「ぁ、ん……は……」  
 
 深夜の安倍邸、晴明に昌浩と家の者は深い眠りに入っている時間帯。  
 そんな時間にもかかわらずたった一部屋、人の声が僅かにする部屋がある。  
 それは、昌浩の新妻、彰子の部屋。  
 彰子は布団の中には入っているものの、  
 その声は甘い喘ぎ声を思わせる。  
 そう――彼女は今、自らの秘部を指でゆっくりとなぞる様に動かしており、  
 指が動くたびに快感を得ている、自慰行為をしているのだ。  
 
「ひっ……ぁんっ、ふあぁ……んッぁ……」  
 
 体を横向きに寝かせ、家の者に聞こえないよう声を殺しながら身を震わせていた。  
   
 彰子は夜な夜な自分を慰めるようになってしまった。  
 原因は、ある日を境に見るようになってしまった夢。  
 昌浩と自分がお互いを求め合い愛し合っている夢を。  
 決まって自分が絶頂を迎えたところで目を覚まし、  
 体が熱くなって変な気持ちになり、汚れないように着ている物を殆ど脱ぎ、  
 自然と指で秘部を弄り体の火照りを治めようとしている。  
 無論、羞恥心はあるが、身体を流れる電流のような感覚がその思考を麻痺させていた。  
 
「ひぅッ、んっ……くぅ、んッ……」  
「彰子様」  
「ぁッ……天、一……?」  
 
 彰子の背後で、静かで綺麗な声がし、その気配と神気を感じ取り指の動きを止めて、  
 振り向かず横向きのままで彰子は呼びかける。  
 現れたのは、長く神々しい金色の髪とそれに値する美しさを持つ、  
 十二神将が一人、天一。  
 彼女は現れてすぐに彰子の様子に気づくと、優しく微笑みを浮かべ彰子は黙り込む。  
 やがて少し間が空いた後、恐る恐るといった様子で彰子が口を開いた。  
 
「あの、天一?」  
「はい」  
「今晩も……お願いして、いいかしら?」  
「えぇ」  
 
 彰子の問いに、優しげな微笑み一言、優しい口調で返す天一は、彰子の枕元まで寄り座る。  
 ゆっくりと彰子の身体を浮かして、彰子を自分に凭れさせるような格好にした。  
 丁度彰子の顔が天一の胸元に来る位置で、恥ずかしそうに見上げる彰子に笑顔で天一は返す。  
 当初、彰子の自慰行為は一人で行われていたのだが、  
 ある日、彰子の異変を感じた天一に見られてしまう。  
 そして、度々こうして天一が自慰を手伝うようになった。  
 その理由は、彰子のお役に立てればと言う天一らしい。  
 ニブチン昌浩とはゆっくりと進展していけばよいのだ。  
 
「御気分はいかがですか?」  
「あ、んッ……え、えぇ、とてもッ、んぁッ……きもち、い……」  
「彰子様は昌浩様の事を本当に想っておられるのですね。  
もう、こんなに……」  
「は、恥ずか、しいわ……あッ、んぁッ」  
 
 天一は片手で彰子の身体を支え、  
 もう片手でぐっしょりと濡れている彰子の秘部を、優しく撫でるように動かす。  
 自分の指使いとあまり変わりない動きだが、やはり力加減などが微妙に違ってくるため、  
 彰子は新たな快感を得て身体を震わし、天一の言葉に赤い頬を更に赤くさせる。  
 謝る天一に、瞬時に彰子は訂正した。  
 やがて彰子の様子がおかしくなる、妙に身を捩り始めた。  
 それは、天一から送られる快感でという事もあったが、更に快感が欲しいという、  
 ある種、女性の本能とでも言うべきことでだった。  
 
「あ、あの……天一?」  
「どうかいたしましたか?」  
「その……夢で、昌浩が……その」  
「わかりました。ですが、その前に少し準備を……」  
 
 彰子のお願いに、天一は笑顔で答えると手の動きを止める。  
 そして天一の指先が光った。  
 天一は彰子の膣内に小さな結界を張った。  
 それは処女膜が破かれないように。破れる時は昌浩と一つになる時と。  
 耳元で静かに囁く天一の言葉に、彰子はこくりと顔を縦に振る。  
 大丈夫、そう囁きながら天一は自分の細い中指を彰子の膣内に入れていく。  
 
「ッ……ん……ッ!」  
 
 初めて感じる挿入に、彰子は身体を痙攣させながら目を瞑り耐えている。  
 中指の第二間接ほどで動きは止まり、しばらく彰子は身を震わせていた。  
 
「大丈夫ですか彰子様? お辛いのでしたら……」  
「だ、だい、じょうぶ……ッ、う、動かして、いい、から……ッ」  
 
 どう見ても大丈夫じゃないであろう彰子の様子に、天一も心配そうな表情を浮かべる。  
 しかし、そんな天一に笑顔を見せる彰子は健気だ。  
 そして彰子の要望どおり、天一は手をゆっくりと小刻み動かし、中指を出し入れし始める。  
 
「んッ、はッぁんっ……!」  
 
 何とか声を抑えようとする彰子だったが、快感が我慢できずに声を上げて喘いでいる。  
 幼い秘部からは天一の指が動くたびに愛液が溢れ出て、  
 水っぽく卑猥な音を響かせていた。  
 
「やッ……だ、だめっ……声、おさえられ、ああぁッ……んんッ」  
 
 既に自力で声を抑えられずにいる彰子の唇を天一の唇がふさぐ。  
 そのおかげで声が抑えられ、彰子の頭の中に夢で見たある光景が浮かぶ。  
 それは、昌浩と唇を重ね舌を絡め合っている光景で、  
 意識してか否か、彰子は天一の口内に舌を入れ舐めあげる。  
 突然の口内に刺激に天一は一瞬驚くが、  
 すぐに自分も彰子の小さな口の中に舌を入れた。  
 上と下、二つの穴を刺激され、彰子に絶頂感が押し寄せ身体を震わせてた。  
 
「んッ……んちゅッ、はぁ、まさ、ひろ……」  
 
 おそらく無意識だろう、絶頂が迫るごとに彰子は昌浩の名を呼び続ける。  
 膣内が更にきつくなり、天一も彰子の絶頂が近いと分かる。  
 そして、天一の指が膣内から抜けた瞬間、  
 その刺激により彰子は絶頂を迎えた。  
 
「んんんッ! ………ふぅ、はぁ、はぁ……はぁ」  
「彰子様? お体は大丈夫でしょうか? 申し訳ありません、少々強すぎてしまいましたか?」  
「はぁ、はぁ……い、いいの。頼んだのはこちらだもの。  
それに、とても気持ちがよかったわ」  
 
 唇を塞いだまま彰子の身体は痙攣し、秘部からは愛液が溢れ、  
 膣内の結界を解いたことにより飛び散るが、  
 天一は布団は汚れないよう、秘部を手で覆う天一。  
 しばらく二人はジッとしていたが、やがて唇は離れていく。  
 呼吸を荒くし肩で息をする彰子を、心配そうな表情で見つめる天一。  
 だけど、天一の心配も意味はないものだったらしい、  
 彰子の見せた笑顔により、天一は安堵の表情を浮かべた。  
 
「はぁ……はぁ、天一?」  
「いかがなさいましたか? やはり何処か……」  
「違うわ。その、また……やってもらってもいいかしら?」  
「えぇ、私でよければ」  
「ありがとう、天一………」  
   
 笑顔で礼を言う彰子は、そのままの状態で寝息を立て始めた。  
 きっと疲れたのだろう、もともと夜中に身体が火照りやっていた行為だから、  
 それが絶頂したことによって治まったのろう。  
 天一は彰子の寝顔を優しい微笑で見つめながら、愛液で濡れてしまった手を拭き、  
 彰子の乱れた衣服を手に取り着せていく。  
 そしてすっかり元の状態に戻った彰子を見つめていた。  
 
「お休みなさいませ」  
 
 天一は一言言い残し、異界へと戻ろうとした。  
 
「天貴! どうしたんだこんな夜中、むぐっ!」  
「しーっ」  
「あ、すまん……」  
 
 天一の恋人朱雀が、それはもう必死の形相で大声を出しながら現れ、  
 瞬時に天一に口を塞がれる。手でね。  
 この後、どういうわけか、いつもの如く二人だけの世界を作り出す天一と朱雀のカップル。  
 そして、いつものように昌浩を起こそうと目を覚ました彰子の横で、  
 抱き合いながら眠っている天一と朱雀がいたというのは、また別の話。  
 

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