汐の目に光が戻ってから程なく経ち、  
汐も家族も平穏を取り戻しつつあった。  
そして、邸の屋根の上に幼き神将の姿があった。  
どうして、そのようなことをしようと思ったのか……  
それは、彼にも分からなかった。  
 
玄武はゆっくりと地上へと降りる。  
そして、簀子に腰を降ろした。  
思い起こせば、初めて此処に来て、  
汐と会ったのはほんの少し前のこと。  
自分の方に頬に触れ、そして優しいと評した初めての人間。  
その存在に想いを馳せながら、玄武は星空を眺めていた。  
 
「どなたか、いらっしゃるのですか……?」  
ふと、懐かしい声が聞こえた。  
簀子を歩いてきた汐の視線は、しかし人外の存在を捉えることはない。  
一瞬の逡巡の後、玄武は人身を取り汐の前に現れた。  
「誰……?」  
「我だ……、玄武だ……」  
「げんぶさまですか?」  
不安そうだった汐の顔に輝きが戻る。  
 
汐の両手が、ふいに玄武の頬へと伸ばされる。  
初めて出会った時と同じ行動に、玄武の心の臓はいつもより速い時を刻んでいた。  
しかし、不快ではない。  
汐に触れられたところから温もりが伝わってくるような、そんな不思議な感覚。  
「やはり、げんぶさまは優しいお顔をなさっておいでです」  
「我は……」  
困惑気味の表情を浮かべ、玄武は言葉を濁らせた。  
「もう遅い時間だ。そろそろ休まなければ」  
「はい」  
そう言って、汐は茵へと歩いていった。  
その指先を、玄武のそれと結んだままで。  
 
「何故、我も連れて行くのだ?」  
「そのような格好では、お寒いと思いまして…… もう秋ですし」  
「我は神将だ。この程度のこと、造作もない」  
「それでも……」  
そんな、穏やかな会話をしながら歩いていたその刹那、  
「きゃあっ」  
何かに躓いたのだろう、汐姫は転んだ。  
 
玄武の鼓動が一層速くなる。  
どうしたことか、汐姫は玄武に覆い被さるような姿勢になっていた。  
「申し訳ありません…… げんぶさま」  
「いや……、その……」  
ふと視線をやると、すぐ目の前には汐の顔があった。  
玄武の顔は既に紅に染まり、早鐘を打つかのような鼓動を隠し切れなくなっていた。  
「あら? これは……」  
汐が何かを見つけたかのような声をあげる。  
 
汐の指先は玄武の下腹部へと伸ばされ、さらにその下へ。  
そこには、まだ幼い様相を呈した玄武の性の象徴が、自らの存在を主張していた。  
「汐……、何を…」  
玄武は困惑の声を上げたが、それを気にとめず、小さな手でそれを包み込んだ。  
そして、ゆっくりと上下に刺激していく。  
「な、何をするのだ…… やめ……」  
「げんぶさまは、こうされるのはお嫌ですか?」  
悲しげにそう問うた姫に、玄武はなにも言えなかった。  
「私は何もできませんから、せめてお礼をさせてください」  
「礼?」  
 
「妖たちから汐をお守りくださいました」  
「我は、我の為すべきことを為したまでだ。礼など……」  
そう答える玄武の息も次第に荒くなっていた。  
「ん……、はむっ……」  
「汐、な、何をする……」  
玄武のそれを、汐の小さな口が咥えていた。  
舌が口内のそれを這い、先ほどまでとは比較にならない快楽が玄武を襲う。  
「どこで……、このような、ことを…?」  
このような卑猥な行為を覚えるようには到底見えない幼き姫は、  
響かせていた水音を止ませ、告げた。  
「水神さまがお教えくださいました。神に仕える巫女には必要なことだといって」  
「何…?」  
予想もしていなかった返答に玄武は衝撃を受けた。  
が、玄武が感じた静かな怒りは、抑えようのない快楽に次第に打ち消されていった。  
 
「っ……!」  
玄武を絶頂に達し、精を放った。  
「んんんッ!」  
飲み込もうとするが、喉にからみつくその液体に汐は咽せた。  
「けほっ…」  
小さな口に収まりきらなかった白濁色の液体が、口元から伝う。  
その劣情的な姿に、先ほど感じた玄武の怒りは、独占欲へと変質していった。  
 
玄武と汐とは深い口付けを交わし、玄武の指が汐を愛撫する。  
幼い二人の夜は、まだ終わらない。  
 
 

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