シャナは、アラストールを呼び出そうとした。  
しかし、  
「分からない…」  
「え?」  
「アラストールの居場所が分からない…今までこんなこと無かったのに…」  
その瞬間、封絶が掛かった。  
 
 
時間は遡ることアラストールがシャナに投げられた後。  
「むぅ…」  
唸る魔神。しかし周りに誰もいない  
ハズだった。  
「アラストールさん…?」  
突如、声を掛けられた。  
「その声は…吉田一美か?」  
「こ、こんばんは…」  
少し、困ったような声。  
何故ここに?  
2人は同じ事を考えていた。  
数秒間の沈黙を破ったのはアラストールだった。  
「吉田一美よ」  
「は、はい」  
「何故ここにいるのだ?」  
「え?えーと…」  
少し言葉が止まったが、すぐに答えが返ってきた。  
「坂井くんに会いに…」  
こんな時間に?  
しかしアラストールは深く問い詰めなかった。  
「アラストールさんは…?」  
「む…色々あってこの状況だ」  
「まさか坂井くんが敵に襲われてるんですか!?」  
ある意味間違っていない。  
「落ち着け吉田一美」  
「は、早くいかなきゃ」  
「待つのだ!」  
遠雷のような声から出る大声にびびり、吉田一美は思わず息を飲んだ。  
「ッ!…ごめんなさい…」  
「吉田一美よ。坂井悠二から今日のことは聞いた」  
「え?」  
「シャナもそれを聞いてしまった」  
「えぇ!?」  
顔が真っ赤になる。  
そして今の状況から別の考えも浮かんでしまった。  
「まさか2人は…」  
「恐らく考えてる通りだろう」  
吉田一美にとって状況は残酷な状況だった。  
「そんな…」  
「どうする吉田一美?今から坂井悠二に会いに行くのか?」  
アラストールからの質問に、  
「ううん…坂井くんはシャナちゃんを選んだ。だから坂井くんには会えない…」  
と割り切った答え。  
「ふむ…」  
しっかりした女の子だ。正直にアラストールはそう思った。  
「でも、やっぱり悔しいな…」  
ペンダントに涙がこぼれ落ちた…。  
表情は微笑んでいたが、涙が溢れてくる。  
「吉田一美よ」  
不意に、アラストールが話しかけてきた。  
「我と“仮契約”せぬか?」  
 
 
時間は戻って現在。  
「敵!?こんな時に!」  
後ろから気配が。  
しかし、それはフレイムヘイズの気配。  
振り返った先に居たのは吉田一美。  
そして、それは炎髪灼眼のフレイムヘイズとなっていた。  
「え…?」  
「ごめんね、シャナちゃん」  
吉田一美は悠二に振り向き、もう一度謝った。  
「ごめんね、坂井くん…。私…こんな体になっちゃった」  
心臓が、一瞬止まった気がした。  
彼女の、吉田一美の姿は正に炎髪灼眼。  
シャナにしか無いはずの姿。  
胸にはペンダントが輝いている。  
「アラストール…」  
シャナは、悲観の目でペンダントを見つめる。  
「シャナよ…我も納得いかんのだ…我に認めさせたければ、吉田一美を倒せ」  
「そんな!」  
悠二が抗議の声を上げた。  
「そんな…そんな理由で吉田さんをフレイムヘイズにしたのか!?」  
「安心しろ坂井悠二。これは仮契約だ。存在の変化は、無い」  
「…ッ!」  
あくまで冷静な声。  
「シャナよ。お前との契約は解いていない。お前もフレイムヘイズとなり、吉田一美と戦え…」  
「…分かった」  
「シャナ!?」  
「悠二…これはフレイムヘイズの戦いじゃない。私と吉田一美の戦いなの。だから…」  
「シャナ…」  
諦めを込めた声。  
「行くわよ、吉田一美」  
シャナの体が赤く映える。  
今、悠二の前には2人の炎髪灼眼のフレイムヘイズがいる。  
夜笠から贄殿遮那を取り出す。  
それがシャナの武器。  
対する吉田一美の武器は、  
「はあぁぁぁッ!」  
掛け声と共に手から炎が吹き出し武器を形作る。  
それは、重量感のあるトゲ付きバットだった。  
「シャナちゃん…ごめんね?」  
ガッ!  
音と共にシャナは吹き飛んだ。  
 
「な!?」  
悠二が見た光景は、  
まず吉田一美が一歩踏み出し、一気に間合いを詰めた。  
そしてトゲ付きバットを高速で突き出した。  
あまりの速さに驚いたシャナは、防御が遅れそうになった。  
何とか贄殿遮那で防御しつつ、勢いを殺す為にわざと後ろに飛んだ。  
この間、わずか五秒。  
吹き飛んだシャナは地面に着地。  
その間に吉田一美は飛び上がり、シャナをバットで上から突き刺す形で落ちてきた。  
髪一重で避け、地面に刺さった吉田一美を狙う。  
吉田一美は、バットから落ちた勢いを利用し反動で飛び上がる。  
主の手を離れた武器は炎となり消えた。  
空中で武器を再構築し、構える。  
下からシャナが飛び上がってきた。  
空中で対峙。  
シャナの刀が右から来るのをバットで防ぎ、左手でアッパーを当てようとしたが避けられた。  
バットから離れた刀が今度は左上から来る。これはもまた防いだが、上から下ろされた力は下に掛かり、吉田一美の重力加速度が増す。  
先に地面に着地した吉田一美は後退し、シャナの一撃を避ける。  
一瞬硬直したシャナを狙い、バットを振り下ろす。  
シャナは転がり避けつつ体勢を立て直す。  
2人はようやくゆっくりと対峙し、言葉を交わす。  
「はぁ、はぁ…なかなかやりますね…」  
「ハァ、ハァ…それはこっちのセリフよ…」  
互いに呼吸を整え、体力を回復させる。  
「このままじゃ拉致が明かないわ」  
「そうですね」  
シャナは、全ての力を刀に注ぎ込む。  
吉田一美も、バットに全ての力を注ぎ込む。  
「次で最後…」  
「えぇ…」  
間合いを離し、2人の動きが止まった。  
構えたまま動かない。  
10秒、20秒と時が過ぎ、30秒経った時、  
2人は動いた。  
「はあぁぁぁぁッ!」  
「やあぁぁぁぁッ!」  
間合いが詰まっていく。  
2人が互いの射程圏に入った瞬間、異物は突如として現れた。  
「こんなの駄目だ!」  
「!?」「!?」  
2人がそれに気づいたのは既に遅かった。  
悠二が、斬られ、殴打される。  
斬撃が、悠二の背中を斬り裂いた。  
打撃が、悠二の胸を打ち砕いた。  
そして、悠二は地面に崩れた。  
 
「悠二!?」  
シャナの心配する声が、悠二に向けられる。  
「きゃああぁああっ!?」  
吉田一美の叫びが、封絶の中で響く。  
が、  
「あいたたたた…」  
坂井悠二は無事だった。  
「ぁあああ…あれ?」  
叫び声がトーンを下げ、疑問符が出てきた。  
「悠二…無事なの?」  
「うん、零時を迎えたからね」  
傷だらけの悠二の体が、みるみるうちに修復されていく。さすがにパジャマは無事では無かったが。  
「でさ、シャナ。僕の存在の力を使って周り、直してくれないかな?」  
辺りは、シャナと吉田一美の戦いでボコボコになっていた。  
「このパジャマも直してくれるとうれしいんだけど…」  
ふと、シャナを見ると、  
「うるさいうるさいうるさい!」  
目には涙が。  
「どうしてこんな無茶するのよ!?」  
「そうですよ!死ぬかもしれないのに!」  
吉田一美も目に涙を溜め訴えた。  
2人から叱責をくらい困った顔をしつつ、  
「どうしてって…最後の一撃はヤバいと思ったからだよ」  
と、悠二は答えた。  
最後の一撃…確かにまともに受けていれば双方無事じゃなかっただろう。  
「2人共無事で良かった。それでいいじゃないか」  
悠二に締められ、その場は閉じた。  
その後シャナは悠二の存在の力を使い、辺りを修復した。  
吉田一美は封絶を解くやいなや倒れた。  
アラストールいわく、  
「仮契約の反動だろう。今のうちに家に帰せば、今日の事は夢と思うはずだ」  
だそうだ。都合のいい事を言ってるような気がするが。  
とにかく吉田さんを家に帰し、今日と言う忙しい日は終わった。  
かに見えた。  
「で、アラストール。どうしてこんな事したの?」  
「む…」  
「私は悠二が好きだけどアラストールも好きなのよ?」  
「むぅ…」  
「次、こんな事したらヴィルヘルミナに言いつけちゃうからね」  
「むうぅ…」  
悠二もベッドで眠っている時。  
魔神は屋根の上で少女に説教を聞かされていた…。  
 
−ENDですよ−  
 

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