「やぁっと着いた〜!」  
さんさんと降り注ぐ太陽。  
焼けた白い砂。  
太陽光を反射するスカイブルーの海。  
遠くに浮かぶ船が、陽炎のように揺らめいていた。  
 
事の始まりは数日前に遡る。  
いつものごとく弁当を囲んで談笑していた悠二達のグループ。  
吉田の手作り弁当をもらい、シャナからは厳選された菓子を与えられる。  
新たに緒方も参加した会話の主な内容は、せまる夏休みについて。  
プールに行きたい花火がしたい祭りに行きたいカキ氷が食べたいああそれならあの店がいいと思うよなどなど。  
話題は尽きる事も無く次々と出てくる。  
ふと会話から抜け出して窓からのぞく青空を見ていた悠二の口から飛び出た言葉。  
「―――海、行きたいな」  
この言葉にすぐさま佐藤が食いつき、田中と緒方が続く。  
池が具体案を出し、吉田が控えめながらも賛成する。  
あっという間にスケジュールが決定した。  
シャナはなぜかすこし躊躇していたようだが、最終的には一緒に行くことになった。  
 
こうして悠二達一行は夏休み前の最後の土曜日、海へとやってきた。  
額から流れ落ちる汗を拭い、悠二は改めてメンバーを見まわした。  
 
まず、丁度悠二を挟むように両脇に立っている二人の少女。  
右、シャナは悠二とお揃いのTシャツにジーンズというラフな格好。  
対する左、吉田は涼しげな白のワンピースに麦わら帽子を被り、手にはバスケットを提げている。  
少し離れたところに池と佐藤。そして田中とその隣にさりげなく立っている緒方。  
これで悠二達のグループ全員。  
そして最後に  
「今日は暑いわねぇ」  
いつもの人が良いとしか思えない笑みを浮かべた悠二の母、千草。  
 
周りには他の海水浴客も少ない。  
あるといえばぽつんと立っている決して大きくない海の家。  
けれどゴミも特に落ちておらず、砂浜は綺麗だ。  
なかなかの穴場なのかもしれない。  
 
「それじゃ、僕らが場所を取っとくから、女性陣は着替えてきてよ」  
こんな時も池は人をまとめるのが得意だ。  
「うん、お願いしますね」  
すこし申し訳なさそうにぺこりとお辞儀していく吉田。  
「田中!覗かないでよ!」  
「誰が覗くかっ!」  
いつものごとくからかう緒方と真っ赤になって怒鳴り返す田中。  
(最近、このふたり妙に仲良くなったなぁ…………)  
思わず笑みが浮かぶ。  
 
そしてふと目にはいってきたのは固い顔。  
「……………………………」  
「シャナ?どうかした?」  
「………………なんでもない」  
敵地へ赴く兵士のような極度に緊張した顔…とでも言えばいいのだろうか?  
その顔のまま、躊躇うような足取りで海の家へと向かって行った。  
 
適当な場所にシートを広げ、パラソルを設置する。  
既に水着は着て来ているので、早々に服を脱ぎ、シートに座って海を見ていることにした。  
佐藤と田中は喉が渇いたからジュースを買ってくると言い、どこかへ行ってしまった。  
入道雲が浮かぶ空で、ウミネコが滑空している。  
潮を含んだ風が肌を撫でていった。  
「熱いわねぇ、悠ちゃん?」  
「ああ、うん。そうだね」  
隣で同じように遠くを眺めている千草は、手に持ったうちわを仰いでいる。  
 
 
 
何分かたった頃、突如視界に影が差した。  
「ああ、結構早かった……………ね!?」  
顔を上げ、視界に入ったものにふたつの意味で驚き、瞬時に硬直する。  
小さく、すらりとした華奢な体つき。  
澄んだ水色の大きな瞳に、同色の髪。  
夏の海に似つかわしくないほど白い肌。  
すこし恥ずかしげな表情に、喜びの色が見て取れる。  
「お久しぶりです………悠二さん」  
立っていたのはヘカテーだった。  
 
「ヘカテーさん!?いや、それよりもその格好は………?」  
ヘカテーを包む紺色の布地。控えめ、というより無い胸の部分にはたどたどしい字で  
「へかてー」  
と書いてある。  
古臭くも男ならば一度は夢見るとかなんとか。  
ある男ならば断言したであろう。  
その姿を見る事こそが世で最上の至福である、と。悠二には計り知らぬ事だが。  
ともかく、ヘカテーが着ていたのは、スクール水着。と呼ばれるものだった。  
 
硬直する悠二に問い掛ける声がひとつ。  
「悠ちゃん………どういうこと?こちらのお嬢さんは誰?」  
向けられる微笑みがすこし怖い。  
さらにひとつ。  
「坂井………ふたりもいるのに………お前は」  
池も呆れたように嘆息する。  
と、そこへ追い討ちをかけるように  
「戻ったぞー…って誰?」  
「坂井………?」  
ジュース片手に戻ってきた二人組。新たな珍客に疑問の声を上げる。  
そしてさらに一拍遅れ場を灰燼に帰せしめる核弾頭が二発。  
「この子、誰?」  
「え?坂井くん……………?」  
「………………………悠二?」  
不思議そうに場を眺めるふたりに、今にも悠二を刻み殺さんと言わんばかりの凄惨な  
笑顔を浮かべたシャナがいた。  
四面楚歌。という言葉の意味をついに体感する機会に恵まれた悠二。  
冷や汗と脂汗の混合液が頬を流れ、顔から段々と血の気が引いていくのが感じられた。  
「…えーとこれはそのなんというかこの子は知り合いというかバイト仲間というか  
別にそういうのじゃなくてちょっとそんな目で見ないでヘカテーさんついでにバスケット  
振りかぶらないでシャナそれには今日のお昼が――――――――っっっっ!!!」  
 
五分後。  
額に見事な角度からバスケットが直撃し、約10m吹き飛んだ悠二は一足早く海へダイビング、ずぶ濡れで戻ってきた後必死に説明した。  
 
「―――というわけ」  
ようやく説明し終えた悠二は一息つく。  
「ふーん……バイト仲間ね……」  
「あらぁ、そうだったの」  
「俺はてっきりまた坂井が犯罪に手を出したのだと……」  
「まぁ、確かに手を出したら犯罪かもな……」  
「うんうん」  
「そうなんですか…よかった……」  
「………………………………………」  
約一名を除き、全員納得してくれたようだ。  
「ま、まぁ、今日は仲良くしてあげてよ」  
びしびし突き刺さるシャナの視線が痛い。  
「おーけー、よろしくなヘカテーちゃん」  
「うん、よろしくね」  
「あ、はい………」  
最初の展開に戸惑いつつも、嬉しそうに頷くヘカテーだった。  
 
 
さて、悠二達とは少し離れた場所にて。  
「ふぅむ…………」  
パラソルの作る影で腕枕をしながら横たわり、辺りを見まわす男がひとり。  
アロハとサングラスがなかなかに似合っている。  
その片手には果物を添えたトロピカルジュースのグラスが。  
「なるほど…………87、59、86か……素晴らしい………豊満だ……バランスもよい………白のビキニが良く映える」  
「次は…………77、56、79…胸の辺りが少し寂しいか………しかし、締まった足……ほどよくくびれた腰……健康的な肌……うむ、とてもよろしい」  
ぱっと見ダンディなおじ様といった所だが、ぶつぶつと呟いている内容は危険極まりない。  
そうこうする内も浜にいる女性のスリーサイズ計測は続く。どうやって測っているのか謎だが。  
「さて次は………69…………ボハッ!?す、スクール水着だと!?」  
あまりの衝撃に飛び上がり、手に持っていたトロピカルジュースが飛び散る。  
シュドナイはお構いなしに、ついに見つけた至福に熱い視線を送る。  
「ああ………素晴らしい………白い首元から続くなだらかなライン………すらりとした太もも………爽やかな水色の髪………ん?水色?」  
頭を振り、もう一度よく見てみる。  
「………………ヘカテーではないかっ!?」  
気付くの遅すぎ。とツッコまれるほどの時間をかけ、シュドナイはヘカテーであるということに気付いた。  
「どうしてここにヘカテーが………?それよりもなぜスクール水着を………」  
様々な疑問符が浮かんでくるものの、念願の姿を鑑賞できる喜びにすべての思考が吹き  
飛ぶ。  
「いや、そんなことはどうでもいい………芸術……そう、芸術だ………まさに神の手になる芸術品………ヘカテーという最高の素材にスクール水着という至高のアイテムが合わさる事でその魅力は数千倍に跳ね上がる……………」  
恍惚とした表情で呟くシュドナイを、通りすがりのカップルが遠巻きに避けて行った。  
学習能力が無いのか、それとも単に気にしていないだけなのか。  
「これ以上の至福があろうか………カメラが無いのが非常に残念だ………あれば焼き切れるほど撮ったものを………まあいい……脳内に焼き付ける……」  
頭のネジがダース単位で飛んでいったらしいシュドナイは、瞬きもせずただひたすらヘカテーを見つめ続けていた。  
 
 
「え?それじゃヘカテーさん海に来るの初めてなんだ?」  
「はい、私、元からあまり外に出る事はなかったので」  
「へぇ…」  
お昼。到着が遅かったせいで、まず昼食を食べることになった。  
内容は千草と吉田の合作弁当である。  
何段ものお重にぎっしりと詰まったおかずとおにぎり。  
ところどころにある黒焦げのなにかがシャナが手伝ったということを示している。  
9人も座っているのでシートも手狭になっているが、食べるのに支障は無い。  
「それにしてもうまいな」  
佐藤がから揚げを口に放り込みながら言う。  
「まあ、吉田さんと坂井のお母さんの合作弁当だから美味いのは当たり前だろ」  
と言いつつ巧みに黒焦げのなにかを避ける池。  
「ありがとうございます、どんどん食べてくださいね?」  
微笑みながらのんびりと箸を動かす千草。  
「これ、もしかしてシャナが作った?」  
いまだ誰も手を出さないので、悠二は仕方なく黒焦げのなにかを摘んで聞いてみた。  
「え……あ、うん」  
少し戸惑いつつもはっきりと頷くシャナ。  
(ちょっと緊張してるのかな?)  
悠二の挙動を固唾を呑んで見守っている。  
(食べないと…ダメだよな……でも、元はなんだったんだろう…これ)  
微かに震える箸を口元に持っていく。  
至近距離で見ても、ただの消し炭にしか見えない。  
「……………っ!」  
 
意を決し、喰らいついた。  
瞬間的に視界が暗転する。  
舌が痺れる。  
五感の内二つが失われ、悠二の思考が停止する。  
「―――――――――」  
「悠二さん……?」  
「――――ハッ!」  
ヘカテーの声で思考が再開する。  
まず脳を刺激したのが舌に絡みつく形容できない味と食感。  
肉汁のような果汁のような、はたまた胆汁のようなともかく味のカオスだった。  
噛むとジャリジャリと音がし、中から妙に柔らかい物体と副産物の汁が染み出てくる。  
「う…くっ」  
なんとか飲み込み、ジュースで口内を浄化する。  
「ど、どうだった?悠二」  
不安げにシャナが訊いてくる。  
「う、うん…お、おいしかったよ……」  
多少引きつった笑いを返しながらも、なんとか答える。  
「よかった………」  
心底安堵したように笑う。  
(いや、笑顔はすごく可愛いいんだけど……これは……)  
シャナ以外の人間はあからさまに黒焦げのなにかを避けている。  
ヘカテーと吉田が心配そうに悠二を見ているのに気付いた。  
「………仕方ないか」  
暗澹たる気持ちに浸りながらも、悠二は味覚破壊兵器に立ち向かった。  
 
腹ごしらえも済み、各々海を楽しみ始める。  
あれだけ食べて胃の中で化学反応しないだろうか?などと考えていた悠二。  
しばらくは動けそうにないのでシートに寝転んでいる事にした。  
「そういえば………」  
最初の騒ぎのせいでよく見ていなかったが、女性陣はそれぞれ可愛らしい水着を着ている。  
シャナは紅のチューブトップ。千草が選んだのだろうか?とても似合っているものの、色気というものがほとんど無い。  
続いて吉田。白のワンピースタイプの水着にパレオを巻いている。  
けして露出度が高くない筈なのに、やはり発育が良すぎるのか近くにいる男性陣の視線を奪っている。  
緒方は思い切ってビキニを着ている。  
絡まれている田中の頬が少し赤いのが印象的だった。  
「……ん?」  
視線を動かすと、少し遠くにいるシャナがこちらを睨んでいた。  
微妙に拗ねたような表情が浮かんでいる。  
(やっぱり気にしてるのかな?)  
「…似合ってるよ」  
呟くと、聞こえたのか聞こえてないのかちょっと顔を赤らめ、俯いてしまった。  
そんな様子にちょっと笑い、空を見上げた。  
「蒼いな…」  
能天気に蒼かった。太陽が眩しい。思わず目を細めた。  
 
 
「あの、悠二さん?」  
「ん?ああ、ヘカテーさん」  
いつの間にか傍らにヘカテーが立っていた。  
「大丈夫ですか?」  
「ん……もう少ししたら大丈夫だと思うけど……」  
やはりあれだけ摂取したらどうなるのか判らない。  
「ところで、ヘカテーさんは泳がないの?」  
「え…あの……」  
途端にモゴモゴと言いよどむ。  
「もしかして…泳げないとか……?」  
「……はい」  
悲しそうに俯てしまった。  
「じゃあ…練習してみようか」  
「え?」  
 
 
「足を交互に動かして、水を蹴って」  
「こ、こうですか?」  
「そうそう、いい感じ」  
冷たくて気持ちいい海水。両手だけは少し温かい。  
ヘカテーが溺れてしまわないよう、手を引きながら泳ぎ方をレクチャーする。  
周りにいる人もまばら。  
人にぶつかることを気にせず悠々と泳げるだろう。  
「この分だと今日中に泳げるようになるかもね」  
「はい、嬉しいです」  
初めて泳ぎを教わるヘカテーはとても楽しそうだった。  
短時間でバタ足を覚えた彼女ならば、今日中に泳ぐこともできるだろう。  
 
「じゃ、次は手の動きを…うわっぷ!?」  
「きゃっ!?」  
突如大きな波がふたりを襲い、水に飲み込まれそうになる。  
が、寸でのところでヘカテーを引き寄せ、離れないように抱きしめた。  
頭から海水を被ったものの、それだけで済んだ。  
「ふぅ……危なかったね」  
「はい…あ、あの……悠二さん……」  
「え…あ!?」  
目の前に頬を染めたヘカテーの顔がある。  
胸に当たる慎ましい膨らみ。柔らかな肌の感触。  
「え、えと、あの」  
悠二の顔がどんどん紅く染まっていく。  
思わず離そうとした体を、今度はヘカテーが抱きしめてきた。  
「すこし……このままでいてもいいですか……?」  
微かに潤んでいる瞳に見つめられ、悠二はただ頷く事しかできなかった。  
 
遠くで歓声がする。  
砂浜を見ると、いつの間にかシャナ達がビーチバレーを始めていた。  
やはりここでもシャナVS田中の対決が勃発しているようだ。  
田中が放つ強力なスパイクをシャナが拾い、池がトスする。  
即座に起き上がったシャナが再びスパイクを叩き返す。  
受け損ねた田中の少し横でボールが着弾し、砂塵を巻き上げていた。  
凄まじい威力のスパイクの応酬に、まわりにいた海水浴客が集まってきていた。  
ただ取り残されたようにぽつんと浮かぶふたりは、ただ静かに抱き合っていた。  
 
触れる柔らかな肢体に悠二の理性にヒビが入っていく。  
「……ヘカテーさん」  
「え……ひゃぅっ!」  
我慢できなくなった悠二は、ヘカテーの体に手を這わせた。  
「ごめん……我慢できない……」  
「そ、そんな突然…ぁぅ……」  
スクール水着の上から、膨らみを撫でる。  
「んぁ……はぅ……」  
左手を腰にまわし、小ぶりなお尻を優しく撫で、掴む。  
「あぅ…そんな……ダメです…」  
「ごめん…」  
口では謝るものの、手は止まらない。今度は水着の中に手を入れ、直に揉み始める。  
「ふぁ……あぁぅ……はぁん…」  
小さくもとても柔らかい膨らみ。ふにふにと形を変える。  
左手は太ももに移動させ、感触を楽しむようゆっくりと撫でる。スベスベとした肌と柔らかな肉の二つの感触。  
「あぁ……んぁぅ………はぁ…」  
「ふぁう…はぁん……あぅ……」  
段々と勃ってきた先端を摘み、擦る。  
「ふぁう!あぁ…はぁ……」  
「可愛い……ヘカテーさん」  
太ももを撫でていた手を徐々に上げていく。  
「あ!そこは……!」  
足の付け根に指を当て、上下にスライドさせる。  
「ひゃぁ!あぁ、ふぁぁう、ぁんっ、あぁぁぁ、うぁぅ、いあぁぁぁ」  
「んんっ、あぁっっ、はあぁぁぁぁんっ」  
あまり大きな声を出さないよう、強い刺激は避け優しく愛撫する。  
「ぁぁ……ぃぁ…はぁぅ……」  
悠二は水着の隙間から指を差し入れ、薄い割れ目をなぞった。  
「んっぁぁ!ぁぁぅ……」  
「うあぁうっ、ひゃあぁぁ」  
 
水中なのでよく判らないが、少しづつ濡れてきているようだ。  
何より、自分の愛撫で悦んでいるのが嬉しかった。  
「ふぁぁう………ひゃんっ!」  
中指が埋没していく。親指で顔を出していたクリトリスを刺激する。  
「あぁぅっ!ふぁんんっ、ひゃうぅぅっ」  
「ひぁぁぁっ!ぁあぁぁぁっ、はあぁぁっっ」  
必死に押し殺そうとしているヘカテーの声が高くなっていく。  
「ふぁうっ、はぁんんっ、あああぁぅっ、ふぁうぅっ」  
「やぁぁっ、ダメですっ、イッちゃいますっ!」  
悠二の息も知らず知らずの内に荒くなる。  
「いいよ……イキなよ」  
とどめとばかりに刺激を強くする。  
「ふぁぅっ、あぁぁんっ、ダメ、ダメですぅっ」  
「はぁぅ、ふぁぁぁ、んぃぁっ、はっぁぁぁっ!」  
「あぅ……ぃくっ…イッちゃいますっ!ふぁぁぁっ!」  
ヘカテーの背中が仰け反り、  
「ひゃぁぁぁぁぁぁああああああっっ!」  
可愛らしい絶叫と共に、じわりと暖かいものが悠二の掌に当たった。  
「はぁぁ…はぁ、はあ、はぁぁ……」  
荒い息を吐くヘカテーを抱きしめ、おでこにキスする。  
「可愛かったよ……」  
 
それから思い出したように辺りを見回すが、どうやら誰も気付いてないようだった。  
「悠二さん……」  
「うん?」  
「……ひどいです」  
拗ねたように頬を膨らませる。  
「ごめんね」  
そんなヘカテーがとても可愛くて、もっと強く抱きしめた。  
 
 
そして一連の出来事を見ていた者がひとり。  
ギリギリギーと噛み締めた歯が不協和音を奏でる。  
「………坂井悠二…………一度では飽きたらず二度も……………殺す………分解などでは生ぬるい………完全に消し去ってくれる………」  
先程までの恍惚とした表情はどこへやら、今は憎悪に顔を歪め、歯を折れるほど噛み締めている。  
不穏なオーラが周囲を包んでいた。  
 
さらにもうひとり。  
「悠二………」  
その瞳には悲しみと悔しさが滲んでいる。  
「悠二……なんで………?」  
一度閉じた瞳に浮かぶのは決意。  
「私は………悠二が、好き……なのに」  
シャナは唇を噛み締めた。  
 
 
第一部 了  
 
445 名前: 投稿日:2005/04/17(日) 18:37:30 ID:1glgC2Tj 
えーと…随分早いですが海水浴ネタです。  
 

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