____これはある見向きもされないユニットと英雄の間での奇妙で淫靡な物語である。  
 
 
俺の名はヘンリー。職業は忍者だ。とはいっても一度も戦闘に参加した事はない。  
俺はレクサール(女リーダー)様が帝国に反旗を翻した時から軍にいる初期ユニットってやつだ。  
だが俺は部隊にも組みこまれずに未だにベンチをあたため続けている。  
このまま俺は見向きもされないんだろうか。いつか除名されてしまうのだろうか。  
そんな思いはあるが、忍者っぽい訓練は一応している。だが俺は忍者だから戦闘だけじゃなくて  
情報収集とか工作員だってできるかもしれない。まぁそんな事はないんだけどな。  
でも一応やっている。そんな感じ。その甲斐あってか、味方陣営に限っての隠密行動得意になってきた。  
味方陣営だけか…  
 
 
ヘンリーの隠密日記1日目  
 
最近レクサール様を含めた上層部の運営が上手くいっていない。  
理由はあのゼノビア正統皇子、トリスタン様が陣営に加わってからだ。  
どうも味方陣営内でこれからは、トリスタン様がリーダーになるべきでは?と言う言が広まっている。  
確かにトリスタン様は亡くなったとはいえ、正統な国の継承者で反乱軍、いや解放軍のリーダーにするには申し分ない。  
当然あの方の人格も王者としての風格を存分に備えている。話の筋は通っていると俺も思う。  
しかし自ら開放戦争を起こし、今までの指揮を執ってきたのはレクサール様だ。  
かつての首都を開放にまで導いてきたのもレクサール様の力のおかげだ。  
このまま彼女に指揮を任せるか、それとも新たなる指導者を立てるか。  
そんな意見、噂話が軍全体を巻き込んでいる。で、上位の方々は今そんな事態の収拾に困ってるって訳だ。  
一平卒の俺にはどうしようもないが、大変だよなぁ。ほんと。  
っと、そろそろ評議の時間だ。使われない忍者だが、一応情報はしっておかないとな。一応、な。  
 
ん、今日はレクサール様にランスロット様、ウォーレン様に…トリスタン様で評議か。  
やっぱりあの話題なのかなぁ。  
 
「…と言う様な言がやはり我が軍全体で広まっているようです」  
「そのようね…」  
「…」  
「些細な事ではあれど、早急に手を撃たねばこれからの軍事に支障をきたす問題ですな…」  
「…当然でしょう。そんな事は分かっているわ」  
うわぁ…なんか何時になく空気が重いな。皆険しい顔してるよ。こりゃ荒れそうだ。  
 
と、思っている内にレクサール様はいきなり怒鳴り出すわ、ランスロット様も思わず感情を表に  
出しちまうわで荒れてくる。ウォーレン様は必死になだめていて、トリスタン様は終始だんまり。  
トリスタン様の態度が気に食わないのかレクサール様は彼にも怒鳴り散らし始める。  
なんなんだ、とばかりにランスロット様が…  
 
そんな感じで評議になっていない評議は時間だけを食い潰し終了した。  
レクサール様、相当疲れた顔していたなぁ…  
 
 
ヘンリーの隠密日記2日目  
 
レクサール様はやっぱり疲れている。今回の問題は相当難しいらしい。  
もう何日この拠点で足踏み状態になるのやら。  
でも、ああいった方々には俺なんかにゃ分からない悩みがあるんだろうなぁ。  
今日も評議の後に疲れた表情の彼女の様子が伺えた。  
よし、俺は見向きもされない雑魚ユニットだけど、ここは1つあの方を励ましに行こう。  
俺に何が出来るかわからんが、少なくとも俺はあの方について行くつもりだ。  
それだけでも伝えてみるのも良いかもしれない。よーし、行ってみるか!  
あの方の部屋は…あそこだ。ん?なんか張り紙があるな。「立チ入リヲ禁ズル」だって?  
んー、やっぱり疲れていて休みたいのか。ストレスもかなり貯まってそうだ。でも心配だしなぁ。  
じゃあ今日はとりあえず天井裏からこっそり様子を見るだけにしてみるか。へへ、隠密訓練、無駄にならないで済みそうだ。  
 
こうやって、音を立てずに、穴を開けて、と。コツが居るんだよな。案外。よいしょっと。  
さーて、あの方は大丈夫だろうかな…と。  
 
「ん…んん…」  
!?  
「ん、ん、ああっ!はぁっ!」  
 
えっと、レクサール様、全裸になって股間を懸命にいじっている。で、なんか喘いでいるよ…  
 
「んはぁっ!いいっ!気持ちいいっ!」  
「ああ!もっと…!ああ!」  
 
ゴクリ、と唾を飲む音がハッキリと聞こえる…  
 
「い、いっちゃう!いっちゃそう!」  
「ん!!いくぅ!」  
 
絶頂に達したレクサール様はそのままグッタリとして動かなくなった…  
 
 
 
 
俺、どうしよう…  
 
 
ヘンリーの隠密日記5日目  
 
あの日からもう3日か。俺はあの日から毎夜レクサール様の部屋を覗き見している。  
あれからもあの方は毎晩のように激しい自慰行為にふけっている。ついでにそれを見ながら俺も。  
それはともかく。  
昨日なんかは男のアレを模した物を使ってたな。どこで仕入れたんだろ。  
ん、そろそろあの方が戻ってくる時間だな。今日も拝ませてもらうとするか。  
なんだ?あのオ−ブみたいな物は?  
 
オーブのような物を置き、あの方はいつものように素っ裸になる。  
お、今日もナニを模したアレを使うのか。  
彼女がオーブに触れると、それは光り何やら声がしてきた。  
 
「貴方は我らが統率者なのですよ。もっと思慮を深くして頂かなければ」  
ん?ランスロット様の声だな。あれは声を封じこめて保存する力がある物なのか。  
「うるさいわね!私だって人間なのよ!出来る事と出来ない事だってあるわ!」  
うおお、びっくりした。オーブから発せられる声に応じてレクサール様は応える。  
って、今日のストレス解消法は言いたい事ぶちまけるだけかよ。  
それから裸になるのもストレス解消の1つなのだろうか。意外に暗いお方だ…  
 
と、聞いている内にある事に気がつく。  
オーブから発せられるランスロット様の台詞は誰かを挑発したりなじってるものばかりだ。  
 
「我が剣の味、貴様の身を持って知らせてくれよう!」  
お、ランスロット様の決め台詞じゃん。  
「な、何をする気なの!?」  
「でりやゃあ!」  
ズブズブ  
「あ…!」  
 
ああ、成る程。声を編集して自分が強姦されるのを再現しているわけか…  
それで自慰行為、と。  
すっげー地味というか、根暗というか、マニアック…  
 
そして俺は終わった後の台詞が忘れられない。  
「次は誰にしようかなぁ…」  
こうして今日の夜も更けてゆく…  
 
 
ヘンリー隠密日記8日目  
 
俺は少し迷っていた。  
段々と魔が差してきたようなのだ。コレをネタにしてあの方に近づけないものかと。  
あわよくばあの方にあんな事やそんな事をしてやりたい。  
どうせ毎晩1人でヤッテルことなんだし、問題ないんじゃないのか?  
でもあの方は俺達の統率者だしそれもどうか?  
ネタにした所で口封じされてもたまらんしなぁ。俺Lv1だし。  
でも毎晩あんなものを見せつけられると、こっちもおさまりが効かないしなぁ。  
俺、すっげー度胸ないね。  
よし!ここで選択肢だ!  
 
@やっぱりネタにして接近。あわよくばあんな事やそんな事も。  
A観察するのもそれはそれで良いオカズになるので放置。  
 
悩むよなぁ…俺の度胸のなさを何とかして下さい。神様。  
俺の日記を読んでいる人、選んで下さい。俺、それに従います。なんつって。  
隠密日記なんだから誰か見てるわけねーだろ。  
 
そんなこんなで今日も1日が過ぎて行く。  
 
 
ヘンリー隠密日記12日目  
 
やばい、やばい。何がやばいって、とうとう除名の危機なんだよ。  
開放戦線も大分にこっちが押してくるようになってきた。  
そのによって加わる新ユニットがマジやばい。ドラグーン?天界の3騎士の1人、フェンリル様だってよ。  
新ユニットちゅーか神ユニットじゃん。俺元々だけど用済み。  
次に死神部隊の発案。この提案はレクサール様なんだけどさ。この発案によってやっぱり  
統率者はレクサール様で行こうって決まった。  
皆アライメントとカリスマさげたくねーのでやんの。汚ねーことするのは名無し俺達ってわけかよ。  
全く、これだからお偉い人は嫌いだぜ。で、この死神部隊計画も着々と進行中。  
俺はLv1なんでこの計画からは外されている。やっぱり既に用済み。  
最後にレクサール様が最近凝り始めた中立ユニット集め。  
ワーウルフやらワータイガー、メイルシュトロームみたいからクラーケン、とか  
使わんけど趣味でとっとく、みたいなこと始め出した。  
俺は改めて用済み野郎だと認識。むしろ俺自体に元々用が無かったこと決定。  
 
と言うわけで、冗談抜きにLv1忍者ヘンリーの除名が現実のものとなってきた。  
うわー、勘弁して欲しいよ…戦闘に一回もでられず  
やってたのはせこせことやっていた味方陣営限定の隠密訓練。  
これで俺の戦争は終わっちまうのか!?  
もうダメだ、選択肢とか言ってられない。除名されちまったら軍隊に居られないんだし。  
ここはもう  
 
@  
 
で行くしかない!!  
 
 
ヘンリー隠密日記13日目  
 
ついに決行の日である。いや、決行しないでおとなしく除名されて田舎に帰る…  
いやいや、いつまでもそんな事言ってたらこれから先も何もできない気がする。  
…よし、行こう。  
 
トントン  
「誰だ?」  
「忍者のヘンリーにてございます」  
・  
・  
・  
「何用か?」  
「私自身の進退についてご相談があるのです」  
・  
・  
・  
「とりあえず入れ」  
「はっ…」  
 
「それで?そなたの進退の事とは?」  
「はっ。私、レクサール様が旗揚げした頃から志を共にし、貴方様に忠誠を誓った  
 次第でありますが、残念な事に今日に至るまで一度も戦場にたたせてもらったことが無いのです」  
「ふぅむ…」  
うっわー、思いっきり「こいつ誰だっけ?」って顔されてら。ひ、酷いや!  
だがめげている場合じゃない。慎重にいけよ、ヘンリー。  
「しかし例え戦場に出る機会がなくとも、私には私自身の特技を磨いておりました」  
「…ほう?」  
「それは何も私だけではざいません。似たような境遇の者たちも戦闘には出られずとも  
 我が軍に貢献したいと、各々何かしらの努力をしていた事はご存知でしょうか?」  
「それは知らなかった。例えばどんな事をいていたのだ?」  
「そうですね。ウォーリア−のヴァイオレット。彼は戦に疲れた皆に少しでもそれを  
 忘れさせようと、大道芸に励んでおりました」  
「…」  
ちなみにこいつは3日前に除名された。  
「ホークマンのカイラスと言う者は健気にも自分の羽を少しずつむしって、それを元に  
 衣類等の補給に協力していました」  
「…」  
こいつの努力は涙ぐましかった。痛みをこらえて羽をむしって、なんとか服のようなものを  
一丁作って…と。ちなみにこいつは元は中立ユニットだった。  
そんな頑張っていた彼も既に除名済みである。統率者とは残酷である、と思った。  
 
まぁそんな感じで次々とベンチを温め続け、ついには日の目を見る事も無く  
退去させられてしまった人間達を次々と挙げていった。  
…ただ、皆ロクな事やってなかったなぁ。こう思い出していくと。除名は当然なのか…  
 
「で…、だ。そなたは何をしていたのだ?」  
キター!  
「はっ。私のクラスは忍者であります。忍者と言えば戦闘だけでなく破壊工作やら  
 情報収集他にも云々。その事に努めて参りました」  
「…そうなのか」  
うーん…「あ、そう」て表情が丸見えだな。そもそも今言った破壊工作なんて現実では出来ないし  
開放するはずの都市やら街を破壊するなんてありえない。  
情報収集なんてのもあんまり必要無い。死神部隊が問答無用で敵部隊を殲滅していくからだ。  
だが、言いたいのはこれじゃない、こっからが勝負所。やってやるぜ。  
 
「そうそう、情報収集及び諜報活動は何も敵方だけに限ったものではないのでございます」  
「と、言うと?」  
「何を隠そう私は我が軍全体の状況を常に把握しているのです」  
「?それは私の仕事であろうに…別にそなたがやらなくともよいではないか」  
「いえいえ、軍そのものだけではございません。軍に所属している個人の情報も  
 あまさず把握しているのであります」  
「…」  
 
その瞬間、本当にほんの少しだが、レクサール様の目じりが上がったのを俺は見逃さなかった…  
 
よーし、順調だぜ。  
「毎晩、個人部屋に行くと皆様やはり違うことをなさっていますねぇ」  
「ランスロット様は何やらオルゴールを聞きながら哀愁を漂わせております。  
 ウォーレン様は精神統一でしょうか?瞑想をなさったり、占いなんかも。  
 アイーシャ様は毎日日記を綴られてらっしゃるようです」  
「そう…。そうなの。よく知っているのね」  
「ええ、一兵卒から将軍クラスの方々の一日の過ごし方や終わらせ方、あまさず  
 把握している次第でございます」  
 
 
 
空気が少しずつだが重くなってくるのが良く分かる。  
次が勝負って所か。  
 
ふう、と1つ溜め息をつき喋り出すレクサール様。  
 
「忍者とは油断のならぬクラスであるな」  
「恐れいります…」  
うむ、心臓が高鳴ってきた。緊張するぜ。  
「よろしい。そなたの能力は戦闘の枠を外れてはいるが中々に有能だ。  
 除名はせぬほうがよいであろう。もう要らぬ心配はしなくてもよいぞ」  
ありゃ?いきなりそう来たかい。  
「ありがたきしあわせ。訓練にはげんだ甲斐があったと言うもので御座います」  
「だが、此度の戦ではそなたの力は活かせぬであろうな。それは承知しているのであろうな?」  
「はっ。それは自分自身良くわかっている次第であります」  
さーて…どう切り出すかねぇ?ちょっと意外な展開になってきた。  
流石にレクサール様、早めに手を打ってきたな。まぁ、こっちには奥の手はあるのだが…  
「ところで、ヘンリーといったか」  
「はっ」  
「意外に思ったであろう?即座に除名を免除すると言った事を」  
…いや、うん。すっげー思った。  
「で、だ。そなたのその先の言いたい事も私は読めているが?どうかな?」  
 
あ、やばい。俺、斬られますか???まさか安心させて口封じさせるパターンなのかー!?  
 
 

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