カッチ、コッチ、カッチ、コッチ……
耳を澄ますと聞こえる時計の針が時を刻む音。
テーブルの上にはマグカップがふたつに、クッキーの皿。
カリカリカリ……
正面に座るヘカテーはクッキーを両手の指先に摘み、ほんの少しずつ齧っている。
自分もひとつクッキーを取り上げ、口に放り込む。
ゆっくりと咀嚼し、マグカップの中で湯気を立ち上らせるホットミルクを啜る。
少し熱いが、温かさと甘さが体に染み渡る。
カリカリカリ……
マグカップを両手で包み込みながら栗鼠のようにクッキーを齧るヘカテーを見つめ、笑みを浮かべる。
「おいしい?」
一瞬齧るのを止め、こちらを上目遣いに見ると、小さく頷く。
そしてまたカリカリを始める。
カリカリカリ……
カッチ、コッチ、カッチ、コッチ……
クッキーを齧る音と時計の音が二重奏を奏でる。
やがてクッキーを齧り終わったヘカテーはマグカップを両手で包み、口を近付けた。
一度驚いたように顔を離し、今度はふうふうと息を吹きかけながらホットミルクを飲む。
数口飲むと、再びクッキーを一枚取り、カリカリし始める。
「……今日、一緒に寝る?」
ぴたりと動きが止まり、こちらを見上げる。
少し頬を染め、微かに頷いた。
そのたどたどしさに微笑みながら、窓の外を見てみる。
夜空にはお団子みたいな満月。
闇に包まれた庭の隅で、ナニカが光ったような気がした。
そんな、眠れない午前2時。