気が付くとそこは教室だった。
「あれ?」
坂井悠二は自体の変化について行けず、困惑の声を上げた。
「何だこれ?え、ちょっと待って」
(えーと、さっきまでシャナたちと鍛錬をしてたんだよな。で、零時になって、存在の力の受け渡しをしようとしたら
ヴィルヘルミナさんがやって来て、それでなんか有耶無耶なうちに今日の鍛錬は終わって……)
「……で、ベッドに入ったんだよな…」
しかし、今眼前に広がっているのは紛れも無く学校で、自らの使用している教室だった。
「……夢?」
常識的に考えたら確かに夢だ。こんな荒唐無稽な状態が現実であるはずが無い。
そう悠二が現在の状況を整理した途端、教室の扉が開き、誰かが中に入ってきた。
「ああ、ちゃんといるわね、坂井君」
その声を聞き、教室と言う場所で聞くにはちょっと、いや、かなり違和感のある声の持ち主の姿を見て悠二は絶句した。
その視線の先にいたのは――――。
「か、母さん?」
地味目のスーツドレスに身を包みご丁寧に眼鏡までかけた悠二の母、坂井千草その人であった。千草は悠二の言葉に、
「悠ちゃん、学校では先生って呼ばなきゃ駄目でしょ?」
と、微笑みながら注意をしてくる。向うはこの設定に違和感を感じていないようである。
(何だこれ?何だこれ何だこれ、…って夢なんだよなぁ)
「えーと、坂井…先生?」
「はい、よく出来ました」