「さあ、お義姉さま。御入りになってください」  
檻は天井がかなり高く設定されてはいたが、人が入る入り口は狭く作られていて、屈まなければ  
入られないようになっている。それがカチュアを現実に揺り戻しプライドを傷つけて羞恥で苛む。  
「い、いけないことなのよ、やはり、こんなことやめましょう」  
「どうして、姉さん。昨日はあんなに燃えたじゃないか」  
「……」  
カチュアは沈黙するしかなかった。昨日、杯に催淫剤を仕込ませて、ふたりを狂わせたのは  
自分なのだから。しかし、カチュアは檻の前で獣のように四つん這いになっても、いまだ躊躇いが  
消えないでいた。  
「さあ、はやくなさい!」  
 オリビアがカチュアを一喝すると、彼女の白い臀部をオリビアが平手でピシャと叩く。カチュアは  
恨めしそうにオリビアの顔を一瞥した後、のっそりと檻へと歩き出していた。デニムが欲しい。  
デニムに抱かれたいという願いはオリビアには負けないカチュアだった。  
「あなたもいって」  
 カチュアはオリビアのその言葉に心をちりちりとさせる。デニムも四つん這いになって檻に歩いて  
いこうとするのをオリビアの手が太腿のあわいから垂れ下がっているペニスをひしっと掴んで  
彼の歩みを留め、檻の扉を閉めて鍵を下ろす。  
「う、うそ!だましたのね!オリビア!」  
 カチュアは屈んだ格好のまま鋼の格子にしがみ付いて顔を近づけて、オリビアとデニムを食い  
入るように見つめる。カチュアのなかに絶望と嫉妬のどろっとした感情が烈しく湧き起こり  
渦巻くのだった。  
 
四つん這いになったデニムは後ろからオリビアにペニスを扱かれて、口吻を愉しんでいる。  
唇を開いて、舌を出し入れして絡め顔を揺らしているさまを見せつけられるのは辛かった。  
オリビアの瞳はとろんとして見開き唇を開けて赫い舌で弟の舌を押したりもしていた。  
 デニムとカチュアの関係よりも、いまやオリビアとの関係が濃いことは明白だった。カチュアは  
彼の名を叫びたい衝動に駆られる。カチュアは弟のことになると盲目的になってしまう。  
 しかし、カチュアにはオリビアがこんなにも女の色香を発散するとは予想外のことだった。共に  
闘っていた頃の楚々としたオリビアのイメージは皆無だった。オリビアからデニムを奪おうと  
一昨日、ふたりを宴ではかりごとに掛けたことに後悔はなかったはずだった。  
 
三人はテーブルを囲んで昔のことや、デニムとオリビアが見たゼノビアの話に華が咲いていた。  
宴が進んだ頃にオリビアが杯を取りそこねて、クロスに液体を零してしまう。赫い液体が白に  
サーッと拡がってゆく。カチュアはふたりの杯に催淫剤を仕込ませるよう指示していたのだ。  
「もうしわけありません」  
「僕も少し酔ったみたいだよ。オリビア、少し外へ出よう」  
「で、でも、お義姉さまに悪いわ」  
「構わなくてよ。少し風にあたるといいわ」  
「ごめん、姉さん。そうさせてもらうよ」  
 デニムは席をすぐに立つと、オリビアのもとへ行くと連れ立ってテラスへと出て行った。  
 
「どうしたのかしら。わたし、いまとても変な気持ちなの……よ、デニム」  
 手摺に両手を添えて星空を眺めながらオリビアは告白する。いまオリビアはデニムに貌を  
向けることは出来ない。なぜならば……。  
デニムは背中が大きく開いているドレス姿のオリビアの後ろから両肩にそっと手を添えて、  
耳に舌を這わし、首筋に口吻をする。耳も素肌も仄かに朱色をオリビアは呈している。デニムの  
唇にはドレスよりも滑らかなオリビアの肌のやさしさが焚き付けられた欲望をさらに煽っていた。  
「オリビア、僕のペニスが欲しいのだろ。違うかい?」  
「わたしには、そんなこと言えません」  
 オリビアの頬は熱くなっていた。  
「どうして、男と女なんだから羞ずかしがることなんかないんだよ」  
「でも、お義姉さまとの宴の席でこんなことになるだなんて、わたしは……」  
 デニムが手摺に添えられたオリビアの左手に手をかぶせ、右手は首筋をそっと弄っていた。  
「こういうオリビアも新鮮で僕はうれしいよ。いつも、こんなんだと僕の躰がもたないかな」  
「い、いわないで、デニム……」  
 オリビアは甘えるように、そして啜り泣いていた。貞淑な妻が自分を欲して淫れるなどとは  
通常のデニムの判断力をもってすればすぐに判ることだったが、彼もまた姉の術中に嵌って  
深い霧のなかに彷徨っていた。  
「ほら、泣いたりなんかしてたら、姉さんに気づかれるよ」  
 デニムの右手がオリビアの口を塞いで、その指で唇をそっと擦っていた。  
「イヤ、イヤ。こんなところじゃ……」  それは、明確な拒絶でなく。  
 
「月明りがふたりを狂わしているんだ。羞ずかしがることなんかないよ」  
 デニムのやさしい声がオリビアに響いた。オリビアは唇を薄くひらくと、デニムの人差し指と  
中指が揃えられ擬似ペニスとなって口腔へと押し入ってくる。オリビアのなかには、彼のペニスを  
しゃぶっているイメージがゆるやかに拡がっていた。いまだ羞ずかしくて、慣れることがないと  
思っていたその恥戯。それなのに、いまは躰中が熱く、デニムのペニスよりも遥かに頼りない二本の  
指をペニスのように自分はぴちゃぴちゃとしゃぶっては舌を絡め、その指で舌を挟まれて昂ぶって  
いる。いままで、抑圧されていたセックスへの観念がデニムによって解放されたのだと、オリビアは  
女の悦びに浸って喘いでいた。  
 指が唇から去って、頬を掴まれてオリビアは後ろを振り向いて、彼の唇を受け入れ目が  
とろんとする。部屋では、お義姉さまがいるというのに、この淫れ方は尋常じゃないのは判っていた。  
それなのに歯止めが効かない。ドレス、肌着、コルセットと女の拘束を全て脱ぎ捨てて、月下のテラスで  
転げ廻るようにしてデニムの躰を求めたい。浅ましい女と思われてもいい、もう我慢できなかった。  
オリビアは心の叫びを確信して、自分のなかの女に顫え慄いていた。  
 羞恥に限って言えば後ろからペニスを挿入されることに関して、オリビアはさほど羞恥を感じては  
いなかった。デニムに一方的に痴態を眺められて、場合によっては肉の結合でさえも思うままに  
見られる。それをデニムに言葉にされて燃えたことさえある。しかし、犯されているとかいうオリビア  
のなかの被虐心を満足させるものではなく、あくまでも信頼に裏づけされた行為としての前提が  
あってのことに過ぎない。すべてをデニムに委ねている自分に陶酔していたのだ。だからこそ、  
背中を取られることに烈しい快美感をオリビアは覚える。ドレス越しにデニムの滾る股間が臀部に  
擦り付けられて、オリビアは尻を突き出す。英雄デニムに身も心捧げ、四姉妹で遊んでいた頃の  
デニムに安らいでやさしく抱かれることで蕩けていくことを熟知していた。催淫剤はきっかけだった。  
 
「オリビアが欲しい」  
「わたしも、デニム」  
 熱い血が躰中を駆け巡り、ふたりの切羽詰った言葉が交わされる。  
「あっ、ああ……デニム!」  
 スカートが捲くられて、双臀を覆う腰布越しにオリビアを愛撫する。腰に巻かれた布はデニムに  
よって簡単にほどかれて落とされた。月明りに蒼白く浮ぶオリビアの尻は蠱惑的で頬摺りしたい  
くらいに魅力的だ。  
「デニム、あらかじめ言っておくけどさ、これを描いちゃうとね、四ヶ月は消えないんだからね」  
 デネブに教えてもらった呪術に使うマーキングを戯れで、オリビアの尻に描き込んで交わった  
ことがある。フェンリルの紋章を双臀にだけでは満足できずに、背中に描いてからというもの、  
何度となく後ろから交わってオリビアを揺さぶって夜な夜な歔かしたことか。ゼノビアを旅している  
時の事。ようやく、オリビアの素肌から紋章とその御身の姿が消えかかろうとしていた。  
「頼むから、もう一度だけ描かせてくれないか」  
「もう、イヤよ……」  
「どうして?とても綺麗だよ。ね、いいだろ」  
「だって、守護精霊を犯されているみたいで……。それに……」  
「それに?」  
「あまりにも、あなたが烈しいから……」  
「烈しいとダメなの?」  
「埒がないもの。疲れちゃうから」  
 オリビアはそう言うと、目元を赧く染めていた。  
 
「じゃあ、今度は右胸のところに小さく描くからさ」  
「もう、子供みたいなのね。勇者さまは」  
 デニムがドレス越しに弄る乳房のところには、サラマンダーの紋章と御身の姿が描かれていて、  
ヴァレリアに帰還した後も、いまだ消えてはいなかった。その胸がいま、焼けるように熱い。デニムの  
逞しくなったペニスをはしたなく濡れそぼるヴァギナに埋めて欲しく、白い乳房にサラマンダーが疼く。  
首を捻じって口吻を受けていた唇がゆっくりと離れ、名残惜しそうに唾液が糸を引いて煌く。  
「ああ……。わたしって、罰あたりな女だったのね。羞ずかしい……」  
「そんなことはないよ。きみはいつだって可愛い。もちろん、いまだってね」  
「お義姉さまが見たらなんと言うかしら……はあっ、あッ!」  
「僕は男で、きみは女。神様はそれで赦してくれるよ」  
 オリビアの待ち望んでいた、滾るペニスが膣内に還って来た。彼女はやさしくデニムを包み込んでいった。  
「あっ、はあ、はあ」  
 デニムの手によってオリビアの細い肩が肌蹴て熱い吐息が洩れる。立ったままでの交合に  
一撃ごとに衝撃が総身を貫く。しかも、義姉が部屋で待っているのだ。デニムの肩に添えられていた  
両手は躰を滑って、また尻を抱え込む。オリビアの両手は手摺をしっかりと掴んで、彼の突き上げを  
凌ぐので手いっぱいになっていった。  
「んあぁあッ!」  
 尻をデニムに突き出す格好をとって秘孔を怒張で衝きあげられるたび、うな垂れた頭が揺れて  
髪が手摺を妖しく掃いていた。オリビアは次第に快美が全身を支配して、腕も脚も顫えて床に  
崩れ落ちそうなくらいにまでになっていた。  
 
 カチュアはテラスで崩れてオリビアを後ろから貫いている弟をじっと見ていた。正確には  
貫かれながら手摺に絡まるオリビアの白い手をぼうっと見ていたことになる。月下の獣たちは  
吼えるとぐったりとなって躰を横たえた。  
 オリビアが眠りに落ちているのを確認すると、カチュアは荒い息を付きながら仰向けになっている  
デニムににじり寄って呟いた。いまならできる、わたしにも。弟の左肩から顔の両端に手を付いて、  
いまは肉親の情を越えた愛しいだけの男の貌を見下ろす。  
 そこに認めたのは最愛の女を愛して恍惚としている弟だった。なにか、躰の一部をオリビアに  
無理やりもぎ取られ持っていかれたような疼きが湧き起こっていた。  
 オリビアが戴冠式の日にデニムを追うようにヴァレリアを去った頃から湧き起こった感情、  
嫉妬よりもそれは後悔の念に近いもの。だから、今度は自分から弟の躰が欲しいと正直に口にした。  
「デニム、あなたがほしい」  
 デニムが瞼をあけてカチュアを見つめた。  
「ちがうだろ、姉さん」  
 デニムの顔にカチュアの淫らな汗を吸ったプラチナブロンドが妖しくゆらめいた。カチュアもまた、  
弟をみつめ汗を噴かせている額に手を添えて髪を梳いてやってから、紅潮している頬をやさしく  
撫で回す。  
「言ってみてよ、姉さん」  
「いじわるなのね。デニムのペニスがずっとほしかった。ずっとよ。逞しいあなたのペニスが……  
咽喉から手が出るほどに……」  
「よく言えたね、姉さん。誉めてあげるよ」  
 デニムの手がやさしく頬にふれる。しばらくの沈黙の後、デニムの顔にカチュアの雫が  
ぽたぽたと降り注いでいた。  
 
カチュアは自分の意志に従って戦乱を駆けた。なによりも個を重んじた生き方を選択したかった  
だけだ。それは、非難されるべきものではないはず。誰しもが願うあたりまえのことだから。  
かといって、カチュアは貪婪にデニムを求めたわけではない。ただ、ふたりで平穏な日々を  
静かに暮らしていけたらと願っていただけなのだ。ささやかなしあわせ、それさえあればよかった。  
  だがベルサリア・オヴェリスの名と引き換えに、カチュアはデニムを失う。絆は消えようがない、  
そのような愛が存在することも戦乱を駆け抜けて、この目で見聞きもして体験して来たのだが、弟を  
失った後の空虚さはどうしても埋めようがなかった。公務に没頭していても、ひとりの夜は必ず傍に  
偲びくる。デニムが欲しかった。心も、そして躰も。懐かしくやわらかい匂いをこの躰に深く滲み  
込ませたいと四賢者の神にひとりカチュアは祈り願う。それは己との対話だったのかもしれない。  
 
 テラスで月明かりに照らされたふたりを見たとき、胸がちりちりとするのを覚えるカチュアだった。  
オリビアは両手で手摺を掴んで後ろに女の貌を捻じってデニムに向けて、美のひとつの艶やかな  
長い髪を掻き分けられて、魅力的な広い額にやさしく唇を這わされているのをカチュアの胸を鋭く  
射た。とっさに背を向けて隠れ、覗いていた姿を見られているわけでもないのに、開いたドレスの  
白い乳房が喘いで揺れて鎮めようがなくなってゆく。  
「うぅうっ、ああ……。来て、デニム!」  
「もう射精そうだ、オリビア!」  
「はあ、あうっ、うっ……。うあぁあああっ!」  
 
 カチュアはまた陰からふたりを覗いていた。弟はオリビアの流した涙を唇に受けている。デニムと  
オリビアの仲睦まじいセックスを見せ付けられている心持に耐え切れず、しゃがみこむ。やがて  
あがったオリビアの嬌声にカチュアは耳を塞いで淋しさに顫えていた。絶息するかのようなオリビアの  
はばかりのない喚きがそれでも流れ込んできていた。オリビアの荒い息が聞えなくなったのを見計らい  
テラスを見ると、崩れたオリビアに覆いかぶさってまだ蠢いている弟の白い引き締まった臀部が  
見えた。でもほんとうに見ていたのは何故だか、崩れてもなお必死になって手摺にしがみ付いて  
デニムの衝きあげに堪えるオリビアの白く細長い綺麗な手だった。  
 
「わたしには、オリビアのような、あなたに付けられた傷はなにもない……。そう、あるのは後悔という  
心の痛みだけなのかも」  
「だから、泣く?だから、哀しい?カチュア姉さんはひとりじゃないよ」  
 カチュアは顔を静かに横に振ると、月明かりに煌くプラチナブロンドの髪がデニムをやさしく撫でた。  
胸の大きく開いたドレス、豊満な双丘の上には、紅光の首飾りがある。周囲に散りばめられた眩いまでの  
宝石、そして中央に鎮座して妖しいまでの赫い光りを放つ女神イシュタルの眼。  
「デニム、これを見て」  
 カチュアは両の手でドレスを肌から滑らせて、肌着も脱ぎ捨てると月下に裸身を晒してゆく。そして  
カチュアの手は再び胸元に当てられ、親指と人差し指に挟まれるようにして、カチュアの白い柔肌に  
イシュタルの愛憎の赫の輝きがそこにあった。血のように深い色が月明かりに照らされた青白い  
カチュアの素肌に鮮烈に浮んでいた。  
 
「あなたと対になる神の印」  
「カチュア姉さん……」  
「あなたは神の怒りを背負いし英雄。わたしは愛憎に染まりし、ただの愚かな女」  
 デニムは蒼いイシュタルを愛するオリビアに贈り、今はその胸に輝く。遠い思い出のようで哀みを  
カチュアに招き入れる。カチュアはイシュタルを示していた手で髪を掻きあげ右肩へと流してうなじを  
晒すと、両手を後ろに廻して留め金を外すと、イシュタルをそっとテラスの床に下ろした。テラスに  
下ろされてもイシュタルは月明かりに赫々と燃えていた。  
「その一日の終わりに統率、豊穣、そして繁栄の務めは降ろせても、わたしはイシュタルの愛憎を  
一生背負っていかねばならない定めなのかしら?ねえ、答えてデニム!」  
 デニムの手がカチュアの頬をやさしく撫でる。オリビアに翼をもがれたように傷が疼くのと、甘えたい  
のだけれど、そのことは口が裂けても言える筈もない。だから、嘘を付いてまでしても宴に誘って、  
ふたりの間に割って入ろうとした。そしてヴァレリアのことを忘れて、快楽にこの身を委ねて  
狂ってみたかった。  
「もういちど言うわね。わたしが欲しかったのはあなただけなの」  
 デニムにとってカチュアの告白は甘い誘いになっていた。催淫剤の助けで背中を押されて堪えて  
いた衝動が躰の奥底から込み上げてくる。カチュアは弟の唇に口吻をして膨らみかけたオリビアの  
愛液で濡れたペニスを手の平で弄ぶように下腹に転がす。オリビアのぬめりの感触がカチュアの  
手に絡み付いた。  
 カチュアはしらふでいて、催淫剤は口にしていなかった。ヴァレリアのことを忘れて淫らになって  
溺れても薬で自分を失ってまでは英雄に抱かれたくはなかった。たとえ、ふたりのなかに割って  
入っただけのかりそめの夜であっても。カチュアの唇はデニムの首筋を這い、ゆっくりと離れると  
ペニスの愛撫をやめてベストとシャツのボタンを外しに掛かる。カチュアは焦って指がもつれて  
うまい具合にいかない。デニムもカチュアを手伝ってふたりの指がふれてもつれあい、顔を  
見つめては可笑しさに笑いあう。  
 
 デニムは躰を浮かせてシャツも肩後ろに脱いで、裸になった。カチュアはデニムの腰に跨ると、  
性器を触れさせ上体を倒してデニムの胸を唇で滑らせる。上唇がめくれて滑り、そして下唇もめくれて  
動き回っていた。デニムの胸にカチュアの熱い吐息が掛かり熱くなったペニスが鞘に納まりたいと  
いって跳ねていた。  
「女の子みたいな声をあげるのね。オリビアのときもそうなのかしら?」  
「いまは聞かないで」  
「聞きたい。どうしたら嬉しいのか、もっともっと知りたい、デニム!」  
「ああ……っ!」  
 カチュアはデニムの小さな乳首の上を薄く噛んで血を滲ませる。その傷にカチュアは顎を擦り付けて  
赫い血を付けていた。  
「デニムがわたしの躰に傷を付けないのなら、このベルサリアが付けてあげる!」  
 白く細い顎にデニムの血が付着していた。デニムに向けていた顔をふたたび躰に戻して、舌を差し  
出すと英雄の血と切れた傷を舐めまわす。口腔に拡がったデニムの血がわたしの催淫剤だ、カチュアは  
そう思い込み、事実カチュアを興奮させていた。デニムの屹立があたっているカチュアの華は淫らに雫を  
滴らせ、開き始めて。カチュアの白い裸身が蠢くたびに、あたっているしこった乳首の感覚がデニムの  
ペニスを硬くしていた。カチュアの唇はデニムの乳首を強く吸いたてて、握り締めていた両肩に爪を  
深く食い込ませてゆく。  
「うっ!」  
 デニムの躰が痛みとも快美ともつかない感覚に少し跳ね上がっていた。唇を離して、カチュアは  
頬摺りをする。  
「デニム、わたしのデニム!誰にも渡したくはない!」  
 肩に立てられていた爪はそのまま引っ掻いて胸へと移り、カチュアはゆっくりと上体を起こして  
膝立ちになっていた。デニムの躰を刷くカチュアの金髪はゴーゴンのように妖しく、邪眼はペニスを  
捉えて貌は俯いている。立てられていた爪はゆっくりとデニムの下腹へと向った。夜の冷気にカチュア  
の熱い吐息が白く見えていた。  
 
デニムの手が膝立ちになったカチュアの太腿をやさしく撫で廻していた。カチュアはデニムの肉茎  
に細長い指を絡め華の秘孔へとあてがうと、カチュアの顫えは彼へと伝わる。待ちに待った感触が  
総身を貫いて、デニムの下腹にイシュタルの涙を迸らせる。  
「あうっ、はあっ、あっ、あっ……」  
 普段なら自分から率先して出来る体位ではなく、オリビアの存在がそう駆り立てていた。ゆっくりと  
腰を下ろして刺し貫かれるカチュア。デニムのものに膣内が支配される悦びに鼓動は速まり、カチュアの  
美貌に粒状の汗がどっと噴出していた。  
「はっ、はっ、はあっ、んっ、あっ、ああ……!」  
 デニムとの結合した肉の繋がりを陶酔して見ていたのは始めのうちだけだった。快美を噛みしめる  
カチュアはイシュタルの瞳を瞑って、全神経を研ぎ澄ます。苦痛のように歪む顔が朱に染まってゆく。  
「姉さん……」 「カ、カチュアっていって!」 「カ・チ・ュ・ア……」 「嬉しい、デニム!ああ……、わたしのデニム!」 「カチュア、僕に顔を見せて!」  
 カチュアはデニムに言われてハッとして顔を横に振って、金髪が乱れる。  
「ね、僕に見せてよ!」  
 カチュアはデニムの胸に両手を付いて上体を傾けると、弟の顔を羞恥に染まった貌で覗き込む。  
「これで、いいの?ねえ、デニム」  
「綺麗だよ、カチュア。僕が見たかった姉さんの貌だよ!」  
「ひいぃいッ!」  
 か細いカチュアの声があがった。デニムが軽く腰を揺さぶる。カチュアの腰もそれに合わせて  
動き始める。ゆっくりとゆっくりと。  
「うれしい!ああ……デニム!きもちいいッ!」  
 カチュアがそう言い放ち、弓上に躰が仰け反った時だった。背後に人の気配を感じていた。  
テラスに人といえばオリビアしかいない。  
「イヤ!イヤ!イヤァアアアッ!」  
 
カチュアはオリビアの気配に混乱して貌を小娘のように闇雲に振る。しかしデニムを求める躰  
の動きは止めようが無かった。デニムを支配したいというせつない想いがカチュアを支配した。  
オリビアよりも自分が弟を支配するのにふさわしいとペニスにしがみつかせていた。オリビアの  
気配がだんだんと背後に近づいてきた。騎乗位で積極的にデニムを求める気持ちと、目覚めた  
オリビアが迫る恐怖とが性愛に拍車をかける。もしここで、咽喉笛を掻き切られても……  
エクスタシィーに達することは出来るかもしれないという考えがぼんやりと浮んでいた。デニム、  
デニムとカチュアは祈るように弟の名前を連呼して彼に付いた両の手の爪を柔らかい下腹に  
裂かんばりに喰い込ませていた。胸板から引かれた爪あとはミミズ腫れになって浮き上がり  
下腹に喰い込んだ痕からは微かに血が噴き出ていた。  
 「ああ……」という弟の生娘があげるような呻き声がこぼれ、ペニスは膣内で逞しさを極限に  
まで見せ付ける。闇のランスロットに羽交い絞めにあい、泣き喚きむちゃくちゃに振り続ける  
頭をも押さえつけられて裂かれた時にあげた声と同じだった。その報いがやってきたのだと  
諦めて全神経をヴァギナとペニスの繋がりへとカチュアは向ける。快美と恐怖が振り子のように  
揺れていた。ゆっくりと絶頂の時を刻むカウントダウンの鼓動が速まっていく。  
 「ねえ、デニム!痛いと言って!我慢していないで痛いと言って!」カチュアは狂ったように  
泣き叫んでいた。「オリビアにしかない傷をわたしにもつけて!付けてくれないのなら自分が  
デニムにつけるわよ!」  
終戦とともに忘れかけていた焦燥感が平和の中に身を置くたびに募っていた。地方での  
小競り合いはなくはなかったが平和そのものだった。そして、カチュアはヴァレリアの民から  
慕われていた。それはカチュアが望んだ永劫の保証。愛されているという実感だったはず。  
 だが、終戦とともにデニムは英雄の衣を脱いで個に戻ってヴァレリアを去った。オリビアとともに。  
デニムのカチュアに向けられた愛が、たとえ弟がヴァレリアを去っても色褪せることなき普遍の  
ものであることを、王位について個を捨てたことで今は信じることが出来る。皮肉めいた巡り合わせ  
を感ぜずにはいられないカチュアだった。  
 
だからこそ英雄の帰還を待って、その僅かの日数だけでも戦時下のカチュアに戻って弟を  
愛そうと決めていた。月明かりの下の蒼白いカチュアの躰は、デニムの上で踊っていて、  
背中を取ったオリビアは何かを掴んで、彼女の仰け反った白く細い首に廻した。それは  
カチュアが外した紅光の首飾りのイシュタルだった。  
火照る汗ばんだ裸身にイシュタルの愛憎とは裏腹のヒヤッとした感触がカチュアには衝撃と  
なって総身を駆け巡った。煉獄の焔に焼かれる感触にも等しかったのだ。うああッ!と大声  
で叫び更に躰を仰け反らせて、デニムのペニスを喰いちぎらんばかりに締め付けていた。  
オリビアはイシュタルの飾りをいとも簡単にカチュアの透き通るような素肌に鎮座させた。  
 デニムも、「あううっ」と呻くとカチュアの躰を射抜くかのような白い体液がカマンダスガンの  
弾丸の如くに迸っていた。そして仰け反った反動の揺り戻しで、カチュアの陶酔した柔らかい  
貌が倒れ掛かってきた。しかしカチュアは荒い息をつきながらもデニムの胸板に両手をついて  
淫らに乱れた長い髪をデニムにかけて刷いていた。その長い金糸はカチュアの薄っすらと汗を  
浮かべた頬にへばりついて、唇にも絡みついている。デニムのなかには至高の時が訪れて  
いて大量の白濁がカチュアの膣内に注ぎ込まれ、快美に腰がここぞとばかりに跳ねていた。  
 弟の反応はカチュアが望んだもの、姉の淫らな姿はデニムが封印していたものだった。  
与え合い奪い合って姉弟は情交を成就させた。デニムが瞼を開くと、カチュアの美乳の上には  
イシュタルの煌きがあった。「デニム、あんなに出したのにまた大きくなってる。これがそんなに  
いいの?」少しだけ哀しい容貌でデニムの顔をカチュアは覗き込んだ。「綺麗だから」とデニムは  
答える。カチュアの膣内のデニムは硬さを増していく。その反応に悦びながらも、これは  
「イシュタルの愛憎の想いなのよ」とデニムに向ってまたベルサリア・オベリスは女の涙をこぼした。  
 
これはカチュアの胸の奥に秘めたことであったが、解放軍から離反してロスロ−リアンに  
身を寄せて心も躰もランスロット・タルタロスに開いたことも。野心をぎらつかせる独眼に  
蕩けさせられ惹かれていったことを涙を流しながら自虐的に嗤う。個を重んじて感情に生き  
弟のやさしさを求めていた。だが、それを戦火のなかで恋とは認めたくなかったカチュアだった。  
 自分の愛で弟を縛りたくなかったというのも、また事実だった。たとえ剣を交えてデニムに  
殺されていたとしても後悔はしていなかっただろう。自分の愛で弟を闇の奥深くに閉じ込めて  
しまうような気がしたのだった。ランスロット・タルタロスには何の未練も無いが、デニムは  
カチュアの肉体の一部だったと言ってもいいのかもしれない。  
「愛しているわ、デニム。姉としてではなく、女としてよ」オリビアより先に切られてしまった  
女のカードを男に愛された女の貌で見下ろす。ともすれば空虚になりかねない愛という言葉の  
カードを催淫剤で導いた偽りの夜にカチュアは切った。  
 「義姉さまはやっと告白なさったのね」と後ろからカチュアのいまだ喘いで揺れている乳房を  
やさしく包み込むようにして指の間で張り詰めた乳首を苛める。そしてカチュアの背中から  
うなじへとオリビアの舌が生き物のように這っていった。「ああ……オリビア、あなたはデニム  
に何枚のカードを切ったのかしら……」「さあ、どうでしょう。でも、義姉さま。カードは何枚も  
あるように魅せなくてはね。そうでしょう?」  
 その言葉にカチュアはデニムとオリビアの間に割って入ろうとしたことへの淋しさみたいなものを  
感じて別れのカードを無意識の内に探していた。その方が綺麗になれるかも……カチュアは  
そう考える。「義姉さま、愉しみましょう」オリビアがそう言葉を掛けてカチュアの髪を掻き分け  
頬を摺り寄せてきて唇をねだるも、羞ずかしくて抵抗するように顔を少しだけずらそうとする。  
デニムのペニスも完全に力を取り戻し、カチュアの腰に両手を添えてやさしく愛撫していて、躰の  
上でのカチュアとオリビアの熱い白い吐息が交じり合って溶け合う様を愉しそうに眺めていた。  
 

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