んだ。  
「ッ!後ろに飛ぶのだ!!」  
ワケが判らずに、しかし反射で後ろへと飛び退る。  
すると、今まで立っていたところから、槍のようなモノが何本も突き出して来た。  
「っな!!?」  
咄嗟に長剣を構える。  
槍は柔軟な触手となり、女に襲い掛かってきた。  
 
「ちっ!」  
女は長剣に意識を集中。  
爆炎を纏わせ、襲い繰る触手を纏めて吹き飛ばす。  
「何!?」  
「これは…」  
男の狼狽した声が聞こえる。  
すると、井戸の中から何かがせり上がってきた。  
「……何なの…?」  
一見、それは人間に似ていた。  
井戸から出た上半身には、ちゃんと頭が有り、腕が有り、指が有る。  
だが、その詳細は人間とは遥かに掛け離れていた。  
頭には、目が無かった。鼻が無かった。  
その代わりに、乱杭歯の口が幾つもその顔に出来ていた。  
涎を垂らし、気味の悪い笑い声を上げている。  
腕は、左右で関節の位置も、数も違っていた。  
そして、人の腕よりも遥かに長かった。  
指はどうか。  
右手の指は芋虫のような丸い形をした物が三本くっついていた。  
左の指は…糸ミミズのような指が何本も生え、じゅるじゅるとうねっていた。  
「…気色悪い!」  
長剣を構え、切りかかろうとする。  
「ま…待つのだ!」  
男が狼狽して思いとどまらせようとする。  
だが遅い。  
「いやぁあああああああ!!!」  
長剣に『存在の力』を溜め、大上段から一気に振り下ろす。  
解き放たれた力は、巨大な爆圧を持ってその徒を引き裂いた。  
 
「っは!どうだ!!」  
そう言って、止めを刺そうとする。が。  
「イテェ…いてぇよぉおおおおおおおおおおおおおおおおあああははははははっははあ!!」  
「な!?」  
そう言うと体が即座に再生されてゆく。  
「本体は土の中だ!頭を吹き飛ばそうとこいつは死なないのだ!」  
男が叫ぶと同時に、井戸の周囲から何十本もの触手が現れる。  
「こいつは…まさか、王?…違う、王にしては知性が低すぎる…しかしこの力は…」  
男は必死に状況を見極めようとする。しかし  
「この…死に損ないがぁ!!」  
女は紅蓮の髪を振り乱し、今一度爆圧を叩き込もうと長剣を構える。  
「いかん!ここは一旦引いて―」  
「五月蠅い!!」  
女は一気にその徒との間合いを詰める。  
「でぇああ!!」  
徒が触手を使い、肉の壁を作る。  
その壁を一気に吹き飛ばす。  
「もう一つ!」  
女が吹き飛ばした壁の前に躍り出た。しかし  
 
「…え!?」  
触手が―あえて壁として使わなかったモノ―が女の手と、長剣に絡みつき、一気に投げ飛ばした。  
長剣が手から離れ、体が数十メートル投げ飛ばされる。  
受身を取れず、背中から墜落する。  
「ゴフッ…ぅ…」  
息が出来ない。もっとも、常人ならこの時点で背骨か、首を折って絶命している。  
「へけぇ…ふえぇへええへえええええっへへへへええ」  
嬉しそうに徒が笑う。  
徒の顔…その丁度中心に縦に亀裂が入り、冗談のような目玉が現れた。  
黄色い目玉がゆっくりと歪められる。  
両手を突きながらも、なんとか上体を起こしていた女は、得体の知れない寒さを感じた。  
「逃げるのだ!早く!」  
男の声で我に帰る。  
さっきまで戦いに燃えていた心はとうに冷め切っていた。  
慌ててその場を離れようとするが…  
「へへへへぇへへええええー!どぉこぉおいくのぉおおおおお!!?」  
楽しそうに叫んだ徒の声に応えるように、『焼け野』の外延部から、何百本もの触手が突き出した。  
「…うそ…」  
まるで巨大な鳥かごのようであった。  
井戸の周囲の触手が、女に襲い掛かる。  
「ッ!」  
慌てて炎で焼き払う。  
しかし、次から次へと襲い来る触手をのがれ続けることは出来ず、  
ついに足首、そして手首と捕まり、中に吊り下げられてしまった。  
 
「クソッ!」  
振り払おうとする体に、突然脱力感が襲い掛かってきた。  
「これは…?」  
「『存在の力』が吸われている!耐えるのだ!」  
男の言葉に我に帰り、集中する。  
『力の出』が悪くなったのに気付いたのか、徒は小首をかしげ、すぐに得心した様子で頷いた。  
もっとも、人間の行動原理があてはまる存在では無いのだが。  
ウス黄色い目が、細められる。  
女の心に、とても恐ろしい予感がよぎった。  
周囲の触手が爆ぜた。  
半ばから爆ぜた触手は、より細くなっており、どれも粘液でてかてかと光っていた。  
「…な…うそ…やめて…」  
恐怖から先細りになる声。  
触手は、女の周囲に繭のように張り巡らされ、行き成り服の中に滑り込んできた。  
「くぁ!」  
突然の感覚に体が跳ね上がる。  
太もも、わき腹などを這い回ってくる  
「嫌…!やめて…!」  
必死に身をよじって逃れようとする。  
だが全身を這い回る触手がそれを許さない。  
 
「ぅ…っくぅ!」  
そして、触手が柔らかな乳房へと襲い掛かった。  
「ぅっくは!やぁ…やめてぇ!!」  
粘液に塗れた触手が、乳房を揉みしだき、いつの間にか堅くとがった乳房を嘗めまわす。  
胸だけではない。  
触手が、女のクリトリスを押しつぶし、つまんで揉み、女をどんどん高めてゆく。  
「ぅ……っくは…っぁあ!!」  
大きく口を開け、涙を流しながら喘ぐ。  
秘裂は粘液と愛液でぐしょぐしょになり、そこ触手が擦り上げる。  
「あああ!あああ!」  
いやいやをするように首を左右に振り回す。しかし体は一向に自由にならない。  
「気をしっかり持つのだ!!」  
男の声ももはや耳に入らない。  
「ぅ…ああ!ああああああああああああああああ!!」  
女の体がびくびくと痙攣し、がっくりと力を失う。  
虚ろな目は虚空を眺めていた。  
「…ぁ…ぁぁ……」  
徒はさらに目を細め、触手の一本を股間に…秘所にあてがった。  
 
「!」  
びくん、と体が痙攣する。  
「い……いや…それだけは……お願い…」  
涙を流しながら懇願する。しかし、受け入れられるはずは無い。  
太い触手が、秘裂へと押し込まれてゆく。  
「嫌ぁ!イヤぁあああああああああああああああああ!!!」  
悲鳴。ぶちん、と何かを突き破る音が聞こえる。  
そして、奥まで達した触手はそのまま前後運動を始めた  
「痛ぁ!ああ!痛いぃい!!イヤぁ!!!」  
泣き叫ぶ女。  
五月蠅いと思ったか、その口にも触手を押し込む。  
「う…むぅうううう!!」  
苦しいのかもしれない。しかし、触手は女の口を存分に犯し、口中に白濁液をぶちまけた。  
「――――ッッ!!!」  
口に収まりきらず、顔面に、首筋に白濁液がぶちまけられる。  
股間からはぐちょぐょという淫靡な濡れ音が聞こえてくる  
「ぅ…ぅう…」  
首を振り続け、涙を流し続け、懇願する。  
だが、それには応えず、女の秘所の中で触手は爆ぜ、糸ミミズ大の細さになり、  
さらに女を犯し続けた…  
 

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