万難地天キリュウは扇子を口元にあて、眼下に見える状況を眺めていた。  
 最終試練ともいえるスペシャル試練コースを難なくクリアし、ゴール地点にたどり着いた、  
キリュウのご主人様である七梨太助。さすがに最難関だけあって、ゴール後に力尽きて気を失  
ってはいるが、キリュウが太助に教えられることはもう何もない。  
 たとえ空が墜ち、地面が崩れようとも、守りたい人を守れるだけの力を付けた。  
 少なくとも、体力面においては、免許皆伝、無事卒業、そして自分はまた再び短天扇へ還る。  
 これまで、何十人、何百人ものご主人様に試練を授け、ある者は志半ばで、またある者は別の試  
練を無事乗り越えたが、最後の最後、この秘奥である試練にたどり着いた者も、そしてその試練を  
乗り越えた者も、自分が使命を受けてより初めてのことだった。  
「主殿、合格だ…」  
 一抹の寂寥感と、驚きと満足と、それらを混ぜ合わせたような表情でキリュウは太助を見下ろし、呟いた。  
 
 
「あー、回復する気分だ…」  
 湯船にどっぷり浸かって、太助は疲れを吐き出すかのようにひとりごちた。  
 キリュウの出した大きな試練に挑んだおかげで、体中の筋肉が悲鳴を上げていた。擦り傷やら切り傷なんかもあちらこちらにある。お風呂にどっぷりと入ると酷使した筋肉がほぐれたような気分になる。  
 どんなに体中が痛くても、試練を乗り越えた後は充足感でいっぱいでとても気持ちが良い。  
 お風呂自体も独りになれるし、それに温かくてここは好きな場所の一つだった。そう、この瞬間までは。  
「主殿、湯加減はどうだ?」  
「あー、ばっち…り…?」  
 何気ない台詞とともに浴室のドアがガラッと開く。何事かとドアの方を見ると、太助は幸せな気分を一気に吐き出してしまった。  
「って、キ、キリュウ、いきなりなんだよ!」  
 頬を赤く染めて、慌てて視線を逸らせて、太助は抗議をする。ただ浴室にキリュウが入ってきた  
からではない。キリュウはいつものパンツルックではなく、まるで一緒にお風呂に入りに来たかの  
ように柔らかそうな素肌にバスタオルを一枚巻き付けてきただけの格好で太助の前へ現れた。  
「試練だ」  
 唐突と理解不能なことを宣告してくる。当然、この状況で『試練』などと言われても何も思いつ  
かない。それよりも裸を見られることが恥ずかしいし、キリュウの裸同然の姿を見るのも恥ずかしかった。  
「主殿は全ての試練を乗り越えたことによって、どんなことが起こってもシャオ殿を守るだけの力  
を付けられた。もう授けられる試練は何もない。  
 と思っていたのだが、主殿が男の子だということを思い出してな。閨について手ほどきをしてやろう」  
「ね、ねや…?」  
 
 さすがに中学生だけあって、キリュウの古典的な表現を理解することは難しかった。いまいち伝  
わってないことを見て、もっとわかりやすい言葉に置き換える。  
「そうだ。簡単に言えば交尾…いや、違うな。そうそう、性交…せっくすとかいうやつだ」  
 堂々と、臆面もなく言われてやはり太助は一瞬、頭の方が追いつかない。ただ、巡り巡って言っ  
ていることの意味がわかると、大きな叫び声をあげる。  
「こ、交尾とか性交とかって、ええっ!?」  
「何も恥ずかしがることはあるまい。人間にとって、いや、生き物にとって当然の営みではない  
か。主殿だってそうやって生まれてきたのだからな」  
 キリュウの言うことは正論以外の何物でもなかったが、中学生の太助にとってはそうドライに考えられない。  
「翔子殿に聞いたところによると、主殿は童貞だそうだな。そんなことではシャオ殿を満足させる  
ことはできないぞ。そんなんでいいと主殿は思っているのか?」  
 山野辺のヤツ、いらんことをキリュウに言いやがって…。  
 恥ずかしさのあまり鼻の上までお風呂の中に潜ってぶくぶくさせて、心の中でだけ呟く。  
 ただ、キリュウの言うことは尤もなことだった。女性経験のない太助では、シャオとうまく“でき  
る”か不安だった。もし仮にそういう自信がついたのなら、もっと積極的にシャオと接することができそうな気がする。  
 結局、いつものようにキリュウの試練を文句も言わずに受けている自分がそこにいた。  
 
 
「元気な証拠だな」  
 キリュウに促されるままに湯からあがって太助は浴槽のへりに腰掛ける。さすがに気恥ずかしい  
から腰にタオルを巻いてはいたが、童貞で中学生、その上目の前にバスタオル一枚だけを巻いてい  
るだけの女性と、これから行われることへの期待をミックスすれば、ペニスはタオルの上からでも  
はっきりとわかるくらいに勃起していた。  
「あの〜、やっぱりやらなきゃだめ?」  
 タオル一枚というのは最後の羞恥心の砦でもあった。この一枚を自分で脱ぐのか、それともキ  
リュウにはがされるのか、どちらにせよタオルがなくなればもう後戻りはできない。  
「往生際が悪いぞ、主殿」  
 しかし、あくまでも冷静なキリュウの前にあっけなく最後の堀は埋められてしまう。さっとタオ  
ルを取り除かれると、太助の股ぐらから隆々と屹立している三本目の足がキリュウの目に晒された。  
「ヘソまで反り返っているな」  
 痛いぐらいに勃起したそれを見られて太助は顔を赤らめる。  
「主殿、恥ずかしがることはないぞ。逆に立派なことではないか」  
 そうフォローされてもやはり女の子に自分の一番恥ずかしいところを見られるということは中学  
生の太助にとって簡単に耐えられることではない。  
「あぅっ」  
 太助のそれはキリュウに観察されるだけなわけもなく、当然次はキリュウの小さな柔らかい手に  
よって握られる。それ自体はたいした刺激なはずもないが、初めて女の子に自分のモノを触られる  
ということは想像できないくらいの快感があった。  
「すごく堅いな。それに熱い…」  
キリュウの指が太助のモノを上下し始める。キリュウ自体、あまりなれてないのか、手つきはぎこ  
ちなくゆっくりとしたものだった。  
「き、きりゅう…」  
 情けない声を上げる。いくらぎこちない手つきだからといって、ビギナーの太助からしたら、十  
分すぎる刺激だ。しかも、自分で“する”のとは全然違う。こんなにたどたどしい動きでも、自慰の  
十倍くらいは気持ちがいい気がする。  
「ふふ、だらしがないぞ。まだ始めたばかりではないか」  
 意地悪そうな微笑を浮かべてキリュウは言う。しかしそうは言っても、太助はやはり初心者であ  
る。この気持ちよさをできるだけ長く味わいたいと思っていても、もう限界はすぐそこで、いつ暴  
発してもおかしくはない。必死に肛門に力を入れて我慢をするが、それもいつまで持つか、時間の問題ではあった。  
 
「キリュウ、も、もう…た、だめだって…」  
 鈴口から透明な我慢汁がぷっくりとあふれ出ていて、今にもこぼれ落ちそうだった。それをキ  
リュウは指先でなでて、亀頭全体に塗り込める。太助はビクッと体を痙攣させる。  
 タイムリミットはもうわずかだ。ほんの少し、ほんの少しの刺激で、太助は限界を超えそうだっ  
た。朦朧としそうになりながらも、出すとしたら、どこに出せばいいのか、ここが風呂場で、キ  
リュウが裸同然の格好だとしても、このままキリュウにかけていいのか、いや、それどころか、こ  
のままではキリュウの顔にかけてしまう。いわゆる、顔射ってやつだ。精霊の、汚れのないキリュ  
ウを穢す、能動的ではないが、そういう状況に興奮している自分に驚きながら、そうなったらいいななんて思う。  
「あっ、あっ、ああっ!射精るっ!」  
 ビクッと体を大きく震わせて、太助は射精した。目一杯我慢した衝動がほとばしり、生臭い白濁  
液がペニスから痙攣に合わせて噴出する。震えるたびに沸き起こる快感に意識が朦朧とする。放出  
された精液はキリュウの顔にかかり、どろどろの汁まみれになる。自分でも信じられないほど大量  
の精液がキリュウの綺麗な顔を汚し、また痙攣し、キリュウの顔を汚す。  
「き、キリュウ、ごめん…」  
 全部出し終えたことで、急に我に返った太助が、あたふたとキリュウを気遣う。ただ、キリュウ  
は怒っても、気分を害してもいないようで、軽く微笑んで、口の周りについている精液を舌で嘗め取る。  
「謝ることはない。確かに早いかもしれないが、はじめてにしてはがんばったな。主殿は逞しかっ  
たぞ。それに、すごく濃いし、量も多い。すぐに妊娠させられそうだ」  
 そう言って、キリュウは後処理にかかる。顔についている精液を指先ですくって、口の中に入れ  
る。あらかた処理が終わると、次は太助の一物を口に含み、綺麗にする。射精をして小さくなって  
はいたが、初めてのフェラチオである。キリュウの舌の感触がダイレクトに伝わってきてすごく気  
持ちがよかったが、まだ出したばっかりだったために、少し、こそばゆい。キリュウは尿道に残っ  
た精液までしっかりと吸い出し、また微笑んだ。  
「今日はここまでだな。明日もまた試練だぞ、主殿」  
 そう言って、キリュウは風呂場から出て行った。  
 

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