放課後、例によって小佐内さんはぼく、小鳩常悟朗を
共働きでご両親のいない自宅に招き入れた。
おもむろに小佐内さんはエアコンのスイッチを入れると
ぼくを尻目にソファーへとその身を横たえた。
未だ冬服のセーラー服を纏う、小学生のような矮躯。
不意にひざ丈のプリーツスカートがはだけると、その細い太ももは
暗渠へ続く小川のせせらぎのように、スカートの奥へと続いているのが伺えた。
どきりとうろたえて視線を逸らすぼく。
くそ。こんな幼い体をしているのに、なんで時折こんなにも
色っぽいんだ。
二人きりのリビング、速鳴る動悸からか、ぼくは自分の体の裡から湧きでてくる熱気に
居たたまれず、学生服の詰襟を指でつまむと、忙しく扇ぐ。
「小鳩くん、あついんでしょ?」
そう囁く小佐内さんは口元に微笑を湛えながらも、その双眸は真摯にぼくを
見据えていて、惑いがない。
「来て……」
小佐内さんが呟く。
そうか、いよいよ小佐内さんも男女の戦略的互恵関係にまでぼくたちの
間柄を進める決心をしたのか……。
そう判断すると、ぼくにそれを拒む理由は全くない。
「ああ」
ぼくはそう呟くと、ソファーに横たわる小佐内さんへと覆いかぶさろうとした。
と、そこにひんやりと漂う冷気。
「ね?ここはとっても冷たいでしょ?」
そう、ちょうどこの位置はエアコンの冷気が直風で当たる場所だったのだ。
エアコンの直風に晒されるまま、スカートがはだけるにまかせる小佐内さん。
「小鳩くん、なにか勘違いでもしていたのかしら?」
自らの矮躯に覆いかぶさろうとしている僕を見据える小佐内さんの、理性を湛えたつぶらな瞳。
その瞳の奥にはそこはかとない邪気が伺える。
「そ、そんなことあるわけないじゃないか」
ぼくはそう呟きながらも、急に汗が引いてゆくのはエアコンの冷気だけではないと思った。