「神父さま……。わたしにも……させて……ください……。お嫌でしょうけれど」
クレアは熱い吐息を洩らしながら、切れ切れに言葉を紡いでドナルドに
願い出る。欲望をあからさまに口にしたことで羞じらう仕草が、ドナルドには
閃光にも思えて眩暈すらも覚える。
「クレアの穢れなき唇で、わたしのモノを慰めてくれるのだね」
「わ、わたしのくちびるなど……」
不浄なものですと言おうとしたのをドナルドが遮った。
「そう、思わなくともよいだろうに、クレア」
「あぁああっ!あっ、うぅううっ、うっ、し、神父さまあぁああッ!」
クレアの躰がまた、ドナルドの上でせつなく捩れた。クレアは気を
遣ってしまったのだった。クレアの黒いロングブーツを履いた羞恥に
摺り合わさっていた両脚は、ドナルドの膝から落ちてあられもなく
投げ出されていた。そして、その白く蒼い少女の裸身は黒い法衣の
上で仰向けになってかるい休息を得る。
若さゆえか、暫らくして少女は薄暗い個室で生気をみなぎらせ、
自分の意志でもって神父の性器をしゃぶっていた。狭く性臭の立ち込める
密室には少女のくぐもった喚きと神父の吐く荒い息遣いと唾液が立てる
淫らな音が支配している。
ドナルドは椅子に座って法衣を割り開いてズボンを下ろされ、クレア
は両太腿のあわいから生える恥毛からそそり立つ肉棒を口腔に押し込み、
不慣れな手つきで男の袋とふたつの玉を愛撫する。背中を丸めて躰と貌を
懸命に少女は揺り動かしていた。
掛かる長い髪をどうすることもせずに行為だけに没頭し、たどたどしく
ペニスに舌を絡めて苦悶を鼻孔から洩らす。その姿はドナルドにとっては
少女が生きてゆく為に、息をしているようにも見えていた不思議な感慨の
眺めだった。
少女が男根に傅いてすがりついているその様、幻の泉の水を飲む裸の
ファリー、そして可憐なクレアは全身に淫猥なエロスをも纏いさえする。
ドナルドの手が少女の髪にふれ、貌と赧く染まった耳をあらわにして、
クレアの膨らんだ鼻孔からはくぐもった悲鳴が噴き上がる。貌を横に振って、
咥えた肉茎に歯で擦っていた。
「んうっ!」
ドナルドは呻いてペニスを痙攣させる。
「んはあ、はあっ、はあ……。も、もうしわけありません。ゆるしてください。ゆるして……」
閉じられていた瞼がゆっくりと開いて、長い睫毛が風にそよぐように
顫え、クレアの透き通った瞳に怯えが走っていた。ドナルドは真直ぐに
挑んでくるクレアの穢れなき美貌に射精感を抑えるのに必死になった。
このままでは本当にクレアの美貌を自分の欲望……白濁によって穢し
かねない。クレアの唾液でまぶされた肉棒は、白魚の指に介抱され続け、
下腹に貌を擦り付けて、熱い吐息を噴きこぼしながら赦しを請うている。
「クレア、とても綺麗じゃないか。羞ずかしがることなんかない……よ。
わたしはきみの貌が見たい。それは罪なことなのかい?」
「神父さま……」
ドナルドの言葉に眉間に寄っていた縦皺がやわらいでゆく。クレアは
勇気を奮って閉じた瞼をもういちどひらいて、情欲に濡れた瞳で神父を
見るのだった。聖女の崩壊をドナルドはまざまざとそこに見た。しかし、
たとえ聖女や天使ではなくなったとしても人間としてはとても美しいと感じていた。
ほつれ毛が噴出した汗によっていくつもの房となり、クレアの怜悧な貌に
絡み付いてくる眺めは女の情念を想起させるのに十分だった。神父は
いたわって額を撫でるようにして髪を分けてやり、クレアの火照る頬にふれる。
例え男を知っていようといまいとも、この穢れ無き少女の口腔に自分の
性器が咥えられていたと思うと烈しく腰が顫え、ペニスが跳ねあがって
射精感が増してくるのだった。クレアにしてみれば、これほど量感のある
ものを口に含んでねぶったことは初めてだった。口から吐き出して尚、
口腔にまだそれが収まっているような錯覚を喉奥が覚えている。そして、
その肉柱を本来あるべき場所に導くのだ。
クレアはドナルドのペニスに指をしっかりと絡め、肉茎に頬擦りをした。
クレアの紅潮した貌がもの欲しそうにドナルドを見詰める。ドナルドの手が
伸びてクレアの脇に手が潜って少女の躰を抱え上げる。
「クレア、ほんとうにいいんだね」
「もう、いわないで」
確かに、此処まで来て野暮というものだ。
「さあ、降りておいでクレア」
クレアの波打つ脾腹を掴みながら、クレアもそれに従ってペニスに手を
添えて秘孔にあてがってずぷっと咥え込んでいった。
「んあぁああっ……ああっ……あうぅッ!」
柔肉を押し拡げてクレアを犯していった。その酸鼻な眺めに、やはり
クレアは処女だと思うドナルドだった。躰をくねらせて、貌をぐらぐらと
金色の髪も淫らに揺すりながら男の逸物を埋め込む。
ドナルドは生唾をごくんと喉を鳴らしてクレアのたゆたう肢体に手を
這わせていった。やさしく愛撫するように、薄く肋骨を浮き上がらせる
脾腹を擦り上げて、薄い肉を引き上げると乳房を撫で回す。細い肩を
微かに揺らして嬌声をあげるクレア。
肩を掴んですうっと二の腕へと移動したかと思えば、白い太腿を撫でて
廻り込んで、尻肉を捉え己が下腹へとぐぐっと曳き付ける。
「あ、あっ」
必死に逞しくなった肉棒を咥え込んでいる肉の結びにドナルドは目を落とす。
現実と知っていても、告解室の薄暗く澱んだ空気のなかで、椅子に腰掛け
黒いロングブーツだけを身につけたクレアが脚を拡げて跨る眺めは幻視の如く、
蒼白の少女の細い裸身の蠱惑のとりこ。その蒼白の素肌は汗をうっすらと纏い、
仄かに赤みを帯びている。
しかし、クレアの頬と耳は既に紅い。肉を挿入させている紅い唇が収縮して
ドナルドを誘う。クレアは脚に力を入れてたどたどしく尻を振って見せた。
彼も少女の動きを助けるかのように、双臀の肉を割り開いて掴み動かす。
「ん、んっ、いっ、いやあ……。拡げないでぇ……」
「ここの肉はもうこんなにも拡がっているよ、クレア」
ドナルドは蠢くクレアのお尻から腰、脇腹へと手を滑らせて、クレアを
跨らせたままで椅子に浅く座った。
「んはあっ、な、なにをなさるんですか……、神父さま、神父……さま?」
「みてごらんなさい、こんなにも拡がってわたしのモノをおしゃぶりしているよ」
ドナルドは自らの律動を放棄して、暫らくはクレアにまかしてみようと思っていた。
アヌスを窄めて、射精感を無理やりにドナルドは捻じ伏せた。
「ほら、目をあけてみてごらん」
「ゆ、ゆるして……神父さま」
クレアは律動が自分にゆだねられたことを知って、眉間に薄く縦皺を
刻んだ。ツンと捲れ上がった少女らしい口元はだらしなくひらいて、
唾液を撒き散らしてクレアの喘ぐ乳房を濡らしていた。ドナルドは滴る
唾液を飲めないことを後悔して、躰を濡らした唾液をクレアに戻すみたく
摺り込むように愛撫を仕掛ける。
クレアは頸をがくっと折って左右に貌を揺すったかと思えば、喉をつっぱらせて
仰け反り、ぐらぐらと揺れる貌から金色の柔らかい髪を白い背中へと棚引かせる。
喘ぐ乳房を鷲掴みにされ「ううっ」とクレアが呻いたところで、やわやわと
揉みしだかれて下腹へと指圧がゆるりと滑ってゆく。そして尖った核をそっと指で
嬲られながら、くいっと腰をもたげられる。
「ひいっ!」
「今度はクレアがお尻を振ってごらん。教わっているんだろう。そういうこと。
ほら、お尻を窄めてくれないか、クレア」
「は、はい……神父さま……」
「ああ……。気持ちいいよ、クレア」 「……」
椅子に浅く腰を掛け、クレアは垂直にペニスを膣内に収めさせられている。
仰け反っていたクレアの貌が肉の繋がりへとふたたび落とされる。
「嘘なんかじゃない。クレアがわたしのオチンチンを締め付けてとても
気持ちいいよ」
「いやあ、おっしゃらないで……。はあ、はあ……はう」
「ほら、よく見なさい。これが、わたしとクレアのありのままの姿だよ」
クレアはドナルドに言われて、閉じた瞼をゆっくりとひらいて、ペニスに
押し拡げられているヴァギナを惚けた瞳で見るのだった。
「凄い……」
「そうだね。クレアの楚々としたものをわたしが蹂躙しているんだから」
クレアは烈しく貌を左右に振った。
「そんなこと、言わないで下さい。わたし、嬉しいのに。やっと、
神父さまとひとつになれたって歓んでいるのに……」
クレアは泣きそうな貌に変っていた。
「ひとつに……?」
「はい。神父さま」
ドナルドはクレアの躰を支えていた脇腹から細い肩を愛撫して、脚を掴んでクレアの躰に
折りたたんだ。
「な、なにをなさるのですか……?」
「ひとつになろう、クレア。手を壁に付いてこのまま後ろを向いてごらん」
クレアは言われた通りに壁に手を付きながら後ろを向いた。ただそれだけの動作なのに
告解室の澱んだ空気もあってか、どっと汗が噴出してくのがわかった。クレアの細い躰が
後ろ手に付いて備えるや、ドナルドは椅子から立ち上がって少女の躰を衝きあげた。
深い挿入と衝撃にクレアは少女らしからぬおんなの生々しい呻きを洩らしていた。
それが、さらに呼び水となってドナルドはクレアを責め立てる。腰をドナルドの大きな手で
捕捉されて突かれ続けた。クレアはそのあまりもの衝撃に告解室の壁に爪を立てて
掻き毟しるような仕草をする。
「ひっ、ひっ……ひいっ!」
「クレア、でるっ!」
少女を愛するという行為というより、オウガになって喰らっている贄の蠱惑に
呑まれてドナルドは思いの丈を解き放つ。
「あっ、ああ……。はあ、はっ、はあぁああ……!」
クレアはぐんっと衝きあげられて、ドナルドの欲望の証の迸りを受けると
付いていた両腕はがくっと折れてしまい躰は崩れ始める。ドナルドは崩れかけた
少女の肉体を抱きかかえて、ふたりして告解室の床下に堕ちていってクレアに
圧し掛かり、尻に腰を打ちつけ真直ぐに躰を伸ばそうとする少女へと覆い被さった。
「クレア、だいじょうぶかい……」
ドナルドはクレアの背から去ろうとしていたが、少女は神父を引きとめようとした。
「もうすこしだけ、このままでいてください……」
肩をやさしく撫でるドナルドに貌を捻ってクレアは願い出る。もうすこしだけ、
わたしに時間をくださいとクレアは言った。いっしょにいてくださいと荒い息遣いと
ともにドナルドの耳に届いた。やがて、ドナルドは離れて剥いだ衣服をクレアに
着せながら、辛抱強く待った。いつ何時、ひとが入ってくるかもしれないという
不安は常にドナルドの中にあった。もしここに押し入られて、告解室の乱れた
大人と少女の姿を押えられたなら、弁解はとうてい不可能だ。
ドナルドはクレアに誘惑されたなどと言う気はむろん無かった。ただ、
いっしょにいてくださいという最後にクレアの言った言葉が気懸かりなだけで、今の
自分にはそれしかできないということが辛くもあり、非力であることを思い知らされた。
戦渦に焼かれた教会と子供たちのことが、フラッシュバックする……。
クレアは着替えが終わると、ドナルドに向き直って改めて自分の想いを受け止めて
くれたことに礼を述べた。ドナルドはクレアの真直ぐな想いに載っただけなのだと言う。
私は堕落してしまったともクレアに告げた。少女と関係してしまってから言うべきことではない
事柄ではあったが、言わずにはおれなかった。その告白はクレアにとっては辛いものとなる。
自分と関係したことが嘘、果ては罪だということに成りかねないからだ。
「すまない、クレア。いまさら、いうべきことではないということは、わかっているが
……やはり、これはいけないことだ」
「どう、いけないということなのでしょうか……?」
クレアの哀しみの瞳は挑むような彩りへと変っている。
「わたしはクレアの欲望だけだった。ただ、セックスだけがあっただけやもしれぬ」
「いま、終わってしまえば、重荷になっただけですか?」
「わたしとシェリーとの関係においてということかい……」
ドナルドは少しだけムッとしていた。クレアの指摘したひとつひとつが真実だった
といっていいだろう。間違いなどではなかった。
「クレア、きみには好きなひとはいないのかい……?」
ドナルドは言ってしまってから、また後悔してしまう。
「わたしには、神父さまだけです……」
「いや、そうではなく、同い歳の恋人ということだよ……。わたしはなにを言っているんだ」
「神父さま」 「なんだい、クレア」
「先にここを出て行かれてください。神父さま、わたしは後から出て行きますから……」
ドナルドはクレアの放った言葉に抗って、自分の言葉を探そうとしても、手から
みんなこぼれ落ちてしまう。何も無いのだ。
「わかったよ。クレア……」
そういって、ドナルドはクレアから背を向けて出ようとしたとき……。
「神父さま。わたしの気持ちは変りません。ずっとあこがれていました。きっかけは
なんであれ、好きである気持ちには変わりないのです。それが、躰を重ねてはじまることが
あっても、わたしは罪悪などとは思ってはいません」
ドナルドは扉に掛けた手を降ろしていた。
「わたしには、シェリーに責任がある」「神父さま、セリエさまには……?」
「セリエだと……。まさか」
「神父さま。これはわたくしの意志です。最初にも言ったはずです。戦争で犠牲になったひとたちが、
どうすることもできないまま死んで逝くのをわたしはたくさん見てきました。誰かに縋りつきたかった。
慰めて欲しかった。けれども、わたしにはもう誰もいません。ひとりぼっちなのです……。もう……
ひとりぼっちなの!」
ここにもシェリーがいた。ドナルドは振り返って座っているクレアへと手を差し伸べる。
「慰めることは、やぶさかではないよ。きみがそれを望むのなら……それなら、いっしょにここを
出ようじゃないか。わたしといっしょに告解室を出て行こう、クレア」
薄暗い告解室でクレアの翳りの表情にパアッと光が射す。
「さあ、いっしょに出よう、クレア・ハルモラーア」
クレアはドナルドの差し出された手を取って立ち上がった。