「うえ〜ん、ルーアン先生〜」  
僕の名前は遠藤乎一郎。中学2年生です。  
クラスメートの太助くんとシャオちゃんを、ルーアン先生やキリュウさんと追っかけていたんだけど、置いてきぼりにされちゃったんです…。  
ここはと〜っても高い木の上で、あたりはもう夜だから真っ暗。  
夏だから薄着をしてきたんだけど、夜はやっぱり寒いよう…。  
降りようと思って下を見ると、すごく地面が離れてて、足が震えてしまいます。  
あたりの風も冷たくて、肌も震えるんだけど。  
「…ここを降りなくちゃ、ルーアン先生にもう会えないかもしれない」  
そう思うと、降りる決心がつきました。  
少しずつ、少しずつ降りていきます。  
それにしても、一体何メートルあるんだろう、この木…。  
半分くらいまで降りて、ほっと一息つくと、ちょっと木を調べてみました。  
「うわ〜、この木、やわらか〜い」  
木にしては、あまりごつごつしてなくて、さわり心地も良かったです。  
「もっとあちこち見てみようっと」  
ぺたぺた触りながら、裏側とかも見てみます。  
「あっ、カブトムシだ!」  
 
そう思って、手を伸ばすと…  
ぬるっ  
「うわっ!」  
カブトムシの近くには、樹液がありました。  
うっかりそれを触って、手を滑らせてしまいました。  
「わーーーー」  
僕は、まっさかさまに落ちていきます。  
まだ地面とはかなり距離があるみたいです。  
あぁ、このまま落ちちゃったら、僕、死んじゃうのかなぁ。  
それとも、たかしくんみたいに、ボケボケな頭になっちゃうのかなぁ。  
そんな事を思いながら、一直線に落下していきます。  
風の音さえ聞こえます。もしこれが漫画だったら、とっさに受身とかできるんだろうけど…。  
そっと目を閉じました。聞こえるのはひゅううううぅぅっていう風を切る音と…  
ぽすっ  
どこか柔らかい所に着地しました。きっとここは天国なんだろうなぁ。  
「…n…ぅ殿」  
どこからか声が聞こえます。これは神様かなぁ。  
わ〜い、僕、地獄行きにならずに済んだんだねっ、神様♪  
と、思わず神様に抱きつきます。  
「え、遠藤殿!?」  
 
はっきりした声で、目が覚めました。  
目の前にいるのは…キリュウさん?  
「キリュウさん、どうしてここに?」  
「一人だけ置いてきてしまったからな、心配になって見に来たのだ。危ない所だったな。それより…」  
キリュウさんが、僕の方を赤くなりながらちらっと…  
「あ、ご、ごめんなさい」  
キリュウさんに抱きついたままだった…慌てて離れる僕。  
「ともかく、私と一緒に帰ろう。ご両親も心配しているであろう。」  
「あの…キリュウさん…」  
「?」  
「ありがとうございます!」僕は、キリュウさんと乗ってる扇子の上で、頭がくっつくくらい下げました。  
キリュウさんが助けてくれなかったら、僕は今頃どうなってたか分からないですから。  
「…いいのだ、気にするな。元はルーアン殿が原因だしな」  
「そういえば、ルーアン先生は?」  
「ああ、ルーアン殿にも、一緒に行こうと言ったのだが、『あんたが行くなら遠藤くん大丈夫でしょ?』と、言われてしまった。」  
「あはは、ルーアン先生らしいや」と笑う僕。  
「…全く、遠藤殿も懲りないな」溜息交じりにふっと笑うキリュウさん。  
「はい、いつの日かルーアン先生を振り向かせられるように僕は…」途中で言葉が詰まりました。急に、雲行きが怪しくなってきたからです。  
「天気に変化がある様だな。少し急ごう。」  
僕も、頷いて、キリュウさんの扇子にしっかりとしがみつきます。  
ごろごろ…と音がしたと思ったら、ざーー…と雨が降ってきました。  
そして…  
「キリュウさん、危ない!」僕が叫びます。  
「どうした、遠藤殿?」  
「雷が落ちてくるかもしれないです、さっきからゴロゴロ鳴ってますし。」  
 
「そうか…高い場所は危ないという訳だな」  
今の僕とキリュウさんは、あのたくさんの高い木より上を飛んでいました。上にいる方がここがどこか分かりやすいでよね。  
でも今は雷が落ちると危険なので、地面の近くまで降りようとしました。そのとき!  
がっしゃーーーーん!!!  
『わあっっ!!』  
降りている途中で、僕達のすぐ近くに雷が落ちてきました。  
当たりはしなかったけど、すごい衝撃ですぐそばにいた僕やキリュウさんは吹き飛ばされてしまいました。  
どすっ!!  
「いたたぁっ…」  
「遠藤殿、大丈夫か?」  
「あ、はい。何とか大丈夫です。キリュウさんこそ大丈夫?」  
「私は大丈夫だ。しかし…」  
キリュウさんの指差す方には、端の方が黒焦げた扇子が…  
「あ…」  
「あの様子では少なくとも暫くは、飛ぶ事はできなさそうだな」  
「どうしましょうか…」  
「あそこに洞穴が有る。とりあえず今夜はあの中で休もう」  
「そうですね、このまま帰ろうとしても真っ暗だし、風邪ひいちゃいますし…。」  
こうして僕とキリュウさんは、洞穴に入る事になりました。  
「わ〜、意外と広いですね。ここの洞穴」  
 
このあたりは少しひんやりとしています。別に鍾乳洞ではないみたいです。  
「とりあえず、このまま寝るのは危険だな。焚き木を拾ってこよう。」  
「キリュウさん、外に出て大丈夫?」  
キリュウさんはふっと笑って、  
「大丈夫だ、すぐに戻る」と言ってくれました。  
キリュウさんが出てから、  
ずがーーーーーーーーーん  
という音がしてから程なくして、キリュウさんがたくさんの薪と、焦げた扇子を持って帰ってきました。  
「空は飛べなくてもこのくらいはできるからな。とりあえず火を熾そう」  
「ありがとう、キリュウさん」お礼を言う僕。  
「気にするな」俯いて照れるキリュウさん。  
夜はまだまだ続きます…。  
 
 
夜の森の中、出ることもできずに洞穴で二人きりになった僕とキリュウさん。  
キリュウさんが薪をたくさんもってきてくれたんだけど、火をおこす物なんて持ってないから…。  
すりすりすりすりすりすり  
一生懸命木をこすって、火をおこすように頑張ります。  
「なかなか火が熾らないな…」  
キリュウさんがじっと僕の手を見詰めてます。  
とにかく火がつくまで、ずっと頑張ってみます。  
すりすりすりすりすりすりすりすり  
ずっとこすり続けてるけど、なかなか火はおこらないみたいです…。  
「遠藤殿、大丈夫か?」ずっと見てたキリュウさんが、僕のことを心配しながら話します。  
「大丈夫ですよ、キリュウさん」笑って答える僕。  
でも本当は少し痛いかも…。  
すりすりすりすりすり…  
ずっと手をこすり続ける僕に、キリュウさんが  
「遠藤殿、交替しよう」  
「え、でも…」  
「遠藤殿、その手は…」  
「……」キリュウさんが取って見せた僕の手は真っ赤で、あちこちに傷や擦り剥けが…  
「…遠藤殿、すまない。私の力がないばかりに…」  
「そんな事ないですよ、キリュウさんがこんな所にいるのも僕を迎えに来たから…」  
「…とにかく、遠藤殿、今度は私がやろう」  
そう言ってキリュウさんは、僕から木を取り上げるようにして両手で持ちました。  
そしてすぐに、  
「はぁっ!!!」  
 
…とにかくすごい勢いで、木を擦り始めました。  
「キリュウさん、頑張って!」  
そう僕が言うと、キリュウさんはこちらを少しだけ向いて、笑顔を見せてくれました。  
そしてすぐに木を擦る手に向き直りました。  
それからほどなくして…  
「あっ、火がついたよ、キリュウさん!」  
僕がキリュウさんに向かって叫びました。  
「ふう…」  
キリュウさんも一息ついているみたいで、とりあえず火のついた木を他のたくさんの焚き木に移します。  
するとすぐに、たくさんの焚き木の中心でぱちぱちいう音が聞こえてきました。  
「やったね、キリュウさん」  
と僕が笑うと  
「遠藤殿がずっと擦っていてくれたお陰だ」  
と、キリュウさんも微笑み返してくれました。  
「わ〜、あったか〜い」  
僕とキリュウさんは火のついた焚き木の前で、話し合っていました。  
「とりあえず今夜はここで寝て、明日の朝にまた出かけよう」  
「はい」  
「今日はもう遅いから食料は取りに行けないと思うが…遠藤殿、大丈夫か?」  
「途中で、ルーアン先生とジュース飲んできましたから…」そう僕が笑うと  
「そうか…」  
キリュウさんもつられて、くすっと笑いました。  
「……」  
「……」  
キリュウさんと…というか女の子と一緒の夜なんて初じめてだから、すごくドキドキしてきます…。  
 
そのとき、すっと僕の手にキリュウさんが上から手を触れてきました。  
「!?」思わずドキッとする僕。  
「遠藤殿、その手、もう一度見せてくれないか…?」  
「は、はい…」手のひらをキリュウさんに向かって出しました。  
キリュウさんはその手に顔を近づけて見ていたんだけど、  
「こんなになるまで…すまない、そして、ありがとう。」  
「キリュウさんが謝ることじゃないですよ。お礼言うのは僕の方です。キリュウさんのお役に立てて、良かったです♪」  
「私の為…なのか?」  
「キリュウさんと二人で無事に脱出するために、頑張りました!」僕はそうはっきり言いました。  
「…本当に、ありがとう…」嬉しいような、少しだけ寂しいような、そんな表情をキリュウさんは見せてくれました。  
「キリュウさん…」  
「すまない…。私はあまり優しくされたりとか、慣れてないから…」  
「キリュウさんは…幸せですよ!太助くんや、シャオちゃんや、ルーアン先生やみんながいるじゃないですか!」  
「遠藤殿…」  
「もちろん僕もいます!みんなで、きっと、キリュウさんを幸せにします!」  
僕がそう言うと、  
「…ありがとう…。遠藤殿は…優しいのだな。」キリュウさんが、僕の顔を見ながら、そう言ってくれました。  
「キリュウさん…そろそろ、寝ませんか?明日も歩かなきゃいけないし…」  
「そうだな、明日も朝早めに出よう」  
「キリュウさん、おやすみなさい」  
「ああ、お休み、遠藤殿」  
それで、寝ようとしたんだけど、来る時に何も持ってきてないし、火も消しちゃったし、薄着だから寒いです…。  
…と、キリュウさんも、すぐそばに来て  
「一人では寒いだろう?一緒に寝よう」と…。  
一緒に…寝よう…  
 
「それじゃ、遠藤殿、おやすみ」  
そのフレーズが僕の頭の中でやまびこになっている間に、キリュウさんは僕のすぐ目の前ですやすやと寝息を立て始めました。  
その手には僕の両手がしっかりと握られていました。  
キリュウさんの寝顔が…僕の目の前で…  
僕はどきどきしながらも、とりあえずキリュウさんと一緒に寝たのでした。  
手のぬくもりが…あったかいなぁ…  
 
翌朝。  
ずがっ ばきっ どずーーーーん  
ナゾの音と共に、僕は起きました。  
すると、そこらじゅうにつららや鉄球や大木が…。  
僕が呆然と眺めていると、キリュウさんも目が覚めたみたいで  
「…ん…、おはよう、遠藤殿」  
「おはようございます、キリュウさん。それよりこれは…」  
「ん?…ああ、私は朝が弱いからな。夜の間に作っておいたのだ。」  
…これ、危なすぎるよキリュウさん…。  
僕がそんなことを考えている間に、キリュウさんはもう準備ができたみたいで、  
「さあ、そろそろ出発しようか、遠藤殿」  
「はい!」僕も大きく頷きます。  
外に出てみると、さわやかな風が…やっぱり夏の森っていいものですね。  
景色も見やすいし、キリュウさんと一緒にしばらく歩いていると、道が開けました。  
「あ、行く時にきた道だ!」  
どうやら、昨日の洞穴は出口の近くにあったみたいです。  
「良かったな、遠藤殿、これで帰れるだろう」  
 
「本当に、ありがとう、キリュウさん」  
「私の方こそ…色々と、ありがとう、遠藤殿」  
「それじゃあバスで……あ」  
「どうした、遠藤殿?」  
「ルーアン先生にジュース買ってもうお金が〜…(泣」  
「それは気の毒に…では…」  
そう言うと、キリュウさんは扇子をばっと、広げました。  
すると、扇子がまたあの乗れるサイズに大きくなりました。  
「キリュウさん、扇子、直ったんですね!」  
「ああ、少しだけな。しかし…」  
僕も乗ろうとすると、キリュウさんに止められてしまいました。  
「残念だな、遠藤殿。この扇子はまだ一人しか乗る余裕がないのだ。遠藤殿も乗ったら壊れてしまう。」  
「え…じゃあ…」  
「家まで、頑張って走ってくれ」  
「そんな〜〜」  
「頑張れ遠藤殿、これも試練だ。私も上から見ているからな」  
「わ〜〜ん、僕は主じゃないのに〜〜〜」  
そう言いながら走る僕…ルーアン先生と会うのはまだ時間がかかりそうだけど、今回のピクニックはとっても良い思い出になりました。  
 
 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル