今も昔も一応ながら天才と謡われるダンタリオンにも悲しき過去があった。
それは、ダンタリオンに興味を持った人間の少女の存在。
彼女はふとしたきっかけで教授と出会った。
教授は、自分を慕う彼女を助手として雇った。
扱いは良くないほうではあったが、それでも彼女は楽しんでいた。
そんな彼女の存在に教授も悪くはないと思っていた。
しかし、彼女との終わりは唐突に訪れる。
いつものように研究をしていると、彼女は突然倒れてしまった。
彼女には持病があったのだ。
彼女は教授との研究で得た知識で薬を作り、病気をごまかしていた。
それも限界が来てしまった。
ごまかしていた体は既にボロボロで、生きているのが不思議なくらいだった。
彼女はあと数分で死ぬ。
教授はそれを理解していた。
だから、トーチにして生き長らえさせようとした。
でも彼女はそれを拒んだ。
トーチにしたらそれは私ではなく私の残りかす。だから、生き返らせるなら私をトーチにせず生き返らせて。貴方なら出来るはず。約束よ?
そう言うと彼女は息を引き取った。
それから教授は1つの燐子を造り上げた。
彼女の復活の法を求める為に。
彼女の存在を忘れない為に。
彼女との約束を果たす為に。
彼女の名前を忘れない為に…。