「…んっ…う、く…ふぁ…」  
熱い。体が熱い。  
最近はいつもこうだ。彼の事を想うと体が熱くなってしまう。  
全身が汗ばみ、何かを求めているかの様におしりがくねくねと動いてしまう。  
「あんん…うあ、ん…」  
それに応えて指を動かすと、自然に声が漏れてしまう。  
どうしてだろう。なぜわたしは、彼を引き金としてこんな事をしてしまうんだろう。  
まだ名前も覚えてないのに、まだ会話らしい会話もした事がないのに。  
未だ名も知らぬクラスメイトを想いながら、  
わたしは下着の上から熱っぽくなっているそこを撫でた。  
 
御崎高校に入学して二週間あまりが過ぎた。  
新しい環境、新しいクラスメイト、新しい友達。  
それらにもう慣れたとは、正直言い難い。  
なにしろクラスメイトの名前すら覚えきっていないのだ。  
というか、男子の名前はほとんどがまだ頭に入っていない。  
元から物覚えの良い方ではないので、  
そのうち自然と覚えていくだろう、と気楽に構えている。  
他の中学出身の子ばかり、というのもあるし。  
唯一、最も大切な友達である一美と同じクラスになれたのはラッキーだった。  
そんな中、わたしは一人の男子に心奪われた。  
好みのタイプではない。特にきっかけがあったわけでもない。  
ただ、気が付いたらその姿を目で追っていた。  
ただ、彼の事を想う時間がだんだん長くなっていた。  
ただ、彼を想うと体が熱くなってしまう様になっていた。  
 
さすっていると、クリちゃんが徐々に顔を覗かせてくるのが下着ごしに分かる。  
手触りも、少し湿り気を帯びてきたようだ。  
そこで、わたしは手を下着の中に入れてみる。  
「んっ…は!」  
この、直接触った時のしびれるような感覚が好き。  
まるで彼に触られているかのような錯覚さえ起こしてしまう。  
そう、この指は彼の指。この熱は彼の熱さ。  
そんな事を考えながら私は、ようやく生え始めた栗色の毛をかき分けた。  
あ、ぬるぬるしてる。  
そこはすでに恥ずかしい液(と言うよりゼリーみたい)でとろとろになっていた。  
指の腹でほんの少しはみだしたヒダをなぞってみる。  
「くふ…は…」  
再び背筋にしびれたような感覚が走る。  
漏れた自分の声を聞きながら、ホックを外したブラを押し上げ、  
邪魔な程に成長したふくらみを掌で包んだ。  
 
中学三年になってからわたしは突然背が伸び始め、  
クラスの女子で一番背が高くなった今ようやく止まったようだ。  
それだけならまだいいが、それに従って胸のふくらみもまた成長し、  
いつの間にか一美と並んで「我がクラスのツートップ」と呼ばれるようになってしまった。  
そういえば、入学して初めての体育前の着替え時、  
同じクラスになったばかりの子に「モデルみたい」と評された事があったっけ。  
ただ、その直後他の子が「モデルにしては、凹凸ありすぎ」とツッコんでたけど。  
どちらかというと背が低い方の一美からも何度か「いいなあ」と言われたなあ。  
でもわたしは自分の体型が好きではない。  
胸はともかく、一美くらいの背の方がかわいいし。  
「カッコいい」と言われる事はあるけど、女の子にとってそれは褒め言葉じゃないと思う。  
なにより、気になる人より背が高いというのはちょっと…  
 
枕を引き寄せ、またがるようにして腿の間に挟む。  
四つんばいになって腰を前後に動かした。  
しゅりっ、しゅりっ、と濡れたあそこと枕が擦れる音がする。  
「あ、あ、あ…ん、んん…んうふ…」  
あ、わたし今とってもえっちな格好してる。  
恥ずかしい…でも、恥ずかしいのが、いい。  
わたし、えっちな子になっちゃった。  
「はっ、はっ、は…はあ…」  
どうせそのうち枕だけじゃ物足りなくなってくるんだから。  
ほら、いつの間にか手があそこに伸びてる。  
やわらかいお肉やひだをくつろげてる。  
彼がこれを見たらどう思うかな。  
きれいって言ってくれるかな。  
それとも、あさましいって嫌な顔するかな。  
 
最近、気がかりな事が二つある。  
一つは、何をするにも億劫になってること。  
別に疲れてるわけじゃない。  
体はちゃんと動くし、学校にも普通に行く。  
ただ、積極的に何かをしようという気にならない。  
話の輪の中にいても、友達の話に口を挟む気になれず、  
ただ黙って聞いている事が多くなっている気がする。  
わたしだけじゃなく、父さんや母さんもそうだ。  
お仕事や家事なんかは普通にやってるみたいだけど、  
あんなに笑ってた母さんから次第に表情が消えつつある。  
父さんに至っては、元から寡黙な人だったから今や存在感があるのかないのか。  
それでいて、彼への気持ちは薄れずに  
こんな事をしているのだから、我ながら勝手なものだ。  
 
「んくぅ、ん…は…」  
ひだとひだの間に指をさし入れ、優しくなでる。  
すると腰のあたりが湯に入ったようにじんわりと熱を持ち、  
思わずおしりが、くね、くね、と動いてしまう。  
「あ、いい…これ、いい…」  
あ、わたし今、欲しがってる。もっと刺激を、欲しがってる。  
だから、指をもっと速く、でも優しく、動かしてみる。こしゅこしゅこしゅこしゅ。  
「ん、あ、あ、あ、あ、あぁうぅ…」  
ぬるぬるがもっとぬるぬるしてきてる。  
おそらく皮の間からクリちゃんがちょこんと見えているだろう。見なくても分かる。  
そこで、二本の指で皮をむき、クリちゃんを空気にさらしてみる。  
熱くなってるクリちゃんが空気の流れをひんやりと感じるくらい敏感になってる。  
一旦むいた皮を戻す。とたんに柔らかく温かいものに包まれる。  
すると先程の冷たさが恋しくなってまたむく。  
すると先程の温かさが恋しくなってまた戻す。  
むいて、戻して、むいて、戻して、しごくように、むいて、戻して…  
「んあっ!んあっ!んくくぅぅ、んあっ!」  
赤ちゃんが通る穴が、たくたくとおつゆを吐き出すのが分かる。  
 
もう一つは、周りの人から無視されるようになった事。  
いじめ…ではないと思う。そんな事をされる程悪い事をした覚えはないし、  
もしそんなことになったら一美が、わたしの一番大切な友達が、  
見た目頼りないながらも必死に踏ん張って、そんな流れに抵抗してくれるだろう。  
信頼や友情、それもあるけど、なにより彼女はそんな子だ。  
そもそも、クラスの子だけでなく道で会った近所のおばさんや  
ドーナツ屋の店員さんまでそんなことはしないだろう。  
まるで、わたしが見えていない、もしくは見えているのに認識できない、といった感じだ。  
 
これだけ濡れたら、入るかな?まだやってみた事はないけど、入れてみようかな?  
「んっ…んんん…き…つい…」  
うわ、きつい。指が痛いくらい。それにすごい異物感。  
指がじりじりと進むに従って、ノドがせり出してくる感じがする。  
指でこうなんだから、男の人の…あれを入れようとしたらどうなっちゃうんだろう?  
男の人…彼…彼の、あれ…  
 ぢゅちゅっ  
「うわっ!あ、く、指が…飲み込まれる!?」  
びっくりした!さっきまで異物でしかなかった指を、  
彼(のあれ)を思い浮かべたとたん、わたしの奥底が求めだしたみたい。  
動かせるかな?吸い込まれるに任せてた指を、ひだを傷つけないように引き抜いてみる。  
「う…ああ!うあぁ…く、ふぅ…」  
体の中身が引き出されるような感覚。脊椎を伝って、とってもいい何かが上ってくる感覚。  
その感覚を味わいたくて、何度でも味わいたくて、  
指を最奥まで引き込ませて、抜けきらない程度に引き抜く。引き込ませて、引き抜く。  
「んあ!あっ、あぅ、んあっ、んあっ、んあっ!」  
気持ちいい!これが、本当の「気持ちいい」なんだ!  
今まで一人でシてた時の感じなんて子供だましと思えるくらい。  
「んあっ、はんぅぅあっ!ああっ!ああっ!ああっ!…きっ!」  
…!?  
「す、すきっ!すきぃぃ…」  
 
………!  
言ってしまった。言葉にするつもりなどなかったのに、口をついて出てしまった。  
そう。わたしは彼が好き。彼が好き。大好き。  
眼鏡の奥の涼しげな瞳が好き。  
クラス委員長として生徒会発表を読み上げる、張りのある声が好き。  
やっかいな頼み事をされた時の、困ったようなへの字口が好き。  
仲のいい男子とお馬鹿な話をしている時の、屈託のない笑顔が好き。  
 
 じわり  
あ、来る。来る。何かが、来る。  
さっきまで肌の上を滑っていた何かが、  
「好き」と口にした時からじんわりと体内に染み込んできたかのよう。  
「うぅあぅぁぁ…」  
あーあ、かわいくない声出しちゃって。  
…なんて頭の半分は冷静なのに、もう半分が突っ走っちゃってる。  
彼。彼の…あれ。彼のあれはどんなかな。彼の胸板はどんなかな。  
彼だったら、どんなふうにシてくれるかな。やさしくしてくれるかな。  
彼のあれが入ったらどんな感じかな。どんなふうに動くかな。  
こんな感じ?それともこう?  
「ああぅ!ああぅ!ん、くくっ!んはっ!」  
躰に至っては、もう、わたしの体じゃないみたい。  
右手はしだいに速く、大胆に、でもひだを傷つけないように動く。  
左手はいつの間にか嫌いなはずのおっぱいを愛撫してる。むに、むにって。  
そのたびに背筋がぞくぞくと震える。  
おしりがくね、くね、って右へ行ったり左へ行ったり。  
「んあっ!んあっ!んああぅぅぅ…ああはっ!」  
四つん這いのまま、はしたない格好のまま、わたしは声を上げ続ける。  
「あ…もう、もう少し…来るっ!くるのぉ!」  
やばい!来ちゃう!もう来ちゃう!  
いつもしてるよりずっと早く、ずっと強烈に………っ!  
「あ……………か………は………っ!」  
………………………………………………………………  
………………………………………………………………  
………………………………………………………………  
 
 
どのくらい固まっていたんだろう。  
目の前と頭の中が真っ白になっていた間、  
わたしの中の時間が消えたかのようだった。  
あー、びっくりした。あー、よかった。  
今までは罪悪感が邪魔してできなかったけど、  
彼(のあれ)を思い浮かべるだけでこんなにも違うなんて。  
ティッシュで恥ずかしい雫を拭き取りながら、わたしは余韻に浸る。  
あーあ、ぱんつぐっしょり。いつの間にか脱いでいた縞ぱんを脇によけ、  
引き出しを開ける。うん、ねこさんにしよう。  
新しいぱんつとパジャマを穿く。  
すっきりしたことだし、これ ぐっ  眠れ   ね。  
 
…あ、あれ?わたし今どうしたんだろう?  
なんか、「自分」が急に薄まったような、嫌な感覚。  
まあいいや。何かの気のせいだろう。  
「わたし」が消えてなくなっちゃうなんて、そんなことあるわけないし。  
それよりこれからどうしよう?  
身も心も「彼が好き」と認めたからには、告白した方がいいのかなあ。  
でもそれもなんか億劫だなあ。  
第一、よく知り合ってもいないのに告白したって、  
「なんだこいつ。」って思われるのがオチだし。  
そうだ、一美に相談してみよう。  
あの子のことだ、打ち明けたら一も二もなく協力を申し出てくれるだろう。  
協力してもらって、まずは彼と友達になろう。  
一緒に勉強したり、一緒に行事をこなしたりして、仲良くなろう。  
仲良くなって、それかr  
 
 
 
 

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