早朝
今日こそは六合より早く起きようと思ったのに、六合は庭で戟の素振りをしていた
六合が私に気付いて「おはよう、風音」と声をかけてくれたが、私はついそっけなく返してしまう
「汗臭いから、そのまま上がらないで」なんて、ホント私は素直じゃない
釜に火をつけた後、こっそり手ぬぐいを持って井戸へ行く
六合が水汲みをしていた。裸の背中には幾つか古傷の後があった
私が全然適わなかった六合に、傷をつける奴がいるなんて……私は世界を知らないと思う
朝
ご飯の水分量を間違えてしまう。六合と暮らすようになってから炊事をするようになった
山の獣を捌くのは得意なのに……少しも女らしくない自分に自己嫌悪
六合は澄ました顔でベチョベチョのご飯を食べていた
謝らなきゃ……そう勢い込んでいたら六合が空になった茶碗を差し出してオカワリを求めてきた
……馬鹿
昼
晴明の孫の護衛は夜なので、この時間は六合と二人きりだ
なにをするでもなく、私たちは一緒にいる
決して口には出せないが、とても幸せな時間だ
「風音、私は幸せだ」
何の前触れもなく六合が確かめるように呟いた。私はただ頬を赤らめるコトしか出来なかった
夕刻
母様が訪ねてくる。無邪気な顔で「孫のお顔はいつ見れますか?」と聞いた
私は思わずお茶を吹き出してしまった(六合が市で買ってきてくれた貴重品なのに)
しどろみどろになる私の横で「まあその内に、時がくれば」と目を閉じたまま言う六合
な、何言ってるのよ!私は騰蛇の炎より真っ赤になったが
よく見ると六合の耳も赤かった。恥ずかしいなら言わなきゃいいじゃない……馬鹿ぁ
夜
六合が出掛けた後、私は寝室で六合を待っている
私は堪え性が無いからか、じっとしてるのは苦手だ
……それに一人はいや……
目蓋を閉じてると六合の面影が浮かんでしまう
だからつい……
私以外に屋敷に誰もいないとはいえ、私は枕に口を押しつけて声を漏らさないよいにして
私自身の芯をゆっくりと掻き混ぜる
六合…六合……
私の六合は少し困った顔で愚図る赤子をあやすような
やさしい微笑みで私を包み込んでくれる
でも足りないの……六合、貴方の冷静な顔が歪むくらい
貴方を私の虜にしたい。私は貴方の虜なのだから、いいでしょう?
充たされぬまま、身体は絶頂を迎えた
荒い息を整えてると、人の気配を感じた。ぁ……六合
「風音……淋しい思いをさせていたようだ。済まない」
そう断って、私を掻き抱くと、六合は私の唇を自分のソレでなぞった
はしたない女だと思わない?と訊ねると、六合はいつもの難し顔で私を押し倒した
「妻をはしたないと思う夫は居ない。風音は妻としての役割を果たしてくれ」
生真面目に抑揚なく耳元で囁くと、六合は自身を私の身体の中に埋めた
玄武「晴明、お願いがある……」
晴明「なんじゃ、玄武、紅蓮に朱雀まで」
朱雀「記憶を……消して欲しいんだ……」
もっくん「……俺達が六合の部屋に入った記憶を……アイツの部屋で見つけた日記の記憶を……」
玄武「でないと、我はもう六合を直視することが出来ぬ……」
朱雀「何も聞かないでくれ……聞かないで記憶を消してくれ!晴明!!」
もっくん「六合は悪くないんだ!ただちょっと疲れてるだけなんだ!色々あったから!!」