☆ 
 
 目の前の急な石段を登り、青々と茂った足下の草をかさり、かさりとかき分けていく。 
 突然、視界が開け切り立った高台から御崎市の全景が一望に見渡せる所に出た。 
 手前に見える住宅地、御崎大橋の向こうには林立するビルが遠く見える。 
 その大まかな立地はあの時と同じだな。でも……目を凝らして見ると細かい所は変わっている。 
 いや、あの花火をやった時に見たのと同じものの方がずっと少ない……。 
 自然と、他に同じ所はないかと目が風景を追っていく。 
「あれは、佐藤の家かな」 
 細かく区切られている住宅地の中で、一箇所大きくまとまっている場所。 
 そこは、屋敷の雰囲気も目に付く敷地の広さもほとんど変わっていなかった。 
「懐かしいな」 
 隣にいるシャナが呟く。 
「うん、本当に……」 
 あの日、この御崎市を出てから僕らは一度も戻っていなかった。 
 あれから、60年近い年月が経っている──。 
 
「ねぇ、悠二」 
 街に視線を向けたまま、シャナが尋ねてくる。 
「なんだい、シャナ?」 
「あたしと一緒で良かったのかな?」 
「うん」 
「……随分、あっさり言い切るんだな」 
 戸惑った表情のシャナが僕の顔を見つめる。 
 シャナはあの後、僕がどれほど悩んでいたか知っている。 
 でも、それは遠い昔の事だ。今は、迷わずはっきりと答えることが出来る。 
「シャナ。僕は君と一緒に旅を続けていなかったら、人と接する事が出来ない世捨て人になるしかないんだ。それって本当に死んでいるのと変わらない」 
「……」 
「でも君と一緒に紅世の王を討滅することで、この世界との関係を保ち続ける事が出来るのだ」 
 義務感でも正義の為でもない。それどころか、とても利己的な理由だ。 
 でも、それで良いと思っている。それが、辿りついた結論だ。 
「それにね」 
「うん」 
「シャナが好きだから。それが一番の理由だね」 
 シャナは一瞬、息が詰まったように目を見開いて驚き、すぐに紅くなって顔を背けた。 
「……莫迦」 
 でも、嬉しい……。聞こえないようにしたはずのシャナの呟きは風に乗って耳元に届いた。 
 その一言が胸一杯に広がって、嬉しさで満ちあふれてくる。 
 だから、本当に一緒にいると決めたことに後悔はないんだ。シャナ……。 
 眼前に広がる市街を見つめる先から時折、心地よい初夏の風が僕とシャナの前髪を優しくそよいでいく。 
 
 高く頭の上を雲雀のさえずる声が聞こえてくる。 
「そろそろ、行こう」 
「もう、いいのか?」 
「うん。もう、いいよ」 
 どのくらい此処に佇んでいたんだろうか。 
 陽が傾き、大気はうっすらと黄色く色づいてきていた。 
 
 神社の敷地から出て、路駐していた車の所まで来た所で何か視線を感じた。 
 前の方を見ると、小さな子の手を引いた老婦人が道の傍らからこっちを見つめている。 
「まずっ、路駐していたの怒りに来たのかな」 
「それにしては、雰囲気が違うようだが……?」 
 シャナの言う通り、その人の顔をよく見ると怒っているという素振りはまったく無かった。ただ、様子が変だ。 
「何だろう?」 
「紅世や燐子では無さそうだが」 
 もちろん、それ以外であっても攻撃をしてくるという訳ではない。第一そういう気配を漂わせたら、シャナが動くはずだ。 
 そうこうしている間に、老婦人が傍までやってきていた。 
 僕達に用があるのは間違い無いようだった。 
 声を掛けようか? そう思った時。 
「坂井……君」 
 僕とシャナは息を呑んだ。 
 そういう風に呼ばれるのは「あの日」みんなと別れて以来の事だから……。 
「それに、シャナちゃんでしょう」 
「そ、そうだ」 
 覚えのない人間に名前を呼ばれ少なからず動揺しているのはシャナも同じのようだ。 
「そっか……突然じゃ分からないわよね。なにせ、60年ぶりなのだから」 
 その言葉で目の前の老婦人の顔に見覚えが、誰かの面影が有ることに気付かされた。 
「吉田さん……」 
「そう。一美です」 
 それだけ言うと、彼女は僕とシャナの手をとった。 
「お久しぶりね、坂井君。それにシャナちゃん……」 
 
 
☆☆ 
 
「本当に驚いたよ。自宅、この近くじゃないよね」 
「ええ。こっちにいる友人の家からの帰り道だったのよ」 
「あ、えっと。吉田さん……で良いのかな?」 
 え? という表情を一瞬したあと、僕の質問の意図をすぐに理解して。 
「あ、そうね。今は、池よ。池一美」 
 瞬間、呼吸が止まる。あの日以来、こうなるのが一番良いと思っていた事。でも、全ての事を飛ばされていきなり告げられると、考えが止まってしまう。 
「そっか……」 
「ええ、そうよ」 
 僕とシャナはそのまま彼女を見つめるしかできなかった。その雰囲気を変えたのは目の前にいる彼女だった。 
「でも、『おばあちゃん』と呼ばれるのが一番多いけれど。ね、志摩子?」 
「うん、おばぁー」 
 傍らにいた女の子がはにかみながら答えると、彼女はその子の頭を優しく撫でる。 
 刻の流れを刻んだ吉田さんの笑顔はとても綺麗で、印象は昔の記憶とままだった。 
「でも、もう少し早ければ……」 
「え?」 
 微笑んでいた表情に少し翳が差した。 
「あと2年早ければ、あの人も……」 
「池が……」 
 そうか……。 
 アイツはもういないんだ……。 
「あ……」 
 吉田さんは、ハンカチを取り出すと、僕の頬にそれを当てた。 
 そっと、流れ落ちた涙を拭ってくれた。 
 母さんが亡くなったと聞いたあの時、覚悟はしていたつもりだった。 
 でも、それは頭で理解していただけであって感情は違うんだ……。 
 
☆☆☆ 
 
 吉田さんのハンカチを何度か借りて、ようやく落ち着いた。 
「ありがとうね」 
「当たり前の事だ、一美」 
 それまでずっと黙っていたシャナが僕の心情を代弁してくれた。 
「うん、本当にそうね」 
 ハンカチを丁寧に折りたたみながら、吉田さんは頷いていた。 
「そうそう。佐藤君は、アメリカに永住しているけれど田中君は今も御崎市にいるのよ。これから一緒に行きましょう。すごく喜ぶわ」 
 吉田さんは携帯を取り出して、メモリーしているアドレスを呼び出そうとするの手を伸ばして押し留めた。 
「どうして……?」 
「ごめんね。僕達、すぐに行かないといけないんだ」 
「そんな……。用事がなければ、すぐに来られるわ。ううん、それだけじゃないわ。せっかく帰ってきたんですもの、せめて一日延ばすとか……」 
 僕の言葉に納得がいかないという風だった。 
「田中君、会うたびに言うのよ。アイツとシャナちゃんは今頃元気でやっているかな、って。こうして戻ってきたんですもの、一目でいいから……」 
 そこまで言って僕とシャナの顔を交互に見つめた後、吉田さんはそれ以上言葉を続ける事はしなかった。 
「ごめんなさい、勝手なことばかり言って。二人には事情があるのにね」 
「いや、一美が謝ることはない。むしろ我々の方が勝手だろう」 
 シャナ……。ありがとう。 
 
「おばぁ、このひとたちダレ〜ぇ?」 
 吉田さんに手を引かれていた少女が大きな目をくりくりさせながら聞いてくる。 
「あらあら、いけない。まだ紹介していなかったわね」 
 沈みがちになりそうな空気を破ってくれたのは、志摩子ちゃんだった。 
「二人はね、おばあちゃんの古い古い、そして大切なお友達よ。坂井君、シャナちゃん。では改めて……ほら、ご挨拶しなさい」 
 そう促された志摩子ちゃんは、目を大きくさせて驚いていた。 
「おばぁの友だち? でもパパとおばちゃんとおんなじお名前だよー」 
「えっ?」 
「えっ?」 
 期せず、僕とシャナの声がハモってユニゾンする。 
 吉田さんはそんな僕達をみて、愉快そうに目を細めていた。 
「二人の名はね、この子の叔母と父親の事よ。志摩子は娘の子なの」 
 優しく男の子の頭を撫でながら、にこやかに答える。 
「あの人とね、最初の女の子と男の子に貴方達二人の名前を付けよう、って決めていたの。紗那がお姉ちゃんで、悠二が弟よ」 
「……そうか」 
「そうよ。驚いた?」 
「そりゃぁ、ねぇ……」 
 横にいるシャナに顔を向けるとまだ軽く口を開いたままだった。 
「シャナもね」 
「あら、やったわ。シャナちゃんを驚かせることができた」 
 いたずらに成功して喜ぶなんて、昔の吉田さんからは想像できなかった。 
「悠二おにいちゃん、シャナお姉ちゃんよろしくー」 
 志摩子ちゃんは僕に手を差し出して握手をした後、シャナにも同じように握手をして……そして抱きついた。 
「わっ」 
「お姉ちゃん、ママと同じ匂いがする」 
「そ、そうなのか?」 
 吉田さんはシャナに近づくとすぐに納得した顔になった。 
「あぁ。あの娘と同じ香水を使っているのだわ」 
「そうか。それなら道理だ」 
 シャナは膝を突いて姿勢を低くすると、本当の母親がするのと同じく慈しむように志摩子ちゃんを優しく抱き締め頭を撫でていた。 
 その様子を微笑みながら眺めていた吉田さんの表情がまた物思いに変わる。 
「私たちみんなが想い出の中だけに存在するようになった時でも、その子達の名前が残る。証が残るから」 
 僕達を見つめるその双眸は、もっとずっと先を見つめている様に思えた。 
 証。 
 紅世の王を探し、討滅する僕らは、出会った人々から忘れられるようにさすらう。 
 存在しないモノ。空気と同じ、意識されないモノとして。 
 
「ねぇねぇ、シャナってゆーじより強い?」 
「ああ、とぉーっても強い……ぐっ」 
 背後に伸ばされたシャナの指が、僕の背中を思いっきりつねる。 
「同じだー。悠二おじちゃんね、ウチのおかーさんにかなわないの!」 
 きゃっきゃと笑う志摩子ちゃんの言葉に涙を堪えつつ苦笑するしかなかった。 
 が、ガンバレよ、もう一人の悠二。 
 
「悠二」 
 シャナに促されて、短い邂逅に別れを告げなくてはならなかった。 
「うん。それじゃ、僕達は行くね」 
 すっかり傾いた夕日に照らされて、四つの影がアスファルトの上に長く伸びる。 
「さようなら。また、お会いしましょう」 
 言葉を句切って、それからゆっくりと続けた。 
「それまでお元気で」 
「吉田さんこそ……あ、ゴメン。池さん」 
 やっぱり急には変えられなくて、つい昔のように言ってしまう。 
「あら、気にしなくていいのよ。それに、坂井君から『吉田さん』って呼ばれると昔に戻ったみたいで若返えるわ」 
 いやだわ年甲斐もなく、とはにかみながら微笑む。 
「さようなら。吉田さんも元気で」 
「さよならだ、一美。息災な」 
「ばいばーい、シャナお姉ちゃん、悠二おにいちゃんっ!」 
「ばいばい、志摩子ちゃん」 
 
 僕らが車のシートに着いて、エンジンを掛ける。 
 後ろを振り向くと、吉田さんと志摩子ちゃんが手を振っていった。 
 シャナが後ろを向いたまま、手を振っていた。 
「さようなら」 
 二人に頭を下げてからアクセルを踏む。 
 ゆっくりと前進し、スピードが上がっていく。 
 シャナが前に視線を戻した時、ちらりとバックミラーに目をやるとアスファルトに伸びていた影の先が少しだけのぞき、そして見えなくなった。 
 
 
☆☆☆☆ 
 
 車もまばらな夜の高速道を走る車内で感じるのは、風を切る音と居眠り防止のための凹凸のある路面から伝わる振動だけ。 
 急いでいるというのは嘘だった。 
 昔の事を共有するかつての友人達と一緒にいたら、その時間だけまた離れる時が辛くなる。 
 あの時別れの時の様な思いをしたくなかった。とても身勝手な理由だと我ながら思う。 
 神社の高台へ行ったのも人に会わずにこの町を見る事が出来る、そう思ったからだ。 
 車を走らせてからずっと、シャナは黙ったまま高速道路からの流れる街灯りを眺めていた。 
 そんなシャナを僕は何度か横目で眺めるだけだった。 
 
「えっと、ここが今日の宿か」 
 シフトレバーをパーキングの位置にしてキーをロックする。 
 
 貴重品と着替えなどだけを携えて、フロントに立つと愛想の良さそうなホテルマンが僕らを迎えた。 
「予約を承っております。えー、速水裕也、里利子様ですね。お部屋はツインの1308号室です……」 
 フロントの部屋の階数や諸注意を聞きながら、差し出されたカードに必要事項を記入しサインをする。 
 アウトローで入手した僕達の『今の経歴』。 
 トーチとなって存在が消えた兄妹に成り代わってかりそめの生活を営む、僕らのかりそめの名前。愛着もなにもない、記号のようなモノ。 
 
 部屋に入ると、ぽすんっ、とベッドに飛び乗ったシャナはそのまま、身体を倒して布団に頬を付ける。 
「ふーっ」 
 大きな息を吐くと、悠二の方に目を向けながら呟いた。 
「どうしたの、シャナ?」 
「なんでもない」 
 嘘だ。こういう時は絶対怒っている。案の定……。 
「一つだけ不満が有るとすれば、いつも私が『妹』である、と言う事だ」 
 はぁ、そんな事ですか……。 
「でもさぁ、シャナ。シャナが姉で、僕が弟だとちょっと……」 
「うるさいうるさいうるさーい!」 
 ベッドの上でドタバタと暴れるシャナ。いや、可愛いけれど。 
「分かっている! 珍奇に見えるからな。そうなると記憶に残ってしまいやっかいだ」 
 そう、僕らはこの世界の影。封絶の内でも外でも、そのことに違いはない。 
 でも、今日のあの時だけは違った。記号じゃない、懐かしい僕の苗字。 
 今は友達の記憶の中と此処にいる二人だけの中にしか存在しない大切なもの。 
 ありがとう、吉田さん……。 
 
 シャナに腕を揺さぶられて、感覚が現実に引き戻される。 
「何を考えているのだ、正直に話す!」 
 頬を膨らませた顔。何度見ても飽きない、可愛い僕のシャナ。 
「言うけど、本当に良いの?」 
「言う! 許可する。というか、言いなさーい!」 
 上半身をガクガクと揺さぶられながら僕は笑うのを必死で堪え、平静を装って言った。 
「じゃあ、二人の時だけは姉と弟になる?」 
 目が点、鳩が豆鉄砲を喰らったような表情になり、そして唇を少しだけとがらせて。 
「莫迦」 
 小さな指で僕の鼻の頭を軽くこづく。 
 どっちになってもシャナには勝てないよ。 
 
 
☆☆☆☆☆ 
 
 食事を摂った後、ベッドの縁に二人で腰掛けながら窓の外に広がる夜景をずっと眺めている。 
 いつもなら、アラストールも混じってその土地で有ったことを肴に話をするのに今夜は違う。 
 頂きます、ご馳走様の他に何を喋っただろう? 
 シャナの手を握り、もう片方の手で缶ビールをちびちびと飲みながら沈黙の帳の中に身を委ねた。 
 たまにはこういう日があってもいい。 
 
 今はもう見えない、記憶にあるふるさとの夜景を目の前に重ねて胸の奥底にある想い出の結晶から湧き上がってくる一つ一つを噛みしめるようにして想いを馳せる。 
 色褪せない──いや、むしろ時間という砥石によって磨きあげられたそれは、より一層眩く見えるように感じるのかもしれない。 
 
「一美、元気そうだったな」 
「うん」 
 前触れもなく、シャナはぽつりと呟く。 
「志摩子ちゃん、可愛かったな」 
「うん」 
 思い出すような表情をすると、シャナは小さな自分の手の平をじっと見つめていた。 
 その姿がどこか悲しげに見えて仕方なかった。 
 
「彼女たちは万物の森羅の中で生きているのだな……」 
 シャナの先ほどまで握っていた小さな手の温もりを思い出すかのようにぎゅっと握りしめていた。 
「……羨ましいかい?」 
 悠二は両手を伸ばしてシャナの小さな拳をそっと握りしめた。 
「ふん……。私はフレイムヘイズだぞ」 
 そっぽを向くシャナに僕は腕を伸ばして小さな身体を抱き寄せる。 
「そうだね。そして僕はミステスを持ったトーチ。だから、一緒だ」 
 答えの代わりシャナは僕の胸に頭を埋める。その頭に手を置きながら柔らかい髪をゆっくりと、何度も梳いた。 
「志摩子ちゃん、どこかシャナに似ていたね」 
「そうか? 私にはそう思えなかったが」 
 頭を上げて、不思議そうに僕の顔を見た。 
「僕はシャナよりもシャナの顔を多く見ているから、間違いないよ」 
「……そうか」 
 それ以上、シャナは答えなかった。僕は、そんなシャナの顔をじっと見つめていた。 
 もし、シャナと僕の間に子供をもうけることが出来たらその子はどっちに似るのだろう。 
 あり得ない仮定に想いを馳せることは無駄かもしれない。 
 でも、人と同じ意思と感情を持っているからどうしてもそんな事を考えてしまう。 
 これは無駄な事じゃない。絶対に。 
 
 ミステスとフレイムヘイズ。 
 人ではないモノ。でも、僕達は温もりを知っている。 
 今はもうその温もりを求めてはいけないけど。 
 大丈夫。 
 みんなに貰った温もりの記憶があるから。 
 
☆☆☆☆☆☆ 
 
 残りのビールを一気に呷って空にすると、温くなって強くなってしまった苦みが舌にざらつくように残った。 
 もぞっとシャナが身じろぎをする。 
「昔の事、ちょっとだけ思い出した」 
「何のことを?」 
 ごく普通に会話を返しただけなのに、シャナはそれから黙りこくって返事をしない。 
「ねえ、シャナ。すっごく気になるんだけど……」 
「何でもない、忘れて」 
 少しふくれた顔。でも、そんなシャナの顔も可愛いと思ってしまう。 
 昔はよく、こんな顔をしていたっけ。あの頃は本当に怒っているかと思っていて酷く慌てていたな。 
 昔の記憶……。 
 今日はだめだな。どうも郷愁に囚われてしまうようだな。 
 まぁ、こんな日があってもいいか、そう思った時唐突に一つの光景がフラッシュバックのように脳裏に瞬いた。 
 
 そう言えば、あの日最後にみんなと別れる時にもシャナがこんな顔をした事が……。 
 
  『あ、あの。悠二君って呼ばせてください』 
  『一度だけで良いですから。それ、想い出にします』 
 
「吉田さんが──」 
 びくんっ、とシャナの身体が跳ねる。 
「それ以上いうないうな、いうなぁー」!!! 
 傍にあった枕を掴んで、ぽふぽふと僕の胸を叩いてくる。やっぱりビンゴだったらしい。 
 子供のような(そう言ったら、もっと真っ赤になって攻撃してくるだろうけど)その当たり方を見てふと、悪戯心が湧いてくる。 
「シャナはその時妬いた?」 
 暴れるシャナの身体を捕まえ頭を近づけると耳たぶを軽く歯で噛んで、そっと囁く。 
「あふっ、妬いてない。や……妬いてないぞ!」 
「本当?」 
「ん、あぁぁっ……。ほ、本当だ……はふっ」 
 ほっそりとした白い首筋を舌と唇で愛撫しながら、少しずつシャナに言葉を重ねていく。 
 少しずつ、息が上がりじかに触れている肌に熱を帯びていくのがはっきりと分かる。 
 掴まれていた枕が手から離れて、ベッドの上に落ちる。 
「シャナ……」 
 名前を呟いて、形の整った小さな唇をついばむように軽く触れる。これはシャナの好きな触れ合い方の一つ。 
 二度、三度。そうするうちにシャナの瞳に潤いが増し、目蓋が心持ち下がり気味になって表情が緩む。 
 普段の凛とした表情ではなくて、僕だけにしか見せないあどけなさと艶っぽさが混じったこの貌がとても好きだ。 
 そして、その表情をこうして……。 
「ふーん、そうなんだ……」 
 少し、でもお互いの息が感じる程度に顔を離して声を掛ける。 
「はふぅ……。なぁに?」 
 キスの余韻が残ったまま、熱い息と共に答えるシャナ。 
「あの時、妬いてくれなかったんだ……。少し寂しいかも……」 
「なっ」 
「あの時、僕はシャナのことを考えると気が気でなかったというのに」 
 しれっと、悲しい表情をしてみる。もちろん、あの時気が気でなかったのは本当の事だけど。 
「わ、私は。誇り高きフレイムヘイズだぞ。嫉妬、なんて気持ちなど抱かん!」 
 嘘つき。今なら、あの頃のシャナがどういう感情に動かされて吉田さんと対峙していたか良くわかる。 
「お弁当代わりにシャナがくれるお菓子、美味しかったね」 
「ぐっ。卑怯だぞ、悠二。フレイムヘイズの眷属たるそなたがそのようなやり方を」 
「僕は、事実しか言っていないよ」 
 今は羞恥によって赤みの差したシャナの表情。それが僕の悪戯心をさらにそそる燃料となる。 
「ゆ、悠二……」 
 切なそうに鼻のくぐもった声で、名前を呼ぶ。 
「ばかばかばかばか、悠二の莫迦ーーーっ! ぐすっ、ぐす……」 
 ぐずった赤子の様に、もがき手をばたつかせて僕の胸を叩いてくる。 
 もちろん、全然痛くはない。ただ、胸の奥がずきり、と痛む。 
 ちょっと調子に乗りすぎた。 
 ひとしきり癇癪を破裂させると、鼻をすんすんと鳴らし涙ぐんだ目を僕から隠すように顔を背けてしまった。 
「ごめん、ちょっとやりすぎた……」 
 シャナの真紅の唇に口を付けて、優しく舐る。唇と舌を使い踊るように緩急のリズムを付けていく。 
「んっ……ふぅ……」 
 固く閉じられていた天の岩戸が自ら開いていった。 
 ひとしきりお互いの舌を使って確かめ合ったあと、ゆっくりと口を離す。 
 二人の口元から名残惜しそうに銀糸が伸び、それがぷつりと切れたあとしゃながやや掠れがちな声で尋ねてくる。 
「もう、意地悪しない?」 
 上目遣いで尋ねてくる潤んだシャナの瞳を見て、さっきしてしまった自分の悪ノリに今更ながら後悔が押し寄せてきた。 
「うん。本当に、ごめんね」 
 シャナの小さな頤に指を添え、少しだけ頭を上向かせて首筋に唇を付ける。 
「はうん……」 
 首筋に舌を這わせる度に、抱き寄せている身体からシャナの身体が小刻みに震えているのを感じる。 
「シャナ、好きだよ」 
 弱い首筋を責めながら、言葉でシャナを愛撫すると一際強く身体を揺さぶってくる。 
「はっ……はぅ……ん、ゆ、ゆう……じ……」 
 背中にまわされた腕が、ぎゅっと僕を掴んでくる。 
「……だい……すき」 
「シャナ」 
 キスを首元に何度もしながらブラウスのタイを緩めてボタンを二つほど外していく。 
「可愛いシャナ。もっと、欲しい……」 
「あはっ……はふっ、んっっ……」 
 ブラウスに出来た隙間から手を差し入れ、ブラの布越しに胸のふくらみを感じていく。 
 手の平で包み込みながら、さすり、時折力を入れてこね回すように弄る。 
「は……ぅんっ……ゆう……じの手、温か……い」 
「シャナ……心臓、どきどき言っている」 
 シャナの小さな胸の奥から、心臓が早鐘を打つような鼓動が伝わってくる。 
「悠二が……そう……させてるのぉ……」 
「もっと、させたいな」 
 タイを完全に外し露出させた鎖骨に舌を這わせ時折前歯をこすりつけると、その度にシャナの上擦った声があがった。 
「んふっ……はぁ……はぁっ……やんっ……」 
 しみ一つ無いきめ細かい肌が舌先に心地よい。 
 動きを止めていない手の平にはじんわりと自分とシャナの温もりが重なり合っているように感じた。 
 その先を感じたくなって、名残惜しいけど一度手を抜いてブラウスの残りのボタンを全て外した。 
 ブラウスの袖は通したままほっそりとした白いお腹とブラ。 
 その格好でとろんとした表情で僕のされるがままになっていた。 
「ま、待って」 
 ブラのフロントホックに指をかけた時、シャナが拒絶した。 
「いやなの?」 
「そ、そうじゃないの……」 
 はやる気持ちに抑えが効かず酷くじれったい。 
「ゆ、悠二……お、風呂に。シャワーを浴びないと……」 
「良いよ、このまましたい」 
「や……だ。私、きたないよぉ……」 
 シャナの懇願を無視し、指に力を入れてそのまま強引に留め金を外す。 
 小気味良い音と共に白く清楚なそれは両側に力無くぶら下がり、覆われていた慎ましやかな双丘が目の前に晒し出される。 
「汚くないないよ」 
 可愛らしく控えめに盛り上がった乳房を片手で優しく包み、もう片方は綺麗な桃色の突起を口でついばんで、舌で転がす。 
「あんっ……綺麗……にしてか……らぁ……」 
「綺麗だよ。それに美味しい……」 
「ば……ばかぁー」 
 声だけは上げつつもすでに抵抗する気を無くしたようで、口と手の責めをそのまま受け入れている。 
 さっきからの愛撫で滲んだ汗で僅かに塩気を含んだ乳房を貪るように舐め続ける。 
「シャナ、乳首が固くなってきた」 
「い……やぁ……はふっ、言葉……にださ……ない……」 
 それとは裏腹に口に含んでいる乳首は充血し堅さを増しているのがわかる。 
「あふっ……んっ……はぁあん……あぁっ!」 
 もう、抑制が利かず時折声を上げてしまうようになってきて僕の方もたまらなくなってくる。 
 お腹に伸ばした手がもっと先を求めてスカートの中に潜り込ませる。 
「ふぁん……悠二……」 
 脚の付け根に指を添えると、ショーツの表面がしっとりと湿っている。 
「もう、こんなにしちゃって……」 
「あぅぅ……」 
 もう抵抗する気力がないのか、恥ずかしさを隠すようにベッドに横たわって顔を背けてしまった。 
 スカートをまくるとゆったりとしたサーキュラー・スカートがフレアーを波打たせながらめくれ、レースの細工が控えめに、でも上品にあつらえているショーツが姿を現した。 
 ショーツに手を掛けてもシャナは僕を見ようとせず、身じろぎもしないでじっと待っていた。 
 そのまま、ショーツを剥いで片足を抜かせる。 
 ショーツが片足の膝辺りに残り、下半身を完全にさらけ出している姿がひどく淫靡でイヤらしい。 
 僕って、変態なのかなぁ。心の中で苦笑していると。 
「悠二って……えっち……だよぉ」 
 ベッドに横たわり僕の方を赤みの差した表情で恥じらうシャナは本当にいつまでも少女のままだ。 
「そうだよ。だから、こんな事しちゃうんだ」 
 心を読まれた照れ隠しじゃないけど、シャナの無防備な部分に顔を近づけて幼さを残したままの部分に口づけをする。 
「ぁあっ……はふっ……んんっ……」 
 急に訪れた快感に、声を出しすぎないようにと押し殺そうとするが、漏れ出た嬌声が耳に届く。 
 絶叫より、こっちの方がひどく艶めかしくてかえって興奮してしまうのに。 
 焚きつけられた感情の赴くまま、舌を割れ目に滑り込ませて割り入る。 
「はぁっんっ……あっあっ……」 
 身をよじるように動こうとするのを両手でしっかりと押さえ、ねっとりと湿っている粘膜を舐めていく。 
「シャナは感じやすいなぁ。舌先で拭ってもキリがないよ。溢れ出てくる」 
「や、やぁ……。そ、そんな……言わないの……あんっ!」 
 お仕置き、とばかりに小さな秘裂の窪みに舌先を押し込む。 
「はっ、あぁぁ……んっ……あふ……んっ」 
「本当の事でしょ? それとも止めちゃう?」 
 口を離して顔を上げて顔を覗き込むと、快感と羞恥が入り交じり涙ぐんだ表情で僕を見ていた。 
「はぁ……はぁ……それ……は……」 
「本当はどうして欲しいか、シャナの気持ちを言葉で聞きたいな」 
「うっ……」 
 シャナの名前を呼びながら、秘裂の奥に隠れている膣口に人差し指を少しだけ埋める。 
「ああんっ……」 
 くりっ、と僅かばかり指先を捻るように回転させた。 
「はぅっ……わ、わた……しを」 
 さらにもう少し回転を付ける。ひくっ、と指先を締め付ける感触が強まった。 
「んはっ……わたし……を、もっ……と……あ、愛し……て……」 
「うんっ」 
 そのまま、指を第二関節まで奥に埋めて抜けるギリギリまで引き戻す。 
「はぁぁっ……ああっっ!」 
 自ら求める言葉を口にしたことで、留めようというタガが外れたのか一際大きな声を上げた。 
 人差し指の注挿を繰り返しながら、もう片方の手で秘裂の上にある突起の皮を剥くとピンク色のクリトリスがてらてらと淫靡に光っている。 
「はぁぁんっ、あふっ……あっ! ん……あくっ!」 
 指先の腹でクリトリスをこする度に声が強まり、指をぎちぎちと締め付けてくる。 
「ここ、もうこんなに膨らんで……。じゃあ、こっちも」 
 膣口に埋めた指が有る程度入った所で、第一関節をカギの様に少し曲げて回転を加える。 
「はくっ!! んっんんっ……あぁぁん!」 
「もっと、気持ち良くさせてあげるから」 
 ぐりぐりと緩急を付けつつ膣(なか)をかき混ぜる。 
 きゅうっと締め付けが増す所を負けないように力を込めて手首のスナップを利かせながらさらに続けていった。 
「あっ……やっ!! く……はん……っ」 
「はっ……あ……んっ! んぅっ! はぁ……はぁ……んぁ!! ゆ……ゆうじぃ!」 
 もうちょっと。シャナをイカせてあげられる。 
 指の注挿を続けながら、クリトリスをねじ込むような感じで押す。 
「あぐっ……あぁぁ……ああぁぁぁぁぁ!」 
 びくんっ、と背中を弓反らせ指が強く締め付けられた。何度か波が寄せては返すように来たあと、すぅっと力が抜けた。 
「はぁ……はふっ……ぁぁあ……」 
 少し荒い呼吸の音と共にシャナの肌から汗が玉の様に滲んでてらてらと光っている。 
「ぁあ……ふぁ……ん……」 
 ぼぅとしているシャナに顔を近づけて、軽く口づけをした。 
「ちょっと早くイッちゃったね」 
「はぅっ……ゆ、悠二が……。今日……の、悠二はいじわ……る……な事を……言うから……」 
「シャナって、言葉でそういう風にされると感じやすくなっちゃうんだ」 
「ばっ……あぅっ!」 
 イッたばかりの所にクリトリスを指で軽く触れると、目を見開いてびくりと身体を震わせた。 
「そうなの?」 
「うぅ……うん……。わっ……」 
 消え入りそうなその声とほつれた髪の毛が汗に濡れた額や頬に張り付き頬を朱に染めた表情が可愛らしくて、ベッドの上にいるシャナに抱きついた。 
「いじわる……。でも、すき……」 
 そのまま、されるがままにじっとしていたシャナが僕の唇を奪ってきた。 
「んっ……ぁ……あん……」 
 確かめ合うように長い、長いキスを続けた。 
 
 
☆☆☆☆☆☆☆ 
 
 ゆっくりと唇が離れると、シャナが身体を起こして覗き込むように僕を見つめる。 
 身体を起こそうとする僕の動きは手で軽く制されてしまった。 
「っと……。私だけが気持ちいいのは不公平だから」 
 視線だけをそっと反らしながら呟いたあと、こうして、とシャナに言われるままにベッドに背中を付けて上半身だけ身体を起こす。 
「悠二は、じっとしているだけでいいから」 
 ズボンのジッパーを下げ、中で張りつめていたモノに指先が伸びる。 
「うっ……」 
「もぉ、こんなになっちゃって……」 
「そりゃぁ、えっちなシャナの姿と声を聞いていたら……」 
「じゃあお仕置き、しなくっちゃね」 
 そう理屈を付けて、気持ちいい事──つまりよりイヤらしい事をしてくれるのは本当にシャナらしい。 
 そんな素直じゃなくて、でも優しいシャナがとても好きで心底愛しているって言える。 
 モノが取り出されると、シャナは口を近づけ舌先でつんつんと先端の割れ目を突っつく。 
「うぁっ」 
 シャナを愛撫していたことでかなり敏感になっていたモノはそんな刺激ですら大きな刺激だ。 
「ふふ。じゃあ、こうして……」 
 竿の根本に数本の指を添えるように押さえて鬼頭の周りを舌で丹念に舐め始める。 
 温かく湿った感触が、痺れるような刺激となって脳髄に突き刺さってくる。 
「悠二の……ひくん、ひくんいってる。可愛い……」 
 愛おしそう呟くと唇も使って鬼頭を口に含んだりしてきた。 
「んっ……あむっ……。んんっ……」 
「しゃ、シャナっ……」 
 むき出しとなっている亀頭の粘膜部分を舌のざらりとした刺激が電気のように伝わって、それだけでも全てを出してしまいそうになる。 
「はむっ……んっ……あむ……れろれろ……ゆうひ……ひもひ……いい?」 
「あっ……うん……。良すぎて、我慢するのが……大変……」 
「なかに……あむっ……だひて……いいから……ね……。んっ」 
 亀頭だけでなく、竿の部分まで口に含んで執拗に愛撫してくる。 
「う……ん……」 
「ぴちゃ……くむっ……あん……ほむっ……うんっ……」 
 熱い口腔内のぬめる感触と吸い付くような強められた吸引に、シャナを愛撫してからずっとしていた我慢も限界に近づいてくる。 
「んっ……ちゅっ……はむっ……んんんっ……」 
「うはっ!」 
 いつの間にか出されていた袋がもみしだかれて睾丸がきゅっと縮む。根元の方がじんじんとして来た。 
「っ……シャナ……そろそろ……で、出そう……」 
「はむっ……んっんっ……ちゅぷ……あむっ……だ、だしぃ……て」 
 さらに吸い付けがきつくなってきて……。 
「で、出るっ!」 
「んっっ!!」 
 根元の方から塊が込み上げて来たかと思うと、びくんと竿が膨らんだ感覚と共にシャナの口腔内に向けて射精した。 
 びゅくっ! びゅくんっ!! びゅくくっ……! 
「ほむっっ……! ぷあっ!?」 
 一度、シャナの口腔内に撃ったそれは勢いで口から離れてしまって……。 
 びゅくるっ! どく、どくんっ!! 
 溜まった精がシャナの顔面に撃ちつける 
「あっ……あぁ……」 
 一瞬驚いた表情になったシャナは撃ち続ける白濁した液を避けることなく浴び続けていた。 
「ご、ごめん……シャナ」 
 顔だけでなく、髪の毛にまでまき散らされてしまい酷く汚してしまった……。 
「いいの……全部、悠二のだから……」 
 そう言って頬に付いた精液を指で拭う。 
「……熱い……ね」 
 指先に掬った白いゼリー状のそれを口に含んで転がすように頬を僅かに膨らましたあと、こくりと咽を鳴らした。 
「……悠二の味と匂いだから……平気……。あとね……」 
 言葉を句切ると、微笑みながら一つお願いをしてきた。 
「付いたのを拭って、口に含ませて……。悠二のが全部、欲しい……」 
「うん……」 
 指先で拭い、それをシャナの口に含ませると指ごとしゃぶるように吸い付いてきた。 
 目を閉じてこくこくと咽を鳴らす様は、なんだかとても倒錯的で心臓が高鳴った。 
 
 
☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 
 一糸まとわぬ姿でシャナがベッドに横たわっている。 
 僕をじっと見つめているシャナ。お互い、求めていることは一緒だ。 
「悠二……一つになりたい……」 
「うん……」 
 硬さを取り戻したモノの先を秘裂に押し当てると、シャナの細い指が伸びてきて膣口の窪みに導いていく。 
「シャナ、行くよ……」 
「来て……」 
 その言葉を合図に腰をゆっくりと落としていく。 
「んっ……あぁぁぁっ!」 
 幼さを残したままの秘裂を割り入り、先端部分が膣(なか)に埋まった。 
 膣はきついながらも十分潤っているので、すんなりと侵入を許してくれた。 
「シャナの膣、熱い……」 
「あふぅ……悠二のも熱い……よ」 
 うっとりと、満ちた表情を見てもっとシャナを感じたくなる。 
 ぐっ、と腰を深く落として膣奥へ挿入する。 
「あっ……はああぁぁぁんっ!!!」 
 悲鳴のような嬌声を上げて、目を強く閉じるシャナ。 
 シーツを掴む手に力が入り、腰が少し宙に浮いて直ぐにベッドに強く押しつけられる。 
「んっああっっ!」 
 先端が膣奥の子宮口に当たり、それ以上の侵入を拒む。 
「シャナ、もっと強く行くからね」 
「うん、うんっ。……悠二を……強く感じさせて」 
 その言葉を聞いて下腹部へさらに血が注ぎ込まれているような感覚に陥る。 
「ああぁっ。悠二のが、膣で……大きく……なってる……」 
「はぁっ……あふっ……んんっ……あぁぁん!!」 
 腰を引いて、抜けるギリギリの所でまた奥に押し込む。 
 モノが膣のざらついた襞に包み込まれて快感が身体全体に伝わってくる。 
 もっと強い快感が欲しくて、注挿を行う。速く速く、すこし落とす……。 
「うんっ……はぁぁぁ……悠二……イイ……よぉ……」 
 シャナもまた全てを感じようと、動きに合わせて腰の位置を微妙に変えてくるので擦れて得られる快感に変化が生じる。 
「シャナっ……もっと、気持ち良く……させてあげる……からっ」 
 シャナの身体を少し転がすようにして横に寝るようにさせると片足を持ち上げるように上げた。 
 そのまま膣をえぐるように激しく腰を打ち付けていく。 
「あっ、あっ、あっっ……はぁん……やぁっ……んんっあ!!!」 
 肉の打ち付ける音とくちゅくちゅという水音がシャナの嬌声と入り交じって、とても淫靡な雰囲気だ。 
「シャナの膣、凄い締め付けだっ」 
「悠二……すご……い……あぁぁっ……はっ! はっ!! ……あうっ!!」 
 ぎちぎち、音が聞こえてくるような錯覚がするほど締め付けてきて気持ちいい。 
「あんっ、あっ、んっ……。好き……悠二……だ……大好き……もっと、して……」 
「シャナっ……僕も……だ」 
「はふっ、んっ……はぁぁぁんっっ!!」 
 一際強く腰を強く打ち付けて、膣奥まで挿して今度は捻るように腰に回転を与える。 
「はぐっ!! んあぁっ……あっ、あっ、はぁあんっ!!」 
 応えるように膣襞がまとわりついてくるようにざらざらとした感覚が襲ってくる。 
「シャナっ……きゅっと……してきている……」 
「んっ、う……んっ……きちゃう、き……ちゃう……のぉ!」 
 ふるふると首を動かして懸命に達しようとするのを堪えているのか、枕を引き寄せてぎゅうっと掴んでいるのが見えた。 
「が、我慢しなくて……いいよ、一度、イッて!」 
「あうっ、はんっ!! ……ヤっ……一緒に、イキたい……のっ!」 
 必死に我慢しているその姿がいじらしくて、愛らしくて胸に詰まる。 
「わ、分かった……よ。もう少しだけ、頑張ってね」 
「うん、うん……。あぁっ……ぐっ!!」 
 もうちょっとだけ、シャナの身体を貪って自分もイケるように腰を擦りつけるように打ち付ける。 
「はくっ……んあっ……うっ……ああんっ!」 
 びくんっ、とのけぞるシャナの手を掴んで安心させるように強く握りしめた。 
「ん、んっ、んっ……ゆ、ゆう……じ……悠二!!」 
 そ、そろそろ……かな。 
 根元の方がぎゅーっとしてきて、睾丸が引っ込んでくる感覚がやってきた。 
「シャナ……そろそろ……イケ……そう」 
「はふっ、あぁぁん!! あふっ……悠二……顔……顔が見た……よぉ……」 
「うん、シャナ……こっちに……」 
 身体を正常位に戻して、シャナと向かい合うにするとシャナの背中に腕をまわして抱っこするような体勢になった。 
「んはぁっ、ああっ!! ゆうじ……悠二ぃ……愛してる!!」 
「シャナ、僕もシャナの事が……んっ!」 
 背中にまわされたシャナの腕に力が入り、爪を立てられる。 
 モノに力を込め、強く腰を打ち付けると先走りが根元から尿道口に伝わってくるのを感じた。 
「はぁん……んぁっ、くっ……あぁんっ!!」 
「シャナ、イクよっ!」 
「来てっ!! キてっ!! あぁぁっ!!!!」 
 どくんっ!!! びゅくっ、びゅびゅっっっ!!! 
 膣襞が蠢いて子宮口が下がりモノの先端に当たった瞬間、爆発したようにシャナの膣中に迸る。 
「あぁぁぁぁっっ!!!! はぁくっっ!! んっぁぁぁぁ……」 
「うぁっ!!!」 
 びゅくっ!! びゅくんっ……。 
 自分の身体から全てを出そうと射精を繰り返し、シャナが全てを搾り取ろうと膣壁が締め付け、蠢動が続いている……。 
「はああぁぁぁあ……あぅぅぅ……んっ! あぁ……」 
 最後の射精が終わると、シャナの膣の余韻を味合うように繋がったままベッドに倒れ込んだ。 
 
 
エピローグ 
 
 少し時間が経って、呼吸がやや落ち着いてきて隣に横たわっているシャナに目をやった。 
 ほつれて頬に張り付いている一房の髪の毛を指で除けると、それに気付いたのかうっすらと目を開いた。 
「もう、大丈夫?」 
「う、うん……。まだ、心臓がどきどきしているけれど」 
 優しく、満ち足りた表情で僕に微笑みを返えすと、そのまま僕の手を両手を伸ばしてくる。 
「ほらぁ……」 
 シャナの小さな胸に置かれた手には、とくっ、とくっ……拍動が伝わってくる。 
「本当だ、どきどき言っている」 
 手の平からそこにシャナがいる事をはっきりと伝えてくる。 
 普通とはかけ離れた、とんでもない出会い方をした僕達。それからは生きるか死ぬかの状況に何度も何度も立ってきた。 
 その度に、シャナは僕を必要としてくれて、僕はそれに応えた。 
「ねぇ、悠二?」 
「ん、なんだい、シャナ?」 
「一つだけ、お願いしていいかな?」 
 じっと僕の目を見つめながら、真剣な表情になる。 
「いいよ。シャナの頼みならなんでも聞くさ」 
「……酷い、自分勝手な望みでも?」 
 思い詰めたように見えるその表情が少し気になった。でも、シャナの言う事を聞いて後悔なんてするとは思わない。 
 思うくらいなら、きっと此処にいないから。 
「うん」 
「1秒でも良いから、私より先に死なないで。私、悠二がいない世界で生きていける自信が……ないから」 
 シャナ……そう名前を呟いて身体を抱き寄せる。 
「うん。必ず、守るよ」 
「悠二……」 
 顔を僕の胸に埋めて、噛みしめるように僕の名前を呟いた。 
 必ず、必ず、その約束は守るからね。 
 シャナの華奢な身体を抱き締めるとシャナもまた抱き締め返してくる。 
 お互いの温もりを……お互いの存在を確かめ合うようにずっと……。 
 
 
end 
 
 
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 最初はシャナたんのツンデレ甘々えっちでハァハァしたい……という欲望の赴くままのエロでいくつもりだったのですが、どこをどうしたか、エロがあるシリアス短編になってしまいました。 
 エロ少ねぇYO! と言われてもしょうがないです。ごめんなさい。 
 エピローグの所については、ちがーう、と言う意見もいっぱいあると思いますので、一人の妄想だなぁ、となま暖かい目で見て頂けると幸いです。 
 
 ちょっとだけ言えば、7,8巻を読んで、シャナって硬いから故に脆い金属のようであり、実は悠二の方が強いんじゃないのかな、って思いまして。 
 日本刀で言うなら、シャナが鋭い切れ味を出す皮鉄であり刃鉄であり、悠二がしなる強さを持つ心鉄となっていると。そんな二人が合わさって強い日本刀のようになっている……なんて想像を膨らませたりしていたのです。 
 
 エロに関してはブランクが有りすぎて、気ははやるけど書ききれず……です。 
 もうちょっと修行して、もっと気楽に読めるシャナたんエロ小説をリベンジで。 
 
 ここまで呼んでくださった方、ありがとうございました。 
 
 caesaru 
 

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