「あら悠ちゃんシャナちゃん、お帰りなさい。朝ご飯、出来てるわよ」  
とある日曜の朝。いつも通り早朝の鍛錬を終え帰宅した二人を千草が出迎えた。  
「ただいま、千草」  
「ただいま。ねえ母さん、ポカリとかあったっけ?」  
「ちょっと待ってね……どうだったかしら……? あ、シャナちゃんも何か飲む?」  
「うん」  
返事を聞くか聞かないかのうちに、台所へと引っ込む千草。  
いつもならシャワーへと直行するはずのシャナも、悠二とともに食卓についた。  
すでにテーブルの上には、いくつかの料理が並んでいる。  
「悠二」  
席に着くやいなや、シャナは不機嫌な声でしゃべり出した。  
「今日のお前は全然ダメだった。ちっとも集中してない」  
「し、仕方ないだろ! 昨日はシャナとしてて全然寝られなかったんだから!」  
悠二のその言葉に、昨夜の情事を思い出して顔を真っ赤にするシャナ。  
「う、うるさいうるさいうるさい! い、言い訳するな!」  
「悠ちゃんったら、またシャナちゃんに怒られてるのね」  
二人の言い争いに割って入るようなタイミングで千草が台所から戻ってきた。  
しかし、千草が手にしているのはスポーツドリンクの類ではなかった。  
「はい、悠ちゃん、シャナちゃん」  
二人に手渡されたのは、ピンク色の小瓶。ラベルには『ファイトいっぱつ』の文字。  
「か、母さんなんだよこの怪しさ爆発な瓶は!」  
「貫太郎さんが、『悠二ももう年頃だから、こういうのも必要だろう』って送ってくれたのよ」  
「何処でこんなもの手に入れるんだよ父さんは! というかこれ、そもそもなに!?」  
「テルパドールっていう街で買ったそうよ。これを飲むと、一戦交えるときにアレが2倍になるんですって」  
「アレってどれだよ一戦ってなんだよ! ていうか年頃とか何の関係があるの!」  
「昔、ある国の王様はこれを飲んで勇者を仕込んだっていう伝説もあるらしいわ」  
「それ絶対使い方間違ってるから! だいたい、母さんは僕に何をさせたいんだよ!」  
「ナニをしてたのは悠ちゃん達でしょ? それとも、『ゆうべはおたのしみでしたね』と言った方がいいかしら?」  
「どうして母さんがそのこと知ってるの!? 盗聴!? 僕の部屋に盗聴器が!?」  
「昔、貫太郎さんに色々教えて貰ったのよ」  
「もしかして念能力!? 円とかそういうの!? なんでそんなことできるんだよあんた達夫婦は!」  
「夕べシャナちゃんにあんなことやそんなことしてた悠ちゃんには言われたくないわ」  
「ああもう僕たちの事はほっといてよ!」  
「私ももうすぐお婆ちゃんなのねぇ」  
「和むな─────っ!」  
悠二の言葉を全て笑顔のままで切り返した千草。  
そもそも、色々な意味で百戦錬磨の千草に、悠二が口喧嘩で勝てるはずもないのだが。  
「そうそう、母さん、今日は親戚の法事で帰りが遅くなるから、一日二人でゆっくりしなさい」  
しなさい、の部分に妙な含みを持たせる千草。そしてそのまま、朝食の準備の続きをするため、台所に戻る。  
もはや悠二には、反論する事も出来なかった。  
 
 
「……ったく、母さんは……」  
朝食後、特に予定のない悠二とシャナは、なんとはなしに悠二の部屋にいた。  
ちなみに千草は、朝食の片づけが済むと、すぐに携帯(inアラストール)を持って出かけている。(ちなみに携帯は、シャナが半ば強引  
に千草に持たせた。)  
「朝からそんなこと、するわけないだろ……ねぇ、シャナ」  
「ゆ、悠二は……したくないの?」  
軽く話を振っただけの悠二に、赤面しながら答えるシャナ。  
シャナの手には、千草から渡された小瓶。中身は──空。  
「え? いや、そういうわけじゃ……ない、けど……」  
悠二のその答えに、満面の笑みを浮かべて悠二に抱きつくシャナ。  
抱きつくやいなや、すぐさま悠二のズボンの中に手を入れる。  
「悠二、もう固くなってるじゃない」  
「え、あ……うん」  
シャナの一挙手一投足に、あっさりと反応してしまう悠二の股間。  
「口でしてあげる」  
悠二のズボンとパンツを降ろし、悠二のソレをほおばるシャナ。  
自分の舌技に反応し、ピクピクと脈打つ悠二のソレに、シャナはたまらない愛しさを感じる。  
「悠二ぃ……気持ちいいの?」  
「ああ、いい……気持ちいいよ、シャナ」  
「ホント? ふふ」  
心底うれしそうに微笑むシャナ。そんなシャナの頭を優しくなでる悠二。  
「でも、僕ばっかりじゃ悪いから……」  
「いいの……悠二に気持ちよくなってほしいから……」  
二人だけの空間。シャナのだ液の音だけがこだまする。  
「んっ、んふっ、んん、はふぅ……」  
悠二の反応を伺いながら、前後左右と微妙に攻めるポイントを変化させるシャナ。  
焦らすようなフェラに、悠二は一気に昂ぶっていく。  
「シャナ、もうこれ以上は……」  
「ふふっ、もうイキそうなの?」  
シャナは悪戯っぽく微笑むと、悠二のモノから離れる。そして、舌の先で悠二のモノを軽く舐めあげた。  
「──ッ!!」  
今までとは違う刺激に、悠二のモノは本人の意志とは関係なく脈打つ。  
その様子が面白いのか、四方八方から焦らしながら悠二のモノを責めるシャナ。  
ちろ……ちろ……  
「シャ、シャナ……で……」  
「ふふ、出してもいいよ。飲んであげるから──」  
そう言って、再び悠二のモノをほおばる。  
「……くっ……う、ああっ!」  
悠二の放ったそれを、シャナは一滴たりとも零さぬよう、慎重に口で受け止めた。  
 
「悠二、気持ちよかった?」  
「うん、とっても」  
悠二の言葉にシャナは満面の笑み。  
「シャナ、今度は僕が……」  
「え? あ、あん……」  
返事も待たず、悠二はシャナの乳首を舐め上げた。さらに、右手を股間へと滑らせる。  
「あっ! あん! あっ! あぁぁっ!」  
日頃の鍛錬の成果か、悠二の指技はシャナを簡単に登り詰めさせる。  
シャナの表情が恍惚に彩られる。  
が、頂点まであと僅か、というところで責めは止まった。  
恍惚の表情を見た悠二の中に、ある感情が生まれつつあった。  
──イジメたい──  
「はぁ……ゆ……悠二……?」  
「シャナは僕にどうしてほしい?」  
「え? あ……」  
切なげな視線を、先ほどまで自分の秘所を責め立てていた悠二の右手へと向けるシャナ。  
「……め……で……」  
「え? ハッキリ言ってくれないと聞こえないよ?」  
「う……うるさいうるさいうるさい! だから……やめ……いで……」  
「え? もう一回言って?」  
「いじわる……」  
目に涙を浮かべて抗議するシャナ。  
「もっと……して……」  
「指がいい? それとも、別の?」  
「あ……」  
シャナの視線が、すでに120%回復した悠二のモノに注がれる。  
「仕方ないなぁ、シャナは」  
悠二は、シャナを四つん這いにさせ、そのまま背後から貫いた。  
「あああああああああぁぁっ!!」  
挿入の快感だけで絶頂へと登り詰めるシャナ。  
「あれ? もうイっちゃったの?」  
「ぁあっ! はぁっ! んんっ!」  
「シャナってば、イっても僕のをしっかりくわえ込んで離さないんだから」  
「ゆう……あぁっ……じぃ……ダメ……あはぁっ!」  
「上の口も下の口も、よだれでびしょびしょだね」  
「そんな……ひぁっ……こ……と……いやぁぁぁっ……らめぇ……」  
悠二の言葉責め、一つ一つに激しく快感を覚えるシャナ。  
すでに、全身が性感帯となるほどに敏感になっている。  
悠二がシャナの太もも、胸、背中、首筋……あちこちを撫でれば、すぐに反応がある。  
「あぁぁっ! だめぇ……さわ……らない……で……ふぁぁぁぁぁっ!」  
程なく、シャナに2度目の絶頂が訪れた。  
「ああぁっ! ゆうじぃっ! くる! くるぅっ! あっ! あああああぁぁぁっ!」  
シャナの背中が弓のように反り、そしてそのまま脱力した。  
「あれ? シャナ、もうイったの? でも、僕はまだだからね?」  
悠二は脱力したままのシャナを仰向けにして──  
「あ、悠二、だめ……あああぁっ!」  
抗議の声を無視して、正常位で一気に貫いた。  
「シャナっ! シャナっ!」  
「悠二ぃ……ああっ!」  
「はぁっ! はぁっ! シャナぁっ!」  
「悠二ぃっ! ふぁあっ!」  
互いの名前を呼びながら、本能の赴くままひたすらに快楽をむさぼる二人。やがて程なく──  
「シャナっ! いくよっ!」  
「はぁっ! うん……私、もっ!」  
「んっ!」  
「ああぁっ! イクぅっ! イクぅぅぅぅぅぅっ!」  
悠二は、膣から溢れんばかりの精を、シャナの中に放っていた。  
 
愛し合った余韻に浸ることしばし。  
シャナが、最近覚えたある歌を口ずさむ。  
 
──新しい 熱い歌を 私は作ろう──  
──風が吹き 雨が降り 霜が降りる その前に──  
──我が恋人は 私を試す──  
──私が彼を どんなに愛しているか──  
──どんな諍いの種を 蒔こうとも無駄──  
──私は この絆を 解きはしない──  
 
オック語の歌詞は悠二にはわからない。  
「それ、なんて歌?」  
──私は他の誰も愛さない──  
曲名を思い浮かべ、思わず笑みを零しながら──  
「ナイショ」  
「ちぇっ」  
きっと今、この時間が、魔法にかかっている──シャナはふと、そんなことを考えた。  
 
〜 Fin 〜  

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