金糸の刺繍の施した調度品のような椅子にカチュアはカモシカのように美しくも透き通るような  
白い美脚を猥らに拡げて、細い指で自らを慰めている。座に臀部を浅く滑らせると、右脚を肘掛に  
載せて左脚は伸ばしきってあけすけに濡れそぼった赫く膨れ上がった性器を見せびらかすように  
拡げて、桃色の唇は猥らにあけられて唾液を垂らしながら、その高貴な容貌を右斜めに肩を  
擦るようにして仰け反っていく。  
「姉さん!もうよしてくれ!お願いだから!」  
 デニムの声がカチュアの寝室に響いていた。彼は鋼の格子を掴んで顔を押し付けながら床に泣き  
崩れてしまう。その折の端の方では顫える細い肩を抱きしめて啜り泣く心やさしきオリビアがいる。  
カチュアの恥態から顔を背けるようにして躰を疼くませているのだが、ヴァレリア王女があげる喘ぎに  
なんとはなしにオリビアは目をチラッといってしまう。それは、デニムのペニスを思って淫れて悶える  
姿態に嫉妬の焔を焚き付けるからだった。  
 デニムとオリビアは夫婦としてこの地を踏んだ直後に拘束されて、オリビアはデニムの前で衣服を  
剥ぎ取られて男たちに羞ずかしめを受けたのだった。嬲られ続けて自分が生きているのか  
死んでいるのかさえも分からなくなっていた。そして、或る日に収監されていた地下牢から出され、  
城の侍女たちとともに湯浴みをさせられ、隅々までやさしく清められて、忘れかけていた女の悦びを  
取り戻していた。  
 自分よりも稚い侍女が湯舟に泳ぐ白蛇のように近づいて絡みつかれたときの妖しいときめきが  
後を引いていて、湯から素足を上げて大理石の床を踏もうとしたときにもまた、三人の侍女に絡まれた  
際にはもはや拒めないで歓喜の雫をこぼしていたのだった。そのまま大理石の床になだれ込んで  
オリビアと三人の侍女たちの裸身がくなくなと絡み合って、いつ果てることなく性宴は続けられた。  
しかし、涙を流す度にデニムの安否のことが心を切なくさせる。死んだと思っていた躰に生への  
執着がオリビアのなかに呼び戻されつつあった。  
 
 浴場を出ると、その控えの場所に通されて侍女たちが丹念に躰の雫を拭きとっていく。オリビアの  
真珠のような素肌に玉のようになっている雫を丹念に拭きとっている。侍女たちは、自分の役目の  
範疇を越えて綺麗なオリビアに傅いて無毛のスリットをひくつかせて濡らししている。  
「オリビアさま。ここへ横たわってくださいまし」  
 無言で黙々と仕事をこなしていた少女のひとりが彼女を促す。天使のような声の嬌声は耳にして  
蠱惑の世界に迷い込んでいたオリビアを現実に引き戻す。紛れもなく子供の声なのだ。  
「あ、ありがとう……」  
 オリビアは鼓動が速まって眩暈がしてきていた。湯舟に長く浸かって恥戯に弄られた所為なのか、  
性愛にのめり込もうとしている躊躇いからなのか。寝台に躰を横たえると幾分かは落ち着いて  
安らぐも、やはり裸なのだ。しかも飾り毛のない少女たちに弄られて、自分だけが恥丘に叢を  
備えている羞ずかしさといったらなかった。オリビアはたまらなくなって両の手で紅潮する貌を  
隠してしまう。  
「オリビアさま。お顔をお見せ下さいまし。おねがいいたします」  
声を掛けた者が退いて侍女のひとりが水差しを杯に注ぐと、それを口に運んで含み彼女の顔へと  
近づいて口吻をする。オリビアは肘を付いて躰をやや起こして紅潮した貌をあげ、少女の口腔の  
なかで転がされた生温かい甘露な水を、咽喉をこくんこくんと鳴らして呑み干すのだった。オリビアの唇  
から呑みきれなかった水が少しだけこぼれ滴っていた。  
「もっとください、おねがい」  
 咽喉が渇いていたのか、性に渇望してしまったのかがオリビアのなかでは、ない交ぜになっていた。  
咽喉の渇きが癒えた頃に、三人の侍女たちは躰にフレグランスを掛けてオリビアの躰に圧し掛かって  
きた。  
 
「いっ、いやあぁあ……。やめてちょうだい」  
「いけません。オリビアさまを綺麗にするのがわたくしどもの役目にございます」  
 圧し掛かった侍女がオリビアの腰に跨るようにして、細い脚を拡げると、別の侍女が彼女の叢を  
やさしく撫で擦るのだった。  
「いやぁああ。おねがいだから、んぁああっ……。あ、ああっ!」  
オリビアの肉体は再び悦楽に揺れる。躰が女体の美しいアーチを描いて侍女たちを愉しませていた。  
「んんっ、んぐっ……」  
 頭の上からも侍女が両手を掴んで水平に伸ばして、唇をかぶせて舌を絡ませてくる。オリビアの  
容貌は快楽に美しく歪んでゆく。乳房にもフレグランスの冷たい感触が妖しい火照りを生んでいる。  
オリビアは完全に肉体を支配されて少女たちの玩具になっている。やがて少女のひとりが性器を  
擦り合わせ始めていた。オリビアの広い額には玉のような汗が噴出している。絡み付いている  
彼女の黒髪を手で分けられて、その額に舌を這わされる。  
「んっ、んはっ、んあっ、たっ、たまらないっ!」  
 アクメに達して浅い眠りから目覚めた時には、紅を塗られていて懐紙を差し出されて唇にそっと  
挟んで馴染ませようとするのだが、もはや自分だけが肌を晒していることに気が付く。  
「なにか、着せていただけないのですか……」  
 侍女というより、少女に願いでることに羞恥に塗れ、声が消え入ってゆくオリビアだった。  
「さあ、わたしどもの後に続いてくださいまし」  
 寝台から脚を揃えて下ろしてオリビアは立ち上がった。一度は捨てた命と諦めたのだからと  
猫背からしゃんと胸をはって乳房を誇示し、うな垂れていた頭を真直ぐに見据えた。  
「お綺麗ですよ。オリビアさま」  
 後ろにいた侍女のひとりが耳元に囁く。先頭に立ったひとりが歩き出して、オリビアの素足も  
それに従い、殿をふたりの侍女が勤めて彼女をある部屋へと案内するのだった。  
 
 そこは、大きな広間を階層して造られたカチュアの寝室だった。オリビアを連れてきた侍女たちは  
恭しく礼をすると後じさった。床は毛の深い真紅の絨毯が敷いてあり、隅には蓋付きのベッドがある。  
そしてフロアの中央には檻があって全裸のデニムが格子にしがみ付いて入ってきたオリビアを  
見ていた。オリビアは赫の絨毯を駆けて檻のデニムの手を握り締めて隙間から口吻を交わす。  
嬉しさに涙が溢れて、止めようがなかった。それはデニムとて同じことではあったのだが……。  
 オリビアは唇を離した時、デニムの屹立が目に入って俯いてしまうと、彼もそれに気が付いて  
慌てて両手でペニスを隠してしまう。  
 その初々しい姿に笑い声が邪魔をする。オリビアは気づいた、檻の向こう側に椅子に鎮座し  
脚を組んでいる全裸のカチュアがいたことを。すべては、この女がしたことなのかとオリビアは血  
がすうっと後退していくような恐怖を覚えていた。カチュアは大切な弟を奪った私を憎んでいるのだと。  
 
「ねえ、義姉さま。今度はこのような感じでいかがですか?」  
 
 カチュアは口腔の奥深くにデニムの放たれたものを、顔を上にあげて白い咽喉を鳴らして嚥下  
していた。その後ろでカチュアの肩を抱いたオリビアが背中に舌をねっとりと這わしている。  
「姉さん……。その淋しさを今宵は僕たちとともに悦びに変えましょう」  
 ベッドの上で仁王立ちになっているデニムに跪くカチュアは、乳房の上で細い腕をクロスして  
鎖骨に両の手を当てると陶酔の貌で弟を仰いでいる。  
『姉さん、今は個人の感情なんかもう問題ではないんだ!大義を貫かねばならない!』  
『大義ってなによ。あなたは、変ってしまったわ。わたしたちは、この世でたったひとりの姉弟なのよ』  
『僕は変ってなんかいない。いや、変らなきゃならないんだ!もう、僕たちだけの問題なんかじゃ  
ないんだよ。分かってよ、姉さん』  
『ついていけない。あなたにはついていけないわ!』  
遠い過去が懐かしくも涙を誘う。カチュアの白磁の胸元には紅光の首飾りが煌いている。  
光りに身を寄せるも、暗黒に身を寄せるもカチュアにはさして変りなきこと。そしていまは、道徳と  
背徳の狭間にその御身をゆだねてたゆたうとする。瞳が開かれてフロアの中央にある檻を見つめる。  
 
今宵これからカチュアがオリビアに、オリビアがカチュアになって戯れるのだ。  
 
 

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