「いいか!絶対に一人歩きだけはやるなよ!特に、柔道の帰りにはな!」  
「木村…誰に電話してるんだろ?」  
受話器をきつく握ったまま大声で話す木村を見て、大原が他の寮の住人に尋ねる。  
「彼女。作家で空手と柔道やってる子なんだと。……俺も顔は知らないんでどうとも言えないが。ただ、顔見知りの陣雷曰く、色っぽいベッピンさんらしいよ。」  
「へぇ……。」  
いつの間にそんな美女を捕まえたのかと思わず感嘆する大原。  
「いいか、桜の並木道や桜のある公園も避けるんだ。…でないと…」  
 
「…はよ帰って茶飲みたいわ。はあ。」  
 八重桜が満開の公園の並木道を愚痴りながら歩く一人の女性。乾き切らない髪を両脇でお団子にしたせいか、丸顔が余計丸く見える。  
 顔立ちは柔らかな印象を受けるが、白い肌と柔らかな赤い唇がが彼女の容貌に艶を醸し出していた。  
 見ようによってもおしとやかにも見える彼女だが、その肉体は鍛練によって引き締まっている。  
 「…にしても、ソメイヨシノもえぇけど、八重は、こう……艶やかのがええな…。」  
 ちらちらと散る桜を眺め、呟きながらも手は髪止めに自然とかかる。  
ふわあっ。  
 髪を纏めていたピンを外すと、まだ湿り気を残す髪がゆったりと広がり、漆黒の髪が首筋や肩にまとわりつく。  
 零れた八重桜の花びらが髪に落ちた直後、  
 「奥寺はん。うち、何か忘れ物でもしましたか?」  
 彼女は背後にいる人間にきつい口調で問い掛けた。  
 「いや…。お前に用事があって来ただけだ…弥生。」  
 「うちをそう読んでええのは木村はんだけどす!」  
 きつく言い返した弥生は反射的に舌打ちした。  
 奥寺一人だけなら何とかなる。  
 そう思って振り向いたが、後ろにいたのは奥寺他数人。一人だけならまだしも、この人数をさばききる力は弥生にない。  
 
仕事の関係で連絡した彼女達と木村の勘にかけながら、弥生は彼らを睨むように向き直った。  
「うちが部屋に行くにはここをどうしても抜けなあきまへん。…鬼道館の看板に泥塗る覚悟で来てはるんですか?」  
全国二位の選手が婦女暴行を起こしたとなれば、鬼道館の名に泥を塗ることになるのは火を見るより明らか。牽制の言葉が自然に口を突く。  
「……関係ねぇ。」  
「はい?」  
「そんなもん関係ねぇ。……お前をモノに出来るんならな!」  
何の構えも取っていなかった弥生の腕を奥寺が掴む。慌てて振りほどこうと暴れる弥生。奥寺は無理矢理押し倒すと、弥生の顔を平手で殴った。他の連中が弥生の両手足を押さえ付ける。  
「なぁ…弥生…お前は、綺麗過ぎたんだよ…。」  
熱の籠もった奥寺の囁きを拒むように、きつく目を瞑り顔をそむける弥生。  
「…自分から誘惑してるのに、拒むその生意気な面、俺がメチャクチャにしてやる。」  
 奥寺の手が弥生のシャツを躊躇なく引き裂く。裂け目から覗いた柔肌が否が応にも欲望を増幅させていく。  
 「ーっ!」  
 「待ちなっ!」  
 だだだだんっ!  
 その時だった。 階段を軽々飛び降り、輪の中に綺麗に飛び込んだ影が、数瞬で強姦の共犯を倒していく。待ち人が一人到着したのだ。  
 「雑魚ばっか…桜酔いでもしてたんですか?」  
 少々呆れた口調の女性に、弥生は思わず安堵が交じった苦笑を零す。思わぬ邪魔者の出現に、奥寺が弥生から離れ、女性に対峙する。  
 と、その時。  
 「弥生、無事か!」  
 木村が息を切らして階段を駆け降りてきた。  
 
きつく注意はしていても、弥生の花見は止められないと分かっていた。  
それに今日は週一の柔道の日。奥寺が同じ道場でたまに顔をあわせることも聞いている。  
おまけに雑誌記者から耳にした噂も加われば、嫌な予感は確信へと変わっていく。…と言っても、今晩は執筆が一段落ついた弥生の部屋に、久々に行く気だったのだが。  
「服を破られたうえに平手一発。忍ちゃんのおかげでそのくらいで済みましたわ。」 
頬を押さえながら弥生が答える。  
「同じ女として、……許せませんね。」  
「……女?」  
一瞬だった。忍のフルパワーのタックルが奥寺を軽々と木村の方へと吹き飛ばす。  
反射的に落ちてきた奥寺を弥生の方へ蹴り上げる木村。  
とどめに弥生が投げで地面に叩きつけた。怒濤の連続攻撃に敢えなくやられた奥寺を忍は思い切り踏み付ける。  
「後始末はあたしがやりますから、お二人は行って下さい。」  
 
いくらガタイが良くて強くても、忍はれっきとした女である。見事に地雷を踏んだ奥寺にほんのわずかだけ同情した木村は、危ういところだった弥生に駆け寄った。  
 「弥生………!」  
 さ、桜酔いだーっ!  
 心の中で絶叫した木村は思わず生唾を飲んだ。  
 乱れた髪に散る鮮やかな八重桜の花弁。頬はわずかに上気し、先程とは違う潤んだ眼差しで木村を見上げている。  
 桜酔い。桜に見とれて酔ったようになる弥生の特異体質で、この時の弥生は木村をいつもより強く求めるのだ。  
 「木村はん…。」  
 とろける様な甘い声が木村の理性に絡み付いてくる。木村は弥生を抱き抱えると、駆け足で公園を抜けていった。  
 
弥生の部屋に飛び込み、後ろ手で施錠する。  
弥生を降ろすと同時に首に絡み付いてくる腕。唇を重ねれば、舌がするりと口腔へ忍び込んでくる。  
「……ん、………。」  
舌を絡めあい、誘われるがままに深く唇を貪りあう。  
ぴちゃ…、ぺちゃっ。  
濡れた音を立てて貪るたび、弥生の白い肌がゆっくり桜色に染まっていく。やがて、木村はゆっくり唇を離すと、弥生の目を覗き込んだ。  
「中、…行こうな…。」 囁きに頷いた弥生は、抱き上げてと言わんばかりに木村にきつく抱きつき、胸を押しつける。木村はそれに答えるように弥生を抱き上げた。  
 
ぼふっ。  
弥生をベッドに乗せた木村は、上半身裸になって弥生の上にゆっくりのしかかる。  
と、弥生が木村の手を取り、自分の頬に押し当てた。感触と体温を確かめるように目を細めて息を吐く。  
「歯とか骨、大丈夫か?」  
「大丈夫です。ただ、頬は腫れるかも…」  
木村の手を取ったままの弥生は、そのまま手を下に下げ、自分の胸に触れさせた。  
「…今夜は、離れんといて…」  
木村を見上げる弥生の目から涙が一筋零れる。その涙を、木村は優しく舐め取った。  
 
「っ…ん、ぁ…んっ……。」  
ベッドの下には脱ぎ捨てられた木村と弥生の服と下着。木村の舌は弥生の乳房を這い、もう片方の乳房は木村の大きな手で柔らかく揉まれている。  
「…あ、っ…ぅん…、木村、はぁ…ん…!」  
乳房をきつく吸われ、弥生の体がピクンと跳ねる。  
唇が離れた後に残るは、赤い、花弁。  
「…ふ、ぅ……」  
体を起こした木村は弥生の肌を指先でなぞりながら、腹部に花弁を散らすように跡を残していく。その度に弥生の体はびくりと跳ね、快感に素直に反応を示し、甘い悲鳴を上げた。  
 
「…すごい、濡れてるぜ。…桜酔いしてるだけじゃ、ないみたいだな…。」  
木村が弥生の太股をしっかり掴んで広げさせた時、秘裂は既に愛液でびっしょり濡れていた。木村の指摘に弥生は震えた声で答える。  
「……久々、…やから…。うち、……っ!。」  
秘裂を指で軽くなぞられ、腰を跳ねさせる弥生。背を仰け反らせると同時に、髪に張りついた桜の花弁がひらりと零れる。  
「…あ、…ぁぁ…はぁ……。」  
くちゅ、くちゅ。中に侵入した木村の指を弥生の膣はきつく締め付け、その指が動く度に弥生の内股がびくびく震える。木村はその内股に、キスマークを残していく。  
「っ…あ……あぁ…えぇ……」  
弥生は力の入らない腕で上半身を起こすと、内股に見えた赤い跡を恍惚とした表情で見つめた。それから倒れないように片腕で上半身を支えながら、木村のうなじを優しく撫でる。  
「……木村…は、ぁんっ……。」  
「どうした、…弥生…?」  
顔を上げた木村を弥生は欲情して潤んだ目で見つめた。体の奥が甘く疼いて止まらない。体が、木村を欲しがっている。弥生は埋め込まれた指を銜え込む様に腰を揺らしたが、桜の精気で酔ってしまった体はそれでも足りない。  
「入れて、ぇ……。」  
 
ごくん。  
生唾を飲み込んだ音が木村の耳にはっきり響く。  
弥生の肌は鮮やかに紅潮し、首筋や頬には乱れた黒髪が汗で張りついて艶めかしさを強調させている。  
「ね、…っ…ぁ…早ぅ………!」  
我慢し切れなくなったのか、先程まで木村を撫でていたその手で、自らクリトリスをいじり出している。唇から零れるのは既に声にならない喘ぎで、その吐息さえも、甘い香が漂う程とろけきったものになっている。  
「…早…ぅ…。」  
とすん。ゆっくりベッドに横たわった弥生は、自らの指で秘裂を広げ、腰を浮かせて木村を待っている。  
「…あ…あぁ…。」  
弥生のあまりの乱れ振りに少々戸惑いつつも、体を起こし、再び弥生にのしかかる。  
弥生の媚態に煽られたのか、木村のぺニスはしっかりと勃起しており、その先端を入り口に押し当てただけで、弥生の体がひくりと跳ねる。木村は弥生の腰を掴むと、そのままゆっくり奥まで腰を進めた。  
「…くるっ…木村はんのが、…奥まで……!」  
弥生の両脚が深く木村を受け入れようと、強く絡み付く。  
「っ…!ぅぅ……。」  
弥生の中は熱くとろけていて、微かに動くだけで中の肉襞がきつく吸い付いてくる。下手に動けば直ぐに果ててしまいそうなその快感に、木村は眉をしかめて耐える。  
 
「…動いて…。」  
と、その時、甘えた声で弥生が木村に囁いた。弥生の腰はさらなる快楽を欲して揺らめき、その度に中の木村のペニスに刺激を与える。  
「…我慢、…せぇへん、っ…といて……。」  
弥生の腕が木村の逞しい体を抱き締め、鮮やかに色付いた唇が木村の肌に赤い跡を残す。  
木村の肌にある痣や傷痕の中で、鮮やかについたそれは弥生のそれを移されたかのように熱や疼きを孕んでいた。  
「…生…だぞ?…」  
「…構いまへん。それに、もう…入ってますやん?。」  
木村とのやり取りが可笑しいのか、くすくす笑う弥生。その仕草さえ、情欲を誘う媚態となる。  
ふつっ。  
媚態に負けた下半身からきたものが、あっさり木村の中の理性を断ち切った。  
「…っ、…んっ、…うぅ…ぬ…。」  
くちゅ、ぐち、くちゅ、ぬちゅ。  
「ぅうん、…ぁ…ああ……はっ…。」  
木村が腰をぶつける度に、弥生は嬌声をあげて腰をくねらせる。弥生の腰が揺れる度に中の肉襞が熱くねっとり絡み付いてくる。互いに快感を与え、互いに快楽を貪る。  
久方ぶりのセックスな上に弥生の桜酔いと言うスパイスが加わって、行為は一気に激しくなっていった。  
 
「…ぅあ…っ、あぁ…んぅぅ、…もっと……!」  
きゅうきゅうと木村のペニスを締め付けながら、更に激しい動きをねだる弥生。肌はじっとりと汗ばみ、恍惚とした瞳からは生理的な涙が零れて筋を作っている。  
「…っ、待て、…堪え…ぅうう…!」  
一方、木村は激しすぎる弥生の情欲に煽られ、限界が近づきつつあった。  
気を抜けばすぐに達してしまいそうなのを必死に堪え、弥生をイかせようと、愛液で溢れた肉壺をぐちゃぐちゃとかき回す。行為の激しさに二人の体重を受けとめるベッドのスプリングの軋む音が大きくなる。  
「っ!…ぁ、ああ…はぁ、…ぅ…」  
木村の攻めが効いたのか、弥生の喘ぎが徐々に切羽詰まったものに変わっていく。  
「…ぁ、…はぁ…んっ…っぅん……!!」  
木村に抱きつく腕がわずかに痙攣を始める。だが、限界が近づいているのは木村も同じ。弥生の中はひくひくと収縮して熱く絡み付き、木村の男根をきつく締め上げる。先走りがじわりと中に広がると、弥生はうっとりと笑い、木村の肌に赤を散らした。  
「…っ、……んぬぅっ!…う……。」  
先走りさえも容赦なく搾り取る弥生の体に、木村は負けそうな気さえしてきたが、ぐっと耐えて、更に突き上げを激しくした。  
 
「…っ、あ、…えぇ…溶け、る…!」  
脳髄まで突き上げる快感に、弥生は高いところまで浮遊していく感覚に捕われる。腕が、脚がびくびくと震えて、強ばっていく。  
「…あ、…っあぁ……あ、…ぁあー……!」  
絶頂を迎えた瞬間、体の全てが木村と解け合う感覚に襲われた。木村にしがみつく指が白く硬直し、愛液で溢れた膣は収縮して、木村の男根を強く締め上げる。下半身から波の様に体を満たす快感に、弥生はしなやかに背を仰け反らせた。  
「…っ、…ぁ…しまっ…う!……!」  
きつく締まる膣に、慌てて抜こうと腰を引いた木村だが、その締め付けと肉襞の感触に耐えられなかったのか、弥生の体内にたっぷりと射精してしまう。  
「…っ、んぅ…ぁは…あ……。」  
自分の中に広がる熱い白濁の感覚に、弥生は再び軽い絶頂に達した。二度の絶頂に弥生はくったりとベッドに沈む。  
「…弥生…。」  
木村の呼び掛けに、弥生が薄目を開けて木村の顔を見つめる。  
「…っ、木村はん…ぅ…。」  
その顔は余韻に酔い痴れつつも、未だ物足りないのか、腕はしっかりと木村の背に回されたままだった。木村はゆっくりと腰を引き、弥生の中から男根を抜いた。抜けると同時に秘裂から白濁がわずかに零れ弥生がぴくっと反応する。  
 
「…ややぁ…。」  
中から抜かれたのが不満だったのか、弥生が抗議する。  
木村はそれを止めるように弥生の唇を強引に塞いだ。加減無しにきつく吸い上げ、絶頂直後の敏感な体を追い詰めるように、汗の滲んだ乳房をきつく揉み立てる。その強い刺激に弥生の体はびくびくと反応した。  
「…っは、…はぁ…。」  
ちゅぱ。  
木村が唇を離すと弥生は大きく息を吐き、呼吸を整えるように数回深呼吸を繰り返した。  
「…木村…はんぅ…。」  
「…酔いは醒めたか?」  
木村の問いに弥生は首を小さく横に振る。  
「…醒めまへん…。」  
弥生は木村をきつく抱き寄せると、そのまま寝返りを打つようにして、木村を押し倒した。  
「…あんなことしたら、余計火を点けるだけどすぇ………。」  
木村の胸に頬を押し当てたまま囁くと、弥生は木村に抱きついていた片手を離し、それをそのまま木村の股間へとやった。  
「…っ……!」  
弥生の指が柔らかく木村の男根を包み、軽く扱き上げる。その感触に木村が小さく息を飲む。  
「…木村はんかて、まだ元気やないですか?」  
半勃ちの男根を優しく扱きながら、弥生が艶やかに笑う。色香に満ちた妖艶な笑みに、木村のそこは素直に反応を示す。  
 
「…………。」  
弥生の指摘に木村は思わず顔を赤くして黙り込む。  
酒に酔った時はひたすら静かな弥生だが、桜に酔った時は淫らと言っていい程妖艶になる。  
もともと美人である弥生だが、特に春はその美貌に妖艶さが加わる為、実力行使に出る輩がどっと増える。そのせいでこの時期、長く会えない時は心配になってしまうのだ。  
「…弥生。…今日はやけに…積極的だな…?」  
「…恐かったんどす…。」  
木村の問いに、弥生は愛撫の手を休めて答えた。  
「…うちを…抱いてええのも、…うちが抱かれたいのも…木村はんだけどす…。」  
真剣すぎる声と同時に、弥生の手が再び動きだし、ツボを心得た動きで木村の欲望を引き出していく。  
「…っ、…うう……。」  
股間が熱くなっていくのが自覚できるぐらい血が熱い。  
木村は弥生の方はあえて見ずに、快楽を享受した。淫らで妖艶な笑みを浮かべた弥生が、長い指で自分の男根を愛撫している。脳裏に浮かべたその情景だけでも煽られてしまうのに、ましてやその姿をはっきり目にしてしまえば、あっさり果ててしまいかねない。  
付き合いだしてから幾度となく肌を重ねてはいるが、桜酔いした弥生の妖艶な色香にだけは未だに負けてしまう。勿論、同じ時間を過ごした分だけ、弥生への情も深くなっているが。  
 
やがて、弥生は手を男根から離し、膝立ちで木村の腰をまたいだ。脚を広げた所為で、股間の秘裂から白濁と愛液が交ざったものが零れて腿を伝う。  
「…ぁん…。」  
体をずらし、亀頭を秘裂にあてがうと弥生は小さく息を吐いた。  
「…木村はん、ちょっとだけ、…動かんといて、…。」  
くちゅり、と小さい水音に、木村は視線だけ弥生に向けた。恥ずかしそうに顔を背けた弥生が、ゆっくりと腰を下げて、男根を体内に銜え込んでいく。時折性感帯に触れるのか、小さな喘ぎを零しながら、ゆっくり最奥までくわえようとしている。  
「…ぁ…、…はぁ……。」弥生の吐息が背筋をぞわりと撫でるように耳に響く。木村は男根を包む柔らかい肉襞に目を瞑り、そのまま腰を突き上げて、弥生を一気に貫いた。  
「…っあ!…あああああっ!!」  
体の奥に響く熱さに弥生は嬌声をあげ、背を大きく仰け反らせた。すかさず木村は膝を立てて弥生の体を支える様にしてやる。  
「…はぁ…あぁ……。」  
体を熱くする快感に弥生は息を整えようとするが、さざ波のように体内を駆け巡る快感にそれもままならない。  
震える手をどうにかして木村の腹につくと、弥生はゆっくり腰を上下させはじめた。  
 
「っ、…ぁあ…く…るぅ……奥まで、…もっと…ぁあ…。」  
木村が弥生の腰の上下の動きにあわせて突き上げると、その度に弥生の膣がきつく男根を締め上げる。  
「…ぅ、…ん…あ……、くぅ…ふ…。」  
その締め付けはきついが心地よく、射精しそうになるのを堪えながら、木村は弥生の体を揺らすように激しく突き上げた。  
「…えぇ、…あ…いきそ…っ、…あぁ、…木村、はん…!。」  
時折軽く絶頂を迎えるのか、弥生の体がびくりと跳ねる。その度にいきそうになるのを堪えて木村は手加減なく突き上げる。  
「…っ、…ぬっ、…あ…あぁ…。」  
「…木村、はん……っ、…、…ぁあ…何でぇ…イッてくれへんの……?」  
股間から白濁混じりの愛液を溢れさせながら、弥生は震える声で尋ねた。  
「…お前、…満足…させないの…やだから…我慢……っ、…う…。」  
ぽろり、ぽろり。  
弥生の目から明らかに快楽からではない涙が零れたのを見て、木村は息を詰まらせた。  
「弥生………?!」  
「うちが、……酔うてるからいうて、我慢、…なんてしてほしくない…木村はんも…満足…してもらえへんと…。」  
最後の方は震えて声にならない声で言う弥生。木村は上半身を慌てて起こすと泣く弥生を抱き締めた。  
 
「…悪かった。」  
弥生の耳元で囁くと、木村は腰を小刻みに揺らしだした。溢れるほど愛液で濡れた秘裂は生々しい水音を立て、聴覚で弥生を煽る。  
「…っ、あ、…ん…んっ、ぅんっ…!!」  
煽られた弥生はとろけた目で木村を見つめ、合わせるように腰をくねらせる。  
何度も絶頂に達した体は僅かな動き、僅かな肌の触れ合いさえ快感に変換していく。  
「…ぅ、……っ、…うう……!。」  
熱くとろけ、ねっとりと絡み付く弥生の中は精を絞るように蠢き、木村はそこから伝わる快感にぎりぎりまで堪えた。  
だが、しかし。  
「…あ、っ、ああ、っはぁ、……あ、いき、……い、…いくぅっ!……木村はん…っ!」  
「…っぁ、…弥生っ……!!」  
触れ合う肌から感じる、互いの鼓動。頭の中が真っ白になり、続いて脳天を駆け抜ける凄まじい快感。二人は同時に味わう絶頂に息を止めた。  
やがて、ゆっくりと意識が戻り、二人は繋がったまま息を整えようとしていたが、達したばかりの敏感な体が与える快感にそれも出来ず、再び唇を深く重ね、相手を求めて貪り合った。  
…結局、木村が寮に戻ったのは翌日の朝だったとさ。  
おしまい。  
 
蛇足。  
「……何だこれはーっ!」  
数日後。  
弥生の通う柔道の道場に、パンツ一丁にされた、強姦未遂犯(勿論奥寺も含む)達の写真が送り付けられた。  
勿論、彼らは忍と玲穂(カメラマン。弥生の著作のおまけ栞『著者幻影』の元絵撮影担当。)の手により公園で晒し者になったのは言うまでもない。  
因みに、パンツを残したのは忍曰く「武士の情け」だそうである…。  
 
蛇足その弐  
「…ところで、お前の彼女って空手はどこ通ってるんだ?」  
「神武館だよ。大原、お前女子部担当したことあるだろうが。わかんないか?」  
大原、しばし黙考。  
「……あ!もしかして、お前の彼女って蕗錦?防具してるから顔良くわからなくて……って!」  
木村、ダッシュで逃走。追う大原。  
「門下生に手出すな馬鹿野郎〜!」  
「個人の自由だ、口出すなぁ〜〜!」  
チャンチャン。  
 

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